03-03 Ryo's Morning

第3部 Turning Point

奥多摩の翌日


(3)Ryo’s Morning  ************************************************************1647文字くらい




時間は少し遡る。



香が目を覚ます少し前の撩は、彼女の眠りの深さを確認した後、

ゆっくり身を起こし、トランクスだけはいて部屋をそっと離れた。

キッチンに入ると、冷蔵庫を開け、ペットボトルを手にする。

中身はミネラルオォーター。

水割用に常備してある。



撩はそのまま静かなキッチンで、「腹案」について考えていた。

一緒に生きることを前提に、これから共に過ごすのなら、

何があっても生き残れるように、生き延びるように、

身につけておくべきことがいくつもある。



(槇村…、俺は香を失いたくない…。

香の手が汚れるようなことは、絶対にさせないから…、

だから…これから俺がしようとすることを、お前は許してくれるか…。)



しばし、深い想念の中にいたが、水分補給を終えると、

香が目覚めた時のために未開封を1本持って行くことにした。

そして、香が起きないうちに、またベッドに戻り、

細く柔らかい裸体を抱き直してその感触に浸っていた。



しばらくして香が目覚めた時、撩もそれにすぐ気付いた。

と同時に、胸板を何かがくすぐる感覚に驚いた。

(な、なんだぁ?)

香の長い睫毛が、自分の胸板を筆のようなタッチで触れているのだ。

まばたきの度に、ぞくぞくぞくと刺激が登ってくる。

(こ、これが、バタフライ・キスかよっ。)

話しには聞いていたが、自分が体験するのは初めて。

動揺が走る。

そもそも、今まで致した後に、その相手と一緒に寝直すなんてしたことがない。

一服して、金を置いて、さっさとその場を去るのが定番。



過去とは違いすぎるシチュエーション。

余韻を味わう至福感に浸っているところに、

マスカラなんかつけなくても、

1センチ以上はある香の長い睫毛が肌をくすぐる感覚。

それが、ここまで自分に衝撃を与えるとは、らしくもなく焦る撩。



そうとも知らずに、まだパチパチとまばたきを繰り返す香。

(だぁああ〜、や、やばいってっ…、それはぁああっ。)

すると急に香の心拍数が上がり、全身がほんのり赤くなる。

(お?状況に気付いたかぁ?)

まだ、睫毛が胸をくすぐっている。

(いかーん、また火がつきそうだ…。)

撩は、まだこの感触を楽しんでいたい気持ちと、忍耐との葛藤の中で、

声をかける決心をした。



「……香ちゃん、くすぐったい。」

と、2度目の目覚めを迎えた訳だが、

混乱した香にハンマーでも食らうかと覚悟していた予想は裏切られた。

意外な程大人しく素直な反応に、やや面食らったが、

それだけ受けた創痍(そうい)が大きかったということだろう。



先に自室を出た撩は、香の反応を思い返しながら、

今後、どう動くことがベストかを思案する。



— 痛いだけじゃ、なかったから… —



この一言に正直安堵した。

初めてがトラウマにでもなってしまったら、その後に及ぼす影響は決して小さくない。

ヘタなことをしでかしたら、もう次はないかもしれないという緊張感もあった。

どうやらその心配はないようだが、いずれにしても、インターバルが必要だ。

(……しばらくは、傷が癒えるまで次はオアズケかなぁ。)

時と場所を選ばずして組み敷きたくなる衝動を抑えねばと、

相棒に声をかけた。

「おい、大人しくしてろよ。」



洗面所に来た撩は、夕べのシャツをランドリーバスケットに放った。

シャワーを浴びようか迷ったが、香の残り香を流してしまうのがなんとなく惜しくて、

顔だけ洗うことにした。

いつも通り、シェービングをし、水でばしゃばしゃと顔の皮脂を落とす。

持ってきた新しい赤Tシャツを着て、

顔を拭いたタオルをそのまま首にかけ、口を漱(すす)いだ。



ふと、視界の端に見えるお揃いの歯ブラシに意識が向く。

随分前からこうして普通に置いてあるが、

今日に限って、この2本の歯ブラシが、まるで

恋人同士か、夫婦かの、

長く連れ添った仲を強く象徴しているように見えるのはどうしたことか。



「ふっ。」



撩は、おのずと顔が弛み、香の歯ブラシをピンとはじいた。

「さて、遅い朝飯を作りますかねー。」

キッチンに向かう撩は、頭をかきながら、わざとガニ股で足を進めた。


***************************
(4)につづく。





いやね、本当は香ちゃんの睫毛が、
撩のびーちくをくすぐる表現にしたかったんですが、
原作では、殆ど描かれていなかった部位なので、
とりあえずパスなしコーナーでは自粛しました〜(爆)。
さて、メシだ、メシ。
ところで、原作ではあの間取りでまともに冷蔵庫が出てきたのは、
野上唯香ちゃんの回からだったような。
「から」というよりは、そこしかない?
こりゃ、見直してみよ〜。


【追記】
サイトオープンから明日で2ヶ月。
なのに、まだ奥多摩翌日が終わってないってどーゆーことぉ?
今後も、の〜んびりだ〜らだ〜らと続きます。
お立ち寄り頂いている全ての皆様に
改めて感謝です。

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03-02 Kaori's Mind

第3部 Turning Point

奥多摩の翌日


(2)Kaori’s Mind ****************************************************************1616文字くらい




「報告って?」

赤い顔をしたまま呟く。

撩の残した言葉の目的語がよく分からない。



部屋に残された香は、下腹部の鈍い痛みに少し顔を歪めた。

確かに、いつも通りの動きがスムーズにできそうにない。

とりあえず、ベッドの上で撩が渡してくれたパジャマとショーツを身につける。

ふと波打ったシーツの海に視線をやると、

とたんに思考は熱を分け合ったあの時間に引き込まれる。



(ここで撩と…。)



しわが複雑に寄っている乱れた白い布に、つと手をついた。

決して実現しえないと思っていた、諦めていた望み。

撩に女として抱かれてしまったその事実が、まだ現実味を帯びてこない。

いまだに夢の中ではないかと思ってしまう。



確かに痛いだけじゃなかった。

もしかしたら、体験こそしたことがなけれど、

赤ちゃんを産む時の痛みを連想させる程の、

激痛と圧迫と質量を感じた。

まるで新生児と同じサイズのものが、自分の体内に戻ろうとして

入り込もうとしているかのような、熱と体積。

だけど、それ以外に、

今まで味わったことのない、気持ちの良さがその痛みと均衡していた。

心地良く溺れていきそうな波にずっと揺られていた気がする。

心を許した相手を受け入れるという初めての経験の中で感じた

例え様のない感覚。

快楽とか官能的なとかいう単語では当てはまらない。

全くいやらしさとかを感じなくて、

想いを寄せていた男に抱かれることが、こうも幸せな気分を味わえることだとは、

全く思いもしなかった。

もっと、どろどろとした嫌な先入観を持っていたが、それは全く違うものだった。



「りょ……。」



同じ家の中にいるはずなのに、離れているこの距離が無性に淋しさを覚える。

撩の手も、腕も、唇も、体のどれもが温かく、熱く、こんなに体温が高いものかと、

肌を合わせることによって初めて知ったことが、あまりにも多過ぎた。



— もう、後戻りはできないぞ… —



あの時の撩の言葉を思い出す。

自分たちの関係が大きく変わった。

もう、今までのような、あやふやな輪郭ではない。



あの屋上で、ローマンを受け取った時に、ずっとそばに居続けると決心を固めた。

しかし、海原戦での自分の短い記憶喪失の後から、撩の気持ちが見えずに、

望んでいる未来や関係のことを考えることは、触れてはならないエリアと思っていたりもした。



しかし、今はもう違う。

この変化に、急に適応するのは難しいかもしれないが、

共に生きる道を選んだことを、決して後悔はしないと、

香は静かに決意を新たにした。



しばし、思考のループに入り込んでしまっていたが、

いつまでもこのままでいる訳にはいかない。

トイレとシャワーを済ませるために、パジャマのボタンをかけなおし、

タンクトップと飲みかけのボトルを持って、重い腰をゆっくりと動かした。



「うそ…。まともに歩けないじゃない…。」



香は、まだ体の中に何か挟まっているような感覚が残り、

生理痛の時と同じかそれ以上の不快感と違和感を覚えた。

その原因が、撩のアレだと思っただけで、また赤面する。



「と、とにかくゆっくりでもいいから、歩かなきゃ。」



家具や壁に手を添えて、体重を分散させながら、

スローモーションで階段を下りていった。

キッチンから食器の重なる音が聞こえ、撩がいることをドア越しに感じる。

とりあえず、キッチンのドアの前を通過して、先にトイレに寄る。

昨日の夜から行っていなかったから、貯水率ギリギリ一杯。

しかし、どうもいつもの用足しと感覚が違う。



(あーん、この違和感いつまで続くの?)



自分の部屋までなんとか辿り着くと、

今日着る服を選ぶ。

何となく、いつもの服を着るよりも、気持ちを新たにしたいと、

以前、絵梨子からもらった未使用のセットを奥から取り出した。

浴室に向かおうと、部屋を出る時、ふと振り返って、ベッドサイドの

写真に視線を送った。



「アニキ…。」

(あとで、ゆっくり話すね…。)



香は、まるで全てを知っているかのような槇村の顔を見て、

頬を赤くしながら、客間を出た。


*******************************************
(3)につづく。




かおりん、よろよろです。
撩ちゃんのナニのサイズ、
原作では、ふにゃもっこでも尿瓶に入らなかったり、
モグラたたきと同列扱いだったり、
瓶ビールで代用したりと、その表現は様々でしたが。
あらためて、10代の頃よく平気で読んで楽しんでいたよなぁ〜と、
ある意味、嫌悪感を持たせるような厭らしさでなかったことが、
不思議で仕様がないです。
これも職人北条パワーのなせる技?
個人的には、ちょろり。さんの「茶筒」の例えが大好物で〜す。

03-01 Butterfly Kiss

第3部 Turning Point (全10回)

奥多摩の翌日


(1)Butterfly Kiss  **************************************************************3747文字くらい




複数の感覚を体が同時に拾っている。

温かい。

気持ちいい。

喉が痛い。

トイレに行きたい。

生理痛みたい。

お腹減った。

お水飲みたい。



香は、目を閉じたまま覚醒した。

「……ん。」

目蓋を持ち上げようと、薄目を開くが目の端に涙か何かが乾いて、素直に開かない。

何度かまばたきをすると、左の睫毛にカサカサと触れるものがある。

目を開けたのに、目の前は薄暗い。

目の前のモノが近過ぎて焦点が合わない。

「…………。」

(これ、何?)

まばたきが繰り返される。

睫毛の先が触れているものが何なのか、五感が情報を集めようとする。



見覚えのある肌色、細かい傷に大きな傷。

浅い収縮を繰り返す、温かい平面。

かすかに鼻の粘膜に届く硝煙とガンオイル、そしてタバコと汗の匂い。

規則正しい吸気と吐気の音。

視覚、嗅覚、聴覚、触覚が、それぞれ持ってきた情報を束ねたところで、

香の心臓が跳ねた。



(こ、こ、これ、……これって、りょ…の、…む、胸?!)



自分の耳に心拍の音が大きく響く。

一緒に生活してきた中で、確かに見慣れていたものではあっても、

睫毛がその肌に触れる程の距離にあるとは、一体どういうことか。

まばたきの回数が増え、体温が上がる。

そして、自分が何も纏っていないこと、太い右腕が枕になっていること、

筋肉質の左腕が自分を抱き込んでいること、2対の足が交差していることを

やっと脳が認知した。

その「理由」と「経緯」が分かるやいなや、血液が沸騰する。

目が乾燥し、さらに目をパチパチさせてしまった。



「……香ちゃん、くすぐったい。」



突然、頭の上から降ってきた声に、ビクンと肩が反応する。

「撩ちゃん、バタフライ・キス初めてぇ〜。」

随分とおちゃらけた調子の口調に、混乱した香は言葉の意味が全く読めない。

(は?な、なに?バ、バタフライ・キスって??チョ、チョウのキス??)

足の先から頭のてっぺんまで、真っ赤になって、体は固まったまま。

撩はくすりと笑い、左手を香の髪に滑り込ませ、そっと頭の角度を変えさせた。



視線が絡む。

撩の黒く優しい瞳が、香の体温をさらに上昇させる。

「おはよ。」

本日二度目のあいさつ言葉。



「………。」

香は、まだ自分は寝ているんじゃないか、夢を見ているんじゃないかと、

起きていることに自信が持てなかった。

見つめていた先の撩の目の中に、自分が映し出されているのに気付き、

またボッと朱に染まる。

「…どした?」

「ぁ、……りょ…、コホッ!ケホッ!」

おはようと、言い返そうとしたが、喉がカラカラで、声が掠れ咳まで出てしまった。



「あ、ちょっと待ってろ…。」

撩は、香を腕枕したまま、左手をベットサイドに伸ばして、

ミネラルウォーターのボトルをとった。

キャップを指だけで器用に開封。

少し多めに自分の口に含むと、ボトルを置いて、香の顎を持ち上げた。

「んんんんんっ。」

親指で少し下唇をずらされ、角度をつけた接吻から、舌で歯の隙間を広げられたかと思いきや、

すぐさま冷たい軟水が口腔内を潤し、喉を滑り落ちていった。

こくりこくりと、香の喉が動く。

この間、ほんの数秒。

実になめらかな動きでの口移しに、香が状況を理解する前にコトが終わってしまった。

(っく、く、口移しぃー?!……な、なんで冷たいのがこの部屋にあるの?)



撩は、軽く口を触れさせたまま、囁いた。

「もっと飲む?」

「…!!、ぃ、い、い、いい!じ、自分で飲むからっ!」

声が何とか出るようになった香は、この状態が恥ずかし過ぎて耐えきれない。

とりあえず、夢ではなくどうやら目が覚めているらしいと、

ようやく現実に戻ってくる。



「おまぁ、体起こせるか?」

問われて初めて自分の体が重たくなっていることに気付いた。

「あ、あれ?」

(え?なんで?だって今朝は、すごくよく寝れて、疲れもとれたと思ってたのに。)



撩は苦笑しながら起き上がり、腕枕になっていた右腕を使って、ゆっくり香の上体を起こさせ、

左手で香のパジャマをベッドの端から拾い上げた。

片手でうまく広げると香の上半身にぱさりと羽織らせ、

そのまま手はボトルを持って、香に手渡す。

「ほれ。」

「ぁ、ぁりがと…。」

かなり喉が渇いていた香は、赤い顔のまま右手で受け取ると、そのまま半分を喉に流し込んだ。



(お、間接キッス。)

と余計なことを考えていた撩の目に映る香は、

薄手の掛け布団の端を左手で握り、前が開いたままのパジャマから、

喉元と胸骨を経由し臍上までが帯状に覗き、白い喉がゆっくり波打つ、

実にエロティックなビーナスだった。

(あぁ、やべぇ、こんなん見たら、マジでセーブが効かなくなる…。)



「っはぁ、助かった。

喉が痛くてうまくしゃべれなかったけど、おかげで潤ったわ。」

自分がどんな姿か、全く分かっていないような素のしゃべり方に、

撩は何となく煽られた仕返しをしたくなった。

ボトルを取り上げ、ベッドサイドに戻すと、

「んじゃ、もっかいスる?」

撩は香の上半身をそのまま後ろから抱き込んでみる。

「は?」

(何を?)

と、聞こうとしたら、

自分の胸の前でクロスしている撩の手が、さわさわと脇腹を登ってきた。

「う、うあっ!!っちょ、ちょっと!待ってっ!」

腕の中で身じろぐ香は、撩の言葉にかなり焦っている。

(もっかい、って……い、今は無理っ!)

慌てふためく香が可愛くて、思わず顔がふっと緩む。

「……わかってるよ。心配するな。」

「ぇ?」

撩は、そっと香の下腹部にその温かい右手を重ねた。

「……痛く、ないか?」

ゆっくりとした低い口調で、後ろから問う撩は、

香の身体的ダメージは決して小さくないことを悟っていた。



香は、朦朧としながらも撩の行為に必死についていこうとしていた

あの時間を思い出し、同時にその時の痛みも甦ってきた。

本気で心配している撩に、赤面しながらも、正直に言ってみる。

「……ぁ、なんだか…、生理痛のきつい時みたいな感じ。

ヘンな異物感も……、残ってる、みたい…。」

(でも、今撩の手がすごく気持ちいい。)

撩の低い声が耳の後ろから聞こえる。

「……すまなかったな。……抑えが、効かなかった。」

(え?効かなかったって?何のこと?)

香は、言葉尻がイマイチよく分からなかったにしても、

心底すまなさそうにしている撩に、

別の事もちゃんと言わなきゃ、と照れながらも口を開いた。



「ううん。…ぁ、ぁ、の…ね。……痛い、だけじゃ、…なかった、から…。」

撩の目がパチッと開いた。

座ったまま後ろ抱きされている香は、それが見えない。

そっと自分の手を撩の腕に重ねて、小さな声で香は続けた。

「……れしかった。……ゆ、…めみたい…。」

「ばぁか、夢であってたまるかよ。」

(…やっと、中途半端な関係に終止符を打ったんだ。夢オチにしていいわけないだろ。)

撩は目を閉じて、香を後ろから深く抱き込み、自分の右頬と香の左頬を擦り寄せた。

(ひゃ、りょ…、ヒゲがのびてるぅ。)

これだけでも、ドキリとしてしまう。

撩は、もともと全体的にそんなに毛が濃い方ではなく、

あごひげもまばらで、僅かに伸びているくらいだったが、

香は、たったこれだけでも撩の雄の様を感じたような気がして、

この感触に心臓の耐久力が限界という思いだった。



そのまま、撩の右手は子宮を温め、左手を香の上半身にからませ、

しばらくその体温と鼓動を感じるがままに浸っていたが、

身を少し捩った香の頬に、つと自分の唇が触れた。

次の感触が欲しくて、撩は左手で香の顎を掬うと、

肩越しに唇だけのバードキスを交わす。

「ん……。」

「……後悔、してないか……。」

目を閉じ、唇を合せたまま、撩は低く小さな声で尋ねた。

「するわけ、ないじゃない……。」

赤く染まった照れを含む表情で、揺るぎない決意を込めた香の言葉に

撩はふっと顔が緩み、また恥ずかしがっている香の紅唇を啄み始めた。



きゅるるるる、くぅー。

そこに突然の見事なまでの腹の虫のデュエット。

2人同時に消化器系が低血糖を訴える。

「ぷっ!」

吹き出す2人。

「あー、腹減った。朝飯食ってねぇーから、ガス欠だぜ。」

撩は、名残惜しげに香から離れ、のんびりとベッド脇に降り立つ。

「え?今何時?」

ベットサイドの時計を見て香は驚いた。

「うそっ!もうこんな時間なのぉ!?」



すでに昼を回っている。

(どうりで、空腹なわけだわ。こんな時間まで寝ていたなんて信じらんない。)

撩は、スウェットをはき、

香にも、自分が脱がせてしまった残りの3点セットを渡しながら、

掛け布団で身を隠している姫に言った。

「あぁ、俺が昼飯作ってやるよ。おまぁ、もうちょっと休んでろ。」

「え?、大丈夫よ。食事くらいつ…」

と言いながら香は体を動かそうしたが、どうにもこうにも下半身が重たい。



「無理すんな。」

ベッドの上に座る香の髪をくしゃっと撫でる。

「でも、洗濯物もあるし、伝言板見に行かなきゃ。」

いつもの予定をこなそうとする香に、自身を二の次にする性(さが)を改めて感じた撩は、

自分が思い描いている予定を伝えた。

「今日は冴羽商事は休業!洗濯モンは、俺がやっとく。

夕方出かけるから、それまではゆっくりしとけ。」

撩は、引き出しからTシャツを取り、脱ぎ捨てたシャツを拾い、

扉に向かいながら、振り向き様にそう答えた。

「え?出かけるの?」

「そ!報告しにな。」

と、片手をひらひらさせながら先に部屋を出た。


*********************************
(2)につづく。





一線越えた後の目覚めのシーンは、
様々なサイトさんで紡がれていますが、
どれもありえそうなことばかりで、
多角的なバリエーションに、その作品数分たっぷり
楽しませて頂いております。
読み逃げで申し訳ないです。
当方、パニクった香ちゃんにハンマーを出させるかどうか
か〜なり迷いましたが、
ハンマー出せないくらい結構コタエタということにしました。
なにせ初体験が撩ちんのアレですからねぇ〜。
あと、撩って体毛薄そうですよね、ね、ね。
原作でも殆ど表現されていないしぃ〜。
という訳で、お二人の新しい生活が始まりま〜す。


【御礼】
6000hitありがとうございます!
2012.05.28.09:38

02-06 Reverberations

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02-05 Insert

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02-04 Preparation

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02-03 Nipple

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02-02 Lie

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02-01 Kiss Mark

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01-22 Start Line

第1部 After the Okutama Lake Side


(22) Start Line ****************************************************************4072文字くらい




香は、超至近距離の真っ直ぐな黒い瞳に射抜かれた。

動けなくなる。



少し口角を上げた真面目な顔で、自分を見つめる撩の表情は、

どんな女性もすぐに堕ちてしまいそうな魅力というよりも、

むしろ魔力がある。

黙っていれば、ホントいい男なのに、と普段のギャップを思い出しつつ、

この状況に、どうしようもない恥ずかしさが香の全身を駆け巡って行く。



気付いたら、もう口を塞がれていた。

香は、たまらず視界からの情報をシャットアウトした。

寝起き独特のねばつきが、自分の口の中に少しあるのが分かったが、

そんなことは気にするなと言わんばかりに、

ゆっくりと深いキスが始まった。



「んんんっ…。」



唇と口腔内をじっくりかけて一巡した後、

撩は唇を左頬に移動させた。



「っはぁ…。」



やっと息ができたと、水面から浮上したかのように深呼吸をする香。

酸素補給に気を取られていたら、突然左耳に温度を感じた。



「っあん!」



撩が香の耳介に吸い付いたり、舌で撫でたりと、細やかな刺激を送っている。

くすぐったい、というのとは違う感覚。



「っひゃぁぁん!」



初めての信号に、身が硬くなり、無意識に体が逃げようと抵抗する。

しかし、やんわりと体や頭を押さえられ、

わずかしか動かせない。



「…んー、いい声。」



香の耳朶をくわえたまま喋る撩の唇が、また違う刺激を作る。

あたる息が熱い。



「っぁ…。」



撩は、香が初めて漏らす官能的な喘ぎ声がたまらず、愛撫が調子に乗ってくる。

「っん…、はぁ…、やだ…、勝手に、声が、…あぁん!」

「…声は、我慢しなくてもいいから…。」



撩の唇が耳の後ろから首筋に少しずつ降りていく。

何もかも生まれて初めてのこと。

頬から肩口を、撩の唇と舌が緩慢に動き回っている。

同時に大きな温かい手が、香の髪や首や背中を優しく撫で続ける。

香は、恥ずかしさと心地良さで意識がかすれそうになりながらも、

今の状態を自分なりに理解をしようとした。



(……いや、じゃない。…むしろ、もっと触れて欲しいって、

心のどっかで思っている…。

…撩だから、撩じゃなければ、こんな気持ちには、…なれない。)



「っはぁ…、ふっ…りょ…。」

乱れる呼吸が撩の耳をくすぐる。

想像以上に、感じやすい体質と読み取った撩は、

香のこの反応でますます気分が加速した。



「…もっと、…お前の声を、…聞かせてくれ。」



香の耳元で本音を小さく囁く。

自分を感じて声を漏らす香に、撩自身が敏感に呼応しているのを感じる。

もう「試しに」と言っている余裕が全くなくなってしまった。



香は、体全体をふるふると小さく震えさせながら、

吐息とともに小声で啼いている。

初めて目にする愛撫に反応する香の姿は、あまりにも想定を外れた脳殺力を持ち、

撩の息子にも、しっかりすっかりエンジンがかかってしまう。



(まずいっ…。これは香が途中で拒否しても、もう止められないかもしれない…。)



つい先ほどまで思い描いていた、もし嫌がられたら、

香の意思を尊重するという考えが、いかに楽観視し過ぎていたか自覚が沸く。

このままなりふり構わず香を抱いてしまいたい衝動を必死に抑え込んで、

一度ふわりと唇を離した。



撩は、右手を香の頬に添え、虹彩の模様が見える距離まで顔を近付ける。

そして香に、低い口調で、文節を一つ一つ区切って尋ねた。



「……香…、このまま…先に、…進んでも、いいか?。」



瞬時に、香の体が硬くなった。

肩で息をしている香は、すぐに答えられず、

ゆらりと撩の目を見つめる。



(…さ、先って、…つまり、あーゆーコト、よね…、たぶん…。)



香とて、撩が意味することが分からない訳ではない。

ただ、リアルな想像ができないのだ。

この先に、一体どんなことが待ち受けているのか。

映画や撩の愛読書のチラミでは、

香の持っている情報はあまりにも乏しかった。

見つめ合ったまま、しばし沈黙が続く。



「………。」



「…俺と、もっこりするの、嫌か?」



先に口を開いたのは撩だった。

具体的に要求を表現され、ぼぼっと顔が火照り上がる。

心室が痙攣しそうな気分に言葉が出ない。

香は、女として求められていることが全く信じられなかった。

まだ、自分の右手は撩の左指が絡んだまま。

指から温度が伝わる。

頬に添えられていた右手の指は、香の柔らかい髪の中に埋められていた。



「いやな、……こーゆーことは、まだもうちょっと先でもいっかと……、

思っていたんだがな……。」



撩は少し困ったような表情で笑みを浮かべた。

自分がもはやここでストップが効かないくらい限界に近いことを

できるなら悟られたくない。



「おまぁが、もし今オッケーだったら、善は急げって言うしぃ〜。」

余裕のなさをごまかすように、軽い口調が出て来る。



香の指先が細かく震える。

もう望んではならないことと、望めば苦しくなるだけと、

そう思っていた禁忌の願望。

夢の中でしか思い描くとこが許されなかった女としての望み。

思い描く程、抜け出せない煩悶(はんもん)の渦に巻かれ続けていた

実現しえない希望。

それが突然今、自分の返事如何(いかん)で現実になろうとしている。



ここで拒んだら、このぬくもりが、この匂いが、

もう戻ってこないかもしれない。

ずっと触れていたい、ずっと触れててもらいたい。

離れたくない、離したくない。



まだ返事が出来ない香から、

撩は苦笑いを浮かべほんの僅かだけ体を浮かせた。



その瞬間、香は心の中で、だめ!行かないで!と、

見えない手が撩のほうに伸びる。

自分が深層で望むことに真っ向から向き合わされ、

香はついに意を固めた。



「………りょ…、撩は、…ほ、ほんとに、…ぁ、ぁたしで、ぃぃの?」



やっと出て来た香に言葉に、撩はほっとする。

(もう、おまぁじゃなきゃだめなんだよ。)

右手で小さな頭をそっと撫で、表情を真面目な顔に変える。



「…香は、俺でいいのか?」



優しく穏やかな口調で逆に問われる。



「…撩じゃなきゃ、…ぃや…。」

(撩以外は、考えられないよ…。)

「…香。」

「………でも…、りょ…、あたしなんかで、…その、

………もっこり、できるの?」

「へ?」



撩は目が点になった。

何を今更そんな心配をしているんだっ、と困惑したが、

冷静に考えれば香がそう感じるのも当然だった。

香の自己評価は、周囲の人間の想像以上に低過ぎるのだ。

そこに、撩が自分をごまかすために、

今まで、散々、男女とか、唯一もっこりしない女とか、

全面否定の言葉ばかりを浴びせ続けてきたのだから、

これからのことに疑問に感じても全く不思議ではない。



(し、か、しっ!、おれのもっこりは、

朝もっこから、そのままアイドリングがかかって、

さっきからもうギンギンパンパンで、

いつでもスタンバイオッケーなんだっ!

それが、今まで分からなかったっつーの?)



撩は、小さくため息をついて、布団の中で、

わざと香の腰にもっこりをつんと押し当ててみた。



「香…、これで俺のもっこりがどうなってるか、分かるよな…。」



何が体に当たったか、理解ができた香は、

どきりとして、今まで以上にカーッと赤くなった。



「………俺と一緒に、一線を越える覚悟は、出来てるか?」



香は、目を潤ませながら、撩の瞳を見つめた。

何秒か、何十秒かの沈黙。



「……ぅん…。」



香は、少しの微笑みを浮かべて、小さく返事をした。

撩は、ふっと息を吐き、わずかに表情を緩めた。



「……もう、後戻りはできないぞ…。」



今までのじれったい曖昧な関係から、本当に決別するこの行為、

越えた後は、取り消しなんか効かない。

自分にも言い聞かせる。

もう、表の世界には戻せなくなると。



「……撩と、……一緒なら、いい…。」



撩は、香の覚悟を確認し、同意を得たことを心底嬉しく思った。

同時にちくりと罪悪感が胸を鋭く刺す。



「で、でも!…は、初めてだからっ、

…その、…ぉ、ぉ手柔らかに、…ぉ願ぃ、…し、ます…。」



赤い顔をして、

初心者であることを恥じらいながら訴える香が、たまらなく愛おしく感じる。



「……香。」



絡めている左手の指に力が入った。香も握り返してくる。

指の間からトクトクと心音が伝わってくる。

この期に及んでも、

本当にいいのか?と躊躇いの声が脳の奥で聞こえてくる。

湖畔で唇を重ねた時、この関係を壊そうと決心したのは自分だ。

闇に引き込んでしまう原罪を背負ってでも、

お前と、生きたい。



撩は迷いを振り払う。



右手で香の頬をそっと撫でた。

痛い思いをさせてしまうかもしれない。

苦痛でこの顔を歪ませてしまうかもしれない。

いや、かもしれないではなく、

痛さで気を失わせてしまう可能性だってある。

それでも、自分を必死で受け入れようとしているその姿に、

また、胸の奥を握られるような感覚が再来した。



(俺も切羽詰まって決壊寸前だが、

怖がらせないよう、注意深く、慎重にだな…。とにかく優しくしなければ。)



撩は、右手を伸ばして、ブラインドのシャッターの角度を変え、

陽が入らないようにした。

恥ずかしがり屋の香にとって、まだ明るいところでは、気の毒だと思っての配慮。

薄暗くなった室内で、ほっとした香の表情が見える。

ついでに、着ていたスゥエットを脱いで上半身をあらわにした。

絡ませた左指を解くのに一抹の淋しさを覚え、

離さないまま脱げないかと、ちらとでも考えた自分に驚く。



香が、布団から赤い顔をして目だけを覗かせて、こちらを見ている。

(う、かぁーいーかも。)

「どう?俺の肉体美。」

照れ隠しに軽いセリフで言ってみた。

「っ!ば、ばか…。」

思わず目をそらした香は、さっきからドキドキしっぱなしなのに、

撩の全く無駄のない筋肉質の体に更にときめいてしまった。



(な、な、なんで?今更?

今まで、撩の裸なんていくらだって見てきたくせにぃ。)

そんなことを考えていたら、薄い掛け布団をかけ直しながら、

撩がゆっくり覆いかぶさってくる。



「……この日がくるまでの道のりは、長かったな…。」



撩は、左右の肘で上半身を支え、

香の小さな頭を両手で包むように撫でる。

香は撩の手がさっきより熱くなっているような気がした。

服越しに感じる撩の体全体もすごく温かく気持ちいい。



「りょ…。」



撩は香の前髪をかき分けて、もう一度額に唇をつける。

香は静かに目を閉じた。



「時間が、かかった分…、」

撩の唇はそのまま高い鼻筋を辿って、

「これから…、ゆっくり…、」

鼻尖に吸い付き、

「取り戻して、いこうな…。」

香の唇に到着すると、また深いキスから再開した。



**********************************************
第2部(1)につづく。(注)第2部は年齢制限あります。





はぁ〜、や〜っとここまできました〜。
第1部終了〜。
他の作家さんの切り貼りをした感もある中身ですが、
2人の初夜のスタートは、
こんな感じがいいなぁ〜とワタクシの勝手な願望をまとめてみました〜。
当初は、ここで妄想の吐き出しを終わりにしようかと思っていましたが、
止まりませんでした…(爆)。
続きをご覧になりたい方は、あだるてぃなお話しなので、パスワードが必要です。
原作をしっかり読んで頂ければたぶん見えてくるキーワードかなと。
美樹のセリフがポイントです。
中身はあまり期待されないようにぃ〜。


01-21 Next Morning

第1部 After the Okutama Lake Side


(22)Next Morning *************************************************************2866文字くらい




太陽の角度が徐々に動き、

ブラインドから漏れる陽の光が、

香の顔にラインを作った。



「……ん。」



まぶた越しに明るさを感じた香は、

朝であることを、目を閉じたまま認識した。

(すごく深く眠れた気がする…。

こんなにぐっすり休めたのはいつ以来かしら?)

そんなことを思いながら、ゆっくりと目を開けた。

視界の光景にピントが合う。



「!?」

ビクッと肩が揺れる。

目を見開く。

いつもと違う光景が見える。

自分の部屋ではない。



一瞬、また攫われたのかと、拉致監禁を疑ったが、

視線の先には、壁際にあるソファーと観葉植物。

クロスに貼られている見慣れたポスター。

そこが知っている部屋であることが分かった。

ひとまず、ほっとする。



しかし、分かったはいいが、

そこになぜ自分がいるのかが理解できなかった。



(ど、ど、ど…どうして、りょ、撩の部屋に???)



さらに、自分の首の下から伸びている長い右腕。

腰に巻かれている丸太のような重たく太い左腕。

背中に感じる自分以外の体温。

両脚も、ずっしりとした足がからめられている。

耳の後ろから聞こえる規則正しい呼吸音。



一気に覚醒した。

心臓は音をたて早鐘のように暴れている。



香は、どうしてこういう状況なのか、

必死に理由や成り行きを思い出そうとした。

(っちょ、ちょっと待ってっ、香っ!落ち着いて考えるのよっ!)

自分に巻き付いている人間が撩であることは、

顔を確認しなくても、直感に近いものがそれを告げていた。



シャンプーや石けんの香に混じって、

わずかに感じる嗅ぎ慣れたタバコと硝煙の匂い。

他の男ではないから安心しろと、防衛本能が教える。

しかし、まだ状況が整理できない。



(き、昨日の夜、な、な、にがあったんだっけ???)

自分の早くなる脈拍を感じつつ、懸命に記憶をたぐり寄せる。

ふと、自分の手首を見たら、うっすらと線が残り、

一部薄皮が剥けていた。

(あ、思い出した。昨日奥多摩から帰って来たんだ…。)

美樹とファルコンからの招待状が届き、

奥多摩での結婚式に参列してから、アパートに戻るまでの

濃過ぎた半日の記憶がはっきり思い出せた。



自分たちのために美樹が撃たれ、

自分は拉致され、救出され、

お互いの気持ちを確認することができた。



(…今頃、美樹さんどうしているかしら…。)

教授宅で療養しているはずの、

姉とも思える彼女の姿に思いを巡らす。

いくら謝らないでと言われても、事が事だけに、やはり胸が痛む。

(…ここで、心配しても仕方ないわね…。)



次に、自分と撩のことへ思考のベクトルが向くと、

どうしようもない恥ずかしさが急速に押し寄せて来た。

本当に信じられないことばかりが、

短い時間で積み上げられ、

撩と触れ合っていた時間のことが、

津波のように意識を覆い隠して行く。

香は、慌ててその波を払いのけ、

とにかく今の状況を分析することにした。



思い返せば、リビングから撩のベッドに運ばれてからのことが、

イマイチ記憶が明確でない。

(服を着ているということは、

特に何かされたという訳ではなさそうだけど…。)

と段々冷静になってきた。

心拍も少し落ち着いてきたようだ。

あまりにも優し過ぎる撩に戸惑い、

沢山のキスをもらい、と記憶をたぐっていく。



(ああ、思い出した。確か寝る前も…。)

ここまで状況が見えてきたところで、また血圧が高くなった。

イチゴともトマトともリンゴとも言えるような赤い顔から、

湯気がもうもうと上がっている。

やっと、自分の置かれている状況が理解できた香であるが、

そのまま動けずにいた。



(…ど、ど、どうしよう…。)



そもそも、今までのことを考えると、

撩が後ろから自分を抱きしめるような形で

一緒にベッドにいること自体が、

ありえない場面。

撩が自分を他の誰かと思い違いをしているんじゃないかと、心底疑いたくもなる。

なのに、もう少しこうしていたいと、

心のどこかで思ってしまうのだ。



(…さ、先に、起きたほうが、いいのかな…。)

夕べまわした洗濯機からも洗い物を出して干さなければならないし、

いつも通り、伝言板、朝食作り、掃除とこなすべき日課が待っている。

(…うー、動きたいけど、恥ずかし過ぎて、撩の顔まともに見れない…。)

少し身を捩ってみるが、

動こうにも、撩の腕と足が熱を持った鉄のように重たくて、身動きができない。



すると突然、枕になっていた撩の腕がぐいっと持ち上がり、

両腕の中でくるりんと体が回転させられ、

背中合わせから対面合わせになってしまった。

「!!」

「…おはよ。かおりちゃん。」

ぎゅっと両腕で抱きしめられたまま、頭の上から声が降って来た。

「よく寝れた?」

「?!?!」

香の脳内は大混乱を起す。

隣でまだ寝ていると思っていた撩がしっかり起きていて、

さらに密着度が高くなったからだ。



実は、撩は香よりもずいぶん早く目が覚めていて、

ゆっくり、じっくり寝顔を見つめていた。

さらには、

頬を撫でたり、髪を梳いたり、鼻筋をなぞったり、肩を抱いたりと

香がノンレム睡眠中であったのをいいことに、

好き放題いじって楽しんでいたのだ。

ただし、肩より上限定であったのは、

撩のギリギリの節度で抑えていてのこと。



香が寝返りを打って背中を向けられてからも、

後ろ抱きにしながら、この状況に浸っていた。

気配で、香の目が覚めたことも、混乱していることも、

後ろから全て感じ取っていた。

その様子が可愛くて、楽しくて、愛おしくて、面白くて、

しばらく様子を見ていたのだ。



「…香ちゃん?」

撩の胸に顔を埋めて、まだ赤くなっている香。

撩からは、香の鼻から上が見える。

目をきつくつむっていた香がゆっくりまぶたを上げ、

視線だけ撩のほうに向けた。

もう、それだけで萌え死にそうだ、と撩はまた何かに耐えていた。



「……ぅん、すごく、よく寝れた…。」

「そりゃよかった。」

余裕を装うように、

撩は、香の前髪をかき上げ、額にちゅっと軽く吸い付いた。

「ひゃあ!」

ボッと更に赤くなる香。

「おはようのちゅうで、そぉんなに反応してたら、

この先のあーんなことや、こーんなことしちゃったら、

どーなっちゃうのかな?カオリンはぁ?」

「へ?」



香は、今しがた撩が発した言葉をリフレインしてみる。

(あーんなこと?こーんなこと?)

「もう十分、疲れも取れただろうからぁ〜、ちょっと試してみよっかっ♡」

「え?、え、え、え、えーっ?!」

撩は、掛け布団の中で、くるんと体勢を変え、真っ赤なままの香を組み敷いた。

(お、ハンマーはでないな。)



撩の左手は、香の右手の指と絡められ、

右手は香の左側頭部に添えられ、髪の毛の間に指を通す。

殆ど男性経験がない香を相手に、自分の想いは膨張の一途。

ゆっくり進むべきか、思い切って先に行くべきか、

夜のまどろみの中、撩は香を抱き込みながら、ずっと迷っていた。

何かを間違ったら、

取り返しがつかないことになってしまう可能性もあると、

ある種の怯えや恐怖も心のどこかに引っかかっている。



それでも、目覚めの様子と、流れから、

撩は、香の閾値を慎重に見ながら、どこまで進むことが許されるか、

まずは、踏み出すことにした。

もちろん、香が嫌がったらちゃんとセーブすることも思い描きながら…。


*************************************
(22)につづく。






いや、撩ちゃん、ストップきかんだろ。
あとはカオリン次第という訳で、
第1部は次で一区切りです。


01-20 Ryo's Room

第1部 After the Okutama Lake Side


(21)Ryo’s Room **************************************************************1723文字くらい




あっという間に、撩の部屋に連れてこられた香。

気づいたら、撩のベッドの上。

(え、え、えええええぇー!!これってどういうことぉ?

つ、つ、つ、つまり、今晩、ここで一緒に寝ようってこと??)

香は、視点が定まっていない。



海原戦の前に、撩のベッドで朝を迎えたことがあった。

あの時は、ただ抱きとめられていた心地よさで、

そのまま眠ってしまい、朝には床に座っていた体が、

いつのまにかベッドの上へ移動させられていた。



だけど、今回は最初からもうベッドの上。

ドアから遠い方にそっと降ろされた。

撩は横に滑り込み、香に掛け布団をかけようとしている。

「どったの?香ちゃん。」

はっ、と現実に引き戻された。

両肘をついて、上半身を起こした状態の香は、顔は正面のままで、

視線だけちらっと撩に向けた。

目が合ったと思ったやいなや、グイッと引っ張られ、

そのまま撩の肩と自分の額がぶつかった。

「わっ!」

撩の右腕が腕枕になり、撩の左腕は香の背中にまわり、

左手の指が自分の髪の毛の中に埋もれている。

服越しの体温が気持ちいい。



「…今日は、疲れたろ。」

「え?」

低くゆっくりとした口調が頭の上から聞こえた。

香は、また驚いた。

一言も「疲れた」と口には出していなかったのに、

自分の疲労感を撩が当然のように知っている。

わずかに顔を動かすと、撩の目が数センチ先にある。

(…ち、近過ぎるっ。)

心臓の音が自分の耳に響く。

「今夜は、おやすみのちゅーだけな。」

という言葉が聞こえたかと思ったら、後ろ頭にあった撩の手が、

右の頬に降りて来て、唇にやわらかい感触が帰ってきた。

「んっ…。」

ついばむように軽く何度も何度も触れてくる。



香は目をきゅっと閉じて、

されるがままに、撩のキスを受け止めていた。

(…も、もう、…今日だけで…、一体、何回目かしら…。)



撩の唇の感触が、こんなにも、軟らかくて、気持ちよくて、

キスというものが、ここまで快感を伴うものだとは、

思ってもみなかった。

かすかに感じるタバコの風味。

少し乾き気味だった唇は、触れているうちに湿度を増す。

ずっと想い続けてきた、

しかし、叶えてはいけない初恋だとも思っていた相手から、

これまで押さえてきたものを

一気に流し込むような熱く、溶けるような口付け。



(ま、まだ、し、し、し、信じられない…。

撩にベッドでキスをしてもらっているなんて…。うそじゃないの?)



香は、そんなことを、薄れゆきそうな意識の中で考えていた。

撩も、同じ心境であった。

はずれてしまった箍は、もう戻せない。

(はぁ…、やべぇ…。止めきれないかも…。)

いつの間にか、カクテルキスになっていた。

時間を忘れそうになる。



何も塗っていないのに、艶やかで健康的な色の唇に、

整った白い歯並び、その口元が動くだけでも煽られてしまう。

甘い唾液に混じる歯磨き粉のミントの香りが、鼻の粘膜にほんのり届く。

撩は、香の舌を吸い上げたり、舌で頬の内側をなぞったりと、

思考がとろけそうになりながら、半ば夢中で堪能していたが、

自分の動きに必死についてこようとしていた香の力が、

ふっと抜けたことに気付いた。

色っぽい女の表情のまま、香は眠りに落ちてしまったのだ。



「…普通、おとぎ話では、キスで目を覚ますんだがなぁ。

俺、睡眠薬使ってないよな…。」



余程疲れていたのだろう。無理はない。

今までのことを考えると大した進歩、跳躍的前進。

香にこうして触れることができるようになっただけでも、

これまでとは大違いのこと。

ましてや、キスをしながら同じベッドで一緒に横になることなんて、

決して望んではいけない光景だった。



「……おやすみ…。」



すー、すーと寝息を立てる香の髪をゆっくりかきあげる。

香は、いつのまにか、

さっきの大人の表情から、幼い子供を思わせる顔になっている。

細い体をきゅっと抱き直して、肩口を枕代わりにさせ、

すっぽりと腕の中に収めた。

しばし、細めた目で見つめ、ふっと息を吐く。



「ゆっくり、やすめ…。」



耳元で小さく囁いた。

そして、明日の朝を、どう迎えるか。

いろんなシチュエーションを思い浮かべながら、

撩はそっと、香の頬にキスを落とした。

(……しっかし、この状態は、別の意味で拷問だな…。)


**********************************
(21)につづく。






と言う訳で今晩はオアズケ〜。

01-19 Living Room

第1部 After the Okutama Lake Side


(19)Living Room  *************************************************************** 3823文字くらい




キッチンに残った撩は、

食器や鍋を洗って一通り片付け終えた。

清潔な台所、

整理されている調味料に調理器具。

冷蔵庫も食材が無駄なく管理されている。

男勝りな元気のよさを持つ一方で、

こうして家事全般のマネージメントが

きちんとこなせる二面性につくづく感心する。



「しっかし、遅いなー。」




(40分以上入っているか…。

まっさか、湯船で溺れてんじゃないだろうな。)

途中までは、

浴室の音を耳が拾っていたので、気配は感じていたが、

やや心配になり、

脱衣所のほうに向かってみた。

すると、

カーテンの向こうからドライヤーの音が聞こえてくる。

(お、上がってたか。

さっきの疲れている様子から、

風呂で寝てんじゃないかと思ったが、

大丈夫だったようだな。)



不安がとれた撩は、そのままリビングに向かった。

電気をつけ、ソファーの長辺にどさっと座る。

天井を見上げながら、

右肘をソファーにひっかけ、

左手は髪をかきあげる。

頭の中は、

これからの展開について考えを巡らせ始めた。



今日、

長年深く閉じ込めていたお互いの想いを

ようやく通じ合わせることが出来た。

気分としては、すぐにでも香を抱きたい。




海原戦の時、またここに戻れたら、

あの時の「続き」をすることに、

邪魔をするものは殆どなかった。



なのに、

それから触れたくても触れられない状況を作ってしまったのは、

愚かなる自分自身。

高いフラストレーションを抱えていた時間の長さもハンパではない。



深く抱き込んだことによって知ってしまった、

細く柔らかくしなやかな体。

深く入り込んだことによって知ってしまった、

甘く温かい口内。

ぬくもりや感触や匂いに濃厚かつ急接近したことによって、

もっと、という願望が膨張し、

長年押さえ込んで来た箍が

ピキピキと歪(ゆが)み歪(ひず)みを作っている。



しかし、ほんの5、6時間前に、

初めてまともなキスをしたばかり。

(そのままの勢いでバージン頂きまぁ〜すっつぅーのは、

あまりにも節操がないよなぁ。)



今までと180度変わってしまった自分の言動が、

香に混乱を招く程になっているし、

急激な変化は、

お互いの心にも身にもよくないかもとも思う。



かと言って、

ゆっくり関係を進めようにも、

ぎくしゃくした雰囲気が長期間続くのも

出来れば避けたい。

もちろん香のペースに合わせることも

重きを置かなければならない。

しかし、香はこの手のことに

「超ド級」が付く照れ屋で、

恥ずかしがり屋で、奥手で、鈍感なはず。

その歩みがティーンズよりも鈍行なることは、

容易に想像できる。

香がそういう関係を受け入れられるまで、

じっくり待つというスタイルを取ったとしても、

下手したら、

身を繋ぐまでまた6年くらいかかるかと、

なまじ冗談にはならない予感も。




(やっぱ、俺がリードするしかねぇか…。)




と言っても、自分も初めて尽くし。

本気になった相手とも初めての上に、

これまで処女も避けていたのでバージンもお初、

用が済んだらさっさと部屋を出ることが当たり前だった故、

ピロートークなんざしたこともない。




(…はぁ、今までの経験が何にも役に立ちそうにねぇな…。)




そもそも、

香に自分と一線を越える覚悟ができているのか、

本人の意思確認も、もちろん重要だと念を押す。

しかし、香のこと、

自分がこんなに悶々としていることなんて、

これっぽっちも勘付いてない様子。

元をただせば、

その鈍さ疎さの原因も自分が作って育てたようなもの。




もう何年も何度も自分に繰り返し言い聞かせてきたことが、

また文字列で浮かぶ。




決して手を出してはいけない女、

女として見てはいけない女、

自分に縛り付けてはいけない女、

いつか表の世界で普通の生活を送らせるべき女、

心底大事に思う女だからこそ、

まともに触れることさえもままならなかった女。



それ故、己に暗示をかけるがごとく、

香にはひどい言葉ばかりを投げかけてしまった。

それが、

香の女性としての美しさの自覚を必要以上に

削いでしまったのは否めない。




幾度となく、風呂上がりの無防備な姿に翻弄され、

幾度となく、夏の薄着にまどわされ、

幾度となく、寝ている香を掻き抱きたいと思ったか。




そんな我慢も、

お互いの気持ちを確かめ合った今は、

過去の事しにしてもいいところまできている筈。

とは言え、

香と一線を越えるというのは、

今までの女関係の一線とはあまりにも意味が違い過ぎる。



あだやおろそかには、

とてもじゃないが越えられないライン。



一度抱いてしまったら、

それこそもう表へは返せない。

そんなことは、

とっくの昔からもう十分に承知している。




後戻りはできないのだ。

境界線を越えたら、

裏の世界という血なまぐさい闇の部分に、

深く身を堕とさせてしまう。

さらに、

今までのシティーハンターのパートーナーとしての位置づけに、

シティーハンターの女という肩書きが付加される。



自分に恨みつらみを持っている輩(やから)に、

おびき出す餌として、

より注目される素材になるのは必至。

過去に、何度も身を拘束されている事実を思うと、

今後も十分類似のことは起こりうる。



普通の女性が得られる幸せ、安全な生活、

たった一人の家族であった兄、

香から奪い取ってしまったものを思うと、

また揺らぎそうな気分にもなる。

しかし、

香は全てを承知で、

自分と一緒にいることを選び取った。




(お前は、俺よりも強いかもしれないな……。)




決意を固めることに、

臆病だったのは、むしろ自分のほうだ。

もう香を手放せなくなっていると、

随分前から自覚していたのに。

今までの関係を壊すことに怯え、逃げていた。

一歩を踏み出すことを先送りし続けていた。

守り続け愛し続けることへの自信があっても、

香の人生を変える覚悟と決心が出来ていなかったのだ。



だが、

もうこれ以上曖昧な関係を続けるには、

お互いにもう限界が来ている。

ただ、一度越えたラインは、

もう取り消しはできない。

だからこそ、

その先の未来を考えずに、行動する訳にはいかない。




「どうすっかなー…。」




食事の時の様子を思い起こすと、

思っている以上に疲労がたまっているのが

ありありと見て取れる。

早朝から、出かける前の家事をして、

式に出られるよう衣服を整え、

夕食の下ごしらえまでして、慌ただしく出発したのだ。

そして往復4時間の車移動の上、

奥多摩で花嫁も花婿も撃たれ、

自分は拉致拘束され銃口を向けられるという

生死の堺を意識した緊張感に晒(さら)され、

かつ大きな人生の転換期も重なり、

何もかも初めてという状態に大混乱し、

疲労がない訳がない。




(俺が我慢の限界だからと言って、

疲れている香に無理強いは絶対ダメだよな。

ヘタしたら、

二度と触れることが出来なくなる可能性だってある…。)




まだ、考えがまとまらないうちに、

リビングに香の気配が近づくのが分かった。

首にタオルをかけて、

手には水の入ったグラスを持ち、

ゆっくりと扉を開けて中に入ってくる

パジャマ姿の香。

長風呂だったせいか、

ほのかにピンクがかった体は、

ほかほかに温まっているようだ。



「……撩、

お風呂ありがとう。ちょうどいい温度でよかったわ。」

撩は、L字型の対面に座ろうとする香を制して、

「こっちこいよ。」

と自分のとなりのクッションをパフパフとたたいた。

一瞬、恥ずかしそうに身が固まったが、

たぶん離れて座っても、

撩が移動してくるかもと思い、

素直に、

撩の隣に少し間を開けて腰を下ろした。



嗅覚をくすぐるシャンプーと石けんの香りに、

くらっときそうになる。

香は、手にしていたグラスを口に運び、一気に飲み干した。

濡れた唇と、

上下する白い喉の動きに目を奪われる。




(…やべぇ。)




「ふー、やっと水分補給できたわ。

さっきキッチンで1杯飲んだんだけど足りなくて、

こっちに持ってきちゃった。」

長風呂で、随分喉が渇いていた模様。

香がガラステーブルにコトッとグラスを置く。

それと同時に、

撩は香の華奢な肩と細い腰にするりと手を回し、

自分の方に少し勢いをつけて引き寄せ両手で抱き込んだ。

どさっと体同士がぶつかる。

「ひゃっ!」



たったこれだけでも、

過剰に飛び上がる香の反応は当分楽しめそうだ。

「まぁだ慣れない?」

クスクス笑いながら聞いてくる。

「っと、と、と、当然でしょっ!」

風呂上がりでほてった体が、更に赤くなる。

「じゃあ、これからいーっぱい仲良くして、慣れてもらわんとなぁー。」

「え?」

(あー、いかん、いかん。ここでちゅーなんてしたら、

きっと止められなくなる。

初めてが、リビングで無理矢理なんてもっての他だ。)

ひとまず移動することにした。



「よし、寝るか!」



そう言うと、本日3回目のお姫様抱っこ。

「ええええ???」

ドアに向かい、電気を消して、リビングを出る。

展開が読めていない香は、この状況に驚き、

進行方向が客間でないことに、更に焦る。

「ちょ、ちょ、ちょっとっっ!撩!どこに行くのよ!」

腕の中でばたつく香に、当たり前のように言ってみる。

「もちろん俺の部屋。」

「は?」

香は、それがどういう意味か、

まだイメージが繋がらないらしい。




「続きは帰ってから、って言ったろ?」

「へ?続き?」

(…やっぱり通じなかったか。)





嘘をついたり、

ごまかしたりすることが至極苦手な香嬢。

この表情が、

” 続き ” のことを知っているけど

知らないふりしています、

というものではなく、

本当に分からないことを表しているのはよく分かる。



この手のことに縁遠かった香だからこそ、

致し方ない反応なのかもしれない。

あの奥多摩でのキスの先に、

どんな続きがあるのか、

香にとっては、おそらく未知数の世界。



そうこう考えているうちに、

7階の部屋に辿り着いた。

そっと戸を閉めると、

撩は、

柔らかい表情で

優しく香をベッドの右寄りに降ろした。



********************************
(20)につづく。




あとがきもどき、
というか言い訳コーナーというべきか…。
さてさて、
やっとこさベッドまでやってきました。
他のサイトさんでも、散々表現されている
撩のもやもや心理を掻き集めたような中身になっちまいましたが…。
「守り続け愛し続けることへの自信があっても」のくだり、
どこかのサイト様でお見かけしたイメージがこびりついて
離れなかったので、必死にその情報元を捜索。
カフェオレ様のお部屋で拝見したセンテンスでした。
すいません!ちょっとだけ調理して使わせて頂きました。
事後報告で申し訳ないですっ!
また、撩は処女はいやがるタイプで、
ミックは処女アサリが好みというのも、
複数の作家さんの発信に超納得です。
撩ちん、もんもんと悩んでいます。
さてカオリンどーする?


【脱字発見感謝!&若干改稿しました〜】
細く柔らかくしなやか体⇒細く柔らかくしなやかな体
「な」が抜けていましたー(><)。
過去の事していい⇒過去の事にしていい
「に」が抜けてましたー(><)。
mさん発見感謝!
2016.02.07.02:46
若干改稿
2017.02.13.21:55



01-18 Kaori's Bath Time

第1部 After the Okutama Lake Side


(18)Kaori′s Bath Time ******************************************************1198文字くらい




(なんなんだろう…、この撩の優しさに対する困惑は…。

嬉しいと思う反面、今までの態度とは違いが多過ぎて…、

体がびっくりしている感じだわ。)

そう、今までのやり取りは、まるで家政婦のような扱いが

当然のようなやりとりばかり。



『香—、コーヒーまだ?』

『おーい!香、風呂沸いてる?』

『ちょっと待ってよ!少しは自分でやんなさいよ!』



そんな会話が日常だった。

なのに今日は、

いつもとは超がつくほどの真逆である。

そのうえ、とにかくスキさえあれば、

触れてくる撩の動きにことのほか慣れない。

今までが今までだけに、

脳が、体が、現状を信じることを素直に受け入れてくれない。



疲れのせいで、うまく思考がまとまらない。

これ以上深く考えるのをやめた香は、

キッチンを出て、客間に向かい、着替えを持って、脱衣所に入った。

洗濯機の前で服を脱ぎながら、今日は早めに休みたいなと、

すでに睡魔の接近を感じている。



浴室に入るとまだ温かい湯気が残り、

湯船には、確かにいい温度のお湯がたっぷり溜めてあった。

まるで、食事の時間を計算して

湯船の温度がどれくらい下がるかを、

ちゃんと読み取っていたかのような絶妙な温度。



「あぁ、いいお湯…。」

のんびりと体を流し、

髪の毛を洗って浴槽に入ると、

その気持ちよさに

急速に眠たくなってきた。

目を閉じて、力を抜く。

ゆっくりすぎるくらいの入浴。



(ああ、気持ちいい…。だめ、このまま寝ちゃ、絶対だめ…。)



しかし、疲れと湯温の快適さに、

体がそのまま泥のように沈みそうになった。



(………。)



ばしゃん!

「ぶはっ!」



鼻まで沈んだところで、意識が引き戻された。

「いけない!もう上がらなきゃ!」

どれくらい長く浸かっていたのか、

浴室に時計がないので分からないが、

決して短くはないだろう。



若干、のぼせ気味であることを自覚した香は、

過去の経験から、

ここで急に立つときっと立ちくらみを起こすと思い、

ゆっくり立ち上がった。

形のいい美しいボディーラインから雫がいく筋も流れ落ちる。

首回りや顔に、汗もしっとりかいているので、

ぬるいお湯をシャワーから出し、軽く流した。



「ふーっ、長風呂は気をつけなきゃ。」



ほかほかになった香は、

髪の毛と体を拭いて、パジャマを纏う。

スーツはクリーニング行きのため、別にたたみ、

他は、ランドリーバスケットの中身と一緒に洗濯機の中に入れて、

洗剤と柔軟剤を入れスイッチを押した。



(干すのは明日でいいわね。)



次は洗面台の前に立ち、

ドライヤーで茶色いくせっ毛を乾かし始める。

黒いストレート・ヘアの女性がうらやましく、

自分の髪質になかなか好感がもてずにいた。



しかし、

今日何度か撩に髪の毛をくしゃりと触れてもらい、

撩の指の間に自分の髪の毛が滑る感覚を思い出して、

クスッと照れくさくも微笑む。



(これはストレート・ヘアではできないかもね。)



香は自分の指に

巻き毛をくるくるとからめてみた。


********************************
(19)につづく。





疲労気味の香ちゃん、混乱してます。
かおりんの入浴シーンは、原作内でも複数回登場しますが、
「第315話決着!!の巻」表紙のお風呂場の香や
「第326話Wもっこり大暴れ!!」表紙の上半身裸鏡バージョンは、
もう同じオンナとしても、鼻血モンでした。
北条さんのラインって女も惚れる職人技。
「第294話撩の“マブダチ”!!の巻」表紙も含め、
この辺りの画を重ねて妄想して下さいませ〜。


01-17 Kitchen-Dining Room

第1部 After the Okutama Lake Side


(17)Kitchen-Dining Room ****************************************************** 4047文字くらい




撩と離れた後の香は、

キッチンに入ると、

手首に下げていたポーチをイスの上に置いた。

さっきまで

密着して感じていた撩の温かさと匂いが遠のいたことに、

言い様のない喪失感が沸き、

思わず自分の体を自分の腕で抱きしめる。




「……食事、作らなきゃ…。」




なんとか気分を切り替えて、

手を洗い、エプロンを着けると、

冷蔵庫の中身をチェックして、

夕食の準備に取りかかった。



白米は奥多摩に出かける前に研いであったので、

炊飯器のスイッチを入れるだけ。

肉の下ごしらえも済ませてあった。

ごはん、味噌汁、鶏ももの照り焼き、ポテトサラダ、

フルーツはネーブルオレンジ。

メニューのイメージに、

こんなもんでいっかと作業に入る。



香は、食材を切りながら、

時折、

撩とのキスを思い出してリンゴ顔になりながらも、

手際よく食卓を整えていった。

9割がた用意し終えたら、ふと無意識に呟いた。

「………まだ、信じられないわ…。」




「何がぁ?」



突然、

背後直近から声をかけられた香は短い悲鳴を上げ、

ネーブルを切っていた包丁を落としそうになる。

「おっと。」

撩が香の手から離れた包丁を難なくチャッチすると

コトリとまな板の上に置いた。

「っななななにしてんのよ!びっくりするじゃないっ!」



風呂上がりの撩が、

スウェットを着て

すぐ後ろに立って香を見下ろしている。

「気配消して近付かないでよっ!」

「だってぇ〜、カオリンの反応が楽しくてぇ〜」

本当に楽しそうな様子に、

ちょっとむすっとする香。

まだ少し濡れている髪の毛が妙に色っぽく感じる反面、

子供っぽい態度に呆れながらも、

香は撩を可愛いとも思ってしまった。



「で?今日は何?」

フタをしたフライパンを指差しながら撩は聞いてきた。

「あんただったら、匂いで全部わかっちゃうでしょ。」

撩の嗅覚は犬並みと言ってもいいくらいの感度があることは、

今まで一緒に生活してきた中で充分に分かっている。

「…まぁな。で、何が信じられないの?」

さっきの香の独り言につっこみが入る。

口に出したことさえも自覚がなかった独り言。

「っえ?あ?…な、何だっけ?」

湿り気を纏う男は、焦る香を横目で見ながら、

さりげなく配膳の手伝いをする。

「信じられないって、何が?ってこと。」

何となく答えは分かっているけど、

再度聞きながら、

すでに出来上がったポテトサラダを手際よく盛りつけた。



「そーゆーことが信じられないってこと。」

と香は、撩の手元を指差した。

「へ?なんで?」

「だって…、…今まで、なかったことばかり…。」

撩は、プッと笑う。

「確かになぁ〜。」



困惑している香を横目に撩は配膳の手伝いを続ける。

「さっさと食べようぜ。腹へった。」

丁度、照り焼きも仕上がり、

香はまだ訝しがりながらも、

フライパンから肉を取り出して包丁を入れる。

メインディッシュが盛りつけられると、

いつもの食卓が整った。

香も指定席に腰を下ろす。



撩は冷蔵庫から缶ビールを2本出してタブを引く。

「慰労会だな。」

もう1本を香に渡しながら、

缶の縁に軽く自分のビールを当てた。

「お疲れさん。」

今日一日は、

本当に濃密過ぎて

3日分、4日分の神経を一気に摩耗した思いだ。





「色々あったけど…、

美樹さんと海坊主さんが結婚式を挙げた日にはかわりないわよね。

……2人に乾杯。」




香は教授宅にいる美樹と

付き添う海坊主を思い浮かべながら、

缶にゆっくり口をつけた。

「俺らにとっても記念日だな。」

「っ〜〜〜〜!」

(りょ、撩が自分からそんなこと言うなんてっ、や、や、やっぱり信じらんないっ!)

カッカッと赤くなる香は、

次の全く言葉が出てこない。

「まーたく!香ちゃん、反応しすぎ〜。ささ、食べようぜ。」



香の手作りの食事は、

飽きない美味しさで、量も質も申し分ない。

限られた予算でよくここまで工夫ができると感心することも多い。

ただ、美味いとか、よく出来てるとか、

思ったことをダイレクトに褒めたことは殆どない。

香を表に返すためにも、

敢えて肯定することを表立って言えなかったのだ。

(それに、照れくさくて、つい憎まれ口のほうばっかり言っちまうんだよなぁ。)

そんなことを思いながら、

撩は次々と食事を口に運んでいた。



一方、香は疲れ過ぎたのか、

あまり食欲が沸かないでいる。

箸の進みもいつもより遅い。

自分の分は、少なめに盛りつけたが、

それでもちょっと多く感じる。

食前のビールの炭酸も効き小さな胃に圧がかかる。

(ホント色々あり過ぎたわね…。)

香は食事をしながら今日を振りかえって、

改めて思い返した。




「ごっそさん!」

そうこうしているうちに、

撩は本当に言葉通りさっさと食べ終わってしまった。

香は、

なんとか自分の食事を終えて片付けを済ませようとしたら、

撩がコーヒーを煎れる準備をしている。

「えー!珍しい!撩がコーヒーいれてくれるの?」

「たまにはな。」

撩は、ミルを挽きながら、

香の疲れを読み取っていた。



(さぁて、この後どうすっかなー。)



お湯が沸騰して、やかんが鳴く。

慣れた手つきで、食後のコーヒーを2人分用意し、

香のカップを差し出した。

「ほれ。」

「…ありがと。」



こういうことがまだ信じられない。

撩がコーヒーを用意してくれるなんて滅多にないこと。

そっと一口すすってみる。

「おいし…。」

ちゃんと、いつも香が使う分量の砂糖も入っている。

撩が煎れてくれたというだけで、

美味しさに相乗効果が出ているかのよう。

甘さが少し疲れを軽くさせ、

苦みが鈍っていた頭と胃をややすっきりさせた。



飲み終わって、ふーっと一息をつくと、

カップをひょいと持ち上げられた。

「片付けはやっておくから、おまぁも風呂入ってこいよ。」

撩はシンクに寄り掛かったまま、

香のカップをシンクに置き、

自分のカップに口をつける。



(ああ、そうだった。)

すぐに食事の支度にとりかかったから、

着替えもしないままで、

フォーマルスーツで今にいたる。

撩の言葉を振り返って、ん?とまた驚いた。

「え?食器洗いお願いしていいの?」

「いいから、

風呂入って楽な服に着替えてこい。湯船も溜めてあっから。」




「………。」




眉間に浅いしわを寄せてしばし固まる香。

「ん?どうした?」

「おかしい、やっぱり撩あなたヘンよ…。」

「へ?」

「なんか、撩らしく、ない…。」

アパートという日常に戻ってきてからも、

続く撩の言動の違いに、

言い様のない違和感を覚える香。



「…まさか銀狐じゃないかって、疑いたくなるくらいだわ。」



香は、撩の過剰なくらいの気遣いに、

撩らしくないその態度に、

過去に一瞬だけ騙されそうになった

殺し屋のことを思い出す。



「ちょっ、ちょっと待てっ!」



慌てる種馬は、

持っていたカップを落としそうになりながら、

シンクに寄り掛かっていた体が浮いてしまう。

「なぁーんで奴の名前が出るんだよっ。」

そう言葉に出しつつ、

香が銀狐に決闘を挑んだあの埋め立て地のシーンが思い浮かぶ。

(ああー、確か奴は最初の接触で俺に化けてたな…。)





「あたしが知っている撩は、

…あたしに、そんな言葉、使ったりしなかった…。」




視線をそらしながら、小さく呟く香。

撩の態度の変化に、

香の頭の理解がついていっていない姿と

俯く香の表情に、撩はチクリときた。

(そりゃそうだろうな、

優しい言葉なんて、殆どかけてやったことがなかったもんな。)



撩から盛大な溜め息が出た。

あの湖畔でのキスの時もそうだったが、

いわば香にそんなことを言わせる程までに

追いつめてしまっていた

自身に対しての溜め息。



撩は、コーヒーカップをテーブルに置き、

香が座っているダイニングテーブルの椅子にゆっくり近付き、

足を壁側にして腰掛けた。



一瞬、身を引こうとした香の頭を

そのまま片手で素早く右肩に抱き寄せる。

「……ばぁか。」

むしろ自分に向けての言葉だ。





「……おまぁ、どこから俺を銀狐だと思ってんだよ。」




撩は自分の匂いをすりつけるかのように、

きつく香の後ろ頭を右手で抱き込んだ。

本当は両手でハグしたいところだが、

そのままの勢いで、

キッチンで致しかねない危険もあり、

動きたがっている左肘を何とかテーブルにかけた。




「……あんとき、おまぁ銀狐をすぐに見破ってたじゃねぇか。」

「ええっ!?」





香は驚いて撩を見上げた。

「ちょっ、ちょっと、どういうこと?撩、

あの埋め立て地のこと知ってるの?」

(あちゃっ、しまった。またやっちまった。

陰から香をサポートしたことは秘密だったんだ…。)



遠目からではあったが、

唇の動きで2人のやり取りは概ね把握していた。

香の下着で、

無理にもっこりしていた銀狐の姿を思い出し、

吹き出しそうになるが、

ここで、奴と大きさが違うだろうがと、

自分の自慢の相棒を見せたところで、

特大ハンマーを食らうのは想像に易い。




「……お前に何かあったら、俺が槇ちゃんに祟り殺されるからな。」




こっちを見つめている香の視線をわざと逸らすために、

香の頬を胸に押し付けるように抱き直す。






「……見守るのは当然だろ……。」

「………。」





香は、もしかしたらあの時、

銀狐は撩によって始末されたのかもしれないという、

かすかとは言えない可能性を感じていた。

撩の助けがなければ、

やっぱりダメだったのかと、

パートナーとして、

自分が情けなくなり、表情が暗くなる。





「まだ、俺がニセモノだって思う?」





撩の問いに、はっとする。

「……ごめ…なさい、何だか、少し混乱しちゃって……。」

(ああ、だめ。たぶん、疲れのせいだわ。

撩の気遣いに気持ちが追いついてこない……。

撩じゃないかも、なんて思ってしまうなんて、…どうかしてる。)



銀狐の時のことを知っていたことも、

詳しく聞き返したいのに、疲労のためか、

それも言い出すのさえも億劫になっている。

「謝るこたぁない。

とりあえず、風呂入ってこい。

後のことは心配すんな。」

香の背中をぽんぽんと優しくたたいて、

撩は腕をほどき立ち上がった。




撩が離れて、また淋しさが燻(くすぶ)る。

「…ありがと。そう、するわ。」

相方の言う通り、

早く汚れを落として普段着に着替えたかった香は

ちょっと重たげに立ち上がる。



撩は、

ふっと微笑んで香のくせ毛をくしゃっと掻き上げた。

「まぁ、ゆっくり温まってこいや。」

「…うん。」

ちょっとバツが悪そうな顔をして、

香はポーチを持ち、キッチンを後にした。



***************************
(18)につづく。







奥多摩から帰ってきてから初めての2人の食卓です。
当サイトでは食事シーンがけっこう出てくる予定ですが、
原作も、2人が何かを食べている場面が多く描かれており、
キャラが生きていることを感じさせる
重要なコマとして意識しています。
しかし、基本ワタクシ料理、というか家事が苦手なので、
おかしな表現が混じるかもしれませんが、
気付かなかったことにして下さいませ〜。
さて、お疲れの香ちゃん、
悩み迷いつつも早くもっこりタイムにもって行きたい撩ちん、
この後どうする?

【今更修正】
煎れる⇒いれるに訂正!
Sさんご連絡感謝!
2014.02.11.23:40

【今更修正】
インナーに着替えたかった
⇒普段着に着替えたかった
に変えてみました。
mさんの参考情報ありがとうございました!
2017.02.13.21:39

and 若干改稿



プロフィール

Author:きまりも
since 2012.03.31.

中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。

ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
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アンソロ完成!お疲れさまでした!

やっとまともに表示できたっ!2013.12.15

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