10-06 A Shopping Bag

第10部 A Holiday

奥多摩湖畔から5日目


(5)A Shopping Bag  **********************************************************3051文字くらい



二人で歩いて新宿駅東口に向かう。

あれから車での移動が多かったので、

この街を並んで歩くのは、

奥多摩から戻って初めてかもしれない。



見慣れた風景、聞き慣れた雑踏。

まわりはいつもと変わらないのに、

変わってしまった自分たちの関係が、

いやに対比して、

二人そろって周囲からの視覚聴覚情報に妙に敏感になる。



(もう、知る所には知れ渡ってるかもしれんな…。)



遠くから感じる情報屋の視線に、

撩は彼らなりの配慮を感じた。



「家で、ゆっくりしててもよかったのに…。」

隣で歩く香が正面を向いたまま目だけ撩のほうに視線を送る。

「んー?ボクちゃん、ついでにもっこりちゃん探してんのぉ。」

とぼけたふりの口調に表情。



香は、なんだか久しぶりに聞いたセリフに、

今までだったら、このぉーとか言いながら、

ハンマーを投げていたところなのだが、

ふっと表情が緩む自分に驚いた。



しかし、撩はもっと驚いた。

(おいおい、香ちゃーん、ここはハンマーだろ?なーんで笑ってんのぉ?)

ハンマーを受ける体勢を準備していた撩は拍子抜けしてしまった。

頬をポリポリかいて、

頭にクエスチョンマークを浮かべたまま、

ひとまず駅構内に一緒に入って行く。




「……今日も、なし、ね。」

「だな。」

伝言板の隅から隅まで確認したが、依頼はなし。

半分安心、半分残念。

(まぁ、今のタイミングでの依頼はないほうが助かるけどね。)

教授のところへ通っている間は、そっちに集中したいので、

とりあえずほっとする。



「あたし、これから買い物するけど、撩どうする?」

「あー?明日も買い出しあるんだろ?」

教授の所に行く前の買い物で自分たち用の食料も一緒に購入するのは、

これまでの流れから読める。

「うん、今日は夜の分だけ。」

「んー、まぁ、ついてくよ。」

「いいよ、別に。荷物少ないし。」

「だから、好きにさせてもらうっつーとるだろうが。ほれ、いくぞ!」

結局、いつも買い出しに行くお店に2人で向かった。



(うーん、やっぱり普段は、

ここで、『ボクちゃんナンパに行ってきまーす♪』じゃないの?

ほら、かわいい子、さっきから何人もすれ違っているのに、

見向きもしないなんて、撩のキャラじゃないわ…。)

先に歩き始める相方の背中を追いかけながら、

香は眉を浅くハの字にした。





店内に入り主菜を選べる場所に向かう。

結構賑わっている。

「何が食べたい?」

精肉コーナーのあたりを歩きながら、香が聞いてくる。

(お前の作るもんは何でも旨いって、

……言えねぇよなぁ。

そんなん口に出せる柄じゃねぇし。)

「食えりゃいい。」

つい、いつものセリフが出る。

「そーよーねー、あんたって、具体的に何が食べたいって、

今まで言った試しがないもんねー。」

食べ残したことがほぼゼロであることも思い出し、

先日の教授や美樹の会話が脳裏をよぎる。



「まぁいいわ、えーと今日の特売品は…と。」

香は、食材捜索モードに切り替えた。

ひき肉に、大根、豆腐などをカゴに入れて行き、

必要最低限を買い込みレジに並ぶ。



(お、今日はハンバーグかぁ?)

撩はカゴの中の面子を見つつ、

周囲に注意を払い、異変がないか、

はたまた会いたくない知り合いはいないか、

ざっとサーチする。



(いま、あの界隈の連中に話しかけられるのは、

色んな意味でヒジョーにマズイ気がすっから、

できるだけ避けとかねーとな。)



「撩、行こ。」

サッカー台で、買い物袋1つ分に食材を詰めた終わった香が呼び掛ける。

「貸せよ。」

手を差し伸べる撩。

「いいよ。なんかねぇー、

そーゆーところが撩らしくなくって、混乱するのよ。」

「ああ?」

撩は、ぽかんと口をあける。

香は、撩のいる反対側に買い物袋を持ち直し、

歩みを進めながら思う所を言ってみた。



「だってさ…、これまでは、

あたしが買い物付き合ってって言っても、すごーく嫌がってたし。」

店外へ出て、人ごみの中を歩きながら、これまでを回想する。

「買い物帰りに、あんたとばったり会って、荷物ぐらい持てって言っても、

ナンパで忙しいって、いなくなっちゃうし。」



あいてる手で髪をかきあげる香。

「いっつもそれが当たり前だったからさ…、

やっぱりこの状況って、なんか撩らしくないのよねぇ〜。」

「……ふ〜ん。」

撩は、手首を後ろ頭に組んで、上向き加減ではぁと溜め息を履く。



あれから、まだ5日。

変化に慣れていないのは分かる。

まだ混乱から抜けきれず、逆に甘えてこない香に

撩は少々カマをかけて、

香の潜在意識を引き出してみることにした。



「……じゃあ、さ、おまぁ、

俺がこのままナンパに行っちまってもいいの?」

「え?」

香は、驚いて撩のほうを見た。

この流れで出てくる撩のセリフに心構えが出来ていなかった。

「ぁ…ぅ。」

思わず立ち止まりそうになったが、

目をそらし、ペースを変えず前進する。

少し悩んで、香は口を開いた。



「……あ、あたしには、…依頼人以外で、

…その、ちょっかいを出している撩に、口を出す権利は…。」

「はぁああ?!ちょ、ちょっと待ったっ!」



撩は後ろ手に組んでいた手がほどけてしまい、

思わず足を止めた。

「お前、何言ってるか分かってんのか?」

撩の意外な反応に香も目を見開く。



「……だって、あんたが言ってたんじゃない…。

自由恋愛に、…口出すなって…。」

香は、ソニアが来た時に撩に屋上で言われたセリフを

小声で繰り返した。

「あ…。」

撩も思い出す。

「か、香、それはだな…。」

歩みを止めないまま、

香は、撩が説明しようとするよりも先にゆっくり語り出す。



「……撩は、もう百戦錬磨でさ、

たぶん、何百人単位で付き合ってきた人がいる訳でしょ…。

……あたしなんか、…そのうちの1人で、

仕事のパートナーだから、たまたまそばに居て、

一緒に暮らしてても、

……撩が、…そ、その、…あ、あたしだけで、…満足できる、訳ないから、

……あんたが、他のヒトのところに行くのを、

引き止められる訳、…ない、じゃない。」

後半は涙声。



(このばかっ、何思い違いしてんだよっ!)



撩はまさかの発言に、ずきりとくる。

(まずは、ソニアの時から説明せんといかんな…。)



香は、足早に抜け道の公園の敷地内に入ろうとしたが、

エントランスで撩に肩を掴まれた。

「香、ちょっと待てよっ!」

(あー、泣かせちまったか…。)



香は顔を伏せそらして、撩と目が合わないようにした。

零れそうな涙を見られたくない。

自分が思わず口走った行(くだり)を酷く後悔した。

(しまったな…、

あ、あたし、なんでこんなこと口にしちゃったんだろ…。

こんなこと撩に言わなくてもいいことなのに…。)



「あー、見ないから、少し落ち着け。」



香が何を考えて、今まで抱かれていたのか、

共に専属であり続けると思い込んでいたのは、

自分だけだったのかと、

胸にツキリと痛みが走る。



香にそんなことを言わしめてしまったのは、

結局全て己の過去の言動。

どう方向修正すべきか、撩は言葉を選び始めた。



公園の入り口、人通りの多い公衆面前。

ここで、抱き込みラブシーンを周囲に見せる訳にはいかない。



「ま、とりあえず帰ろうや。」



撩は、近場の死角になっているベンチにでも座って、

落ち着いて話しをするべきか迷ったが、

ここは、情報屋のテリトリー。

ぐずっている香と公園で長時間いると、

後で何を言われるか分かったもんじゃないと思い、

そのまま公園を一緒に突っ切ることにした。



香の肩を左手でそっと抱く。

鼻をぐすっとすする香は、まだ顔を見せようとしない。



「………香。

そのままちゃんと聞いてくれ。

……先に、ソニアが来たときのことを、説明しておく。」



昼下がりの公園を歩きながら、

撩は、ゆっくり話し始めた。


****************************************
(7)へつづく。






そうなんです。
香ちゃん「撩があたしだけで満足する訳ないじゃない」的思考が、
深いところまで巣食っています。
これもぜーぶん撩のせい。
ちなみに、スーパーマーケットは、
原作の北尾刑事のところに出て来た「スーパーいなりや」を
イメージしていますが、
お店の雰囲気は、
当方が世田谷でよく利用していた「ピーコック」を重ねています。
一応、新宿区には高田馬場店があるけど、冴羽アパートから遠いな…。
今後、何度か登場予定です〜。
サミットも考えたけど、やっぱり生き物系のネーミングが好きでからに。
(ピーコックはクジャクのことだけんっ)
今のプライベートでは、
イオンと生協と地元の直売所が殆どなんですけどね〜。

【いつの間にかサイトオープン7ヶ月目〜】
やっとこちらをいじれる時間ができました〜。
バタバタしていたら、31日。
明日から、もう11月じゃないですか…。
まだ、ホトトギス咲いています。
日々、皆様に訪問して頂いているからこそ
持続エネルギーが充電されている気分です。
本当にありがとうございます。

【コメント&メッセージ等非設定について】
先日、メールが繋がっている方から、
裏も表もどうしてコメント出来ない設定にしているのですかという
ご質問を受けました。
実は、我が家は、ある事情で
日常的に不特定多数の方から
自宅訪問や固定電話、携帯電話(仕事上表ブログで公開しちゃってるし)、
メール等での問い合わせがかなり多く、
ネット上の対応まで手が回らないと判断し、
裏も表も今のような形をとらせて頂いております。
本来なら自然科学系の公共施設が担う役割を
個人のウチがなぜか受けている状態故、
プライベートにも無視できない影響が出ているところなので、
現在この状況をなんとかするために、
役場の関係機関と相談中です。
いい流れができましたら、
今後こちらに訪ねて下さる皆様と
交流がしやすくなるなるよう形を変えて行ければと思います。
こんな自己満足サイトですが、
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げま〜す。
(現在、完全シャットアウトではなく、
一部の記事にコメント欄を開けておりますので、
通報、ご指摘等ございましたらご利用頂ければと思います。)

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10-05 Overprotection

第10部 A Holiday

奥多摩湖畔から5日目


(5)Overprotection  ***********************************************************1681文字くらい



リビングで新聞を読む撩。

ソファーに腰を降ろして長い足を組み、両手で新聞の端を持つ。

速読で必要情報をインプット。

まだ埠頭のニュースは載っていない。

テレビでは朝の全国ニュースあたりで、

原因不明の爆発事故があったとかで報道済みのはず。



「撩、コーヒーはいったよ。」

香がトレーを持って入ってきた。

「あぁ、すまん。」



撩は、自分が香のために煎れてやるべきだったかと、

いつも通りに、コーヒーを出してくれた香に、

先を越された気分になった。

一緒に飲むのかと思いきや、テーブルの上にはカップが一つしかない。

香は、座らずにそのまま、

えーと次は、とか言いながらパタパタとリビングを出て行った。



(あーあ、あいつは、まぁーたいつも通りバタバタ過ごすつもりだな。)



読み終わった新聞をガラステーブルの上に投げ置き、

コーヒーをくっと飲む。

いつもの旨味に心地良い安心感を覚える。



カップを持って、立ち上がった撩。

廊下を出ると、洗い終わった薄手の掛け布団を抱える香と出くわす。

「おいおい、休んでろって言っただろ?」

ベランダに干しに行くであろう腕に抱えているものを受け取ろうとする。

「ああっ!カップの滴が垂れるじゃない!」

「っと。」

そう言われて、慌てて右手を確認する。

(忘れていた。コーヒーカップを持ったままだった。)



その隙に、香は撩の脇をするりと抜け、

ちょっと赤らめた顔で振り返りながら言った。

「大丈夫、休む必要はないわ。撩こそ、いつもはナンパに行く時間でしょ。」

(はぁ、お前、そこでそのセリフかよ…。)

廊下に残されて溜め息をつく。

とりあえず、カップをシンクに置きに行った。



香は、ベダンダに出ると、ばさりと掛け布団を広げ、形を整えた。

(これは薄手だから夕方回収すれば乾くわよね。あれからずっとお天気いいし。)

窓を開けたまま、レースのカーテンを引き、空気の入れ替えをする。

ちらっと時計を見て、次の行動に移ろうと、客間兼自室に向かう。



(撩が、また過保護モードになっている。

初めての時の後と同じように、

必要以上にあたしに気遣っている。

あたしのことは、気にしなくていいから、

いつも通りの撩でいて欲しいのに…。

正直まだ、全然慣れていない。

体のこともそうだけど、心の方が当分かかりそう…。)



ドレッサーの上に、

持ち物を揃えながらこの数日を振り返る。



(あいつが、あたしに表立って優しさや、

気遣いを行動に移してくることが、

まだ、どこかで、

あいつがあたしにそんなことを言ったり、したりするわけがないと、

なんだか拒絶反応みたいなのをおこしているみたい。

完全に諦めていたことなのに、

いざ叶えられると、

これまでのキャップが大き過ぎて

気分が全然追いつかない…。)



そんなことを考えながら、香はショルダーバッグを持ち、

上着を羽織って出かける準備をした。

廊下に出ると、キッチンから顔を出す撩。



「あ、撩。あたし伝言板見に行って来るから。」

「だぁーかぁーらぁー、今日は休めって!冴羽商事は休業!」

「って、この間も言ってたけど、その間に、もう後がないって、

助けを求めている人がいるかもしれないのよ。」

撩は、ぐっと口をつぐむ。

言い返せない。



「あたしは、大丈夫。もし依頼がなかったら、撩も今日は好きに過ごして。

どうせ明日も教授のところに行くんだし。

今日片付けることは、ちゃっちゃとしちゃうから。」

そう言って吹き抜けのフロアに出た香を、

撩はむすっとした顔で追い越した。

「じゃあ、好きにさせてもらう。

すぐに着替えてくっから玄関で待ってろ。」

「へ?」



撩は、玄関へつながる階段を降りようとした香を視界の端にとらえながら、

大股で7階へ昇り、自室であっという間に着替えて、

玄関に降りた。



「は、早っ!って、い、一緒に行くの?」

目を見開く香。

いつものスタイルの撩、ちゃんとパイソンも携帯している。

「じゃ、行くか。」

呆然としている香の肩をポンとたたき、さっさと靴を履く撩。

「おい、なぁーに突っ立ってんだよ。」

「……だから、そーゆーことが信じられないっていうのっ。」

香は目を伏せこめかみを押さえた。


***************************************
(6)へつづく。






まだケジメつけてから5日ですからのう。
つーか、たぶんこの美樹復活の3週間が過ぎても、
カオリンの嬉し恥ずかし混乱モードは、
トーブン続くでしょう〜。

10-04 Handmade Pizza (side Kaori)

第10部 A Holiday

奥多摩湖畔から5日目


(4)Handmade Pizza (side Kaori) ********************************************* 2799文字くらい



あーん、歩きにくい…。



とりあえずトイレ。

キッチンで水分補給。



リビングに入って窓を開け、

いやに明るい外に時間を確認するため、

電話の横の時計を見る。

「えええーーーっっ!!!こんな時間なのぉ!!」

思わず大きな声が出た。

あと十数分で正午。



「はぁ〜、

 やっぱり起きれないじゃなーいっ。

 きょ、今日が何もなくてほんと良かったわ…。」



早足で玄関に向かい

新聞を取りに行く。

急いで食事作らなきゃ。

その前にシャワーを浴びなきゃね。

キッチンのテーブルに新聞を置いて、

自分の部屋に行って着替えを選ぶ。



脱衣所に行くと、洗濯機の中で、

夕べ自分たちの体の下に敷いていた

薄手の掛け布団が既に洗い終わっている。




「……こ、これ、撩が?……うそ。」




こんなことを進んでするようなヤツではなかったはず。

あたしは、驚きながらパジャマを脱ぐ。




「あ、あれ?」




汗をたくさんかいて、

色んな物でべたついていたはずの体が、

全然汚れていない。

え?え?え?

も、もしかして、撩が、ふ、ふ、ふいて…くれた?

そういえばと、

チェストの上に置いてあったタオルと洗面器を思い出す。

かぁーとまた赤くなってきた。




と、と、とりあえず、シャワー浴びなきゃっ。

真っ赤に火照ったまま、浴室に入った。

ふと、鏡を見る。




「えええーっ!?なによ!これっ!」





増えたキスマークに驚く。

まるで何かの病気みたいじゃない!!

赤に、紫に、藍にとグラデーションの幅がある。

思い出して、下腹部がじわりと熱くなってきた。




「っば、ばか!な、なに反応してんのよっ!」



一応、全部服で隠れるところではあるけど、

これじゃ温泉とかにはいけないじゃない!

って、そんな予定もないか…。

さっさと洗って、

食事作って、掃除に、洗濯に、伝言板に、

明日の準備に色々することがあるから、

午前中のロスを取り戻さなきゃ。



大急ぎで浴室を出て、体を拭き、いつもの服に着替える。

今日も、カジュアルなズボンにシャツ。

脱衣所を出ようとして、

棚の隅に置いてあるペンライトのような物が目に入った。




「何かしらこれ?望遠鏡?まぁ、後で撩に聞いてみれば分かるか。」




なんとなく

湿度の高い所には置いたままにしてはいけない気がして、

それを拾い上げ、自室に戻り、

髪の毛をドライヤーで乾かし始めた。

なんとか身支度を整え、軽く乳液や保湿液を施した。

ほぼノーメイク。




「さ、早く動かなきゃ。」




大急ぎでキッチンで食事の支度にとりかかる。

でも、困ったわ。

これじゃ、また素早い動きが出来ない。

ううん、ちょっと頑張れば対応はできるだろうけど、

この腰回りの動きにくさ、

というか内部筋肉痛みたいな感覚って、

どういうことよぉ?

いざっていうときに、

こんなんじゃ、また撩に迷惑をかけてしまう…。

そんなことを考えながらも、

仕度の手は休めない。



今日も、

朝食と昼食の兼用になってしまうけど、

しかたないよね。

手作りピザをメインにサラダとフルーツをたっぷり用意する。

自分で作った大きめのピザ生地は片面だけ焼いて冷凍してあるから、

トマトソース塗り広げ、

ピザ用のゴーダチーズを散らして、

適当に具材を乗せてオーブンで焼くだけ。

仕上がったら、

イタリアンパセリをちぎって刻んでたっぷりかける。



2枚目を焼き終え、撩を呼びに行こうか迷う。

出来立てのほうがチーズも柔らかく伸びて美味しいので

すぐに食べて欲しいところ。

しかし、

そのまま寝かせておいたほうがいいか、

戸に背を向けて配膳しながら、うーんと悩んでいたら、

突然後ろから太い腕に抱きしめられた。



「うわあっ!」

「おっはよっ、香ちゃんっ。」

ほんっとに、この男は心臓に悪い!

「さっきのお返しぃ〜。」

伸びてきた右手で顎を掬われ、肩越しに鼻先をぱくっと吸い付かれる。

「うひゃあっ!」

ちゅっぽんと離れる撩。




「あ、あ、あ、あ、んたっ!ひ、ひ、昼間っからっっ!」

慌てふためきながら、紅葉シーズンの色になるあたし。

「あんれぇ?カオリンもさっき同じことしたじゃなぁーい。」

ぼぼぼっと沸騰。




「ぼくちゃん、朝昼晩関係ないもんねー。いつでも大歓迎♡」

「あ、あんたっ、まままままたタヌキ寝入りしてっ!」

いやーん、やっぱり、起きてたんだっ!

自分の行動が恥ずかしくなる。



首にタオルをかけ、

かなりご機嫌モードでキッチンに登場した撩は、

テーブルの上の料理を見て、顔がぱっと明るくなる。

「あー腹減った!おっ!うっまそー!いっただっきまーす!」

まだ、呆然としているあたしをそのままに、

チーズを糸状に引きながら

ピースをがつがつ食べる撩。

はっと、思い起こして、立ったまま話しかける。




「あ、あ、あの、ね。りょ…、いろいろありがと…ね。」

「んあ?」

ピザとサラダをたっぷり口に頬張ったまま、

視線を上げる撩。

なんだか可愛い。



「なぁーにをかなっ?」

わざと意地悪っぽく聞き返して来るのに、

速答できないあたし。

「っ〜〜〜。」

ニヤニヤしている撩をじと目で見ながらなんとか言ってみる。

「その、せせせん、たく、とか…、あ、あの、その…。」

だめ、言えない。

着替えさせてくれてありがとうって、

恥ずかし過ぎて言えない。




赤く硬直しているあたしをくすくす笑いながら撩は、

次のピザのピースをパクッと食べた。

「撩ちゃんのアフターケアは高いぞぉ。」

「へ?」

撩がくすりと笑う。

「後でしっかり報酬もらうから気にすんなっ。

ほれ、お前もまだ食べてねぇーんだろ。早く食おうぜ。」

え?報酬?アフター…?え?どういうこと?

撩の言わんとしていることが、

イマイチよく分からず、きょとんとしていたのに、

かまわず、撩はあたしに食事を促した。

「あ、あ、うん。い、いただき、…ます。」



3枚目のピザをオーブンレンジに入れてから席についた。

大急ぎで作ったわりには、なんとかなったわ。

あとは、ヨーグルトとコーヒーが加われば、

とりあえず、食事はオッケーね。

次は…。

食べながらそんなことを考えていたら、

もぐもぐしている撩が声をかけた。




「おまぁ、今日一日休んでろ。」

「はぁ?なんで?」

やることは沢山ある。休む気はさらさらない。




「……夕べ、頑張り過ぎただろ?」

記憶がフラッシュバックして、また赤面。

「う、ううんっ!

だ、だ、だい、大丈夫だからっ!!

や、休まなくても全然平気っ!」

背筋がピンと伸びてしまった。

「ほぉー。いいのかなぁ、そーんなこと言っちまって。」

唇の端だけくっとあげて、ちろっとあたしを見る。

「え?」

なんで?なんかまずいこと言ったかしら?

「とにかく、今日はあんまり動くな。

あーくったくった。ごっそさん!」

撩は、テーブルの上にあった新聞を持ち、

爪楊枝をくわえてキッチンを出て行った。



「て、言われてもやることは沢山あるのよ。わかってんの?」

あたしも、自分の食事をさっさと食べて、

食器をシンクに運んだ。

「あ、あっちにコーヒー持っていったほうがいいかしら。」

食後の1杯がないまま、撩は先に席に立ったので、

ポットのお湯をヤカンに移しガスをつけ、

その間に食器も洗い、

ミルを挽いていつものコーヒーを準備した。



*****************************************************
(5)につづく。






今の町に住み始めた時、驚いたことの一つに、
ピザ屋がなくて
隣の市にあるピザの宅配が対象外の地域であったこと。
(いや色んな店がないけど、隣の市で殆どカバーできるけど)
折しも、丁度「発掘あるある」と「ためしてガッテン」で
手作りピザの作り方を紹介していたので、
我が家ではピザは自家製が定番に。
という訳で、
香ちゃんにもこのスキルを持ってもらうことに〜。
意外と簡単に生地ができるので、
料理が超超苦手なワタクシもすんなり日常にとりこめました。
2日連続朝飯抜きの2人、しっかり食っとけ〜。

【誤植発見感謝!】
グラディエーション⇒グラデーションに修正しました!
全然意味違うじゃん!
他でも同じコトやっとるし!
mさん、ご連絡ありがとうございました!
2016.02.07.10:46.

ようやくゴーダチーズも直しました〜(> <)。
(コダーチーズと打っておった…)
mさん重ねて感謝!
2017.02.13.21:25


10-03 A Brown Hair (side Ryo)

第10部 A Holiday

奥多摩湖畔から5日目


(3)A Brown Hair (side Ryo)*******************************************************1150文字くらい



「……鼻、かよ。」

右の親指で、自分の鼻先をつと撫でた。



「まーたく…、捕まえそこなっちまったじゃねぇーか…。」

ふっと顔が緩む。

「たまには、『される』っつーのも悪かぁーないな…。」

本当は、スキをわざと作っておいて、

マウス・ツゥー・マウスを期待していたが、

香からの初めてのキスが鼻だとはなぁ。

素直に嬉しがっている自分が可笑しくて仕様がない。



一応歩けるようだな。

そういえば、あいつ時間を見ていかなかったな…。

もし、今の時間が何時なのかこの場で知っていたら、

また大騒ぎしていただろう。



今日は、休ませねば。

奥多摩から帰ってきてから、教授宅へ通い詰めで、

家のことも同時並行、

しかも俺らの仕事で、余計な神経を使っていたはずだから、

本人が気付かないところで、疲労がたまっているはずだ。



それを分かっていて、2発しちゃったもんなぁ。

俺って、何やってんだか…。

香が良すぎるんだよっ。

い、いやいや、これじゃ責任転嫁だ。

まぁ、今日は休業だ!

どうせ、また明日も教授んとこ行くし、

訓練も始めなきゃならんし、

とにかく今はあいつの疲労を増やしたくない……んだが、

夕べは、俺もネジがすっ飛んじまった。

まったく、中坊じゃあるまいし…。

はぁ〜。



お、この匂いは、チーズとトマトソースか。

あー、腹減ったっ。



仰向けのままベッドの上で伸びをする。

本来だったら、俺がメシを作るべきところなんだろうが、

お前の目覚めまで一緒にいたくて、

そのままベッドにいたら、動き損なっちまった。



片肘で頭を支えて、

ふと香が横になっていたところを見る。

枕に、茶色い短いクセっ毛が1本残っていた。

香の体の一部だったもの。

そっと左手でつまんで窓の光にかざす。

薄い赤茶色がゴールドに光った。



「……香。」



お前を女として抱いてしまい、表の世界に返せなくなった罪は、

どんなに詫びても足りやしないだろう。

今まで苦しめてきた長さも、言葉だけの謝罪では全く償えない。

ただ、お前が30になろうと、50になろうと、

しわくちゃのばぁちゃんになろうと、

共に生きていくと

心を決めた。



この髪が白くなっても、傍にいるのは自分でありたい。



くるくると指で髪をまわしながら、

珍しく感傷的になる。

彼女の細胞をゴミ箱に自分から捨てるのはやや抵抗があったので、

暫し迷って、よいしょとベッドボードに手をつき、窓を開け、

ふっと、一息当てて街吹く風に乗せた。



香とこうなる前にこんなことをしちまったら、

きっと飛んで行く髪が、

香が巣立ってしまうことと重ねてしまい、

余計にネガティブな思いになっていたかもしれないが、

今は違う。



共に生きる未来を風に托してってところか。



「俺って詩人てかぁ。」




俺は、窓は開けたままにして、

ゆっくりとベッドから降り、

香の気配がするキッチンへと向かった。


****************************************
(4)へつづく。





日々、アパートの掃除や管理をしているカオリン、
たぶん撩の髪の毛を折々に目にする機会があったと思いますが、
原作内では、どんな思いでそれを見ていたのか、
どのシチュエーションでも何だか切なくなります。
うーん、まだ香ちゃんバージョンは書けそうにないわぁ〜。
という訳で、先に撩ちんVer.を出してみました。

【事前お詫び】
月末、慌ただしくなりそうで、
表ブログの更新で一杯一杯になる予感。
こちらの更新は、いつも通り1919ですが、
もくじ及びつづきの反映が先送りになるかもしれません。
バタバタに区切りがつけられましたら、
すぐにリンク作業をしたいと思います。

10-02 Kiss From Kaori (side Kaori)

第10部 A Holiday

奥多摩湖畔から5日目


(2)A Kiss From Kaori (side Kaori) ************************************************1882文字くらい



「……ん。」



腰が重たい。

右肩に温かい感触がある。

たぶん撩の右手で包まれ抱かれている。

そっと目を開く。

仰向けに寝て、静かに目を閉じている撩が視界に入ってきて、

どきりとする。

あたしは撩の右肩口を枕にして、密着している。



あれれ?何で服着てるの?撩も?

まっ、まさか、あ、あれって夢だったの?

ううん、そんなはずはないと思うんだけど…。

ど、どういうこと???



目だけ動かして、まわりに注意を払うと、

チェストの上に、夕べはなかったタオルと洗面器に、

変えられた新しい毛布が視界に入る。



と、と、ということは、

撩がこのパジャマを着せてくれたってこと??

パパパパパ、パンツもぉ??



かぁーと体温が上がる。

は、恥ずかしいぃ。

よ、要介護じゃないんだからっ、

そんなことを、りょ、撩にさせるなんてっ。

も、もう、この数日は恥ずかしいことばかりで、

心臓病になりそうだわ…。

夕べのことを思い返すと、今の静かな時間が嘘のよう。

外から、街の雑踏だけが聞こえる。



ひ、一晩で2回っていうか、

撩がいつも依頼人や冴子さんに言っていた、

2発とかなんとかいうのを実体験してしまった、の、よね…。



た、たぶん撩の体力からすると、

2回じゃきっと足りなかったかもしれないけど、

あたしの方が先にギブアップして、

最後まで意識を保てなかった…。



……ごめんね。

ちゃんとついていけなくて…。



撩と一線を越えてから、…3回目。

今回は、繫がっている時間がとても長くて、

今もあの時の息使いが聞こえてきそうなくらい、

ぼやけた記憶がおぼろげに蘇ってくる。



あああ〜、また顔が熱くなってきた…。

今日が何も予定のない日で助かったわ…。

…ちょっと、動くのが辛いなぁ。

もう少し一緒に寝てようかな…。

…でも、喉が渇いた。

トイレにも行きたい。

でも離れたくないな…。

撩の横顔を薄く開いた目でこっそり見つめながら、

これからどう動くか少し悩んでみた。




生きて帰ってきてくれた。



撩は、お互いが生きている確認作業だ、と言っていた。

これまでの経験を思い返すと、

危険な仕事をこなした後に、

高ぶってくる感情はあたしにも確かにある。

それを種族維持本能と、撩はあの病院の屋上で言っていたけど、

本能なら、誰でも構わないってことじゃない?



違うの。



撩じゃなきゃだめなの。



生きていてよかったって、こうしてまた一緒に

ここで過ごせることを、共に確認し合う相手は、

……あなたじゃなきゃ、だめなのよ…。



目をそっと閉じる。

幾千の死線を乗り越えて来た撩は、

その度に、こんな気分を味わっていたのかしら…。

その時、そばにいた人に同じように確認作業をしていたのかしら。

今のあたしが感じてきたことを、

色々な女の人に…。



あああーっ、だっ、だめっ!だめっ!

撩の過去を気にし始めたら、

それこそキリがないわっ!

そうよっ!

どんな過去があっても、一緒にいると決心したのよっ。

撩と夜を共にしてきた幾多の名前も顔も知らない人たちに、

嫉妬心を燃やして、

余計なエネルギーを使いたくはないわっ。



今、あたしは撩と一緒にいる。

それでだけで充分。

あんな夜を過ごした後の翌朝なのに、

勝手に暗い気持ちに落ち込むなんて、情けないっ。

まだ片足を突っ込んだだけのはず。

早く脱出しなきゃっ。



あたしは、そんなことを考えながら、

右手をそっと伸ばして、撩の左頬下にそろりと触れた。

少し伸びたひげの感触にドキリとする。

たぶん撩は、あたしの腕が動いた時か、

あたしが目覚めた時にはすでに起きている可能性が高い。

それを承知で、少しだけ上半身を起す。



「…りょ。」



視線が唇に止まったけど、それだけでボボッと顔が熱くなる。

少し考えてからあたしは別のものに照準を絞る。



目を閉じて、超スローモーションで、緊張しながらそこに近付く。

初めて自分から撩の鼻先に自分の唇を、

掠めるように触れさせた。



かなり遠慮気味だけど、

着替えさせてくれた感謝を込めて、

あたしを受け入れてくれたことにありがとうと伝えたくて、

これでも力一杯の勇気を振り絞ってみた。



その時、あたしを抱き込んでいた撩の右手が

下にずれ落ちながら一瞬ぴくっと小さく揺れた。



「先に、降りてるからね…。」



顔を赤らめたままで耳元に囁く。

撩の腕が緩み、あたしはゆっくりベッドを降りる。

やっぱり、腰が重い。

いつもより3割減のスピードで体を動かしながら、

床に散らばった昨日の服を集めた。

自分で脱いだパンストももれなく回収。

思い出して、また顔が熱くなっちゃう、

夕べ、撩のためにお風呂場へ持っていこうとした服は、

ちゃんと今撩が着ている。



ああ、腰やお尻のまわりの筋肉がなんだかヘン。

やっぱりアソコに何か挟まっているような気がするぅ。



そっと扉を開けて音をなるべく立てないように、

あたしは、撩の部屋を静かに後にした。


***********************
(3)へつづく。





鼻ちゅう、けっこースキなんですぅ〜。
いちゃついたあともインナー着込んでいるパターンは
原作最終回の撩が香に叩き起されるシーンに
反発しての妄想だったりして。
ちなみに、当サイトの設定では、
最終回はカオリン女の子の日だったということにしております。
ねっ、十波ちゃんっ!←名指しかよ。
(彼女のブログの2008年8月30日分参照!)

10-01 Visit Of Kasimi

第10部 A Holiday (全11回)

奥多摩湖畔から5日目


(1)Visit Of Kasumi  ***********************************************************1319文字くらい



「美樹さん!おかげんいかがですか?」

「あら、かすちゃん。」

丁度少し早めの昼食をベッドで食べていた美樹は、

明るい顔でかすみを出迎えた。

傍らには、黒い長袖Tシャツのファルコンが小さな椅子に腰掛け、

一緒に食事をとっている。



奥多摩で美樹が狙撃されてから5日目の昼。

教会で解散して以来、

かすみとこの夫婦が初めて顔を合せる。



「痛み止めのお陰で、ケガしてることを感じないくらいだわ。」

三角巾に吊られた右腕をちらりと見ながら、

美樹は微笑んだ。



「よかったです。あの時は、ホントどうなるかと思いましたけど、

美樹さんも元気そうで、安心しました。」

長いストレートヘアをさらりと揺らしながら、

かすみは飾りのない言葉を伝える。

「お店の再開はまだ先になりそうなの。」

「そうですか。」

「傷口がちゃんと治るのに、2週間くらいかかるみたいで、

その後リハビリがあるから…。」

「早くてあと17日後だな。」

ファルコンがすでに計算済みの日程を口に出した。

「かすみちゃんも、それまではのんびりしていてね。」

「はい。しっかり遊んでます。」

にこっとするかすみは、美樹の様子を確認できて心から安心した。

しばらく他愛のない話しを続けていたが、

かすみが話題を切り替えた。



「ところで、さっきかずえさんから聞いたんですけど、

昨日大変だったそうですね。」

「え?あぁ、仕事の件ね。」

「あ、いえ、香さんが倒れたって。」

「!!」

ファルコンが固まる。



「一体何があったんですか?」

どうやら、かずえの配慮で、

かすみには大井埠頭のことは伝わってないようで、

美樹も説明に困った。

「ファルコン…、あなたが説明して。」

「フ、フンッ!お、俺は、何もしていない!

た、ただ、あ、あいつらの、…その、なんだ、…だから、…その。」

茹で蛸になっている。



「海坊主さん、どうしたんですか?」

かすみが不思議そうに首をかしげたところに家主が登場した。

「ほほほ、ファルコンは、

あの二人の気分を高める手伝いをしただけじゃ。」

「教授!」

美樹とかすみの声が重なる。

「のう、ファルコン。」

戸口に立っている教授は細い目で微笑む。

「ぅ、…あ、…ま、まぁ、そういうことだっ!」

赤いままそっぽを向き、素直に認めたファルコンに美樹は驚く。



「かすみくん、かずえくんが昼食を一緒にどうかと言っておるが、

食べていかんか?」

「わぁ、ありがとうございます!」

「美樹君は、食後に薬を飲むのを忘れんように。」

教授はそう言い残して、かすみと一緒に部屋を出て行った。

「じゃあ、美樹さん、また寄りますね。」

「ありがとう、かすみちゃん。」

2人が出て行った後、美樹はふぅーと息をついた。



「……ファルコン、あなた、本当にそんなこと企んでいたの?」

「ぅ…、その…、なんだ…、

ま、まさか、香が、き、気絶するとは、お、思わなかったが…。」



小さくなる夫を見て、美樹はくすりと笑った。

「まぁ、いい仕事をしたんじゃないかしら?」

昨晩の二人の様子を思い浮かべながら、美樹は微笑んだ。

「きっと、香さん、夕べは寝かせてもらってないかもよ♡。」

ふふふと笑う妻の気配に、

ファルコンは顔をさらに真っ赤にさせて、

小さな食器を手に食事を進めた。


***************************************
(2)へつづく。





や、やっと奥多摩から5日目に入りました…。
いったい、いつキャッツオープンの3週間目に辿り着くんだ…。
今回は、全11回。
どんな1日になることやら〜。
ところで、かすみちゃんって、
ファルコンのことを海坊主さんって呼んでたっけな?
ちなみにかすみちゃん、2012年現在43歳?
1969年1月15日生まれに近い方いらっしゃいます?

09-05 After Treatment

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09-04 Secound Round

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09-03 Unite

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09-02 Confirm Existence

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09-01 Ecdysis

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08-17 Return

第8部 Oi Wharf 

奥多摩から4日目


(15)Return *********************************************************************2517文字くらい



クーパーのエンジンが切られる。

駐車場に2人が降り立つ音が響く。

日付が変わった深夜。



香は助手席から出たところで、車と撩にいきなり挟まれてしまった。

「りょっ…。」

「続きは帰ってからって言ったろ?」

ここなら教授の監視カメラもない。

車内で香に触れるのを我慢していたので、

自分たちのテリトリー内に戻ってきたとたんに、

周囲への遠慮の箍が取れてしまった。

「んんんっ…。」

クーパーを背に深く抱き込まれ、さっきよりも激しいキスが始まる。



香は突然の撩の行為に戸惑っていたが、

男の体温を感じているうちに、

2人での無事の帰宅に、込み上げて来るものを感じ、

口付けの最中に、自分から撩の背中にゆっくりと手を回してしまった。



自分の腕では届かない広い背に、少し力を込める。

撩は、香の反応にやや驚いたが、嬉しそうに表情を緩ませ、

動きを加速させた。

調子に乗った撩は、今すぐここで致すつもりはなくても、

ついつい、香のふくよかな胸に手の平がさわさわと移動してしまう。

「ぇえ?」

「撩ちゃん、お部屋までガマンできなぁ〜い♡」

驚き少し身を捩った香の視界には、自分の胸に顔を埋めるスケベ面の撩。

「ちょ、ちょっと待ったあああああっー!」

恥じらいハンマー100トンが出現。

コンクリートの床に潰されたゴキブリ一丁。

ヘッドと床の間から、手足だけがピクピク動いてる。



「ああああんた、こここ、こんなところで、な、なに考えてんのよっ!

服もぼろぼろで、汚れ放題なんだから、は、は、早くお風呂入ってきなさい!!」

「へべろ〜ん…。」

香は赤い顔のまま、平らにつぶれた撩をずるずると引っ張り上げ、6階へと昇って行った。

玄関を開け、浴室に向かい、脱衣所にぽいっと放り込まれる撩。

「き、着替え、も、持ってくるからっ。」

どもりながら、そう言い残し、

すぐに出て行こうとする香の後ろから撩の声が追いかける。

「あー、いらんいらん。どうせ脱いじゃうし。」

沸騰する香。

「だっ、だだだめ!家の中、すっぽんぽんで歩く気?

は、早くシャワー浴びちゃいなさいっ!」

湯気を出しながら、香はパタパタと廊下に出て行った。



(あ、安心したらトイレ行きたくなっちゃった。)

教授のところでは用足ししていなかったくらい緊張していた。

脱衣所を出て、客間に手提げを置くと、すぐにトイレに寄り、

撩の部屋に服取りに7階へ上がる。



ミックの話しを聞いた時、150人を2人で相手にという事態に、

もしかしたらと、ぞっとした。

中に、一人訓練を受けたヤツが混じっているという情報も、

撩たちが出発した後にキャッチしたことも聞き、

安心できる要素が削られた。



いくら、教授やミックが、心配無用の言葉を用意してくれても、

やはり、撩も生身の人間。

間違いが起こらないという保証はどこにもないのだ。

ただ、手元にある情報を抱えながら、

待つことだけしか出来ないもどかしさと不安に、

神経がピンと張りつめていた数時間。



そこに、ファルコンの悪戯が重なったのだ。

再会の喜びを膨らませるには十分過ぎた。

香は、撩のインナーを抱きしめてベッドに膝ま付き、涙を一筋流す。



「…っかった。ちゃんと戻ってきてくれて…。」



これまで幾度となく味わった、失うかもしれない恐怖。

ファルコンとの2度にわたる決闘も、

黒蜥蜴に勝負を挑まれた時も、

海原戦で撃たれた時も、

そして、自分には教えられていない裏の仕事に関わっているだろうと思われる時も、

撩の生還が100%という訳ではないことを

そのつど思い知らされ、

自分の存在をも足元から崩れ落ちて行く感覚に、

何度も押しつぶされそうになった。



いつもの生活空間に戻ってきた安堵感から

力が抜けそうになるが、

香は気を取り直して立ち上がった。

その刹那、

いつのまにか接近していた撩に、後ろからがばりと抱きしめられてしまった。



「?!?!?!」

「そんなもんより中身を抱きしめろよ。」

顎を掬われ肩越しに熱い唇が降りてくる。

「!!」



一応撩の腰にタオルは巻いてある。

首にもタオルはかけてあるが、

拭くのも煩わしいと思ったのが分かるくらい

いい加減なほど水滴が残っている。



撩の急襲にバランスを崩した香は、

そのまま撩と一緒にベッドの上に弾んでしまった。

「きゃあっ!」

持っていた着替えが床に落ち、倒れ込んだ弾みで二人の唇が離れた。

組み伏せられている自分に気付く。



「も、もう上がったの?」

「おまぁが、早くしろっていうから。」

髪はまだ薄ら濡れたまま。

「し、し、しずく垂れてるじゃないっ!」

撩はにやりとして、鼻先同士を触れさせた。

「……拭いてくれるぅ?」

「!!」



シャンプーの香りが漂う。

香はかぁーと赤くなり、硬直してしまった。

「俺はこのままでも、かまわねぇーけど、

おまぁが嫌だったら拭いてちょーだいっ。」

ちゅっと鼻先に吸い付く。

「うひゃあ!」

(こ、こ、この変わり様は、一体何なのよぉぉ。)



激変した自分たちの関係、

つい5日前までは、これまでと何ら変わらなかった距離。

それが奥多摩から戻ってから今日で4日目。

とにかく触れ合ってくる撩に、まだ自分の気持ちが追いついていない。

香は、ちょっと悔しさを込めて、むっと唇を結んだかと思いきや、

撩の首にかけていたタオルで撩の黒髪を

がしがしわしわしと激しくかき回し始めた。



「てててっ!」

事ある度に心臓が跳ね上がる驚きや照れが悔しくて、

仕返しの思いを込めて、乱暴に撩の髪の湿り気を取っていく。

「お、おい!もうちっと優しくしろよっ!」

「ちゃんと拭いてこないほうが悪いんでしょっ!」

向き合った二人の視線がからむ。

香の手がふと止まった。

茶色い瞳の表面は先ほどの涙で潤んでいる。



撩が、戻ってきた。

そう思っただけで、涙腺がまた緩んでくる。



「りょ…、お疲れ、様…。」



ちょうどタオルがカーテンの役割を担い、

次の撩の動きを隠してしまった。

撩は両肘を香の脇につき、

その小さな頭を2つの手の平で包んだ。

撩の頭にタオルを乗せたまま、香の指にくっと力が入る。

二人の接点から聞こえる、唇と舌の絡む音と呼気が、

タオル越しに撩の部屋に重なっていく。



「ん…、ふ…。」



(撩のキスってずるい…。何も考えられなくなる…。)

そんなことを思いながら、

香は愛しいパートナーの帰還に、

今のこの流れを抵抗なく受け入れはじめた。


*********************************************
第9部(1)につづく。第9部はパス付きでございます〜。







大井埠頭編、な、長かった…。
お二人とも、
いわゆる一仕事終わった後のエロい気分になっちゃうモードです。
翌日は、フリーなので心おきなくいちゃついてくれ〜。
とにかくパス付きの中身については、
過剰な期待はしないでねぇ〜(逃っ)。

【ホトトギス】
庭の株が今日の朝、咲きました〜。
2012.10.09.22:40

NO CH,NO LIFEな方に101の質問に答えてみました。

日々のご訪問、本当にありがとうございます!

みなさまのおかげで、

10月8日に累計拍手4000パチパチとなりました。

自己満足記念企画として、

懲りずにまたアンケートモノ第2弾でございます〜。

自己紹介がわりになればと…。





3日がかりで完成〜。

長いですよ〜。

お時間にゆとりのある方だけ、続きをどうぞ〜。




ちょろり。さん、プロデュース

NO CH, NO LIFE な方に 101の質問




いざ、スタートっ!


→続きを読む

08-16 Do You Remember?

第8部 Oi Wharf 

奥多摩から4日目


(16)Do You Remember ? ******************************************************1463文字くらい



「も、もう、ホント、心臓に悪いわ…。海坊主さんたら。」

香は、住宅街から幹線道路に抜ける時に、そう呟いた。



「あのタコ。なぁーに考えてんだか。」

海原戦の時に船から脱出した撩と海面で抱き合った後、

安堵の中、頭部の痛みと共に、

意識を失ってしまったことを思い出す香。



「…ぁの時と、…似てる。」



つい小声が溢れてしまった。

「あーん?」

「あ、ううん。何でもない……。」



香は、いくら教授宅通いで疲れていたとはいえ、

緊急事態でもそうでなくても、

このような事案にいちいち気を飛ばしていたら、

パートナーとしてあるまじき行動だと、

目を伏せ、膝の生地をきゅっと握った。



そんな香を撩は、ちらっと横目で見る。

「……おまぁ、まぁーた記憶がぶっ飛んでんじゃねぇだろうな?」

「は?」

香は突然の質問に、顔をあげて撩を見た。

前方を見つめたままの撩は続ける。

「前に気ぃ失った時、おまぁ、だぁーいじなコト、スコーンと忘れちまっただろ。」

「!!」

香の体がびくっとなる。

言わずもがな、それは、まさに今香が思い出していた、

あの戦いの前後のこと。



丁度信号でクーパーが止まる。

撩は、香の頭頂部を左手でくしゃりと掴み自分に向かせた。

鼻先が触れそうな距離だ。



「美樹ちゃんの結婚式の後のこと、ちゃんと覚えているよな?」



にやりとして真っすぐ香を見つめる。

香は、ボボボッと赤くなる。

撩は、ふっと笑い正面に向き直って、ハンドルに腕を戻した。

「大丈夫そうだなっ。」

香の返事を待たずに、

明るく自己解決した撩は、再びアクセルを踏んだ。



もし、本当にショックで気を失った香の記憶が欠けていたら、

今度は誤摩化す気などさらさらなかった。

今回は、そんな心配もないことに、とりあえず安心したが、

ファルコンの悪戯に、ここまで反応した、香とそしてミックや美樹にも苦笑する。

とにかく、クーパーの中ですぐに意識を取り戻してくれたが、

これがまた以前のように

3日間の昏睡とかいったら、シャレにならない。

あんな72時間は、もうごめんだ。

そんなことを考えながら、ハンドルを操る。



「撩、ここ血が出てる…。」

香は、頬の熱の余韻が残る中で、視界にTシャツに茶色いシミを見つけた。

発生源は撩の左の首の付け根。

2センチほど皮膚が裂け一部細いかさぶたになっていた。



「あー、ガラスが割れた時に破片が飛んだんだろ。気にすんな。」

「だめよ、手当しなきゃ!破片が残ってるかもしれないじゃないっ。」

「気にするなって。こんなの手当するまでもねぇって。

もう傷口乾いちゃってるしぃ。」

へろっとにやけ顔になった、撩はスピードをあげた。

「香ちゃんには、他のトコをケアしてもらうからねーん。」

「ほ、ほかのと…?」

最後まで言い切る前に、視界に入ったソレに、ボンッと沸騰した。



「ばかあああっ!運転中に、何元気になってんのよっっ!」



狭いクーパーの中で恥じらいハンマー100tが撩の頭上にヒット。

「あ、あの運転中にコレはないんでない…。」

マジックショーのように顔の位置が頭一つ分落ちた撩は、

すぐさま、ぽんと首を元に戻した。



「と、とにかくっ、

汚れが酷いからさっさと帰ってお風呂に入ってもらわないとっ。」

腕組みをして顔を真っ赤にしながら、

ソレを視界にいれないように、

きゅっと目を閉じて、怒ったふりをした。



「りょーかい。」

にやっと唇の端をあげながら、撩はハンドルを握り直す。

新宿に入った赤い車は、走り慣れた道で家路に向かった。


*********************************************
(17)につづく。






海原戦の後、3日間意識不明だった香。
その間の詳細は、原作では完全に省略されていますが、
教授宅で治療を受けながら、香の目覚めを待つ撩の心理、これまた妄想が膨らみます。
自分だったら、家族や親しい人が、3日も昏睡していたら、
もう二度と目覚めないかも、とか
あっちの世界に連れていかれるんじゃないかとか、
冷静な精神は、とてもじゃないけど保てないのではと。
香が寝ている間、撩はきっともんもんと色々考えていたことでしょう。
もしこのまま目覚めなかったらと、
船へ連れて行ったことを深く後悔し、
守れなかったこと、
槇村への詫び、伝えたい言葉を言わないままでいたことなどなどを、
かなりネガティブに自分を責めていた時間もあったかもしれません。
他に体の異状がないと診察されていたとはいえ、
少なからず香を失うかもしれない恐怖を味わっていたかもと。
目覚めたらとうするか、
もう、素直になるしかないかと、
ある程度は腹をくくっていた様子も
ファルコンやミックとのやりとりから伺えますが…。
まさに振り出しに戻るバージョンが待っていたとは、
撩もショックだったのかもね〜。
このあたりは「恋愛軌跡」の斉藤聖さんが、
TEXT14「悪い男」で、ジャストミートな原作穴埋めを書いて下さっています。
しかし、記憶が戻るまでちゃんと優しくしなかった撩にも、
やっぱり「お前が悪いっ」と言いたくなっちゃいますが、
これが原作撩のヘタレなところの象徴的な表れかもしれませんね。

【拍手御礼】
2012年10月8日に累計拍手4000パチパチになりました!
拍手ボタンをクリックして下さった
全ての皆様に御礼申し上げますっ。
明日10/9、本編のちょっと前に、
18:18で拍手企画?
ちょろり。さんプロデュースの
101クエスチョンをアップしたいと思います。
本当は、歯医者さんの続きを…と考えておりましたが、
間に合いませんでした〜。
3万HITまでには完成させたいと思います。
人様に目を通して頂くにはイタイところばかりですが、
日々のアクセス数に支えられております。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げますぅ〜(平伏っ)。
2012.10.08.21:26

08-15 Security Camera

第8部 Oi Wharf 

奥多摩から4日目


(15)Security Camera  ******************************************************* 2466文字くらい



「まったく、

何を必要以上に心配してんだか。」



抱きかかえている香の横顔を

愛おしく見つめながら呟いた撩。

廊下を歩いていたら、

ちょうど大学から戻ったかずえと鉢合わせになる。



「あ!冴羽さん、戻ったのね。よかったわ!」

「俺らが先に終わったみたいだな。」

「そのようね、

こっちもなかなか区切りが悪くて、…って、

何で香さんこんなことになってるの?」

目を閉じたお姫様抱っこの香にようやく気付いたかずえ。



「あ、いや、ちょっとな。タコが余計なことをしでかしてな。」

「えーっ!?」

「いや、何にもしちゃいないんだが、

ちょいとした誤解があってな。」

ファルコンが香に暴力でも振るったかと勘違いをさせるような言葉尻に、

撩は慌てて繕った。

「ミックが知ってるから、

詳しいことはヤツに聞いてくれ。」

「何だかよく分からないけど、ケガや病気じゃなさそうね。

あ、そうだ、

香さんの荷物が台所にあると思うから、玄関で待ってて。」

「ああ、頼む。」

(かずえちゃんも遅くまで大変なこって。)



玄関で香を抱えたまま器用に靴を履き、

香のパンプスも右手でつまみ上げる。

そこへ、かずえが香の上着とポーチを持って来た。

「たぶん、これだけだと思うわ。」

香の腹部に上着をふわりとかけ、

ポーチは撩の左指にかけた。

「香さん、お疲れ様。」

「じゃあ、明後日な。」

「ええ、…冴羽さん、ゆっくり休んでね。」

撩はかずえに軽くウインクをして、

玄関の戸を閉めた。

後ろ姿を見送ったかすえは、

腕組みをしてふぅーと一息肩を落とす。

「……休めない、かも、ね。あのお二人さんっ。」

そう言い残して、

奥の部屋に戻って行った。



撩は、

門前に停めてあるクーパーの助手席を開けると、

そっと香を座らせ、靴も履かせた。

ストッキング越しに見える形のいい爪に、

柔らかい土踏まずにと、

これまで触れることのなかった部位に

ややどきりとする。

上着をぱさりと羽織らせ、ポーチも膝に置いた。



(今、起しとくか。)



撩は、

運転席にどっさっと乗り込みドアを勢いよく閉める。

その音と震動で、

香がうーんと言いながら覚醒しそうになった。

ぺちぺちと頬を叩いて香を起す。

「香、香!おい、起きろ。」

「ん…。」

街灯の明かりだけが僅かに漏れ入る薄暗い車内で、

パチっと香の目が開いた。

目をこすりながら、

まだ状況が見えていない様子に、

撩は次の言葉を待った。



「あ、あたし一体…。」

「気付いたか。」

はっと顔を声のするほうへ向ける香。

「撩!」

仄暗いが、確かに撩がそこにいる。

右手をハンドルにかけ、

左手をポケットに入れて、自分を見ている撩。

だが、香はまだ自分がどこにいるのか、

なぜこの状態なのか理解できない。

「え?ここは?美樹さんは?」

「ここは、教授んちの前。

全て終わった。もう帰るところ。」

「…………。」



まわりの風景を視線だけ動かして、

今自分がクーパーの中にいることがやっと分かった。

そして、

ファルコンが書斎に戻った時のシーンが蘇り、

自分が気を失った時ことを思い出した。



「りょ……。」



撩をまっすぐ見つめる。

「良かった…、無事で…。」

大粒の涙がぼろぼろと両目から零れ落ちる。

「おいおい、大したことじゃないって、大袈裟だっつーの。」

撩は、右の指で香の左の目尻をそっと触れ涙を払うが

間に合わない滴が流れ伝う。



「だ、だってっ!海坊主さんがっ!」

「あー、ちゃんとヤツにはお仕置きしといてやる。

だから泣くなって。」



撩は、

その大きな温かい両手で香の頬をやんわりと挟んだ。

濃い硝煙の匂いと火薬の匂い、埃くささが近くなる。

撩の左の親指は、香の右目の涙を掬い、

右の親指の腹が、ゆっくりと香の下唇を確かめるようにスライドする。

その乾いた感触に、香はふるりと肩が揺れ、

反射的に目を閉じた。

少しかさついた唇が香のそれにそっと触れる。



「ん…。」



クーパーの中で初めて交わす口付け。

香を安心させるように、

自分も香をより感じられるように、

徐々に深くなる動きに、

わざと音を立てて口腔内を味わっていく。

お互いの唇が潤いを取り戻す。

頬に添えられた左手は後ろ髪に滑り、

右手は左耳を掻き上げ、

そのまま肩経由で腰までゆっくり下降し、

自分のほうへ引き寄せた。

何度味わっても飽きることがない唇。

いっそ、

タバコのように持ち歩ければいいのにと、

より深く口唇への刺激を求める。



ほどなくして、

遠くで飼い犬が吠える声が聞こえて、撩ははっとなった。

ここは、まだ教授宅前。



(しまったっ、

外構に監視カメラがあったんだ。

やべ。この角度はぎりぎりか?)

香とのキスに不本意ながら周辺の事情を忘れかけていた撩は、

またちゅうっと吸い上げてぽんと唇を離した。

「……りょ。」

香は、野山に実る赤い実のごとく

全身真っ赤に熟れ上がっている。

「……続きは、帰ってから、な。」

この言葉に、更に赤が重なった。



教授に見られてやしないかという焦りを微塵も見せずに、

撩は香をそっと身から離し、

シートベルトを付けさせ、

自分も装着するとおもむろにエンジンをかけた。



「まぁーったく、

タコには子猫1ダースでも送りつけてやろうかっ。」

お気軽モードの口調になった撩に、

香は赤くなりながら答えた。

「……1ダースじゃ、…た、たりないかもね。」

ふっと撩は口角を上げる。

「じゃ、帰るぞ!」

アクセルを踏み、家路へと急いだ。






。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「おおお、惜しいのうぅ。」

パソコン画面を食い入るように覗いていた教授は舌打ちをした。

ちょうど、

監視カメラの角度が微妙過ぎて、

車内の撩と香の顎から上がルーフで見えない。

「教授ぅ……、何をされているんですかぁ?」

腕組みをした仁王立ちのかずえが、

教授をじろりと見下ろす。

「ほ、か、かずえくん、おかえり。

いや、香君の様子が心配での…。」

「教授、これは『のぞき』と言うんです。

あ、ミックが客間のカメラ壊してましたから。」

「……先行き短い老人の楽しみを奪わんでも…。」

小さな声でぼそっと呟く教授。

「何かおっしゃいましたぁ??」

「ほほ、いや、独り言じゃ。」

そんなやりとりをしているうちにパソコン画面から、

クーパーの姿がなくなった。

「いつまでたっても、ベビーフェイスはベビーフェイスじゃの…。」

教授はにやつきながら、画面を切り替えた。


*********************************************
(16)につづく。






教授…、長生きしそうです。
いや、冗談抜きで、Hは寿命向上につながると
なんかの論文で出てましたよ〜♡

【誤植発見感謝!】
ちゅう寸前のシーン、
「右手は左耳の搔き揚げ」⇒「右手は左耳の搔き上げ」
に修正いたしました〜。
天ぷらじゃないんだから〜。
何を揚げるっちゅーねんっ!
mさま、ご連絡ありがとうございました!
2016.02.07.10:36

08-14 Doubt

第8部 Oi Wharf 

奥多摩から4日目


(14)Doubt  ******************************************************************3176文字くらい



教授宅の前に、ランクルが音をたて勢い良く停車した。

「さて、荷物を降ろしますかね。」

運転席から出て来た撩は、

後部座席の荷物に覆いかぶせていたカバーをめくり取る。

前日の下見の時に、現場に隠していたものと、

今回持参した諸々の銃火器の内、冴羽商事管轄の物品をセレクト。

撩は、それらをかかえて裏口に停めてあるクーパーへ向かった。

助手席からのっそり出て来たファルコンは、撩を一瞥する。

「撩、先に入ってるぞ!」

「ああ。」



ファルコンは、一応呼び鈴を押して玄関の戸を開けた。

防犯装置はこういう時は解除されている。

出迎えはなく、そのまま真っすぐ廊下を進み、教授の書斎へ向かう。

どすどすと、わざと気配を消さない歩き方で、

遠慮なく木製の扉を開けた。

「戻った。」

「ファルコン。」



すでにその接近を感じ取っていた一同は、ファルコンの姿を確認する。

煤(すす)や埃(ほこり)に若干まみれているものの、怪我はない。

美樹はほっとした表情で立ち上がり、その巨体に歩み寄った。



「……おかえりなさい。」



右腕を三角巾で吊るしたまま、そっと左頬をファルコンの腹部に寄せた。

香は、足音が一人分であったことを先に感知し、

撩の姿が見えないことに、まさかの思いが意識を覆う。



「ファルコン、冴羽さんは?」

美樹はファルコンを見上げた。

「…………。」

口をつぐんで美樹から目をそらすファルコンに、

香はすぐさま最悪のイメージが湧き出て来る。



「……海坊主さん、……嘘でしょ?」



小さな震える声が漏れる。

ミックも思わず立ち上がった。

「ま、まさか、やられたのか?」

「………。」

ファルコンは、美樹の両肩に大きな手を乗せたまま

サングラスを伏せそのまま動かない。



沈黙が流れる。



一人、教授は奥の机でにやにやしているが、

ミックも美樹も香もそれに気付かない。

すでに香の目の焦点は合っていない。

小刻みに震えながら、右手で口を押さえ、

溢れる何かを必死にこらえようとしている。

「ファルコン!一体何があったの?」

美樹がただ事でないその反応に目を見開き大きな声で聞き返す。



「何だぁ?」

撩は、クーパーを玄関先に停め直した後、

ひょこひょこと、がに股猫背で屋敷の廊下を歩きながら

書斎へ近づいていたが、

部屋の中から美樹やミックの焦りを隠していない声や気配が漏れるのを耳にする。

「おい!カオリ!しっかりしろっ!」

ミックが叫ぶ声に敏感に反応した撩は、何事だと教授の部屋へ飛び込んだ。



「さ、冴羽さん!?」

突然の撩の乱入に、美樹は混乱した。

しかし、すぐに今までのやりとりが、

連れ合いのちょっとした悪戯であったことを瞬時に理解し、

ファルコンをちらりと見て、

はぁと、大きな溜め息をついた。



香は、撩が部屋に入って来る直前に、立っていられなくなり、

書籍が積み上げてある台に手をついて、

片膝を床に付いた。

そこに先ほどのミックの叫びが重なり、撩の登場となったのだ。



「香っ、どうしたっ!」

ミックより先に駆け寄り、かがんでその体を支えた。

「…りょっ!」

焦点を失っていた目は、潤み見開き、しっかりと撩の顔にピントが合った。

この瞬間まで、もう二度と会えないかもという思考に塗られていた脳が、

突然の元気な撩の出現に、当然理解が追いつかない。

しかし、自分を支えている撩の腕を自らの手できゅっと握ると、

その服越しから体温を感じ、

今ここに撩がいることに間違いないと頭と心が確信した。

体の緊張が緩む。



「……よ、…かった。」



そう小さく一言口から零れたと思ったら、香はふっと意識を飛ばしてしまった。

「お、おい!香っ!」

「香さん!」

「カオリ!」

ミックと美樹が駆け寄る。



「ほほ、大丈夫じゃ。緊張の糸が切れたんじゃろ。」

からからと微笑みながら、奥で教授が声をかけた。

「ミック、一体どういうことだ…。」

香を抱き支えながら、一緒にかがんでいる堕天使を睨む。

「No!No!俺は何にもしてないぜっ!ファルコンがっ!」

「俺も、何も言っていない。」

さらっと答えたファルコンに、美樹がまたはぁと深く溜め息をつく。



「ファルコン、……確かにあなたは何も言わなかったけど、

悪戯にしては度が過ぎるわ。」

こめかみを押さえて首をふる美樹の姿に、

撩はこの騒ぎの主犯格がファルコンであることを悟った。

「おい、タコ。一体何をやらかしたんだ。」

香を支えたまま、眉間に皺を寄せて尋ねる。



「フ、フンッ!俺は何もやっていないっ。」

腕を組んでそっぽを向いてちょっと頬を染め、

バツの悪そうなファルコンにミックも文句を言う。

「た、確かになぁ、何にも言っていないし、何もしてないがっ、

あんな態度だと、みんな勘違いするに決まっているだろうがっ!」

「ああ?」

撩はまだ詳細が掴めない。



「全く!遺体を持って帰れないくらいの状況かと、勝手に勘ぐっちまったぜ。」

ミックも立ち上がり腕組みをして騙された怒りをあらわにする。

「そうよ、ファルコン。冴羽さんがコンテナと一緒に海に沈んだかと思ったわ。」

「だから、俺は何も言っていない。お前らが勝手に勘違いしたんだろ。」

「もう!香さんにそんな言い訳通じると思うの?」



美樹は撩に抱きかかえられている香にそっと近づいた。

「……冴羽さんの姿を見て、…気を失うくらいの想いを、かかえていたのよ。」

かかんで額にかかった前髪を左手でそっとかき分ける美樹。

目を閉じている香の美しい顔を見ながら、くすりと美樹と撩が口角を上げた。

「なーるほどね、だいたい分かったよ。

タコのイタズラにしちゃ、ちょっとやり過ぎだな。」



「ほっ、ほっ、ほっ、これまでの疲れもあったかも知れんの。」

教授もおもむろに近寄り、香を覗き込んだ。

「撩、ファルコン、例の情報はもう流しておる。

明日の夕刊あたりで表に出るかもしれんのう。」

「ええ、やつらの一人が無線機でそんなようなことを口走っていたんで、

出たタイミングも上々です。」

「ああ、お陰で船内にいた連中も戦意喪失状態だったな。」

ファルコンが得意そうに付け加えた。

「なんで、ファルコンが分かるんだよっ!」

まだ苛立っているミックがつっこんだ。

「フンッ!貨物船の看板にいた奴らの気配が変わったのが分かったからだ!」

ファルコンはそう言うと、腕組みのまま、そっぽを向いた。



明日には、南ガルシア共和国の悪事情報が、洗いざらい報道される。

これで政府そのものが崩壊する外部からの情報クーデターだ。

密輸されそうになった品も、よそが狙うこともなく、

偽札も出回る心配が消える。



「あいつらには、一度ミニをぶっ壊されたんで、これですっとしましたよ。教授。」

「ほ、それにしては、派手な仕返しじゃの。」

教授がくすりと笑った。

「おい、海ちゃん、依頼人には2人分、いや4人分の金払えって言っときな。」

「……善処する。」

本気でない言葉尻と分かってはいるが、一応真面目に返答しておくことにする。



「しかしのう、二人とも汚れ放題じゃのう。

撩も、ファルコンも、ひとっ風呂浴びてこんか?」

「いや、俺はこのまま帰ります。」

香をお姫様だっこで抱きかかえ立ち上がった撩に、

教授は細く微笑んだ。

「ま、そのほうがよかろう。」

「美樹ちゃん、また明後日来るからねん。」

「冴羽さん、ごめんなさいね。ファルコンのせいで、香さんこんなことになってしまって。」

「なーに、すぐに目ぇ覚ますさ。」

「冴羽さんも、今日はゆっくり休んで、…て、そーゆー訳には、いかない、かしら?」

意味深な流し目で美樹は撩に視線を送った。

後ろでファルコンがぼっと赤くなる。



「ふっ、美樹ちゃんも怪我のこと忘れんなよ。」

「あーら、ご心配なくぅー!」

「じゃ、教授、明後日の午後また寄ります。」

「ああ、見送らんでいいかの。」

「結構ですよ。」

そのやり取りをミックは面白くなさそうに見ていた。

「おい、俺には何にも言わないのか?」

「へっ、お前にかけてやる言葉なんてねーよ。」

撩はそのまま教授の部屋を出て、玄関先へ向かった。



*******************************************
(15)へつづく。





お姫様抱っこ、もう何回目だろう〜。
いやね、かおりんかなり疲れていたと思いますよ〜。
心身共にハードな4日間でしたからね〜。
帰宅後、もう一踏ん張りぃ〜♡
ベッドまであと2、3話お付き合い下さいませ〜。

08-13 Attack (side Ryo)

第8部 Oi Wharf 

奥多摩から4日目


(13)Attack (side Ryo) *********************************************************4251文字くらい




無言で俺と海坊主は二手に分かれた。

無機質な埠頭に並ぶ倉庫街の闇に紛れる。

広い敷地内に点在している見張り役を担う雑魚多数。

屋外屋内両方に散らばる。

殆どが気配を消すことすらできないチンピラばかり。



それでも、周辺に異常に気付かせるのを

できるだけ先送りにしたい故、

処理するのにいちいち工夫をしなければならない。



声を上げさせない。

銃器を使わせない。

音を出さない。

倒した後、動けないように拘束しなければならない。

もちろん猿ぐつわ付きで。

死角になる場所にその図体を隠すことも忘れない。

そして、絶命させない。

一人当たりにかける時間は数十秒。



これを、数分でウン十人としていったら、

さすが面倒になってくる。

倉庫内、倉庫脇を中心に、

とりあえず黙々と一人ずつ片付ける。

埠頭の各所に点在している男共に気配を消して接近。

頸椎を手刀で強打し、気絶させる。

倒れる音もしないように襟首を持ってぶら下げ横たえる。

両腕を針金で後ろ手に縛り、口にはガムテープ。

一応無線機は没収。

ずるずる引きずって隠して一丁上がり。

もう何人目だか。




最初の10分で、俺20、タコ20のまだタイ。

耳につけた小型無線機から海坊主の交信が入る。

『撩、やつらは積み荷の中身を確認し終わった。もうすぐだ。』

「了解。」

ちゃんと中身が揃っているかをチェックして船に積むのは当たり前だが、

3つ分のコンテナにかける時間としては短いな。

手抜きでもしてんのか?

そろそろ切り上げて、リーチスタッカーを奪わんとな。



俺らの戦闘開始から20分、

陸側の戦力が70%まで落ちたところで、やっと周辺が異変に気付く。

遅すぎねーか。

奴らの国の言葉で、

賊だか敵だかが侵入と無線機で大騒ぎしながらやりとりしているのを、

倉庫の影からうかがう。



リーチスタッカーの運転手にも無線が入ったらしく、

焦りの表情を見せると、運転作業を早め始めた。

「海ちゃん、援護頼みまっせ。」

『撩、早く行け。』



これからが、本当のドンパチだ。

コンテナは、今まさにリーチスタッカーが摘み上げるところ。

「やべ。」



俺は、リーチスタッカーのまわりに突っ立っていた6人に一気に発砲。

驚倒する声と銃器がアスファルトに転がる金属音が響く。

サイレンサー付だから、こちらとしては、至って静かな攻撃だ。

走り込みながら次の弾を素早く充填。

揃いも揃って、まだ抵抗してくる元気があり、

震える手で転がっている武器に手を伸ばそうとしているが、

とりあえず手か足を打ち抜き、戦闘不能にする。



わりぃな、大人しくしてりゃあ、痛い思いも少なくて済んだだろうに。

背後で悲鳴と銃声とトラップが発動している音が聞こえる。

海坊主の仕業だ。



「運転を代わってもらおうか?」

運転席にするりと入り込み、

ひげ面のヘルメット男にパイソンを突きつける。

「ひっ!」

一瞬反撃しようかと悩んだ顔が見えたが、本能が負けを察知したのだろう。

わたわたと車体から転がり落ちた。

『撩!早くしろ!』

「わぁーってるよっ!」



本来だったらスローモーションのように動かすべき重機だが、

そんなことは言ってらんねぇ。

摘み上げられた大型コンテナをぶら下げたまま、

キャタピラを最速で前進させ海際まで移動させた。



その間も、うるさい雑魚が攻撃してくるので、

片手で運転、片手でパイソンでの反撃。

他はタコが応戦。

あらかじめ仕掛けておいた火薬を減らした手榴弾に、

威力を調節したプラスチック爆弾が、

慌てる黒服たちを吹き飛ばし、気絶させている。



さっさと一つ目を沈めちまおう。

アームをぐいっと岸壁から伸ばす。

ウィーンとモーターの動く音が響く。

海水面上に浮いたコンテナがボタン一つで、

飛沫と轟音と共に夜の海底に落ちた。

奴らの声にならない悲鳴が聞こえる。

船からも迷彩服を着た奴らからの発砲が始まるが、

重機が使えなくなると困ることが分かっているのだろう。

ロケットランチャーやマシンガンを持っている輩もいるのに使ってこない。

こりゃ、こいつから俺が離れたとたんに蜂の巣を狙ってるか?



次のコンテナは、まだトレーラーに積まれたまま。

そんなことを考えていたら、

やや離れた場所から、雑魚とは違うプロの気配を感じた。

その瞬間、運転席への数発の発砲。

操縦関係の場所には被弾させずに、俺だけを狙っての狙撃。

俺は運転席から身を翻して、車体の影に隠れ、

そいつの気配がする方へ意識を向ける。



船舶からの集中砲火が出る前に、

海坊主が隠れた場所からロケットランチャーとマシンガンで

看板の敵さんを蹴散らした。

デッキから煙と悲鳴が上がる。

『撩、油断するな。』

「ああ。」



タコもやっかいなのが混じっていることに勘付いたらしい。

ヤツはここから20メートルほど離れた別のコンテナの影だ。

あー、めんどくせぇ。

あと2つ、どうやって始末すっか。

この状況じゃ、運転席に戻るのはやや困難。

とりあえず、ちょっとは出来そうなあそこのヤツを片付けんとな。



ふと思い立って、

香から受け取ったペン型の金属棒を内ポケットから取り出した。

「使ってみっか。」

教授のお遊びで作った試作品。

香の護身用にと教授が渡したものだ。

カチカチとノックを2回して、一呼吸置いた後、弧を描かせて放り投げた。

ちょうど、敵さんの頭上で派手な音と光が発せられる。

「うおっ!」

敵さんが、怯(ひる)んで一瞬ものかげから身を出した瞬間、

肩と足を打ち抜いた。

「ぐわっ!」

「余計な手間かけやがって。」

その間、まだ俺が隠れているリーチスタッカーへの発砲は続いているが、

タコの攻撃で一つ一つ減ってはいる。

しかし、収まるまで待ってらんねぇー。

「おい、海坊主、2台目も武器が入ってんだよな。」

『ああ、3台目が偽札だ。』

「……俺がトレーラーに乗り込む。あれごと海に捨てるぞ。」

『偽札は俺が火炎放射器で燃やす。』

「たのむわ。」



短いやりとりで、互いの最良の動きを読み取る。

トレーラーまでは約100メートル強、ダッシュで10秒ほどの距離。

まずは、リーチスタッカーの陰から、

車体のまわりにいる黒服にサイレンサーを付けたまま連発。

同時にタコも同じ方面へバズーカをぶち込む。

もちろん、車体が操縦可能なままでキープできる距離に的確に撃つ。

トレーラーを守るためウン十人と集っていた黒服たちは、

瞬く間に戦力外になる。

タイミングを見計らって、トレーラーに乗り込んだ。

「よっと。」



運転手はバズーカの攻撃で逃げちまったようだ。

アイドリング中のトレーラーのギアをぐっと変えて、アクセルを踏み込む。

このまま直進させれば、トレーラーもろともコンテナは海の中だ。

俺の企てが、他のまだ動ける連中に伝わり、

少数が前進する運転席に発砲してきた。

パン!バリン!カンカン!

弾が近くに当たる音が響く。

「おい!タコ!まだ元気な野郎共がいるじゃねぇか!」

『あと2人だ。』

パリン!

「って。」

助手席側のガラスが割れ、ちょっとだけ首元に掠った。

それを最後にトレーラーへの発砲は収まる。

勢いをつけたトレーラーから、岸壁ぎりぎりのところで運転席から飛び出し、

同時に鉄の巨体が海面へぶつかる音を耳にしながら、

受け身でアスファルトに転がり、軽く脱出成功。



パンパンと服の汚れをはたきながら、3台目のトレーラーに歩み寄る。

別の場所から海坊主も火炎放射器とランチャーを持って、コンテナへずんずんと近づいて来る。

まるで、ゴジラのテーマソングか

ターミネーターのサントラが聞こえてきそうだ。

トレーラーのまわりには、船から降りて来た迷彩服の10人と、

ワゴンに乗って来た言わば生き残りの黒服10人、

計20人が最後の砦と言わんばかりに、

壁を作っていた。



「おい、諦めな。コンテナ2つは、もう海の中だ。

そいつを死守しても任務遂行にはなるまい。」

俺は、あえて奴らの国の言葉で話した。

黒服の先頭にいるヤツがぎりっと唇を噛む。

「おい、海坊主、どうする?」

「めんどくせぇから一緒に燃やしちまってもいいが…。」

おもむろに火炎放射器を抱え直し、安全装置をはずす。

「ひぃ!」

迷彩模様の御一行様は、悲鳴をあげながら船に向かって逃げ出した。

「あれま、見かけによらずチキン野郎だな。」



よせばいいのに、俺の視線が逃げる男たちにちらりと向いた時、

残った黒服たちが俺に向かって一斉に銃を抜いた。

これも想定内。

バシュ、バシュと空気を割く音が6連発。

「がっ!」「ぐっ!」「ぬお!」

一気に銃をはじかれ、

ようやく力量の差を認知したガルシシア側の男たちはがっくりと肩を落とした。

一足遅れて懐から銃を抜いた残り4人も、自ら武器を投げ捨て降参し、膝を落とした。

白い煙を出すパイソンを持った俺は、トレーラーの運転席の屋根の上。

手は反射的に弾を充填する。



「海ちゃん、やっちゃいなよ。」

「………。」



無言でコンテナを開けた海坊主は、木箱に詰め込まれた紙の山に向かって火を噴いた。

外装をワインとコーヒーの表示が書かれている焼き印が

みるみると焦げ付き、読めなくなる。



ガルシアの連中の嗚咽が聞こえる。

俺はストンとトレーラーのルーフから飛び降りる。

統率をしていたと思われる男の一人が、

手首を押さえ座り込んだまま英語で聞いて来た。

「き、きさまら、何者だ?なぜこの密輸を邪魔する?」

撩はちらりと視線を送る。

正体の説明は面倒だと、ガルシアの言葉で返した。

「これが俺らの仕事だからさ。」



遠くで、サイレンの音がする。

「お、警察のお出ましだ。ナイスターイミング♪」

黒い煙がもうもうと出ているコンテナを見ながらたたずむ海坊主に声をかける。

「そろそろ、ずらかろーぜ。」

「ああ。」

「仕掛けたトラップ、全部始末したか?」

「ああ、心配するな。」

「まぁ、何か残っていても冴子がテキトーにごまかしてくれんだろ。さっさと帰ろーぜ。」



サイレンの音がどんどん近づいて来る。

時間は、日付が変わるまで少し余裕がある。

一応、終了時間は予定通りか。

既に、教授とミックが、南ガルシア政府の軍事政権がやらかした悪事を

表に流して、ネット上で一気に広がっているはず。

明日には、国連かICPOが動いて、軍事政権崩壊への第一歩か。



ランクルに乗り込んで、現場を後にする。

帰りの運転は俺。

「まったく、雑魚ばっかりで、しかも殺さず、建物も痛めずって

あー、めんどくさかったぜ。」

「……撩、…この借りはいずれ……。」

「どうせまたバーボン200本だろ!

そいつはいらんいらん。床が抜ける!」

「撩…。」

タコは俺の隣でふっと口角を上げた。

「さーてと、俺らとかずえちゃん、どっちが教授んちに先に着くかなー。」

俺は、アクセルを踏み込み、目的地に急いだ。


*********************************************
(14)につづく。





はい、一仕事終了〜.お疲れさんでした〜。
100m強、10秒弱、撩ちゃんメダル確実です。
やっぱり戦闘シーン、
ワタクシなんぞが手ぇだしちゃだめだったかも〜。

【チュート徳井撩熱演!】
さっき放送された、
人気アニメオープニング実写化対決。
シテハンv.s.ヤッターマン
2:3で残念!負けちゃいました〜。
でも立石諒くんも入れてくれたので
同じリョウ繋がりで嬉しいぞ。
歌はさておき、なかなか面白い企画でした。
2012.10.01.21:30

プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
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