28-12 A Dress-Up Doll

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜


(12) A Dress-Up Doll ****************************************** 2644文字くらい



「香!着いたぞ!」



「……ん?」

大きな目が、パチッと音が聞こえそうな勢いで開く。

「あ、あれ?」

なぜクーパーの中?と反射でがばっと身を起す。

周囲は夜の光景、現在地は見慣れたスーパーの駐車場。

まるで気分はタイムスリップ。



「も、もう着いたの?」

「予定通りだぜ。ほれ、さっさと買いにいくぞ。」

そう言いながら、撩は先に運転席を降りる。

そういえば、さっき撩は1時間くらいと言っていた。

まさに60分ワープしたような感覚に、

「ん〜〜…」と顔を少し歪ませながら、

目元を指でこする香。



バンというドアが閉まる音にはっとして、

慌てて香も降りようと、ロックを解除して助手席のドアを開けた。

先に行こうとする撩の背中に、ストップの声をかける。

「ちょっと待ってよ!お財布とらなきゃ!」

「あー?」

「後ろ開けないと。」

「あいよ。」

面倒くさそうな口調とは相反し、思いの他素早い動きでトランクを開ける。

昨日、香が持っていたショルダーバッグもそこにあった。

そのままくいっと引っ張り出すと、

肩にひっかけ、いつものスタイルに。



「撩、いこ。」



バタンと閉じられたリアハッチの音を背に、

とりあえずは、素早く店内を巡るべく、目的地に向かった。

香は歩きながら、ちょっと腿が筋肉痛かと、若干の鈍い痛みを感じつつ、

腰のポケットに詰め直した買い物メモを取り出すと、

寄り目になって、んーと考えを巡らせた。



照明が必要以上に明るいスーパーマーケット、

閉店時間まであと15分程。

自動ドアをくぐると、香はすかさずカートとカゴのセットを準備する。

「ねぇ、撩、あっちで待ってて。あたし大急ぎで回ってくるから。」

紙切れを片手に、香は全てを言い終わらないうちに、

ガラガラと2つのカゴのせたカートを押して生鮮食品売り場へ直行。

その姿を見送りつつ、

あっ、とそのタイトスカートから伸びている美しい足に視線が落ちる。

ストッキング越しに、うっすらと透けて見えるふくらはぎの吸引痕。



「あちゃ…。」



蕎麦屋でどうしてキャッチできなかったのか、

車内でも位置と光度が悪く全く気付かなかった。

香の服を準備した時、

実はそんなことを想定はしておらず、

アノ最中も半ば夢中で、

らしくもなく考えが及んでいなかった撩。



「ジーンズのほうがよかったか…。」



まぁ、正体が分かる輩は殆どいないだろうと、

ジャケットのポケットに手を突っ込んだままの撩は、

ふぅと肩から脱気して、

ひょこひょことレジ向こうのベンチを目指す。



多くの世帯がすでに夕食中か、もしくは食べ終わっている時間。

並んでいるレジも半分しか店員がいない。

どさっと長椅子に腰を降ろすと、壁に寄りかかり

軽く店内をサーチ。

とりあえず、小うるさそうな連中の存在はキャッチ出来ず。



「まぁ…、疲れてんだろう…な。」



だらしなく座ったまま、手はポケットに入れたままで、

少し上向き加減になる。

天井の照明に目を細めながら、頭の中で足し算をし始めた。



「初心者だっつーのに…。」



ぼそっと漏れる独り言。

さっき車内で香を押し倒した時、

続きは帰ってから、とは言ってみたものの、

この2週間のことを思えば、

さすがにそれはキツいだろと、箍がはずれまくっている己の行動に、

小さな喝を入れてみる。



確かに、昔毎晩オンナを抱いていた時期もあった。

ミックと知り合った頃も、競う様に相当遊んだ。

新宿を拠り所にしてからも変わらず、

厳選を楽しむ様に各所をふらついていた。

正直、オンナに不自由することがなかった日々。

しかし、相手にしたソレは毎回別個体。

同一人物と二度濡事を交すことはなかった。



それが、今たった一人のオンナにどんだけ注ぎ込んでんのかと、

己の持つ熱エネルギーを慣れないながらにも

単独単体で必死に受け止めようとしている香に、

申し訳なく思いつつも、

やはり止められないのはどうしようもないと、

頭をぼりぼりと掻いてみる。



「良過ぎんだよ…。」



目を閉じると、

見えてくる今まで知り得なかった蠱惑的な香の姿が、

瞼の裏に15秒CMのような映像で流れ始めた。

とたんに、にょっと息子が盛り上がる。

「わっ!たっ!ちょっ!こらっ!ひっこめっ!」

らしくなく、わたわたしながら、ぷしゅぅーと血流を慌てて撤退させ、

まわりをきょろきょろ見渡し、

今のにょきっとぶしゅっとに気付いた他人はいないかと、

視野360度を全チェック。

とりあえず誰の視覚にもひっかからなかったらしい。



ほっと肩を降ろして、ごそっと座り直す撩。

こんなところで、おっ立てたことが知れたら、

それこそ店の一番遠い所からでも香のハンマーが飛んでくるだろうし、

他の客やら店員やらが気付いたら、

即警備員に通報だなと、

いつぞや電車内で帽子を失敬して隠し歩いたことを思い出す。



そういやあの時はと、仕事とは言え、

香の制服のコスプレが拝めたことを思い出す。

とたんに、ビデオ屋のオヤジが進めていた学園モノのエロ動画に、

香が重なってしまった。

「はっ!い、いかんっ!俺はそんな趣味ないっちゅーねんっ!」

両膝に腕をくの字にして両手を添えて、ぶるるるっと顔を高速で横に振る。

その様子に、一番近くのレジ係の女性が、

訝しがりながら横目でベンチに座る大きなオトコをちらりと見やる。



「い、いや、他の色んなもん着せて楽しむっつーのはありだよな、うん。」



本人、声に出ていることを気付いていない。

腕を組んで、斜め上を見上げながら、

脱がせて楽しそうな衣装を今後どんな場面で着させるか、

この先数ヶ月分のイベントスケジュール表と照らし合わせる。

まるでカードゲームのデザインのように、

フォーマルスーツから水着、カジュアル、ナース、スチュワーデスと、

過去経験済みの容相と勝手な願望が入り交じった香のコスプレイメージが、

ぱらぱらと捲(めく)られていく。



こりゃ当分楽しめる、そう思いながら、にへらと顔の筋肉が緩くなり、

これまで何もしてやれなかった分、仕事や節目やらを口実に、

色々ブツを送りつけたら、きっと顔を赤くし、激しく照れて、困惑し、

小さな声で、感謝の言葉をつぶやくキュートなカオリンまで

先走って妄想中。



「うん、基本何着せてもかぁーいんだよなぁー。撩ちゃん、まよっちゃーう。」



自分の頬を左右から手の平で挟み、くねくねと体を揺らしつつ、

これから脱がすための服をどうやって選び入手するか、

まだ頭の中で、

対戦カードがカシャカシャと切り替わる。



その中で、不意に出てきたのは、

白いドレスを纏う香。



「あ…。」



衣装カードの動きがピタリと止まった。


***************************************
(13)につづく。






白いドレスっつったらねぇ…。

ああ、11月になってしまう…。


【大感謝!】
Nさま〜、毎度有り難うございます!
校正手数料を支払わねばという気分です。

今は、もうスチュワーデスは死語扱いかも?
昭和の単語ということで、
キャビンアテンダント、うう、どっちも言いにくい…。

2013.10.31.01:58

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28-11 Hand In Hand

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜 


(11)Hand In Hand ******************************************* 2135文字くらい



「少し休めよ。」

「え?」



先のやりとりに一区切りついた後、

香は、ややくったりと脱力したまま、

暗くなった高速道路を車窓からぼーっと見ていた。

「まだ疲れたまってんだろ?

あと1時間くらいかかっから、それまで寝とけよ。」



確かに、筋肉の疲労は取れていない。

昨晩の睡眠不足は、

午前中の数時間の仮眠では十分補えたとは言えない。

その状態で、一体撩と何時間身を繋いでいたのかと、

慣れない訓練と重なって、

やはり体力気力の目盛りは下がり気味。

ただでさえも、この2週間は色々あり過ぎて、

変化に体がついていっていない感も大きい。

たぶん今、

目を閉じたらそのまま寝れてしまいそうな疲労感。



「うー、どうしよっかな…。」



目元を人差し指と親指で押さえながらしばし迷う。

運転している撩を差し置いて、

自分だけ休むのは忍びない。



「シート倒せよ。その方が休めんだろ。」

ぴくんと肩があがる香。

さっき、待避所で押し倒されたことを思い出した。

かぁーと頬が染まり、肩幅が狭くなって縮こまってしまう。

「なんにもしやしねーって。」

「えっ、あ…、や、やだ!そ、そんなこと考えてるんじゃないんだからっ!」

いや、一瞬考えちゃったけどと、言葉ではとりあえず否定しておく。



静かに左腕をハンドルにひっかけたまま、

アクセルを踏み続ける撩。

正面を向いたまま重ねて休息を薦める。

「着いたら起してやるから、一休みしとけ。」

少し迷ったが、こう何度も言われると無視もできない。

「んー、……そ、しよっか、な。」

香は、両指を組んだまま、手の平をフロントガラスの方に近付けるように

んーっ、と伸びをした。

左手をレバーに添えてくいっと引くとシートの抵抗がなくなり、

背中の圧とともに傾いた。

カチンと音がした角度は、わずかに「逆への字」になった程度。

それでも、体重を預けて仮眠するには香にとって十分だった。



「へ、ヘンなこと、しないでよ…。」

ごそっと撩の方を向きながら無意味な忠告をしてみる。

ちらっと目だけ動かした撩。

「んー?スキンシップは、ヘンなことじゃないだろぉ?」

「はぁ?」

「いいから休め。」

香は、撩の言葉に、

まさかこいつは運転中にもよからぬことを企てているんじゃと、

一瞬警戒心が膨らむも、

眠気の方がそれを上回ってしまった。



車内も一応暖房が効き、

タイトスカートでも足元の冷えを気にしなくてもいい温度。

わずかに顔を傾けて、右に座る撩をぼんやりと見つめながら、

ゆっくりと瞼を下ろした。

意識も同時に堕ちそうになる。



「ごめんね…、りょぅ…も、ぁまり、寝てなぃんで、しょ…?」



そう、小さな声でつぶやかれたかと思ったら、

すー、とほどなく寝息に変わった。

撩は、前方を見据えたまま、目を優しく細めてふっと小息をこぼす。



しばらくギアを変える必要はなし。

窓枠にひっかけていた右手をハンドルに添え、

左手を香にそっと伸ばす。

右膝の上に重ねられた両手を、そのまま大きな手でゆっくりと包み込んだ。

はぁ…、と熱い息が肺から漏れる。



「どこまで…、バレてんのかね…。」



山荘で合流してから、交す会話の中で、

尾行をしていたことは全く触れられていない。

ただ、今の香の一言で、

自分の動きが全て見透かされていたと、

しかも、それを香が気付かないふりをしていた可能性もあると、

一歩先を行かれてしまったような感覚に、

感情の行き場にしばし迷う。



その逃げ場を作るがごとく、包んだ香の手にくっと力を込めた。

少し冷えていた指先が己の体温でじんわりと温まっていく。

加温された毛細血管の中身が、

早く全身に巡ってほしいと、抱きしめて温められない代わりに、

さらに指先を丸めて熱が漏れるのを防ごうとする。



「よく、頑張ったな…。」



山荘到着時に伝えた同じ台詞を繰り返す。

初めての野外訓練。

ボクちゃんもよく耐えたと、

見守りに徹しなければならない苦悶を乗り越え、

ほぼ予定通りに山荘で落ち合えたことに、

まずは初級編については成功と合格の結論を出す。



「次は、同伴、だな。」



目の前にいる香に、触れられない苦しみはもうごめんだと、

次回以降の類似の訓練は、

自分も行動を共にする形での中身に勝手に決定する。

次のフィールドは、未定。

都市部にするか、地方にするか、選択肢は無数にある。



「ケガはさせたくないんだがなぁ…。」



かつて、自分が幼少から少年時代にかけて、

厳しい訓練と実戦を重ねていた時、

大なり小なりの傷は必修だった。

より実用的な生き抜くスキルを修得させねばという思いと、

その白い肌に余計なものを刻みたくないという願望が、

バチバチとぶつかり合う。

こいつの肌に残るのは、自分のキスマークだけで十分だと、

香の指の間に浅黒く太い指を滑り込ませる。

かすかに感じる心音に自身の血流もじんわりと熱を帯びる。



さっさと買い物を済ませ、

とっとと帰って、

速やかに追加のメシを食って、

早く馴染んだあのベッドで、

お前を抱き込んで横になりたいと、

さらにスピードを上げる赤い車。

上下とも観光シーズンのためか、いつもより多い交通量ではあるが、

器用に間をすり抜けて、都心を目指す。



「んーとぉ、まず香ちゃん用のタンスだろぉ?

それにぃ、ふっかふかのラグ買ってぇ、

冷蔵庫もちっこいヤツ選んでぇ、タオルも買い足してぇ〜♡」



撩の頭の中で、カオリンとの快適もっこりライフのための

オオモノ買い物リストが勝手に作られる。

そんなことも露とも知らず、

香は、撩と手を重ねたまま、

くーくーと深い眠りに身を任せていた。


******************************
(12)につづく。





いつ買い物行かせようかな…。

ところで、某きのこ会社のCM、話題になっておりますね〜。
あーゆーのケッコー好きなんですが、
どうしよう…、第3幕の某○○日目で
夕食のシーンにキノコ鍋の予定なのよね…。
定番のシモネタ、
そのまま使うか、改稿するか、現在悩み中…。

28-10 Secret Savings

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方


(10)Secret Savings ********************************************* 2631文字くらい



「ちょ!ちょっと!今のどーゆーことよ!」



預けていた右半身を完全に浮かし離して、

撩の表情を伺う。

運転中なのに、目が上向きで泳いでいる。



「あー…、つまりだな…、ボクちゃんのへそくり?」



なぜそこで語尾に疑問符が付くの?と訝しがる香は、

おぼろげに感じていた別出納の存在を確信する。

真剣な面持ちで、撩の方を見つめる。



「……そこから、銃や弾丸を買ってたってワケね。」



ぴくんと肩が動いた撩。

もう隠す必要はないかと、一部情報公開することを心に決めた。

しかし、撩が説明を始める前に香が話し始める。



「だいたいさー、

これまでこの車けっこー大破したり、痛んだりしていたけど、

半分くらいは、あたしが知らない間にちゃかり直されてて、

支払いの記録がなかったのよねー。

あ、海坊主さんのランクル壊したときは、しっかり請求されたけどさー。

でさ、いつのまにかメタルジャケットも補充されてるし、

銃器もちまちまと増えてるし、

どっから補填してんのか、ずーっと気になってたんだけど。」

香は、そう言いながら、

どさっと、助手席の背もたれに深く座り直した。



「ナゾが解けたわ…。

今まで聞いても、あんたはぐらかせてばっかりだったしね。」

自分の両腕を組んでくすっと細く笑った。

教授が言っていた、撩の方の口座と言っていたのは、

恐らくこのことだろうと、

あえてその聞き知った情報は伏せておくことにする。



「でも、嬉しい。

だって、撩があたしに服なんてプレゼントしたことなかったじゃない?」



組んでいた腕をゆるくほどきながら、前腕に手の平を滑らせて、

膝の上で指を組み直す。

出所の詳細は不明であれど、この事実は変わらない。

それがたまらなく嬉しく舞い上がりたい気分でもあるが、

静かに気持ちを押さえつつ、短く感謝の言葉を言う。



「撩…、あ、ありがと、ね。」



撩の鼻腔から、ふっと軽く空気が動く。

「とりあえず、今は値段の追求はしないでおいたげる。」

「そりゃどーも。」

撩の台詞と共に伸びてきた左腕にまた引き寄せられた。

ばふっと、同じ位置に戻されて、

布越しに腕と肩の温かさを頬から感じ取る。



体重を預け直しながら、さきの¨へそくり¨発言については、

またいずれ説明してもらおうかなと、

目を閉じ頭の位置を微調整する。

そこで、香は、はっとあることを思い出した。

閉じた瞳が、またパチンと開く。

慌てて身を起すと、撩の腕を掴んで、

顔を赤くしながらとあることを確認しようとする。



「ね、ねえ!撩っ!あ、あ、あの、あああたしが着てた、ししし下着!

あ、あれっ、ど、どうしちゃった?」

「は?」

「あの山荘で、バスルームに用意されてた新品の黒の!」



香は、撩と暖炉の前でカラメルソースのような熱くて甘い時間を過ごしていた時、

ショーツとキャミソールをつけていたのに、

目が覚めた時は、それがなかった。

あの場所を去る間際、ラグの上には何もなかったことを

2度ちゃんと確認したはず。

ならば、一体どこにあるというのか。

あんな情事の痕跡が残るインナーを言わば、

ヨソ様の住まいに置き忘れてしまったのかと、

一気に恥ずかしが込み上がる。

あれも、一応撩から贈られた上下セット。

急に、思い出しクーパーの中にある可能性を信じて、

顔を真っ赤にしながら撩に尋ねた。




「あー、アレどこやったっけか?」

撩は、香が握っている左腕をハンドルに乗せ、

斜め上を見ながら、

右手の人差し指で、ぽりぽりと頬骨あたりをかいてみる。

本気で思い出せない。

「まっ、まさか、山荘のどっかに放りっぱなし???」

「いんや、それはない。…が、あり?ホントどこやっちゃったっけか?」



撩は、確かに香の使用済みのシルクの上下があらぬところで、

管理人のばぁさまに見つかったら、それこそバツがわりぃと、

後で、教授にどんなことを言われるか分かったもんじゃねぇとか思いながら、

香といちゃついた時間を振り返る。

とたんに、元気になる下半身。

にょっと目の前にタケノコのごとく伸びてきた円錐形の布に、

香はぎょぎょっと表情をひきつらせ、

反射で左コブシがアッパーカットの弧を描く。

「ぐあっ!」

「ば、ばかっ!運転中にナニ考えてんのよ!」

「ナニってナニですが…。」

顎をさすりながら、前方を見直す撩。

その台詞にさらに1トンハンマーが側頭部にヒットする。

「でっ!」

「も、もう!本当にどこにあるのよっ!」

撩から身を離す香を視界の端にとらえながら、

ぼんやりと、バスローブと黒のキャミソールとショーツをまとった香を連想する。

「あっ。」

頭部にめり込んでいたミニハンマーがぽろっと落ちる。

「お、思い出した?」

「……ポケット。」

「え?」

「たぶん、俺が着ていたローブのポケットだ…。」

「はぁ?」



山荘の様子を思い出す香。

確か、撩はあの場所を出る前に、

白いバスローブを洗い終え、乾燥機に突っ込んでいた。

「わりぃわりぃ、ついクセでアレもポケットに詰めちゃた〜。」

ほぼ無意識での行動、もはや疾病(しっぺい)の類と言ってもいい。

香は、撩の証言を元に状況を解析する。

つまりは、ローブと一緒にフツーに洗われてしまい、乾燥機までかけられて、

山荘にしっかり忘れてきてしまったということに。



「……撩、あれ、シルク、よね。」

香はこめかみを押さえる。

「た、たぶんねぇ〜。」

「乾燥機に入れるもんじゃないの知ってるわよね。下着コレクターのあんたなら。」

「そ、そぉーだっけかぁ?」

「し、しかも、か、乾燥終わったら、管理人の人が、か、回収するんでしょ?」



想像するだけでもう羞恥心の目盛りがキュイーンと伸びてくる。

「は、はずかしいじゃないっ!」

とりあえずは、使用済みそのまんまのものが、

そのへんに転がっている事態はさけられたものの、

見知らぬ老婆が、ガウンのポケットから、ブツをつまみあげて、

あらま、とつぶやくシーンが勝手に想像される。



「もーっ!なんであんたは、いっつもいっつも下着をポケットに突っ込むのよっ!」

「い、いやこれは、なんちゅーか、もうクセっちゅーか、無自覚っちゅーか。」

スコーンと当たったのは、再びミニハンマー。

「ぐっ!」

「運転中なんで、控えめにしておいたから感謝しなさい。」

「ここで、さ、3連発2セットはキツいぜ…。」

腕組みをして頬を染めたままにお怒りモードの香。

「自業自得でしょうが!」

そう吐き出すと、はぁとシートにもたれかかる。



こんなやりとりを続けながらも、

撩は制限速度を3割ほど超えて、

ぐいぐいと都心に向かって加速して行った。


******************************
(10)につづく。





ここで、撩のヘソクリについて妄想。

個人的には、撩が自由にできる資金は
総額で、億単位は持ってんじゃないかと…。
ただし、ある時期から、
殺しで稼いだ分と、その他仕事の収入は
別管理してそうな気もするんですよ〜。

だって、たぶん原作後半を思い返せば、
撩が、ヒトを殺して得た収入で
カオリンのために何か買うとか、
万が一の時のためのカオリン基金とかに回すのは、
あんまし考えられんでからに…。
やつも、意外とそのあたりデリケートに考えてんじゃないかと。
(あ、ウチでは撩がもしものことがあった場合に備えて、
教授管理の元、カオリン基金があることにしております)

うーん、銃機の補充って言っても、
アパート所蔵のものだったらこれもカオリン使うだろうから、
これもなんか抵抗感じるなぁ〜。
あ、たぶんさやか編の1億円使っちゃったというのは、
きっと口ではああ言っておいて、
武器類の購入やらに当てたんとちゃうかと。

じゃあ、一体、撩が裏の仕事の中でも殺しで得た収入は、
どうまわっている形がスッキリするのか、
うーん、まだ分からんです。
きっとカオリンに本気になる前は
出所ごちゃまぜだったのではと勘ぐっておりますが…。
いずれにしても「出所」っていうのは
私らの日常生活でも心理的問題大きいかもかも。
初任給で親にプレゼントとか、
パートの奥さんが自分で稼いで旦那に贈り物とかね…。

【お知らせ】
100パチ御礼記事を本日1818でアップ&
もくじに「キリ番企画」のくくりを追記いたしました。

拍手100パチ超え御礼記事

御礼記事連投です。

気がついたら「はじめに」の拍手が

3ケタオーバーになっておりました〜。

当サイト3件目の100パチ超え、

皆様のワンクリック、心より感謝申し上げます。



こんな長ったらしい「はじめに」にをお目通し頂き、

申し訳ないところでございますが、

中身を見て頂く前にお伝えしたいことを打ってみたら、

あんなに長文になってしまいました…。

シンプルにできない要領の悪さ、ここでも露呈しまくりです。




御礼企画、どうしようかと悩んでおりましたが、

「今日は何の日?ネタ」で悪あがきしてみようと思います。







K:なっ、なにこれ!?

R:なんだ?

K:あ、りょ、撩。い、いや、その、あ、あのね、
  美樹さんから、お裾分けでこれもらったんだけど…。

R:柿がどうかしたか?

K:こ、これ…。

R:へ?

ちんちん柿その2

K:み、美樹さん、わ、わざと混ぜたのかな…。

R:もっこり付きたぁ、珍しいな。

K:ちょっと、ストレートに言わないでよ!

R:しっかし、ふぐりの大きさの割にはちっけぇもっこりだな。

K:撩!もう、いちいちもっこりもっこりって、しつこいわよっ!

R:それ食うのか?

K:うー、ど、どうしよう…。

R:んと、ガキ以下のサイズだな…。

K:撩、しつこいんだってば。

R:市場には、変わり種はあんまし出回らねぇーから、産直だな。
  珍しいんでねぇの?

K:うーん、とりあえず写真撮っておこうかな。
  カメラ、カメラ。

R:こりゃ、食うには忍びねぇなー。

K:あった、あった。よし、これで接写できるかな?ぱしゃり、と。

ちんちん柿その1

R:で、どーすんの?それ。

K:どーしよ…。

R:しばらく観賞用ってか?ミニもっこり。

K:ちっ、ちが!は、鼻よっ!鼻っ!

R:いや、鼻にしては位置が高い。

K:じゃ、じゃあ、目つけてあげればいいじゃない!
  ぺ、ペンがいいかな?紙はっちゃおうか。
  は、ハロウィン近いし!

R:勝手にしろ…。





というワケで、本日10月26日は
「柿の日」ということで、カキの実ネタを無理矢理作ってみました。
ずいぶん前にお隣さんから頂いた庭の柿の実に混じっていました。
やはり食べづらく、そのまま保留。
柔らかくなりすぎて、結局、鳥のエサ台行きになりました…。
バナナシールや、メロンのラベルシールとかを集めていますが、
柿シールってあんまりないんですよね〜。
(カオリンの最後の台詞、追記修正が保存されておらんかった…。2013.10.26.20:00)

[ウィキより]
1895年10月26日に正岡子規が「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」の句を詠んだことに由来。
全国果樹研究連合会カキ部会が2005年に制定。


本当は、100になった当日の「今日は何の日」にしたかったのですが、
いつ超えたか分からなかったので、御礼記事アップの日に合わせることにいたしました。

表ブログを知っていらっしゃる方は、
ブログ内検索で「柿の中に」と打って頂ければ、
それっぽいタイトルの記事が出てきます。

美樹ちゃん、確信犯ということで、
その後、冴羽家は付録付きの柿をどうするのやらと。

以上、御礼記事でした。

粗雑でごめんなさい!

10万ヒットありがとうございます!

日頃のご訪問に大感謝です!



2013年10月24日に、

カウンターがついに6ケタ目に入りました。

サイトオープンから1年と7ヶ月、

みなさんのお陰で頂けた数字に、

深く御礼申し上げます。



10万HIT企画は、

現在準備中でございます。

動きが整いましたら、

また追ってお知らせできればと思います。

(自作イラストは当分だせそうにないです…)




取り急ぎ御礼でした!

(ここのサイトにしては、珍しく短い記事だわ〜)

28-09 Presents

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜 


(9)Presents ********************************************************* 2223文字くらい



エンジン音だけが響く車内。

撩の左腕に寄りかかったまま、香は目的地に到着するまでに、

先の反省会のちゃんとをすべきではと、

うっすらと昨日のことを振り返り始めた。



「…ねぇ、撩?」

「ん?」

「あ、あのさ、……本当に、時間内だったの?」

「へ?」

「あ、あたしが上に着いた時間よ。

もっと早くゴールしなきゃならなかったんじゃないの?」

ダッシュボードのメーターを見つめながら、

香は申し訳なさそうな口調で話し始めた。



撩は、反省会の続きかと、ふっと鼻から息を出して

左肩のぬくもりにちらりと視線を流す。

「うんにゃ、だいたい想定内だぜ。」

「だいたい?」

「最初のトラップにかかっちまったことと、怪我3ヶ所は計算外。」

「あ…。」

「それがマイナス20ポイント分な。」



撩は、いつものカジュアルシューズに履き替えている香の足元をちらっと見やって、

ストッキングの下に

うっすらと隠されている踝(くるぶし)の靴擦れの位置に視線を落とす。

暗がりの車内、そこははっきりとは見えない。

すぐにフロントガラスの奥に視野を変え、ふんと一息呼気を出す。



「まぁ、靴擦れは仕方ない、よな…。」

「あ、あたりまえじゃない!」

抗議の口調になる香。

「あんな登山靴、初めて履いたんだもん!

だいたい普通は靴って慣れさせる時間が必要でしょ?

なのに、いきなりアレを履けって、皮剥けても当然だわよ!」

撩の横顔を見ながら、ぷんぷんと可愛く怒る様がまた愛おしく

撩も素直に謝ることに。



「あー、悪かったよ。だが、今履いている靴じゃあの坂は歩けなかっただろ?」

と、言われて自分の足元を見直してみる。

確かに、靴底は薄く、

傾斜のあるダートの上ではグリップが効かないアウトソール。

「う…、そうかも…。」

しかし、用意されたレディース向けのトレッキングシューズは、ミディアムカットで、

どうしても踝との摩擦が発生してしまう。

「厚手の靴下があればよかったかも…。」

「あ…。」

撩が素で、はっという表情になる。

「わ、わりぃ、そこまで考えてなかった。」

「は?」



自分の準備不備のせいだったかと、

このミスで香の肌に傷を付けてしまった己を小さく恨む。

「あんた、どーゆーイメージで今回の道具準備したのよ?って、

あれってまたどっかに返さなきゃなんないの?」

「いんや、そのまんまお前が使ってもオッケー。

ただし、あの塗料は落ちねぇーから、捨てだな。」

「えー!洗ってもダメなのー?」

「そ。」

黒のフリースは、洗濯して、

破れた箇所を縫い直せば再利用可能かもと期待していた事案が

がらがらと崩される。

残っている衣類は、汗をたっぷり含んでいるダウンのベスト。

「じゃ、じゃあ、あの黄色と黒のベスト、もらっちゃっていいの?」

「気に入らねぇーか?靴もセットだぜ。」

返ってきた言葉にドキンとする。

思わず、撩のほうを見てしまった。

前方を見据えたままの横顔に、香の細い眉が切なくハの字になる。

言葉が詰まった。

じわっと胸が熱くなり、

視界を変えるべく撩の左肩に頬を埋めた。



「ぅうん…、そんなワケ、ないじゃない。」



喉が詰まってうまく声が出ない。

たぶん、

今気を緩めたら泣いてしまうかもしれない。



ずっと以前、撩からこれを来て現場に行けと、

水着を渡されたことがあった。

濃いファッションピンクのビキニパレオ付き。

銃を隠すためとはいえ、

かなりイヤイヤながらであのプールに向かったことを思い出す。

ことが終わって、帰宅後に洗濯して干していたら、

撩にさっさと回収されてしまった。

¨なんだ、もらえるかと思ってたぜ¨と

小さくぼやいていたのは、

丁度アパートで暮らし初めてまだ数ヶ月もたっていない頃だった。



くすっと、男言葉を使っていた頃が過ったのは、

このやりとりで、

ダウンジャケットとトレッキングシューズが

初めて撩からもらった被服となったからだ。

「……誕生日でも、クリスマスでもないんだけど…。」

「はぁ?」

「……なんか、すごい嬉しい。」

俯き加減のくせ毛がさわっと揺れる。



撩は、たったこれだけのことで、その台詞をこぼす香に、

これまで、何もしてやれなかったことを思い出し、

ちくちくと過去が心の隅に過って行く。

¨誕生日とかクリスマスには、別のもんを贈ってやる¨と言いたくなる台詞を

喉仏のところで寸止めした。

何を贈るつもりなんだ?と、

方向性がまったく決まっていないだろ?と、

ぎりぎり脳が訴える。



「ただの備品だぜ?」

代わりに出てきたのはこの言葉。

「ううん、…なんかプロの登山家とかが使いそうな高そうなヤツじゃない。」

「あー、値段は知らねぇーな。」

「え?」

「エレクトラのママにメモだけ渡して準備してもらったんだよ。

一品一品いくらかっつーのは俺も知らねぇ。」

「ちょ、ちょっと!これってこれから請求されんの???」

寄りかかっていた肩から、がばっと顔を上げる香。

「いんや、もう支払済み。」

「……ちょっと、…あのバッグに入っていたもの、一括だったりする?」

「そ。」

急に経理担当として支出の心配をし始める。

「……一体、全部でいくらかかったのよ?」

「忘れた。」

ジト目になる香。

「……あんた、値段も確認しないで買い物したってこと?」

「あー、心配するなって。おまぁが管理している金からは使ってねぇーから。」

「は?」

「あ…。」

撩の口から、なにか重要な情報がこぼされたことに、

香は、きょとんとしたまま

一拍かかってようやく気付いた。


*****************************************
(9)につづく。






香の時間切れじゃなかったの質問は、
ファルコンの、あの時本当に弾切れだったのか質問と
同じような空気ってことで。
きっとヤツは弾切れではなかったと思う…。

香のビキニパレオは、完全版2巻第14話に掲載!
そう言えばあの時、カオリンのモモをヤツがなでなでしておった!

28-08 Turnout

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜    


(8)Turnout ********************************************************** 3004文字くらい



「りょ…、撩?ど、どうしたの?」



急停車に驚き、

一体何があったのかと状況の解析がついていかないままに、

カシャンとシートベルトが外される音が聞こえた。

「え?」

音の発信源に目を向けたとたん、

髪の毛を軽く掴まれ、左手首を固定され、口を丸ごと塞がれてしまう。

「んんーーっ!」

クーパーの中での口付けは何度目だろうと、

まだそんなに回数を重ねていないことをぼんやりと思いながら、

撩の動きに、

なぜ、どうして、このタイミングで?と疑問符が頭の中で溢れかえる。



激しい唇と舌の動きに気を取られていたら、

掴まれていた右側頭部の髪の毛から撩の指がするすると落ちて、

肩経由で脇腹を降り、香のシートベルトをカチャンと外した。

「!!!」

その手が背中に回ったかと思いきや、

掴まれていた手首から撩の右手がふわりと浮き、

リクライニングレバーをくいっと引いた。

とたんにガクンとシートが後ろに倒れてしまう。

「んんっ!」

ここまでわずか十数秒。



暗い車内で、

ギアを除けて重なった二人は松葉状のスタイルになる。

リアウィンドウから時折ライトが入って通過していった。

撩は、ぎゅうと香を抱きしめたまま、

角度をつけて深く荒いキスを繰り返す。

「ふぅ…、ぅんん。」

撩の両腕を握りしめる香。

なんでこんな事態になっているのか全く分からない。

きっと、怒っている。

そう思っていたのに、この状態はどう理解したらいいのかと、

苦しさと気持ちよさと混乱の入り交じる感覚の中、

時折、そばを通過する大型車のエンジン音が耳に届いた。



暴風雨のような長い長い接吻に、

ついには酸欠気味になり意識がぼやけ、指先が震えてくる。

舌は甘噛みされたまま強く引き込まれ、

そのまま飲み込まれてしまいそうな吸引力。

溢れる唾液に嚥下が追いつかず、唇の端からつと漏れ出る。



一体いつまで続くのかと、不安が込み上がってきたところで、

ふいに撩の動きが静かに止まり、鼻から細く息が吐き出された。

覆い被さっている肩の力がふうと落ちていくのを感じた香。

撩は、区切りにライトキスへ切り替え、

舌先で香の唇の全周を筆のように優しく撫で上げると、

下唇にちゅうと吸い付き、

ゆっくりと引っ張り上げちゅっぽんと離れていった。



「っはぁ…。」



深く息を吸い込む香を、

撩はさらにぐいっと抱き込む。

撩の腕をジャケット越しに握り込んでいた香の指も重ねて力が入る。

「りょ…、く、くるし…。」

薄く目を開けるが、

車内も車外も暗くて目にちゃんと情報が入ってこない。

涙目でぼやける向こうにうっすらと街灯の光源だけが確認できた。



「……こんまんま、運転して帰れねぇーかな…。」

「……はぁ?」

この男は一体何を言っているのだと、香の眉に浅くシワがよる。

顔の半分が撩の胸に押し付けられて、上を向けない。

「お、怒ってるんじゃ、ないの?」

「あ?」

「と、トラップ、除けられなかったから、怒ってるんじゃないの?」

小さな声で再度聞いてみる。

すると、また髪の毛の中にふっと息が当たるのを感じた。

くいっと抱き直される。

「そんなんじゃねぇーよ。」

途切れていた高速を走る光りがまた流量をあげ、

車内に不規則な照明を施す。



運転そのものは嫌いではない。

むしろ機械モノを動かすのは好物な方。

しかし、今はそれを二の次にしたくなる。

きっと未来の車だったら、どこぞの映画で描かれていたように、

運転手のコントロールなしで、目的地まで運んでくれるんだろうなと、

その移動の間に、べったりできれば申し分なしと、

勝手な妄想を巡らす撩。

差し当たってこの世は1991年現代。

陳腐なエロビデオのようなことをするワケにはいかないかと、

困惑している香を、またくいっと抱き締める。



実は、地獄絵図をよりリアルに思い描いてしまったのは撩の方で、

その像に香の言葉が重なった。



— どんな目にあっても、生き抜くから… —



そんな状況には、決してもっていかせない。

言葉が出るより先に、体が動いてしまった。



「……じゃ、…な、なぜ?」

「んー?」

この流れが飲み込めない香は、

撩の腕の中で困惑しながら問うてみる。

「ちゅーしたくなっちゃったからっ!」

重ねて力をこめてぐいっと抱き寄せた。

軽い口ぶりではあるが、ウソではない。

「ぅぶっ!」

鼻と口が胸板に被る布地で塞がれる。

「さっすがに、こっこじゃぁー狭いよなぁ〜!」

「???」

おちゃらけモードでの唐突な車内空間の話しは、

ますます理解に苦しむ香。

ふっと周囲の圧が緩む。

目をパチッと開けたら、顔と頭を大きな手でくしゃりと包まれた。

ライトにちゅぱっと唇を吸われる。

「んっ。」

「続きは帰ってからすっか!」

「はぁ???」



このオトコの言うキスの¨続き¨は、アノことを指すということが、

一線を超えてからの2週間で

十分に分からされたつもりである。

しかし、つい3、4時間前まで濃密な触れ合いをしたばかリだというのに、

今晩もまた¨もっこりタイム¨を想定しているのかと、

見開いた目をパチパチとしぱたかせた。

夜の瞳孔は、

お互い面積を広げ虹彩部分が少なくなっている。

香は、吸い込まれそうな漆黒の瞳を見つめながら、

先の撩の言葉を分析する。



続きのもっこりタイムは帰ってから。
 ↓       
ここでは狭い。
 ↓
つまりはクーパーの車内でほにゃららをしようとこのオトコは考えていたらしい。



香は頬を赤くしたまま眉間にシワを寄せて目を閉じた。

「撩…、あんた、反省会って言ってたくせに、

なんでこぉーなるのよ!」

「んー?だから、したかったからっ♡」

ゴキッと音がしたのは、

香の左腕が振りかぶって、撩の後頭部に1トンハンマーがめり込んだ効果音。

「し、信じらんないっ!そんなんでいちいち車止められたら、帰れないじゃない!」

「ってぇ〜。」

左腕を支えにしてわずかに上体を起し、右手で後ろ頭をさする撩。

「も、もう!買い物にも間に合わなくなっちゃうわよ!」

撩の両肩をぐいっと押して、起き上がろうとする香。

「んじゃ、ワンボックスでも転がす時のお楽しみっちゅーことで。」

ベシッと2発目のミニハンマーが、撩の右側頭部にヒット。

「ば、ばかっ!!!なんであんたの頭の中ってそうなのよっ!!!」

可愛い恥じらいと小さな怒りのこもった衝撃を受けながら、

撩は、わざとよろよろしながら、運転席に寄りかかる。

相方の重さから解放された香は、

撩のキスで融かされそうになった頭で、

なんとか起き上がり、シートとベルトを元に戻した。



「す、スーパー8時までなんだから!買えなくなっちゃうわよ!」

今の時間は、5時半過ぎ。

冗談抜きで食料品が買えなくなってしまう。

「いででで…。」

頭をさすりながら、座席に座り直す撩。

「お肉買うんでしょ!もうきっとギリギリよ!」

「はいはい、行きますか…。」

腕を組んでぷんぷんと愛らしく怒る助手席の香に、

くすりと薄く笑うと、撩はエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。

移動している間も触れておきたいと、

右へのウィンカーを出し、本線に合流するとおもむろに、

ギアから手を浮かせて左に伸ばす。

「わわわ!」

頭を引き寄せられた香は、撩の上腕にばふっとぶつかった。



「くっついとけ。」



視線だけを斜め上に移動させて、その横顔を覗き見る香。

前方を静かに見据えるノーマルの表情にドキンと脈が振れた。

スピードが加速される。

ギアがトップに変わり、操作する腕の動きが直に香の頬に伝わってくる。



「ま、まったく…、一体何考えてんだか…。」



まだキスの余韻がたっぷり残っている中で、

香は目を閉じて、

頭をごそっと動かし居心地のいい場所を決める。



「急ぐぞ…。」

「うん…。」

滑らかに追い抜きを繰り返しながら、

クーパーは、

新宿に向かって夜の東北自動車道を南下して行った。



******************************
(9)につづく。






このところ毎週1回某フィールドに通っておるのですが、
途中でいつも深緑のクーパーが停まっています。
この中で186センチ、170センチ強?、
やっぱりシートに収まっていても狭いだろ…と。

【お知らせ】
大変遅くなりましたが、
9万ヒット御礼企画を本日の1818でアップしております。
でも、あまり期待はしないでね…。

【Nさんいつもありがとう!】
「ぞ」を「そ」に修正しました!
発見大感謝!
お礼のブツ本日投函です!
2013.10.27.22:00

今更ながら9万HIT御礼企画

先月、ありがたくもカウンターの万のケタが、8から9に変わりました。
皆様のご訪問、改めて深く深く感謝申し上げます。

これをきっかけに、無謀にも9万台のうちに1点描いてみたいなぁ〜と思っていたら、
もう後がない…。


で、10/21に洗濯物も、食器洗いも、米研ぎも、会計清算も、ぜーんぶ後回しにして、
22:15から2時間…。なんとか1つ仕上がりました。模写です。


正直、ワタクシ、漫画・アニメのキャラを描いたことが殆どありません。


遠い記憶の中で、習字紙に「ときめきトゥナイト」の
らんぜと真壁くんをリボンから必死に写し取って玉砕したのが、小5だったかと…。


一昨年、家族通信を編集する時に、他の漫画作品と共に、
初めて奥多摩のワンシーンをライトボックスで唸りながら
PIGMAの01や005を使いなぞってみましたが、ダ、ダメでした…。
撩と香の瞼がちょっとラインがズレただけで、違うものが出来てしまって…。
4コマまんがも、その通信に必要にかられて描いていますが、
とてもネットで紹介できるものではございません。


14、5年前までは、盛口満さんに憧れて、積極的に生き物のスケッチはしていたんですが…。
種類を調べるためとか、写真では写りにくい特徴を記録するためだとか。


こんな感じで。

フィールドノート

小さくしていますが、苦手な方はごめんなさいっ!
今はさっぱりスケッチから遠のいています。


本当に、ヒトは授業以外ではまともに描いたことがないので、
今回の挑戦は、私自身にとって、とてもとてもハードルが高いものでした。

その上、ネット上でCHの自作品を公開するのはまさに人生初です。

しかも、B5のコピー用紙にTOMBO木物語のBを使った鉛筆画です。

追記!ちなみに、ライトボックスを使って無理矢理なぞりました。

(旦那ちゃんは職場でイラストレーターやスキャナーを使いこなしていますが、
 我が家はその手の機器を導入しておらず…。ポケデジで無理矢理撮影したものです。)


上記の情報を踏まえて、ご覧になられても、がっかりしない自信がある方でしたら、
続きをクリックして頂ければと…。







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28-07 Meeting For Reviewing

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜    


(7)Meeting For Reviewing *************************************** 2950文字くらい



「腹も落ち着いたこったし、反省会でもすっか。」

「へ?」



買い物メモを無事手に入れ、頭の中はいつものスーパーで、

いかに素早く買い物を済ませるか、

店内の歩くコースを考えあぐねていた香。

反省会という言葉が、

主婦モードだった頭には何のことだか

一瞬分からなかった。



「あっ…。」



訓練の振り返りをここでするんだと、

状況を飲み込んだら、

間髪入れず撩の質問が降ってきた。




「おまぁ、何に気を取られてたんだ?」

「え?」

「最初のトラップは、かなり分かりやすい仕掛けだったはずだがな…。」

撩は、正面を見据えたまま、静かに問う。

最初のトラップ、

それは香がメッシュに包まれて宙づりになったあの罠のこと。



「あ…。」

「何かあったんだろ?」

「えーと…。」

「しっかりマーキングされてんだから、誤摩化しはなしだぜ。」

にやっと香をチラ見する。

「ご、誤摩化すつもりなんてないわよっ!」

むっとした口調で返す香。

あの黒のフリースに付着した蛍光ピンクの塗料は、

トラップに引っかかったサインであることは、香も承知していた。



「うーんと、何に驚いたんだっけ?」

「あ?」

あまりにも色々あり過ぎて訓練開始初期の記憶がうまく引き出せない。

「えーと、……ぁ、…あ!そうよ!」

香は、左手の平を右手のコブシでポンと叩いた。

「キツツキ!」

「は?」

「ハトくらいの大きさのキツツキがね、あたしの目の前で木を突いていたのよ。」

「はぁ?」

これくらいと、手でその大きさを表現する香。

暗い車内は、対向車のライトで時折照らされる。

相変わらず、片手はハンドルで、肩肘は窓枠にかけている撩は、

視線だけ香のほうに向けた。



「もうビックリしたんだからっ!」

香は、やや興奮気味でその時の状況を語り始める。

「すっごい音がしたのよ。聞いたこともない大きな音だったから、

何なの?って上を見上げたらキツツキが木に穴を開けようとしてたのよ。」

はぁ…と、やや上向きで息を吐き出す。

「あたし、初めて見ちゃった。キツツキなんて本物見たことなかったから、

ホントに縦に止まっているの見て驚いちゃった。」

「ふーん。」

「……それで、なのよね…。」



急にテンションを下げ、少し視線を落としてしょんぼりする。

「上ばかり見てて、下を見てなかったってか?」

「う…、そ、そうなの…。」

「なるほどね。」

「あの道、ものすごく注意しながら歩いていたのに…。」

悔しそうに俯く。

撩は、香がトラップに気付けなかった原因を確認出来て得心した。

しかし、それでも、1つでも罠にかかったら、

実戦ではアウト。

小さな油断が生死を分ける。



「本番だったら、おまぁは今頃…。」



とまで言って、先を言葉に出せなかった。

拉致監禁ならまだしも、即銃殺だってありうる業界。

今回は、たまたま網袋をナイフできることのできる簡易な仕上げにしていたが、

本戦ではまず脱出を許す素材は使わない。

金網か、極太ロープか、鎖か、

もともとは狩猟用に磨かれた技術は、ゲリラ戦のブビートラップとなり、

対人用として残酷に開発されている。



「ご、ごめんなさい。不注意でした…。」



しゅんとしている香に、

本当はそれでもよくやったと言ってやりたいが、

いくら野鳥に驚いたからといって、

それがトラップにひっかかってしまった理由としては

やはり簡単には、まぁいいとは言えない撩。

先の途切れた自分の文言の続きを香に連想させることにした。



「……本番だったら、今頃どうなってたか、自分で想像してみろ。」



拉致や監禁を体験した数は、

ぱっと思い浮かべるだけでも、片手は埋まる。

これまでは幸運だっただけで、いつ命を奪われてもおかしくなかった。

その前に、撩が助けてくれたからだ。



絵梨子の水着ショーの時も、

ラトアニアの大統領を襲ったテロリストに攫われた時も、

さゆりと一緒に組事務所に押し込まれた時も、

セスナに連れ込まれた時も、

北尾刑事と倉庫に監禁された時も、

山荘に拉致された時も、

ホテルのベッドの上で縛られていた時も、

クロイツ戦の時も、

もう一歩、事が進む前に撩の手で阻止されていた。



もし、撩の力の及ばないところで、

同じことが起ったら、どうなるのか。

香はごくりと生唾を飲む。




目を閉じ、背筋を伸ばして、膝の上に指を絡めた両手を置いた。

深呼吸をして、自分が理解していることを言葉にすることに。




「……たぶん、楽な殺されかたは選ばれない、と思う。」



ぴくっと撩の眉がわずかに動いた。

「……相手が、シティーハンターのパートナーとして、あたしを狙ったら、

……きっと」

言葉が詰まる。

目の裏に、縛られたまま、手足を撃ち抜かれる自分の姿が像を結ぶ。

ぐっと指に力が入る。



「……急所を、……外されて、撃たれるか刺されるか、だね。」



苦痛を与えることを目的に、簡単には死なせない。

撩を倒し最大限のダメージを与えることが目的ならば、

相手に倫理や道理が通じる訳もなく、

可能な限りの陵辱を受けることは、容易に想像できる。



「それは、まだマシなほうかもな…。」



撩のぼそりとつぶやいた一言にギクリとする。

21才の時、

アスレチックの地下で3人の男に襲われそうになったことを

瞬時に思い出した。

あの時も、ギリギリだった。

もし、麻酔薬から目覚めるのが少しでも遅かったら、

もし、撩の登場がわずかでも時間がずれていたら、

とりかえしのつかないことになっていたに違いない。



あの台の上で、

乱暴をされる自分の姿までが明瞭に浮かんだ。

これまでは、クリアに想像できなかったことが、

新たな体験を経て、

レイプというものが生々しく連想できてしまい、

ぞくっと腕に鳥肌が立つ。



撩以外の男に、強制的にモノを突っ込まれてしまう、

それも複数の相手であったら、どんな生き地獄よと、

思わず自分で自分の腕を抱きしめ、

奥歯に力が入ってしまった。



それでも、安易に自分から死を選ぶワケにはいかない。

香は、撩の言わんとすることを掬いとり、

ふーと長い息を吐き出した。



「撩…。」

「んー?」

「……前にも、言ったでしょ?」

「………。」

無言のまま正面を見据える撩の横顔に向かって

ゆっくりと視線を上げる香。

まっすぐ運転席を見つめた。



「どんな目にあっても、生き抜くから…。」



香が言っている¨前¨というのは、

アパートの吹き抜けで受けた護身術訓練の時の台詞。

生きることを最優先にしろと、

見つめ合いながら約束した。




「…………。」




撩はまだ黙ったまま、アクセルを踏み続ける。

表情を変えないままに、夜の高速を南南西へと進んで行く。

この沈黙に、香は勘違いをし始めた。



撩が、怒っている。



最初のトラップに引っかかってしまったことを大きな失態として、

パートナーとしてあまりにも不十分過ぎると、

きっと呆れていると、

香はぐっと指を握りしめ、目を閉じた。



突然、

クーパーが電話ボックスのある待避所に滑り込んで停車する。

大きなブレーキ音と重なって思わず声が出てしまった。

「きゃああっ!」

閉じていた目が開き、

慣性の法則で身体が大きく前方に振られてしまう。

「なっ、何!一体!」

周辺は電話ボックスの明かりがぽつんと灯り、

背の高い街灯が間隔を広く開けて道沿いに並んでいる。



「撩?」



困惑する香。

二人の乗った車の脇を、何台かの乗用車やトラックが通過し、

そのヘッドライトで、

後ろから車内が緩く照らされた。



********************************************
(8)につづく。





改めて見返すと、
アスレチッククラブで眠らされたカオリンは、
ほんと貞操の危機でしたね〜。
そんな中でも果敢に対抗抵抗した姿にチクチクです。
撩が来てくれて、んとよかったよ…。

28-06 Unconscious

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜


(6)Unconscious ****************************************************** 1658文字くらい



「はーっ、美味しかった。」

「んじゃ、さっさと出るぞ。」

「うん。」



食べ終わった食器をコンパクトに重ねてトレーで運び、

返却口に戻す香。

「おばちゃん、ごちそうさま!」

「毎度!」

「撩、ごめん、先に車行ってて。あたしトイレ寄ってから出るわ。」

「あいよ。」



香との距離が出てきたところで、

レジの女性が身を乗り出して撩に声かけする。

「あんたもいいオトコだけど、奥さんもべっぴんさんだねぇー。

あたしゃ、仕事忘れて眺めちゃったわ。」

100%夫婦だと思っている年配のおばちゃん。

撩は、ポケットに手を突っ込んで、香の背中を視界の端で追う。



「……だろ?」



肯定の言葉を短く返す。

離れ際に追加のつぶやきがレジに届いた。

「当の本人は、まぁーったく自覚ねぇけどな…。」

「あれま。」

「ごっそさん。」

「毎度ぉー。」

撩は、片手を軽くぴっと動かして、そのまま店外へ。



「自覚のなさはなぁ…、

ボクちゃんにも責任あんのは、分かってんだけどさぁ…。」



はぁ、と複雑なため息を吐きながらクーパーに向かう。

駐車場には、まばらに停車している他県ナンバー。

まだ路面は湿ったまま。

わずかに残る水たまりがぱしゃっと跳ねて、

撩の踵(かかと)に小さな飛沫が舞う。

もうライトなしでは走れないほどにあたりは暗くなっている。

撩は、どさっと運転席に座ると、

すぐにエンジンをかけた。

グォンという音と共に、丸いライトがパッと前方を照らす。



「奥さん…、ねぇ…。」



左手をハンドルにかけ、右肘を窓枠にひっかける。

こめかみに、軽く丸めた指を当て、

鼻から細く息を吐いた。



「この前も、どっかで言われたな…。」



1週間程前、

買い物待ちの時に、レジのそばのベンチで、

見ず知らずの男に声をかけられたことを思い出した。

世間では、

もう香も結婚しても全くおかしくない年齢であることを

さきのやり取りで思い知らされる。

表の世界にいれば、

もう入園前の子どもくらいいてもおかしくない年頃。

先のレジの女性の声かけに、否定をしなかった己を振り返り、

目を閉じ、ふっと薄く笑みを浮かべる。



— だろ? —



あのセリフを香がそばで聞いていたら

どんな表情をしただろうかと、

真っ赤に茹で上がって耳から蒸気を吹き出す香がポンと浮かぶ。

その姿に重なって、

ライトの向こうから本人が戻ってきた。

照らされる八頭身が文字通り眩しい。



「ごめんっ、お待たせ!」



なぜかまた謝りながら、助手席に乗り込もうとする香。

半身を車内に滑り込ませたところで、はっと目が開く。

「あ!」

「んあ?」

「ね、ねえ、撩、あたしの服は?」

香が指しているのは、

登坂時に来ていた汚れの付着している衣類一式。

後部座席にあるかと思いきや何もない。

「あー、後ろのトンランクに入ってっけど。」

「ちょっと開けてくれる?」

「あいよ。」



再び車外に出た香は、

クーパーの後ろに回って、バクッとリアハッチを開けた。

暗くてよく見えないが、自分が山荘で畳んだままの状態で、

使った衣類が積み重ねられていた。

その脇にはトレッキングシューズに、ウエストバッグもある。

一体、いつの間に運び込んだんだかと、訝しがりながらも、

目的のモノを探す香。



「あ、あった!」



昨日の午前中に

自宅でメモ書きをしてジーンズのポケットに詰め込んだ

買い物メモ。

紙がわずかに汗で少ししっとりしているのを指先で感じた。

バクンとトランクを閉めると、小走りで車内に戻る。



「おまたせ!これがあれば買い物は早く済むわ!」

シートに座りながら、ピッと小さなメモ紙を撩に見せる香。

口で軽く挟んで、シートベルトをカチャンと閉める。

見つけたいもの発見できたことと、

買い物がいつもの場所でスムーズに出来そうなことに、

香の表情はより明るくなる。

口元からすっと紙切れを取ると、

タイトスカートのポケットにくっと差し入れた。



「そいつに肉追加な。」

「あと、果物とお野菜もね。」



グォンとエンジンがふかされ、

ぐいっと動いた赤い車は、駐車レーンを抜けて、

上りのパーキングから本線に入って行った。


******************************
(6)につづく。





ほんと、90年代前半あたりは、
25才までに結婚という世相が背景だった時代、
カオリンの26才という年齢は、
見えないところで、
言葉にできない適正年齢に対する圧迫があったかもと。
平成の世が四半世紀を過ぎた昨今、
私の友人知人も40オーバー結婚出産が
珍しくないお話しになりました。
個人的には、
変化する社会背景の中、多様な人生の選択肢を
穏やかに見つめ受け止めたいと思っています。


奥さん待ちですか?と撩に声をかけたスーパーの男は
11-06で登場。

買い物メモは、25-04に出てきます。
何度忘れて買い出しに出たことか…。

長編だと何かと過去のお話しが引っ張りだされるんで、
拾えるところは、
できるだけ参考情報をつけておきますね。

28-05 Handmade Soba

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜    


(5)Handmade Soba ********************************************** 2550文字くらい



「はい、お待たせ!まずはこっちね。」



カウンターの奥から出された黒いトレーには

黒い丼が2つ。

「あ、はい、じゃあ先に持って行きますね。」

香は、最初のトレーを受け取って撩の座る席へ運んだ。

距離は近いので、すぐにまた受け渡し口に向かう。

「奥さんのはこっちね。」

湯気が上がるかき揚げ蕎麦が差し出された時、極自然にかけられた言葉に、

ぎょぎょっとしてしまう香。

持ったトレーが振動でぶれた。



「お、お、おくさ…???」

「あんたの旦那さんもいいオトコだねー。

まさかお二人さん、芸能人かモデルかなんかかい?」

勝手に夫婦と完全に決めつけているレジの年配女性に、

真っ赤な香は口パクで声が出ない。



いや、夫婦ではないですと、正直に言おうとしたものの、

今しがた山荘で致してきたコトを思えば、

すぐさま全面否定も出来ず、

かといって¨まだ恋人です¨なんて言える心理状況でもなく、

仕事に関係のないこの女性に、¨パートナーです¨と言っても、

話しが混乱するだけだと、

香は、またシュウシュウと湯気を出しながら、

返す言葉に迷っていた。



「あたしゃ、長いことこの店で色んな人間の顔見て来てっけど、

あんたみたいな美人さんは、そうそう会えないわよ〜。」

「は…、そ、そんな、ことはな」

「ほら、あったかいうちに早く召し上がってちょーだい!」

香の返事を待たずに、3つ目のトレーを差し出しながら、

三角巾をした女性は香の片手に黒い丼が乗ったお盆をバランスよく手渡した。

出汁の香りを纏った湿り気のある湯気が鼻先をくすぐる。

「あ、ありがとうございます。」

「ごゆっくりー。」



再度、ギクシャクとしながら両手にトレーを持ってそばのテーブルに向かう。

「りょ、撩のはこっちね…。」

3種類のそばを頼んだ相方の前に2つのトレーと3つの丼が並ぶ。

撩は、先のやりとりをちゃっかり耳にしながら、

香の挙動不審をくくっと肩で笑った。

そんな撩の反応に気付くことなく、

自分の席に天ぷらそばを置くと、香は水のセルフコーナーを探す。

「あ、あたし、お水、取ってくる。撩、先に食べてていいよ。」

「あー、腹減った。いったらっきまーす。」

撩がパシっと割り箸を割る音を耳にしつつ、

顔をまた真っ赤にして席を離れる香は、

冷水器からグラス2つに冷たい水を注いだ。



「はぁ…。」



早く体温を下げたい。

外は、もう息が白くなる気温の季節と時間なのに、

どうにもこうにも体が火照り上がって仕様がない。

一体、これから撩との関係を問われた時、何と言えばいいのか。

香の中では¨パートナー¨としての立場が、第一中核だ。

しかし、関係が変わってから、仕事で接触する人、身近な人、

滅多に再会する機会がない人と、どう説明すべきなのか、

迷う事案が一つ増えてしまう。

香は、うーんと眉に浅くシワを寄せながら、水を持って席に戻った。

撩の前に、グラスをコトリと置いて、

すごごごごっと蕎麦をすする相方をちらりと見やる。




— さすが俺のパートナー —



4、5時間前に、濃密な時間を過ごした中で、

撩がそう言っていたことを思い出した。

またぶわっと顔が赤くなる。

あわてて持って来た水を勢い良くごくごくと飲む香。

「な、なんら?」

口から蕎麦を出したまま、撩がきょとんと香を見る。

「あっ、う、ううん、な、なんでもないの!い、いっただきますっ!」

撩はすでに2杯をカラにし、3つ目の丼に箸をつけた。

香は、あたふたしながら、

まずれんげで出汁つゆを掬ってつと一口すすった。

「あ、おいし。」

正直、味は期待していなかったが、いい方向に裏切られる。

なかなかの美味しさに、蕎麦を箸でずずとすすり上げた。

程よい腰に歯ごたえに、鼻に抜けた蕎麦の香りで早々に満足感を得る。

二口、三口進めると、

せっかく水で冷めた体温がまたじんわりと高まってきた。



「うん、美味しいわ、このお蕎麦。体があったまるわぁー。」

これなら、撩が近過ぎて反応してしまう妙な照れで赤くなっていても、

温蕎麦で火照っていると誤摩化せるかもと、

わざと、食事の温かさを強調してみる。

とりあえず、やっとまともな食事にありついた。

いずれにしても、

昨日の昼からの食事では、明らかにビタミンが足りないと、

香は、今日の夜食になるべきメニューの計画を立てながら、

かき揚げをはぐっと味わう。



「ふーっ、ごっそさん!」

「!!!っ、も、もう食べ終わったの?」

目の前にあった3つの丼は汁までなくなっていた。

「買いもんする店はどこに寄っかな。」

足を組んで、再び頬杖をつく撩。

「え?いつものスーパーでいいんじゃないの?」

蕎麦を食べながら、

なんで場所を選ばなきゃならないの?ときょとんとする香を

ちろっと見やる撩。

「おまぁ、知っている連中に会ったら、どうなるか知ってんだろ?」

「あ!」

ぽとっと割り箸が手から落ちる。

「いや、別にいいんだぜ?いつものところで。

おまぁが、野次馬根性むき出しの連中から

根掘り葉掘り聞かれて、問題なければ、だがな。」

頬杖のまま目を閉じ実に涼しい表情で淡々と説明されてしまった。



「……う。」



香は、すっかり忘れていた。

あれから2週間、撩と香のこれまでの事情を知っている

新宿界隈のお仲間たちの間に、

ウワサだけが、尾ひれ腹びれどころか、

尻びれ、背びれ、胸びれに、さらには

脂鰭まで付けられて広がっている中、

彼らが、とにかく何かを知りたくてうずうずしていることを。



「う〜、…で、でも途中で高速降りてスーパーとか探すの面倒かも…。」

香は丼の中に落とした箸を拾い上げて、

また左手を器の側面に添えると、つるるると蕎麦をすすってみる。

正直、慣れない店での買い物はあまりしたくない。

モノの売り場が違うと探すだけで時間のロスだ。



「さっと買って、さっと戻れば、だ、大丈夫じゃない、かな?」

そう提案しながら、

かき揚げにとどめをさして、れんげで汁をすすっと口に運ぶ。

「あー?おまぁ、それでいいのか?」

「んー、買い物メモあれば、そんなに時間かかんないと思うし…。」

「んじゃ、いつもんところに行くか。」

「うん。」



これからどう動くか、ある程度方向性が決まる。

馴染みのスーパーの閉店は夜8時。

その前にすべりこめればいい。

最後の二口、三口の蕎麦を味わい、

香も食事に一区切りつけることにした。


*******************************************
(6)につづく。





うーん、どうもこの2週間、
日中の食事が麺類に偏っとるがな。
そばの花、今年ちゃんと撮影できないまま収穫時期になってしまいました。
乾燥蕎麦のパッケージコレクションをしたりしてますが、
奥深い食材だな〜とつくづく思います。

28-04 Parking Area

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜    


(4)Parking Area ************************************************** 2816文字くらい



「道がつながってたんだ…。」



最初、山荘に到着した時、どうしてここに車が侵入できるのか

分からなかった香は、

まるで獣道のような、

見た目では分からないくらいの細い未舗装の通路を抜けて、

林道に入ったことで合点した。



車体に当たる枝葉で

車が傷付きやしないかと気にはなったが、

過去に大きく破損しても、いつの間にやら修繕されていることを思えば、

小さな引っ掻き傷で大騒ぎすることもないかと、

香は、またシートに座り直した。



「まぁ、アジトっつーのは、簡単には入れないっつーのが基本だしな。」

「そうね…。」

間もなく管理人が戻り、

また周囲の森にトラップや侵入者探知装置にスイッチが入れられ、

撩がオフにした監視カメラも起動させられるだろう。

そうこうしているうちに、

あっという間に駅前周辺を通過し、そのまま高速に入る。



「ねぇ、撩…、確かこの先しばらく、パーキングしかないと思うんだけど、

たぶんあまりメニューとか選べないかもよ。」

行きの道のりで各所のPAとSAの場所をチラ見していた香は、

ちゃんと食べるとしたら、

サービスエリアに行くべきかと道を思い返す。

「あー、確かにあそこも立ち食い蕎麦しかなかったしな…。」

途中で寄った日光口のパーキングで、風にはためいていたノボリを思い出す。

2人ともかなり空腹で、すぐにでも夕食にしたい気分は変わらず、

これならば、駅前の店のどっかに入れば良かったかと、

若干後悔する。



「だめだ、腹減った。ソバでもいいから食うぞ。」

高速に乗ってほどなく、上りのパーキングエリアに滑り込む。

正直、ご飯モノでがっつり食べたいところではあるが、

とにかく今、何か食べておかねばと、

クーパーを降りた2人は、まっすぐ飲食コーナーへ向かった。



「いくつか種類があるみたいね。」

店内に入り、壁を見上げてメニューを確認する香。

さっきから、胃と小腸がくぅくぅと可愛い音を小さく鳴らしている。

基本立ち食いではあるが、小さなテーブルもあり、

そこを陣取ることに。



「おばちゃん、これとこれとこれ3つ頼むわ。」

かき揚げと舞茸の天ぷらと湯葉蕎麦の3種をレジカウンターのメニューから指す。

「はいはい、食券買って出してね。」

「撩っ、あんた1人で3杯食べるの?」

「悪いか。」

「んー、まぁ普通、か…。」

このやりとりにカウンターの向こうの年配女性がきょとんとする。

「あたしは、かき揚げをお願いします。」

普段はカロリーが気になる揚げ物であるが、

油脂のエネルギーと旨味を欲して即選択。

「毎度!折角の紅葉なのに、あいにくの雨だったわねー。」

「え?」

「ほら、朝からずっと降ってたじゃない?遠くから見にきたんじゃないの?

今の季節は滅多に崩れないのに、なんだか申し訳ないわぁー。」



奥の調理担当に半券を渡して指示を出し、

白い三角巾を揺らしながら、眉をさげて話しかける女性に、

香は思わずそんなことはないと返そうとする。



「あ、お、おばちゃん!だ、大丈夫だったわよ。昨日十分紅葉見れましたし、

今日は、屋内ばっかりだったから、雨にあたることもなかったですよ。」

胸の前で、小刻みに手を振って否定のジェスチャーをする香。

「あらそうかい。でも寒かったでしょ?」

「い、いえ、暖炉があるところでしたから…。」

と口からぽろっとあの状況が出たところで、

また頭の中がピンク色に塗られる。



「じゃ、じゃあ、向こうで座ってますねっ。」

ぎくしゃく感を混じえて赤面しつつテーブルにつく。

先に座っていた撩は、にやにやしながら頬杖をついている。

「どったの?かおりしゃん。」

「べっ、別に!」

と言いながらも、赤らんだ頬に、パタパタと手を小ウチワ代わりに振っている。



テーブルが小さいので、妙に撩との距離も近くて

こめかみと頬骨に添えられている長い指が、

薄く弧を描いているその唇が、

緩いカーブを持つ黒髪の生え際が、

普段よりも細かく見えてしまい、

思わず、肩をきゅっと狭めて視線を下げてしまった。

もちろん香の皮膚は愛らしく赤らんだまま。



「あー、この時間で食っちまうと、また夜中に腹減るよなぁ〜。」

今度は、両手で頬杖をつく撩。

それはそうだと、香もはっと顔を上げて、すぐに提案を出す。

「ねぇ、帰ってからちゃんと作るわよ。あ!だけど買い物行かなきゃ!」

「あ?」

「だって、昨日の午後にスーパーに行こうと思ってたら、こっちに来ちゃったんだもん。」

香は顎に親指と人差し指を添えながら、視線が斜め上になる。

頭の中で冷蔵庫の中身をサーチ中。



「やっぱり寄らなきゃダメだわ。確か、メモ…。」

無意識に腰のポケットに手が滑ったが、着ている服が違う。

「あ、あれ?」

「どうした?」

「あ、あたし買い物メモどこやったっけ?」

「は?」

顎に添えていた指が今度は鼻と唇の間に移動。

考えごとをする時に、

左手の人差し指の第二関節がそこに触れるのが香のクセの一つ。

うーんと小さく唸っていたら、ふいに目がパチッと開いた。

「あっ!そうよ!昨日履いていたジーパン!」

「あ?」

「ちょ、ちょっと撩!あれ山荘に置いて来ちゃった???」



香が指しているのは、今朝方シャワーを終えた後に脱いだ服を

たたんでソファーに置いていたのだが、

それからどうなったかを確認していなかった。

「うんにゃ、後ろに積んであるぜ。」

両手に顎と頬を預けたまま撩が答える。

「よ、よかった…、向こうに忘れて来たかと思ったわ…。」

肩がふうと落ちて脱力する香。

帰ったらすぐにアレも洗濯しなければと、

帰宅後のすべきリストが1つ2つと積み重なって行く。



「じゃあ、どっか寄って行こ。明日の朝の分もないし。」

「りょーかい。」

4日前に買い出しに出て以来、生鮮食品を仕入れていないのだ。

とりあえず必要最低限のものだけ買って帰れば、

明日、明後日にでも再出動すればいいかと、

すでに頭の中は主婦モードに。

すーと、赤みが引いていく香の表情を見て、

撩はくくっと小さく笑う。



「な、なによ!」

「うんにゃ、なんでもねーよ。」

このころころ変わる表情に、どこまで惚れてんだかと、

見惚れていたことを誤摩化すべく、

両手で頬杖をついていた手の平をそのまま顔にぴったりとつけて、

顔面の表皮をびよーんと左右横延ばしにしてみた。

「撩ちゃん、帰ったらお肉食べたーい。」

どこの百面相だと思うほどに、別顔になった相方にぎょっとするも、

香は、撩の顔を視界に入れないように、腕組みをしてぷいっと窓の方を向く。

「わ、分かったわよ!

帰ったら昨日出来なかったことが色々溜まってんだから、

邪魔しないでよね!」

「あーい。」



そこに店の方から声がかかった。

「お客さーん!そば4つ上がりましたよー!」

「あ!はーい!」

香は、注文した食事を受け取りにガタリと席を立った。

「撩の分も持ってくるから。」

「あいよ。」

撩は、自分が選んだ服を纏った香の後ろ姿を見ながら、

片方の頬杖に変えて、ふっと薄く笑った。


******************************
(5)につづく。






撩が顔を伸ばすシーンは、
第330話暗殺決行!!完全版32巻の表紙をご参照に〜。

ここのそば屋が91年にあったかどうかは未調査…。
たしか96年か97年にちょろっと寄ったときは
あった記憶が…。
でも急ぎの移動中だったので、蕎麦食えなかったのだ…。
蕎麦好きの仲間が、意外と上手いぜと、教えてくれたのを参考に
実在のお店を出してみましたが、
レイアウト等は妄想です。
こんなことなら、ちゃんと見とけばよかった…。

【10/13にコメントを下さった方へ】
メッセージ本当にありがとうございます!
&ごめんなさい!近日中に返信をさせて頂きますっ!
2013.10.05.23:32→お送り致しました!10.22.02:30

【訂正しました!】
Sさま、ご連絡感謝です。
シをジに変えましたっ!
ご一報ありがとうございました!
2013.10.22.02:34

28-03 Wheat Flour

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜    


(3)Wheat Flour ***************************************************** 3685文字くらい



「撩…?」



2階から降りて来た香は、

気配があった脱衣所をそっと覗く。

撩は、洗濯機から衣類を取り出し乾燥機へと突っ込んでいる最中だった。



「おう、もう上には忘れもんないか?」

「あ、…うん、大丈夫。」

「んじゃ、キッチン片付けたら出発すんぞ。」

「え?」

香は、まだこの山荘のどこにキッチンがあるかを知らなかったりする。

「この廊下の奥から2番目のドア、先に行ってろ。」

「あ、う、うん、分かった。」

撩が洗濯槽から引っ張り出していたのは、

あの高級な厚手のタオル地で出来たバスローブ。

一体いつ洗濯したのだろうかと、

はてなマークがぽんぽんと浮かぶ。



言われた通り、

奥から2番目の扉の向こうが快適なダイニングキッチンになっていた。

テーブルの上に、コーヒーをいれた痕、

シンクの中には、カップが2つ。

これに自分が持っているマグも合わせて、

まずはこれを片付けなければと、香は腕まくりをし素早く洗い始めた。

布巾を探していたら、撩も合流。

「あ、ちょうどよかった。ねぇ、布巾ってどこにあるの?」

「あー、どこだっけか?その食器棚の引き出しに入ってんじゃね?」

指差された場所は、

いかにもその手のものがしまわれている雰囲気の場所。

「あ、あった。よかった。」

撩は食洗機を開けると、洗浄と乾燥が終わった食器を取り出し、

とりあえずもとの場所に戻す。

「そいつもよこしな。」

香が拭き終わったカップやコーヒーセット類を受け取り、

食器棚にしまい込むと

ぱたんと木枠ガラスの扉を閉めた。



「こ、これでおしまい?」

まるでユースホステルのように、自炊で宿泊するような設備に、

ここで手分けして片付けをする様が、なぜか無性にくすぐったくなり、

顔が赤くなりそうなのを誤摩化すべく、

おしゃべりのネタを探す香。



ふと、視線を泳がせると、

食器棚の脇に小麦粉と書かれた茶色い大きな紙袋がどんと置いてある。

見える数字に思い出したことがあった。

「ね、ねぇ、これって人形と同じ重さって言ってた袋だよね。」

30kgという表示に、

この山荘に到着した直後に聞いた撩の話しが甦る。

「ああ、おまぁ、これ持ち上げられるか?」

にやっとしながら、挑発する。

同じ重さの子供を背負って来たのだ、動かせないワケがないと、

袋の耳を持って持ち上げようとする。

「あれれ?」

最初の力の入れ具合では動かない。

「な、なんで?」

今度は、両手で抱き込んで前屈みになってから浮かせようとするが、

かなりの力を要し、腰に大きな負担がかかる。

20センチほど浮いたところで、どさりと落とした。

「えー?どうしてぇ?」

これでは、横に少しずつ動かすのがやっと。

ましてや、あの人形を背負った時にシンクのワークトップに座らせて

おぶったりしたような、縦移動はとてもじゃないが出来そうにない。



「うそでしょ?同じ重さじゃないわよ。こっちほほうが断然重たいじゃない。」

テーブルに寄りかかって、腕を組みくすくすと笑う撩。

からかわれていると、ちょっとむっとする香。

「うんにゃ、重さは一緒だぜ。」

そういいながら、ガスコンロの下の開き戸を開けて、

腕を差し入れ、元栓のつまみを90度回す。

「うそ…。」

「だから言ったろ、心理実験だって。」

パタンと戸を閉める撩は、香の表情がおかしくて、

くくっと肩を揺らす。

「心理実験?」

きょとんとする香は、撩の言っていることが理解出来ない。

「そ。んじゃ、行くぞ。これだけやっときゃ、あとは管理人のばあさまの仕事だ。」

パチンと照明を消す。

「あん、待ってよ!」

廊下を歩き、暖炉のある部屋に戻ると、随分と気温が下がっていた。

もう火はついていない。

テーブル以外は、最初にここに来たときと同じ様になっている。



「ここも忘れもんないよな。」

声かけに、あたりを見回せば、木目の床の上に広げられた

クリーム色に近い毛色をしたムートンラグが目に入る。

とたんに、自分と撩の姿が残像で見えてしまい、

かぁあと赤くなってプルプルプルと首を振った。

視線をあわてて外すと、

ソファーの上にあの人形が毛布をかぶせられたまま

横たわっている。



「ね、ねえ!あのコは?」

「あ?」

「あの人形、このままにしておくの?」

振り返る撩は、またくすっと笑った。

「あれは、訓練用に注文して作らせたもんだ。

また出番があっかもしんねーけど、それまでは

ここのばあさまが、倉庫か地下に運んでしまっとくだろ。」

冴羽家の備品として置いておくよりも、

このアジトを収蔵先にしたほうがいいだろうと、

あらかじめ教授には申し出てある。



「え?ちょっと待ってよ。おばあさんに運ばせるなんて大変よ。」

「大丈夫だって、怪力ばあちゃんだから。」

「でもっ。」

「急がねーと暗くなるぞ。」

玄関に向かう撩の背中を見ながら、足が動かない香。



「……あたしが運ぶから、ちょっと待って。地下に持って行けばいいの?」

「へ?」

撩が振り返る。

まだ出会ったことのないここの管理人の老人に、

こんな重たいものを持たせるワケにはいかないと、

香は、人形に近付いてキャメルの毛布をそっとはぐった。

一晩共に過ごした幼い子供、偽物とは言え、

実在する心の距離が近い子供たちと姿を重ね見た。

香は、いつも自分がされているお姫様抱っこで、

人形を抱き上げる。

「やっぱりこっちの方が軽いわよ。」

「おいおい、ほっといてもいいっちゅーに。」

間違いなく同じ重さではあるが、どうやらホルモンのイタズラで、

香は、小麦袋より遥かに軽いと脳の中で錯覚している。



「地下?倉庫?」

「しょーがねぇーな。倉庫に持ってくか。」

2人でもう一度、廊下に出ると、

キッチンの隣り、一番奥の扉に案内された。

ギィーと鈍い音をたてて開いた扉の向こうには薄暗く、

パチンと照明が付けられて中の様子があらわになった。



キャンピング用品や、非常食、ストープに、ガソリンなどが目に入る。

壁の一辺には、乾燥を終えた薪がぎっしりと積み上げられていた。

スコップに、釣り竿に、狩猟用のライフルまで納められている

その一角に、長椅子があり、そばにはシーツも畳まれていた。



「あのイスの上でいい?」

「ま、問題ないだろ。」

「よいしょっと。」

静かに人形を横たわらせると、シーツを手にとり、

2、3回折り目を広げてそっとかぶせた。

「これでいっか。」

「んじゃ、行くぞ。」

「名無しちゃん、またね…。」

少し淋しさを臭わせた別れ際の言葉に、

撩もふっと息を吐き出す。

再びパチンという音と共に照明は消え、パタンと扉が閉められた。



「あー、腹減った。高速のどっかで食うか。」

廊下を歩きながら空腹を訴える撩。

「……お昼、食べてないんだよね。」

「メシ抜きで頑張っちゃったしぃ〜。」

頭の後ろに指を組んで歩く撩に、スコンと1トンハンマーが跳ねる。

「って!」

「も、もうっ!が、が、頑張るつ、つ、つもりなんて、な、な、なかったんだからっ!」

全身を赤くして、どしどしと先に暖炉の部屋に向かう香。

再度ラグが目に入り、またまたかぁあと体温が上がる。

一拍遅れて居間に入った撩は、固まっている香の背中を見て、

くくっとおかしくなった。

いたずらを仕掛ける様に、香を後ろから抱き込んでみる。

とたんにビクンと肩が跳ね上がる香。



「どーするぅ?うちもラグ敷いてみっか?」

「は?」



耳の後ろで囁かれる。

「そうすりゃ、床でも合体で」

きるぜ、と最後まで言う前に恥じらい100トンハンマーが振り落とされた。

とりあえずは、床を壊さないように手加減をした香。

柄(つか)を握りしめたまま、腕と肩を振るわせる。

「んと、あんたの頭の中ってそーゆーことしか考えてないのね…。」



潰れた撩をそのままに、

香はわざと足音を立てて照れを隠しながら出入り口に向かった。

玄関の扉をくっと押すと、

雨に濡れた土の匂いが鼻をくすぐり、雫で光る紅葉が目に飛び込んでくる。

うっすらと西の空が夕焼けに染まり、すでに雨雲は遠のいた模様。

昨日と同じく、息が白くなる。



「はぁ…。」



唐突の抜き打ち訓練で、こんなところに連れてこられるなんてと、

雨に洗われた山荘を振り返る。

そこに、腰を押さえながら、よろよろと撩が玄関から出て来た。

キーを取り出し、戸締まりをしている。

「んじゃ行くぞぉ。」

体をギシギシ言わせながら、

クーパーのドアを開けて、どさりと運転席に腰を降ろす撩。

「あ、待って。」

慌てて助手席を開ける香は、ふと動きが止まった。

「……あたし、う、後ろに座ろっかな。」

「ああ?」

さっきから、アノことを思い出させる事案が重なり、

隣りに撩がいることが、どうにもこうにも恥ずかしく、

近過ぎる位置で座ることに若干抵抗が生まれた。

「だ、だって…。」

と言い訳がましい続きを口にしようとしたところで、

ぐいっと手首を引っ張られ、

すとんと左の席に座らされる。



「おまぁの指定席はココ!ほれ早くドア閉めろ。」



目をぱちくりさせる香は、慌ててドアノブを引く。

バンと閉じられる音と同時に、クーパーにエンジンがかかる。



「指定、席、ね…。」



撩がなんともなしに、さらっと言い退けたその言葉が、

まるで、自分の胸の中で、

熱いお湯の入った風船が割れて中身が流れ出たと感じる程に、

深部から指先まで温度が広がった。



— 死なせやしないよ —



そう、言われた時に降って来た感覚と同じだと、

あのシーンがまた甦る。



グオンとタイヤが鳴って、

赤い車は教授のアジトから家路へと出発する。

先の熱を逃がすように右手を胸骨に当て、

はぁと小さく息を吐き出した香は、

夕暮れが迫る中、バックミラーに映る山荘を見ながら、

ふうと深く座り直す。



再び、獣道もどき経由で林道に入り、

ペンション街を直進、2人を乗せたクーパーは、

坂道を下りつつ高速に向かって進んで行った。


************************************
(4)につづく。





カオリン、ここでもプロラクチン分泌です。

本日から3日間、PCから離れます。
まだ出先でネットにつなげられる環境を持っていないので、
諸々の対応は10月15日以降となります。
(それでなくても、返信も激遅で、
 こっちにまともにログインできるのが
 2、3日に1度なのであまり普段と変わらないと思いますが…)

休肝日ではないですが、体をSNSから距離を置いて
見えないもの計れないものを休ませるのも
こーゆー機会がないとなかなかできんかもと…。

こちらの勝手なイメージとしては、
冴羽アパートのネット環境導入は、
1998年前後あたりからを想定しております。
教授のところでみりゃいいじゃん、から
やっぱりそろそろウチでも的な…。
長編が終わったら、この辺も形にしてみたいなぁ〜と。

それではしばし失礼致しますぅ。
(行き先&緊急連絡先等、表ブログを知っている方はそちらをご参照くださいませ〜)


【誤植脱字訂正!】
Nさま、いつも感謝です!
今、直しました!
2013.10.15.23:00

追記
Sさま「煎れる」チェック
変換しました〜!
2014.01.12.22:07

28-02 Settlesort

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜   


(2)Settlesort ***************************************************** 3986文字くらい



時間は少し遡る。



香との初の3連射をなし得た後の撩は忙しかった。

本当は、

このまま泥の様に一緒に意識を飛ばしたかったが、

この山荘で一泊する予定はない。



それ以前に、

訓練を終えた香とここまで抱き合うことも

実は想定外のことだった。



(いやな、…本当は1発だけってつもりだったんだがな…。)



徹夜に近い状態で、

重装備の移動の後は当然深い疲労があるはずだと、

ある程度は自粛しようと、思ってはいた。



しかし、プチン、プチンと己の理性の紐を切ってしまったのは、

香のバスローブ姿であり、

一緒に逃げられないとこぼした切ない表情であり、

暖炉の火であり、

羊と駱駝の毛の感触であり、

珍しく積極的な香の色気であり、

一晩渇望に耐えた反動であり、

香の作ってしまった傷でありと、

多くのハサミが用意されていた。

お陰で持っていた手綱は、きっちりぶつ切りカットされてしまう。



初心者の香に、

オトコを知ってまだ半月も経っていない若葉マークのオンナに、

間髪なしのもっこり3発は、

もしかしたら、本題の訓練よりも疲労させてしまったかもしれないと、

苦笑する。



「俺も、…ナマ3連発なんて初めてなんだぜ…。」



くったりと脱力している香をくいっと抱き直す。

初体験をいくつも味合わせてくれる香に、

感謝を込めてちゅっと唇を寄せるも完全に無反応。



とりあえずは暗くなる前に、この山荘を出発するイメージで、

撩は後始末を始めることにする。



ゆっくりと引き抜いた息子は見事なまでに白樺状態となり、

栓をなくした香の秘部からは、愛液が空気と一緒にポコリと溢れてくる。

羽織っているバスローブの裾で応急処置的に互いの器官を拭き上げると、

乱れた香のローブを胸の上で合わせ包み、

クッションを枕にさせ、キャメルの毛布をそっとかぶせた。



「ちょっと待ってろよ。」



のっそりと起き上がり、自分のトランクスを拾い上げ、とりあえず履いておく。

はだけたバスローブも一応直して帯を締める。

進んだ先は、脱衣所。

たっぷりと予備があるふかふかのフェイスタオルを数枚選び、

そのうちの1枚を温かいお湯に浸して、軽く絞る。

洗面器にも適温の湯を張り、乾いたタオルと一緒に運ぶことに。



居間に戻ると、暖炉の火はだいぶ小さくなっていた。

香のそばによっと腰を降ろすと、

顔から布を当て始めた。

あれから、香の体を清めるのは自分の責務だと、

慣れた手つきで、白い肌を丁寧に拭き上げる。

本当は、このままあの風呂場へと連れ込みたかったが、

初めての入浴は、やはり香の意識がちゃんとある時のほうが楽しいだろと、

またいずれと、うずうずと蠢く願望にとりあえずフタをして先送りする。



緩く絞った温かいタオルを全ての表皮に這わせながら、

他の男にさせてたまるかと、

この仕事は終生自分の担当であると、

愛おしく汗や愛液を拭い取っていく。

邪魔なバスローブも、用をなさなくなったキャミソールも

細い腕からそっと引き抜き、

うなじに背中に上腕にと、やり残しのないように仕上げを施す。

ほどなく別のフェイスタオルで、乾拭きも終え、

用がすんだ布地は洗面器へ。



「よく寝てるよなぁ…。」



無防備な姿をさらしている姫を見つめながら、

手を出せなかった過去がちらりと過(よぎ)る。

今は、遠慮はいらないと、

ゆっくりと覆い被さり、前髪をかき分け、額に吸い付いた。

まだ、すー、すーと寝息を立て、

完璧なノンレム睡眠に堕ちている香。

撩は脱がせたキャミソールを丸めて自分のローブのポケットに詰めた。

もはやこれも無意識の習慣。



「さてと、上に行きますかね。」



バスローブを雑にまとわせたまま、

お姫様抱っこで香を優しく持ち上げると、

スリッパをひっかけ、撩は軽い足取りで、2階の客間へと運び込む。

湿り気のあるタオル地のローブを取り去り、

完全裸体でベッドの上に横たわらせ、

備え付けの軽い高級羽毛布団をぱさりとかけて香の姿をほぼ隠す。



「とりあえず休んどけ…。」



すでにそこには、

あらかじめアパートから持ち出し運び込んでおいた

香の衣類がチェストの上にたたんで置いてある。

前日の下準備の時にセットしていたもの。

エレクトラに注文したものも含めて、

きっと訓練で着ていた衣類は汚れてしまうだろうと、

帰宅用の服をナイショで準備していた次第。

バレないようにローテーションを見極め、

引き出しの奥のほうから選択してきた。



「っさてと!」



撩は、香の着ていたバスローブを腕にひっかけ、

窓際のオイルヒーターに手を伸ばし、スイッチをオンにする。

温度調整をし終わると、

ぽりぽりと頭を掻きながら、ひょこひょこと部屋を出て行った。



その後、浴室に向かい、自分も汗を軽く流して、

香と自分が使っていた水分を含んだバスローブとタオル類を

洗濯機に放り込んだ。

いい加減に洗剤と漂白剤を投入し、起動スイッチを入れる。



いつもの服に着替え、

靴も置きっぱなしにしていたものを履き替える。

暖炉のあるリビングに戻ると、

毛布を簡単にたたみ、ソファーにかけ置き、

ムートンラグを手で撫でながら、余計な痕跡がないかを確認。

管理人は、ばあさまとは言え教授の類友、

あからさまに痕を残していくのはバツが悪い。



ふうと一息ついて立ち上がれば、もう暖炉の火は消滅寸前だった。

ソファーの長椅子に横たわらせたダミー人形は

毛布をかぶせた状態でそのままにし、

香が腰に巻いていた大きなウエストバッグをひょいと持ち上げる。

きちんと揃えてあるトレッキングシューズも指2本でひっかけ、

綺麗に積み重ねられた香の衣類も一緒に抱え、

出入り口に向かった。



見かけによらず、

中から閉めると外からは簡単には開かないセキュリティーの高い扉は、

内側からの移動には労をかいさない。

この建物の全ての窓ガラスは防弾仕様であり、

地下にも深いシェルターがある。

見た目は、ただの小洒落た山荘ではあるが、教授自慢の秘密のアジトは、

ゼンリンの地図にも載っていない。

いざとなったら、

危険が差し迫っている依頼人を避難させるにも使える場所として、

香にもその場所を共有すべきという意味合いも含め、

このフィールドを選んだ。



撩は、雨上がりの山荘の外に出ると、

クーパーのトランクを開けた。

持っていたものを仮置きすると、

中から香のカジュアルシューズをつまみ上げる。

ふと見上げる空には、切れ切れに青さが出ているが、

もう周辺は夕闇が近くまで迫っている。

出来れば明るいうちにここを出発したいと、

開けたトランクをバンと閉めて、

再び山荘の中に戻った。



「あれも片付けちまわねぇーとな…。」



香が休む部屋に一度戻り、靴を置いてくると、

暖炉の前の片付けに手を出す。

木製のローテーブルには、

朝方、撩が準備した食事の跡がそのまま放置。

トレーを重ねて、カップを4つ片手で集め、

持って来たものを全てキッチンに運び、

ビルトイン式の食器洗い器の中に、ちゃっちゃかと並べる。

まだそんなに普及していない便利な家電。

早々に、ここにはちゃんと備えてある。

冷蔵庫をパカっと開けて、食材を確認するが、

保存は効くも一手間二手間かかるものが多く、

鼻から一息出すと、パタンと閉めて外食を選択することにする。



お互い、昨晩は非常食でごまかした夜食に、少量の朝食の上、昼食抜きで

激しく愛し合っていたのだ。

手間を増やすよりは、早く移動してしっかりしたものを食べるべきと

今後の動きを計算する。



「目ぇ覚めたとき、少し何か食わせるか…。」



撩は、テーブルの上に置きっぱなしだった、

ミネストローネの缶をひょいっと持ち上げると、

雪平鍋に水を入れ、ガスに火を付けた。

湯煎の間に、食器棚からカップを取り出す。

朝、使ったコーヒーセットもそのままだった故、

すぐに片付けるのももったいないかと、

ヤカンで1回分の湯を沸かし、ミルを挽く。

フィルターを変え、細かく粉砕された豆を入れ、

陶器のドリッパーにセットすると、

ちょうど沸騰した湯をコンロから下げ、こぽこぽと注ぐ。

待ち時間の間に、シンクに寄りかかり、

煎れ立ての黒い液体をくいっと喉に流した。

はぁと、一息つき、小さい泡が出始めた鍋をちらりと見やる。



香との生活が始まってからも、やめなかったオンナ遊びは、

いつしかコトが終わった後に、

不快感や、苦々しさ、息苦しさしか残らなくなり、

抱いていたオンナの顔が、

香に置き換わったことも一度や二度では効かなくなっていた。




本気で香を失いたくないと思う様になってからは、

他の女を抱くことがもはや激しい苦痛となり、

香に正直に伝えた通り、

ヨソのオンナに手を出そうという思いは、

もはや自分の心理から完全に追いやられていた。



今、長年の大きな波風を越えて、ようやくケジメをつけ、

やっと肌を合わせられる関係に辿り着いた。

事後のこの心地よさは、これまで経験したことがない

全く未知の感覚。



満足感の中に、新たな渇望が予備軍として沸き上がり、

幸福感の中に、小さな罪悪感がわずかにくすぶり、

爽快感の中に、何かの浄化作用を感じたり、

ただ、お互いの性器を擦り合せるだけの行為なのに、

香は、その生々しい所業にさえも神々しさや神聖さを常に感じさせ、

「特別」という表現だけでは追いつかない別枠別格の位置を思わせる。



オトコとして、

これを知らないまま人生を終えていたとしたら、

どんなにもったいないことだったかと、

考えるだけでそら恐ろしくも感じる。



「……んと、すげぇよな、…あいつは。」



ぼそりとこぼれる独り言。

カップのコーヒーをくいっと飲み干すと、

シンクの桶に沈め、沸騰した湯煎中の鍋の火を止めた。



「鍋つかみは…と。」



程よく加熱された缶を缶切りで器用に開けると、

酸味のある香りがキッチンに漂う。

白いマグカップに注がれる野菜がたっぷり入ったスープは、

湯気を上げながら、分配される。



「んじゃ、持って行きますかね。」



こうして、撩の用意したミネストローネは、

香が休んでいる2階へと運ばれて行った。


************************************
(3)につづく。






撩なら、1晩で何発でもって感じですよね〜。

お問い合わせコーナー その2

2013年4月1日から設置いたしました「お問い合わせ専用コーナー」の
コメント欄が、100になりましたので、
スクロールのお手間を削減するために、
「お問い合わせコーナー その2」を準備致しました。
その1は、近日中に日付けの引っ越しをして、
その2が、カテゴリーのトップになるように調節致します。

以下、その1の「お問い合わせコーナー」のご利用案内のコピーと
若干の改訂をしたものを張り付け致します。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


お問い合わせ専用コーナー その2


サイトオープンから1年を過ぎてようやくですが、
正式にお問い合わせの先の窓口を作ることに致しました。


本編中のあとがきもどきでも触れたことがございましたが、
我が家は、やや特殊な事情により日常的にアポなしの自宅訪問や、
固定電話、ファックス、携帯電話(仕事上ネットで公開しているせいもあり)、メール等での
問い合わせや連絡が多く、プライベートにもしわ寄せが生じ、
現在、役場と公的な窓口を作れないかと相談中でございます。
(2019年に施設をオープン出来ないか某組織で検討中)


このような状況では、ブログでの一つ一つの記事に対して
返信を十分に果たせないと判断し、
裏も表もコメント欄は閉じている形を選ばせて頂いておりました。
Facebookも必要最低限(以下?)のコメント返ししかできておりません。


一方で、大変分かりにくい設置だったかと思いますが、
記事の内容上、2012年8月26日より、
「訪問者リストに足跡を残して下さった皆様へ」のカテゴリーのみに、
コメント送信可能とさせて頂いておりました。
しかしこの形だけでは、色々な意味で不十分で超不親切なので、
他のWM様からのアドバイスも頂き、
この度のリンク記事公開に伴い、交信ツールを追加させて頂きました。


当初、メールフォームを作ろうとも考えましたが、
まずは試運転でこちらの記事を
お問い合わせ用専用のコーナーとして設置させて頂きます。


本記事のコメント欄をオープンにしておりますので、
コンタクトをご希望の方はこちらをご利用頂ければと存じます。
必要が生じて来た場合は、パス付きにさせて頂くかもしれませんので、
ご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。


また、大変申し訳ございませんが、
こちらの要領がかぁ〜なり悪く、お返事の対応が大幅に遅くなる場合が多いと思いますので、
ロスタイムを頂戴できれば有り難いです。
お急ぎの場合は、その旨を添えて頂けると助かります。


リクエストにつきましては、対応できるスキルが皆無(泣っ)でございますので、
恐れ入りますがご了承頂ければと存じます。
パスワードのお問い合わせにつきましてもお答えできませんので、
どうか原作から見つけて頂ければと思います。
誤字脱字等のご指摘は大歓迎です。



(追記)
コメントを下さった方のメッセージは、
基本的に非公開とさせて頂いております。
お返事は、返信先の表記がない方は当コメント欄で、
サイトをお持ちの方、メルアドをお伝えして下さった方には、
そちらにお返事をさせて頂いております。



上記の件をご承知頂いた上で、
この欄を活用して頂ければ幸いです。



2013年4月1日(月)
2013年10月9日(水)追記


28-01 Upstair Room

第28部 Let’s Head Home (全19回)  

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜    


(1)Upstairs Room **************************************************** 2905文字くらい



広く柔らかいベッドの上で目が覚めた。



見たことのない部屋の中。

まるで小洒落た山小屋のような木目の壁に、

無垢材の家具が見える。

羽毛布団が顔の半分までにかぶさっていたので、

指でそっと縁をずらした。



全く知らない環境に、

また気を失わされて拉致監禁の状態なのかと、

どきんと緊張する。

しかも、何も纏っていないオールヌード。



窓際にはオイルヒーターがあり、

そこから温められた空気のゆらぎが見えた。

そのガラスの奥には濡れた紅葉。

梢の高さから、どうやらここは2階部分かと想像する。



混乱した頭で、何があったかを思い出そうとする香。

それよりもこの空腹感はどうしたものかと、

くぅーと鳴る胃に手を当てる。



「ここ、…どこ?」



上体を起こしながら、自分の左手が右肩に触れた時、

ナイフで作ったカサブタに気付いた。

「あ……っ。」

一気に全てを思い出す。



急に新宿から連れ出されて、抜き打ち訓練があったこと、

ダミー人形を抱えて夜の尾根道を進み、

ビバーグしてやっと今朝方、目的地の山荘に辿り着いたこと。

仮眠して目が覚めたら、撩に抱かれまくったこと。

そこから、全く記憶がない。



もしかしたら、あの暖炉の前のことは夢だったんじゃないかと、

自分の欲で勝手に見た妄想かもしれないと、

どこまで現実なのかを確かめたい思いで、

布団の中の自分の体をチェックする。



「?」



汚れを感じない。

汗だくだったはずの皮膚は、すべすべさらさらで、

色々な体液がまとわりついていた淡い茂みも水気がない。

「や、やっぱり夢だったのぉ?」

ならば、今自分が何故素っ裸なのか、

ますます混乱する香。



布団で胸元を隠しながら、こめかみを押さえていると、

前腕に増えたキスマークを見つける。

「あ…。」

手首には、ちょうど脈をとる部分に赤く残された吸引痕。

やはり夢ではなかったのかと一部を思い出してみるが、

まだ自分の記憶にイマイチ自信がない。



「い、今、……な、何時よ…。」



周囲を見回すも、この部屋には時計がなかった。

外は明るいが夕方の暗さがある。

ぐったりとした倦怠感を覚えながら、

これからどうするかと迷い始める。

服がないとここから出られない。

何か羽織るものはないかと、まわりを見渡すと、

チェストの上に、見慣れた自分の衣類一式が目に入る。

同時に、かちゃりと部屋のドアが開いた。



「わわっ!」



赤の他人が入って来たかと思い、酷く驚いたが、

そこはもはや他人ではないパートナーが立っていた。



「お、起きたか。」



すでに、いつもの赤Tシャツにジャケットを着込んでいる撩。

ゆっくりとベッドに近付いてくる。

ますますもって、状況が分からなくなる。

撩もバスローブ着ていなかったっけ?と

それがいつの話しなのか、それとも現実じゃなかったのかと、

香は、目をパチパチさせてしまう。



「飲めるか?」

「え?」

そう聞かれて、撩の手に2つのマグカップがあることに初めて気付く。

湯気を出しているそれは、

あの時、コーンスープとどっちがいいかと聞かれた際に、

選ばれなかったミネストローネの方。



「ほれ。」

まだきょとんとしている香の前にずいっと出される白い陶器。

中のトマト色が鮮やかに映える。

「あ、あ、ありが、と…。」

かなり喉が乾いていた。

香は、右手で布団を胸元で押さえつつ、左手でカップを受け取る。

正直、これでは空腹は満たされないが、

とにかく何かを胃に入れなければと、

そっと口をつける。

「あつっ…。」

「慌てるなよ。」

撩は、そばにあったアンティーク調のイスに腰を降ろして、

香の姿を視界に入れながら、自分もカップの中身をすする。



「ね…、今、何時?」

「あー?」

撩も部屋を見回すも、ここには時間を知らせる道具がないことを知ると、

視線だけを動かして、窓の外を見る。

「んー、4時過ぎじゃね?」

ぶぶっ!ごほっ!

「お、おまっ、何吹いてんだよ。」

ベッドサイドにあるティッシュをパスパスと抜いて、

涙目になっている香に渡す。

「だっ、だってっ!!!」

と言いながら、口まわりに飛び散った赤いスープを

こしこしと拭き上げる。

自分がここに到着したのは、確か朝の8時台だったはず。

なんでいきなり夕方に飛んでしまうのか、

時系列が全く理解出来ない。

目を激しく瞬かせ、台詞もうまく出てこない驚く様に、

撩は、くすりと笑いながら、イスに深く座り直す。



「あー、香ちゃんが仮眠して目ぇ覚めた時は、昼はとっくに過ぎてたの。」

「え?」

「この部屋に連れてきたのは3時半くらいだったかな?」

「は?」

ということは、ここで横になっていたのは30分ほどかと

鈍った頭で計算をする。

撩は、飲み終わったカップをベッドボードの上にコトリと置いて、

香の顔にくいっと近付く。

「その間に、何をしたか、おまぁちゃんと覚えてるぅ?」

にまっと小悪魔的な表情で香の茶色い目を見つめる。

とたんにボボボっと耳から湯気が出る香。

撩は腰を浮かせて、香の鼻翼にちゅっと唇を付けた。

「わひゃあ!」

「ここにもついてた…。」

吹き散らかされたミネストローネの具材を、

ぺろっと舌先に乗せるとそのままこくりと飲む。

目を丸くする香をよそにこれからの動きを説明する撩。



「着替えはそこにあっから、準備が出来たら出るぞ。」

「え?」

「ここも一応食料はあるが、作んのめんどーだろ。途中で食って帰るぞ。」

「は?」

撩は窓際に近付き、オイルヒーターのスイッチをオフにする。

「飲み終わったら下にこいよ。」

そう言い残して、自分のマグカップを手に取ると、

親指で階下を指しながら部屋を出て行った。

パタンとドアが閉まる音にはっと意識が戻される。

完全に撩のペース。

もう何が何だか分からない。

ちらりと着るべき衣類を見やる。



「あ、あいつ!いつの間に!」



ストッキングから、タイトスカート、冬用の厚手のシャツに、皮のジャケット、

お気に入りの下着の組み合わせ、そして訓練前に脱いだいつもの靴が床にあった。

一体、いつ客間からこのセットを持ち出したのか、

そもそも、最初にシャワーを浴びた時にどうしてこっちがあることを

教えてくれなかったのか、

疑問符が頭の上でいくつも回る。



「あれ?そういえばバスローブとあの下着は?」



脱衣所に準備されていた高級感たっぷりの衣類は、

撩とのいちゃいちゃで、自分たちの体液まみれのはずと、

それを放置してここを離れるワケにはいかないと、

顔を真っ赤にしながら、

大急ぎで撩の持って来たミネストローネを飲み干し、

部屋にそなえつけあったスリッパをつっかけ、

超特急でいつもの服に着替えた。

部屋を飛び出ようとしたものの、

世話になったこの空間に、なにか忘れ物はないかと

振り返り見回す。



ヒーターはさっき撩がスイッチを切った。

使ったティッシュとマグカップは手に持っている。

ゴミや私物はなしと確認し、

鏡台を覗き、指で軽く髪を整え終わると、

香は薄暗い外の紅葉を見ながらカーテンを閉めた。



「い、行かなきゃ。」



ドアを開けた香は、

まわりをきょろきょろと見渡し、

1階に続く階段を見つけて、急いで居間に向かおうとする。

しかし、どうにもこうにも腰回りが重たく感じ、

「ぁぅー…」と情けない声を漏らしながら、

一段一段、段差を降りて行った。


************************************
(2)につづく。






あらー、もう拍手が20以上、先に読んで下さった方、
ごめんなさい!
あとがきもどきがないことに、
20:31に気付きました…。
あわててリアルタイム打ち込みです。
もう最近、日常でもオトシが多くため息です。
第二幕といいますか、8日〜14日目の7日間のラストとなります。
こんなだらだらな長文駄文乱文にお時間を使って頂き
本当に本当にありがとうございます。
いつのまにか、このサイト2回目の秋。
第三幕につきましては、
10月にどこまで手直しができるかで
連載をさせて頂くかを決めたいと思います。
(できるだけ途切れさせたくないんだけどなぁ…)

【お知らせ】
「お問い合わせ専用コーナー その2 」を
10月9日(水)の1818で設置致します。
2013.10.09.00:30

Nさまっ、いつもご指摘ありがとうございます!!!

27-07 Rise & Fall

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リンク記事調整&修正のお知らせ

当サイトの「CITY HUNTER LINK NOTE」をご利用頂きありがとうございます。

この度、内容を若干微調整致しました。

合わせて修正箇所もございますので、

以下、箇条書きにてお知らせ申し上げます。




【1】閉鎖・リンク切れサイト様をまとめました。

LINK NOTE 2 の末尾に、
「MEMORIES」として、閉鎖されたサイト様、リンク切れのサイト様を
集約いたしました。
一部のサイト様は、別部屋に繋がる場合もございます。





【2】ヨフカシさまのお部屋を移動いたしました。

これまで「主に夜更かし」さまで、「あ行」に掲載させて頂きました
「noncommittal attitude」をWM名「ヨフカシ」さまで、
「や行」に挿入致しました。





【3】サイト開設日の訂正

実梨さまと、Reika.Lee さまのサイト紹介の内容で、
サイト開設日の間違いがございましたので、訂正をさせて頂きました。
お二方には、大変失礼致しました。





【4】CHINATSUさまとnaruさまのサイト紹介の文言を変更致しました。

naruさまのリンク表記で、
十波さまのお部屋の閉鎖にあたり、
コラボ作品のご紹介をさせて頂いておりましたが、
その内容を変更致しました。

CHINATSUさまの紹介文もこちらの思い違いがございましたので、
一部変更致しました。
大変失礼致しました。





以上、4点でございます。
今後、細やかな管理が出来るか怪しいですのですが、
出来る限り、対応させて頂きたいと思います。
(該当サイト様にはすでにご連絡を差し上げております)

27-06 White Sausage

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リンクノート追記のお知らせ

老舗サイト様、復活のお知らせです。

本当はなんと2011年11月にすでに移転オープンされていらっしゃいました。

2年も気付かなかったことに申し訳ないところでございます。

懐かしい方、お初の方それぞれいらっしゃるかもと。

再会できましたこと、嬉しく思います。

毎度の注釈でございますが、こちらの記事ではリンクをつなげておりませんので、

LINK NOTE 1 よりお入り下さいませ〜。

初めてリンク記事をご利用される方は、恐れ入りますが

コチラの説明をご一読頂ければと存じます。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

❏ 045 金 さん    
    CITY OF KIN
    2001.05.18. 〜 / テキスト
    [復活サイト様!独特の世界観、歪んだ500円玉はここのお部屋での出会いでした〜。]

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






もう閲覧できないと、完全に諦めきっていたお部屋でしたので、

発見時は本当に驚きました。

金さん、移転復活ありがとうございます!

近々リンクノートの微調整をいたしますので、

また改めてお知らせしたいと思います。




27-05 Third Round

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
CH専用Twitter
 


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