29-15 Who ?

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目   


(15)Who ?  **************************************************** 1486文字くらい




香の頭の中で流れる音楽会が、

6曲目にかかろうとした時、

その影は、リビングの入口の端からゆらりと現れた。

くすりと笑みがこぼれる薄い唇。



撩が部屋を出た時と同じ場所に、姿勢良く座っている香は、

まだその影に気付いていない。

ドア枠から覗いていたつま先が、

ゆっくりとフローリングの木目に沿って、その一歩目を進めた。

香は、楽に重ねた両腕を丹田に軽く当て、

左肘に触れている指先は、のんびりとリズムを刻み、

薬指が布地に当たる度に、打診のような音が小さく鳴る。



侵入者は、香の目隠しの様子と、

まだ部屋の異変に気付かれていないことを確認し、

予定通りの接近を試みる。

板間のフローリングは場所によって軋む音が出る所もあるが、

難なくクリアし、慎重に距離を縮めていく。

一歩、また一歩と、

ガラステーブル手前の

段差のところまであともう少し、というところで、

動いていた香の指がピタリと止まった。

同時に、背筋がわずかに伸びる。

その様子を目視した接近者も、

ビデオテープのストップボタンを押したかのように、

全ての動きを止めた。







「……気の、せい?」



そうぼそっと呟きつつ、ふぅと目隠しされたままの顔を

リビングの入口に向けた。

瞳は見えずとも、その視線の描くラインは迫る影の頭部を貫いている。

香は、しばし無言で廊下の方に意識を向けていたが、

すっと肩を落として、

腕を組み直し、座っている位置もやや深く腰をずらす。



「……やっぱり、…気のせい、かな?」



小首をかしげつつ、また右手の指がゆっくり拍を打ち始めた。

何十秒か、微動だにせず待機していた影は、

香の警戒のピークが下降したことを悟り、

四肢の動きをじんわりと再起動させた。



ガラステーブルの置かれている一段低い床に、

そっと足底が触れる。

とたんに、香の組んでいた両腕がほどけ、

がばっと腰が浮いた。

伸ばそうと思っていた侵入者の左腕が半端なところで急停止。




「………。」

「………。」



呼吸4、5回分の沈黙。

先に口を開いたのは、香だった。







「……違う。………撩じゃ、ない。」



ぴくんと肩がふれる侵入者。

香の喉がごくりと鳴る。

間をとるようにソファーのコーナーへと、

じわりと後ずさる。

急に緊張感が高まり、唇が乾いてきた。

こめかみにドクドクと早まる心拍音が伝わる。

一瞬だけ感じたほんのわずかな何かが、

この家の同居人ではないことを判断させた。



ならば一体誰が?と、

香は、バンダナを巻かれた顔のままで、

影のほうを見続ける。

相手に分からないように、落ち着かせる意味合いも込めて、

鼻を通る空気の流量を多くしようと試みた。

額には汗がじわりと浮く。

視床下部では過去の情報が次々に引き出されていく。

そして、そこに一つの可能性が導かれた。

布の下で、香の目がパチパチとまばたきをする。

唇を少し舐めて、体をドアの方に向けたまま、

中腰から直立に、自分の姿勢を緩慢に変えた。

ふくらはぎはソファーに触れたまま、

自身の立ち位置を再確認すると、

すっと息を口から吸い込んだ。







「……かすみ、…ちゃん?」



香と対峙している影は、くっと左手を握り込んだ。

そして、ドアのほうを振り向き、

眉を下げてアイコンタクトを送る。

タイムアウトを示すジェスチャーで指示を受けた侵入者は、

黒く長い髪をぱさりと掻き揚げ、香に向き直った。







「……正解、です。」



は…と、息だけの音が香の口から出て来た。

同時に、リビングの出入り口から、

聞き慣れた声がゲーム終了を告げる。



「お見事。もう外していいぜ。」



香は、その撩の声を聞いたとたんに、

へなへなぁとソファーに座り込んでしまった。


*****************************
(16)につづく。






というワケで怪盗305号さんでした〜。

スポンサーサイト

12万HITありがとうございますぅぅ〜

はぅー、いつのまにか、カウンターが12万を越えていました〜。

日々のご訪問本当にありがとうございますっ。

どうしよう…。

お礼企画、なんも準備できておらん…。

何かできんもんかと、

ちょっと考えてみたいと思います。



とにもかくにも、

このサイトに立ち寄って下さる全ての方に感謝です。






ここで改めて、関東甲信越の皆様を始め

北海道及び東日本各地での豪雪の影響を受けた皆様に、

お見舞い申し上げます。

友人知人のFacebookで、

報道されない現地の様子が次々と入り、

こっちの雪はきれいにとけてなくなっているのにと、

積雪に慣れない地域の方々のご苦労を思いながら、

日本だけでない今季の冬の異常さを感じております。

弟が住んでいるところも孤立状態ですが、

一応安否が確認できるだけでも良しと、

遠くから見守っているところです。



まだ、油断が出来ないところもあるかと思いますが、

除雪作業中も含め転倒・落雪・落氷等で、

どうかおケガなどされなませんように。





オリンピックも気になりつつ、

原作時系列だと、

もうすぐ55才になるリョウと、49才になるカオリンが、

どんな会話をしながら、ソチの映像を見ているんだろう〜とか、

関東のドカ雪をこの二人の場合はどんなシチュで

体験するのだろうかと、

妄想ネタは尽きませんが、

これからも、

皆さんと一緒にCHを楽しんでいければいいなぁと思います。





脱線しちゃいましたが、

12万ヒット御礼メッセージでした〜。



2014.02.19.水.18:18.雨水

29-14 Zatohichi

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目  


(14)Zatohichi ************************************************** 3418文字くらい



(いま、何時なのかしら…。

時間の流れが全然分からないわ…。)



香は、足は組まずに揃えたままソファーの長辺側で座り、

重ねた前腕を軽く腹部に当てて、

すすんと息を吸った。

もちろんバンダナで目隠しをされたまま。



(えーっと、さっき確か1時半は過ぎていたわよね。

んー、でもそれから何分くらいたったか、

さっぱりだわ。

こんなことなら、羊でも数えていたほうが良かったかしら?)



周りが見えないまま、ふっと斜め上を向く。

ベランダの窓越しから聞こえる雑踏が、

ほんの少しだけよく聞き取れるような気がしてきた。



(それにしても、いつまでここで待ってればいいのかしら?

もっ、もしかして、夜までとかってないわよね!

って、ううん、何時までなんて全然言われてないから、

下手したら、朝まで待ってなきゃいけないってこともゼロじゃないわよっ。

だ、だとしたら、どーすんのよ!

お風呂とか食事とかっ!)



終わりの時間が分からないことに、

計算外の不安が込み上がる。

視力を奪われた状態で、

果たしてどれだけ待つという行為を続けなければならないのか。



(2時間、3時間コース?

5時間、6時間コース? ま、まさか、24時間コース? )

無意識に、

乾いた唇を上下に軽く動かして薄い皮膚に湿り気を施した。



(も、もしかして、撩、このままいなくなっちゃう、なんてことないわよね…。)



不安要素の各論が一つ、また一つと増えていく。

(ううん、そ、それは、ない、…と、思う。

だって、ずっと一緒だって、言われたじゃない。)

あの日の湖畔の風景が浮かび、また勝手に赤面するが、

ぷるるると顔を細かく振って、

とりあえずこのまま自分が置き逃げされることはないはずと、

信じることにした。

同じ寝具を使うようになっても、

まだ消し去ることが出来ない、一人になるかもしれない恐怖感。

兄の急逝という変えられない過去に、未だトラウマ的になっている。



(だ、だけど、本当にどうしよう…。

2日待っても、3日待っても何もなしっていうことになったら、

あたし、ここで目隠ししたまま餓死しちゃうわよっ。)

香は、バンダナの上から左指で両こめかみを押さえて俯き、

うーんと悩む。

しかし、何呼吸かした後、ぱっと顔を上げた。

(そうよっ、生きること優先だから、お腹減って死にそうになったら、

さっさと台所に行けばいいのよ!

そう言ったの撩だし!)

一つ自己解決。



(撩は、どこまで気配が読めるか試すって言ってたけど、

読むなんて、真面目にしたことなんかないわよ。

ん?ちょっと待って?

もしかして、あいつ、今ここにしれーっと、戻って来ているんじゃない?

だって、ドア開けっ放しだわよね。

たぶん。

閉まる音しなかったし。

そっと閉めても、少しくらい音でるもん。)



完全に気配を消した撩を感じることは、

今の自分の能力では不可と考えている香は、

まずは、部屋の状況を確かめることにした。

(座ったまま動くなとは、言われてないもんね。)

ゆっくり立ち上がると、

背もたれに向かい合い、両手をソファーの背板頂部にそっと添える。

(もし、そばにいたら逃げられるかもしれないけど、

あいつが少しでも動けば、なにか分かるかもしれないし…。)



そう考えながら、

まずは、ソファーの長辺側を端から端まで、

空間に触れるものがないかを確認することに。

左手を支えにして、

人が座っていたら触れるであろう場所に右手を泳がせる。

座椅子部分にそって横歩きをしながら、

一往復終えると、はぁと一息吐き出した。



(な、なんかキンチョーする。これでなんかに触っちゃったらどうしよう…。)



その ” なんか ” が、撩であることを信じながら、

次は短辺側を確かめることに。

端から見たら、怪しいことこの上ない動きではあるが、

まずは物理的な確認作業が先だと、

とりあえずソファーに誰も座っていないと確信する。

両手を背もたれに預けたまま、

香は俯き加減で、またどうしようかとしばし迷う。



(ついでに、部屋、歩いてみようかな…。)



もし、自分が拉致監禁された時、

目隠しをされ照明がない状態に置かれ、

環境や状況が読めない場合もありうる。

制限された中でどこまで何が出来るか、選択肢はケースバイケース。

隔離された場所に、

触れただけで危険なものがある可能性も視野に入れながら、

敵の見張りの目が届かなければ、

暗闇の中で、壁の質、ドアや窓の位置、段差、周辺の物品などの情報を、

光がない条件下でもある程度把握すべき時もある。

もしくは、このアパートにいる時でも停電になったら、

光源がない中で懐中電灯がある場所はちゃんと辿り着かなければと、

防災訓練も兼ねて、何も見えないままリビングを、

手短に空間チェックすることに。



まずは、ソファーの端に片手をついて

そのままそっと段差を越えた。

右腕を伸ばしたら、指先にレースのカーテンがつと触れて、

思った以上に、距離が近かったことに、

この時点で日頃の感覚の修正が必要なことを感じた。

見えないままカーテンを少し引いて、カギを確認する。

クレセント部分に指を這わせ、施錠されていることを知る。

窓からの侵入はなさそうだと、すぐに思うが、

ガラスを割って入られたら、また修理費用がかかるわ、と

出費を心配する香。

セスナが突っ込んだ時は、全面改修。

ミックが発砲した時も、自分がシングルベッドを突っ込ませた時も、

痛い修繕費に大きな苦労をした。




(な、なんだか座頭市みたいだわ…。)



そのまま、時計回りに両手を馴染みのものに指先を触れさせながら、

少しずつ横歩きで部屋を移動。

観葉植物に、テレビに、時計に電話にと、

キャビネットボードの上にあるものが手先に触れると、

目の裏で画像が合成されていく。

ステレオセットの下の開き戸が懐中電灯の指定席。

チャッと音を立てて開けて直感を頼りに指を伸ばせば、

然るべきところに目的のものがあることを感じ一安心。

「これで、いきなり停電になっても大丈夫ね。」

そう言いながら、またパタンと木製の戸を閉める。



よっと立ち上がって壁に沿いながら、

ドアのある壁面まで来ると、廊下からひんやりとした空気が頬に触れる。

「あ、やっぱり、開いてる。」

スイッチの横にあるはずの扉には触れられず、

開放されている状態を確信した香。

「んー、うろついていたら、何言われるかわかんないから、

さっさと座ろ。」




『 待っているだけでいいっつーただろうが。 』




あきれ顔でそう言ってくるオトコの顔が浮かぶ。

香は、開いているドアを背に、

スリッパを床に滑らせながら、

ゆっくりとガラステーブルに近付いた。

(うー、もし今後ろに気配消されて立たれてたら分かんないよー。)

視覚なしで歩き回った限り、

同じ空間に生きた有機物の気配はキャッチできなかったものの、

変態顔をした撩がそばでニヤついている場面が

ちらちらと目の端に出て来て、

気を集中させたいところを若干かき乱される。



「あ、あった。」

さっき躓(つまず)いた落差をつま先で感じたら、

落ちついて片足を降ろし、左手を伸ばしてソファーの端を見つけた。

手探りで、もとの位置を見つけると、

慎重に座り直す。

ぎしっと軋む音に、

ふーっと肩の力が抜けていく。

しかし、油断は出来ないと、出口が開いている方に耳をすませた。

外から聞こえるわずかな車の往来の音と、

さらに遠くから聞こえるハシブトカラスの鳴き声以外は、

感じとれない。



今はまだ大丈夫であるが、長期戦になった時、

この刺激のなさがずっと続いたら

きっと眠たくなってしまうだろうと、

眠気とどう戦おうかと、また考え事が一つ出てくる。

依頼を受ける時も、見張りや尾行で長時間待機はあって然り。

経験からたぐり寄せたアイディアに頭の上で電球が灯る。

「そうよ!座ってるとダメなのよ。眠たくなったら立てばいいんだわ。」

バンダナを目に巻いたままの香は、ポンと右手の拳を左手の平に当てた。

2回目の自己解決。



「で、今何時だろ?」



時間が計れないもどかしさが、

先ほどより割合を増す。

(頭の中で歌でも歌ってようかな…。1曲だいたい5分くらいだし。)

しかし、歌詞全部を覚えている曲があまりないことに気付く香。

(あーん、レパートリーそんなにないじゃなーい。)

とりあえず、意識はいつ来るともしれぬ、その「何か」に集中させつつ、

記憶の引き出しの奥から、

知っている曲をひっぱり出す。



とにかく、緊張し過ぎは長く持たないと、

香は、イメージだけでメロディーのみを頭の中でかけ流し、

時間の経過の目安にすることにした。



********************
(15)につづく。







番組名は忘れてしまいましたが、
暗闇で白パンいっちょの「変態おじさん」が
女性タレント陣を驚かす企画が、頭のすみに浮かびました〜(日テレだったっけ?)。
一応、この場面ではリョウちゃん不在です。
いたら、まさに変態オジサンだ。

リンク記事9件追記のお知らせ!

お待たせ致しましたぁ〜。
リンク記事更新のお知らせです。
バレンタインには間に合わせたいっ、なんて思っていました〜。

もうたっぷり情報を溜め込んでおりました。
全部で9件様でございます。
改めてお知らせを下さった方に御礼申し上げます。

以前、複数のリンク情報をまとめてお伝えしましたところ、
通し番号のメモをとるか、
お知らせの記事とリンクノートのページを往復するかで、
追記情報を確認され、ややご面倒というご意見を頂きましたので、
今回は、2週間期間限定(2月一杯)で当記事内にアドレスを貼らせて頂きます。
(3月末まで食い込んでしまった…。2014.03.28)
その後は、リンクノートからお入り下さいますようお願い申し上げます。

リンクノートを初めてご利用される方は、
大変お手数ですがございますが、こちらの経緯についての記事をご一読頂ければと思います。





LINK NOTE 1

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❏ 003 あさのみ さん    
    M.Y 鉛筆らくがき
    2013.08.20.〜 / イラスト&アニメ考察
    [さらっとシンプルなラインで描かれるRKの魅力、親しみ感のある考察に合点!]

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❏ 010 亜夜 さん    
    亜夜の小部屋
    2007.08.20.〜 2011.09.18. Last Up / テキスト
    [亜夜さんならではの構成に、RKにこんな台詞も言わせられるってスゴいかも。]

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

❏ 024 えびすな さん    
    仮設住宅
    2014.02.11.〜 / テキスト
    [もう嬉しいの一言です!これから紡がれるえびすなさんのCHワールド楽しみです!]

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❏ 034 かけるん さん ( KAKERUN さん)    
    異端神殿
    2006.03.31.〜 2007.08.30.Lust Up / イラスト&テキスト
    [未完を含めて37作品をご覧頂けます。お宝には他で見られないクリエーター様も ! ]

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❏ 074 シン さん    
    C
    2001.02.01.〜 / イラスト
    [10年越えサイト様。17点のお作をご覧頂けます!]

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❏ 088 chimu さん    
    Pale Shelter
    2014.01.14.〜 / テキスト
    [復活サイト様!まさにシンクロニシティーを感じるご登場に大感謝です!]

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LINK NOTE 2
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❏ 132 masayan1979 さん    
    review's blog
    2013.12.13.〜 / 情報
    [細やかなアニメのデータが掲載!読むとまた見直したくなる作品紹介。]

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❏ 140 microgist さん    
    micro star night
    2013.08.26.〜 / テキスト
    [切なさが溢れる二人のやりとりに、今後の展開がとても気になります。]

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❏ 182 ろく さん    
    bears'
    2007.10.13.〜 / イラスト&テキスト
    [有名絵師様!入室方法が分からない方はアンソロBlogの2013.8.30 をチェック!]

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今回は、複数の皆様からお知らせを頂きましたので、
情報提供の感謝も込めて、ここで伏せ字及びHNでご紹介させて頂きます。

・あさのみさん、chimuさんはヨフカシさんのところからご縁を頂きました。
・えびすなさんのお部屋は千日紅さんが産みの親っ。
・亜夜さんのお部屋はTさんからお知らせ頂きました (ブクマ完全見落としでした…) 。
・かけるんさんは、当方がてっきり他のページに進めないと思い込んでおりましたが、
 偶然MENUの入口を見つけたのがつい先日でした… (何年越し?) 。
・シンさんのお部屋はAさんとYさんより追記のご希望を頂きました。
・masayan1979さんは検索で辿り着き、ほぼ同じ頃にMさんより情報を頂きましたました。
・microgistさんのお部屋は、
 Nさんとmさん(実は当サイトのお客様でmさんは3名様ですがそのうちのお一人の方です)から
 ご連絡を頂きました 。
・ろくさんのお部屋は匿名様とTさんからお勧めして頂きました。


また南風アチコ様のHNが atico 様へ変更になりましたので、
「ま行」から「あ行」へ引越しをさせて頂きました。


バナーにつきましては、
引き続き五十音順で順次貼らせて頂きたいと思います。
作業が鈍行で申し訳ないのですが、
少しずつ進めて行きます。

皆様のご協力に厚く御礼申し上げます。
やっと告知が出来たっ、という気分です。
対応が遅くなり、本当に申し訳ございませんでした。
他、情報がございましたら、
お知らせ頂けると助かります。


以上、リンク記事更新情報でした〜。

29-13 Game Start

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目


(13)Game Start **************************************************** 3428文字くらい




まだギクシャクとしている香。

とりあえず、

持って来た食後のコーヒーも飲み終わった。

ちらりと時計を見る。

一息ついたのは、午後1時半過ぎ。



「さて、やるか…。」



その言葉にぴくんと反応した香はソファーの短辺側に、

撩は長辺側に座って、

お互い持っていた白いカップをコトリとガラステーブルに置いた。

「バンダナ持って来れるか?」

「あ、うん。取ってくる。」

ついでに、

持って来たコーヒーセットを片付けて運ぶことに。

さっとキッチンのテーブルにそれらを置けば、

早歩きで客間兼自室に向かう。

タンスの引き出しを開けると、

整えられたスカーフやハンカチ、ハンドタオルが行儀よく並んでいる。

やや厚手でかつ大きめのサイズのバンダナをひょいと選び、

リビングへ急いだ。

綿100%でクリーム色のそれは、使い勝手がいいお気に入り。




「これでいい?」

部屋に入りながら、持って来た物を見せる香は、

まだこれから何をするのか全く想像がついていない。

これを使った止血の方法とかの話しになるのだろうかと、

先が読めないまま布を手渡す。

「オッケー。」

撩は、バンダナを受け取るとパンと広げて、

三角形の二つ折りにした。

「な、何するの?」

ソファーに座った香は不思議そうに撩の手元を見つめる。

「さーて、なんでしょぉ〜?」

と言いながら、さらに折り込んでいき、

5センチ幅まで細く畳んだバンダナの両端をピンと引っ張った。

その作業をするだけでも、無駄のない軽やかな撩の指の動きが、

また香の意識を横道に逸(そ)らせようとする。



(だめだめだめっ!)



香は、ブンブンブンと顔を激しく横に振る。

「な、なんだぁ?」

「なっ、なんでもない!で、い、いい一体何するのよ?」

「こーするの。」

「 ! ! ! 」

どもりながら向き直った時には、

すでにソファーから撩の腰が浮き、

自分に接近してくる動きが見えた。

その刹那、すぐに視界が遮られる。

「なっ!何よこれっ?」

「メ・カ・ク・シ」

そう言いながら、

撩は香の後ろ頭に適度なキツさでくっとバンダナを結んだ。

その指をそのまま香の髪に埋め、

隣に密着して腰を降ろす。

香の左半身に撩の熱エネルギーが服越しにじわりと伝導する。



「ちょーっと実験してみよっかなーと思ってな…。」

「じ、実験?」

ごくりと喉が動いた。

「おまぁが、どこまで気配を読めるか、そいつをちょっと調べてみよっかなぁーと。」

口調は楽しそうに、

まるでゲームをするかのような言いぶりだが、

これは訓練、気を抜くなとその裏の声が心に届く。



「何を…、すれば、いいの?」

「別に難しいことは何にもないさ。ただ、ここで待ってればいい。」

「え?ここに?」

見えないが声がする方に思わず顔を向けた。

「そ。」

撩は、香の頭のてっぺんに置いていた右手を、

ゆっくりとうなじ経由で右肩へと移動させ、くっと引き寄せる。

「ぁ…。」

周囲が見えない不安と、撩の温度を感じる照れが混じり合い、

小さな声しか出なかった。



「俺がこの部屋を出た後、感じた変化を教えてくれるだけでいい。」



平静を装った返事の向こうには、

目隠しをされている分、

かえって美しい鼻筋や、コーヒーで少し湿り気を保った

色形の申し分ない唇が余計に目立ち、

このまま食べてしまいたくなる欲求が膨張中。

反射的に動いた左手を香の右頬に添えると、

親指をつっと香の下唇に触れさせる。

「だ!だめっ!」

突然、香が急に大きな声を出した。

撩の左腕を掴み頬から離そうとする明らかな抵抗。

「お?」

「あ…、そ、その、…集中、できなくなくなる、から…。」



だから、触らないでと、言いたかった言葉は、

恥ずかしさで、続かなかった。

そこに触れられると、

自分の中の何かのスイッチが入ってしまう。

まだ言葉では表現できないその感覚を

さっきなんとか沈めようとしていたばかり。

ソレをここで台頭させるワケにはいかないと、

必要最低限の言葉でなんとか返す。



ふっと撩の小さく吐かれる息の音が聞こえた。

「ま、確かにボキちゃんが、集中力を散漫にさせるワケにはいかねぇーよな。」

くしゃっと香のくせ毛を軽く掻き回した。

それだけでも、

まるで気持ちを伝え合っていない初恋の相手から触れられるような

トキメキ感がくっと胸を締め付ける。

すでに、集中力を掻き回しているじゃない!と文句を言いたくなるが、

これもまだ撩に触れられることに慣れていない

自分の未熟さかと、自身を叱咤しながら

なんとか気を引き締め直す。



「じゃあ、始めっかな。」

「ね、ねぇ、ま、待つだけ?」

ルールの説明を極簡単に終えたが、まだ撩は隣りにくっついたままで

香の頭から手を離そうとしない。

「そ。俺がいいと言うまでは目隠しもとっちゃダメ〜。

何か感じたら、声を出して教えてくれればそれでいい。」

「え?それだけ?」

「そんだけ。」

「は、反撃とかしなくていいの?」

また撩の声のする方に顔が向いてしまうが、当然見えない。

その困惑する目隠しをされた香の姿は、

いつぞや肛門裂傷を負った時に、

薬を付ける付けないで騒いでいたあのシーンも思い出させてしまう。

撩の方が、

吸い付きたくなる衝動を抑えるのが辛くなってきた。

早いとこスタートしないと、このままソファーに押し倒しかねない。



「反撃が必要な訓練は、また別の時にすっから。」

「う…、わ、分かった。」

香の緊張感が触れている全ての部分から伝わってきた。

「で、でも!あ、あああんたが、ヘンなことすると、

あ、あたし…、ハンマー出すの止められない、と思う…。」

自分で体の強張りを少しでも取ろうと、防御反応的に会話を続けようとする。

またくしゃっと髪の房が優しく掴まれる。

「別に出してもかまわねぇーが、

その前にちゃんと気付くか、しっかり集中してろよ。」

からかい口調で頭の上から聞こえた返事に、

少しだけむっと来るが、これは訓練と言われた通り、

この課題を素直に受けることにする。

「う、うん…、分かった…。で、でも!

……あんたが完全に気配消したら、たぶん全然分かんないよ?」

「心配すんな、そのへんは考えてあっから。」

撩がすっと立ち上がる動きを体の右側から感じた。

急に温かさが遠のき、

とたんに淋しさに似た感覚が胸に流れ込んでくる。



「んじゃねぇ〜。」



そう短く言い残すと、撩はスリッパの音を立ててパタパタと、

居間の出入り口に向かった。

開けられたドアは、閉める音はなし。

撩の足音は、廊下に出たとたんに、

まるで空中を歩き始めたのかと思うくらいに、

消音になり、香は進行方向さえも掴めなかった。

ただ、ソファーに座って耳をすませて感じたことは、

リビングのドアは開いたままのはず、と

閉じられる音がしなかったことを確信していた。



目隠しをされたまま、すっと左手を伸ばしてみる。

さっきまで撩が座っていた場所が、ほんのりと温かみを残す。

ただそこに触れただけなのに、じわっと胸骨あたりが熱くなった。




「だ、だめ!集中しなきゃ!」



一時的に視覚を奪われている香。

残った感覚器官をフル活用せねばと、

鼻の通りをすんと吸って確認し、

耳にはベランダの外から雑踏がかすかに届くことをチェックし、

腕まくりをして、肌で感じる部分を増やした。



緊張しすぎると、かえって色々と気付きにくくなる。

適度にリラックスをしておいたほうがいいだろうと、

香は、ふぅっとソファーの背もたれに少しだけ体重を預けて、

指示通り¨その時¨を待つことにした。



*********************************
(14)につづく。







目隠し実験、
一度私もあるプログラムで体験しましたが、
普段いかに視力に頼っているかを痛感です。
原作に冴羽家にアイマスクがあったかよく覚えていないのですが、
二人が使っている場面は思い当たらず。
そのうち買わせるか…。
というワケで、ゲームスタート〜。


【2014.02.10.の一言】
みなさんから頂いたサイト情報、
現在、整理中&ご挨拶まわり中です。
もう少しお待ち下さ〜い。

29-12 Sandwiches

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目


(12)Sandwiches  ************************************************ 4530文字くらい



「おっせーな…、何やってんだ?あいつ。」



コーヒーから湯気の勢いがなくなった。

トイレなら、すぐ戻ってくるだろうと、

また、ごろんと横になって待機中の撩。

要は一緒に食べないとつまらないのだが、

やや長いおあずけ状態に小さな疑問符が浮かぶ。



「……おっきーほー…、かな?」




いや、あいつが長いトイレというのは、

よほど調子が悪い時以外はなかったのではと、

のそりと上半身を起した。

さっきの様子では、体調がよろしくないという空気はなかったはず。

照れ隠しのための、一時逃避だろうと思っていたが、

長い。

長過ぎる。

壁の向こうでは、洗面所の扉が開いて閉じた音1回のみ。



「倒れてんじゃねぇーだろうな…。」



ドアの音以外、異変は感じとれなかったが、

これから、ひとつ企てがある。

あまりだらだらと昼食の時間を伸ばすのは都合がよくない。

ましてや体調不良だったら本日の実施が意味を持たなくなる。

とりあえず様子を確認しておくかと、

立ち上がってスリッパを引っ掛ければ、

パタパタとリビングから右折して、また右に曲がった。



「おい、香、大丈夫か?」

ドアの前で声をかけてから開けてみる。

と、同時に慌てて立ち上がりながら、振り向く香と目が合った。

「ちょっ!な、なに覗きに来…」

てんのよ!と続けようとしたところで、

香の目の前が真っ白い雪原に変わる。

「お、おい!」

撩の声が聞こえたが、姿が見えない。

対面式で抱きとめられたことに気付いたのは数秒後。

どうやら急に立ち上がったために、血圧の変化が追いつかなかったと、

双方が理解できたのも、数秒後。

すぐに視力が戻ってきた。



香は、んー…、と少し顔を歪ませながら、こめかみを押さえる。

こんなことで立ちくらみを起すなんてと、先の転倒未遂といい、

これ以上、自分のドジさ加減を晒すのが情けなくもなり、

撩の腕の中にいたいホンネの願望を強制的に押し込めて、

愛おしい両腕の温かさから脱出を図ろうとする。



「ご、ごめん!

ちょっと立ちくらみしちゃったみたい!も、もう、だ、大丈夫だから!」

撩の胸を布の上からやんわりと押して、

もう放してと距離をおこうとする香。

が、拘束は解けない。

「ね…、もう、放していいよ。へ、平気だから…。」

頬を赤らめて、濡れた前髪の間から斜め上を見上げる。

撩は、香を洗面台の前で抱き込んだまま寄り目で一息すぅっと呼吸すると、

ゆっくり口を開いた。



「……おまぁ、なんか隠してない?」



「は…?」

「なんかおかしい。」

「え”っ?」

「……体調不良、じゃあない、よな。」

「なっ…。」

なんのことよっと、どうやったら誤摩化せるかと

口パク状態の口輪筋をなんとか動かそうとしていると、

まじめな顔で詮索を続ける撩。

「……女の子の日にゃまだ早過ぎるよな。」

言い終わったところで、左側頭部に10トンハンマーがヒットする。

「っで!」

「ばっ、ばかもんっっ!そ、そんなことを真顔でゆーなっ!

だっ、だいたい、あんたに隠し事なんて通せるワケないでしょっ!」

本日、フライパンも含めて4ヒット目。

こんな香の激しいコミュニケーションを受け止められるオトコも

この種馬一人だけ。

いつもの反撃を受けた撩は、

体の調子が芳しくない説は取り下げることに。



奥多摩以降、

この打撃の後に束縛が解かれる流れが多数ではあるが、

撩はまだ香の腰で腕をクロスしたまま。

やっと冷ました香の体温がまた右肩上がりになっていく。

「もう!は、放してってばっ。ちゃんと歩けるからっ!」

雫を散らしながら、

じたばたしている香が可愛過ぎると、もっとからかいたくなるも、

やはり挙動不審の源がイマイチ掴めない撩。

当の本人が諸悪?の根源とは露とも思っていない。

まぁ、元気であるならいいかと、

くすりと薄く笑えば、香の両肩をくっと掴んでくるっと鏡に向かわせた。

「わわっ。」

香の驚きの声を聞きつつ、

右腕を伸ばしてひっかけてあるフェイスタオルを引っ張り出せば、

そのまま、背後からばふばふと小さな顔に布地を細かく押し付けた。

「うぷっ!ちょっ、ちょっと!な、何すん」

「顔洗ったまま拭いていなかっただろ?」

そう言えばそうだったと、はっとする間もなく、

また肩で舵を切られた。

添えられている手の平が温かく、またドキリとしてしまう。



「とりあえず、メシ食おーぜ。おまぁがすぐ戻るかと思っていたから、

ボクちゃんもまだ食べてないのっ。」

「ちょっ、ちょ…!」

と、そのまま後ろから両肩を押されつつ、

リビングに向かって誘導される。

香は、余計なことは考えたくないのに、

一歩進むごとに一度体温が上がっていくような気分で、

歩き慣れた廊下がいつもよりとても長く感じた。





「ほれ。」

すとんと座らせられたのは、ソファーの長辺側。

撩は短辺側にどさっと腰を降ろして、ぬるくなったコーヒーに手を伸ばした。

「さて、食うか。」

2人の間に、

先ほどの撩の愛読書が、中身を下にして開いたまま落ちている。

折り込み式のくだんの写真は不自然に一部だけはみ出ていた。

香は、それを直視しないように、あわよくば気付かないフリを通して、

存在を無視することに。



ずずっとカップの中身をすすりながら、

まずはクロワッサンサンドをひょいっと選ぶ撩。

中身は、ゆで卵を細かくしたものにマヨネーズと刻みパセリを混ぜた具が、

レタスと一緒に挟まれている。

はぐっと頬張れば、もしゃもしゃと口を動かしながら、

食後の予定について伝達する。



「おまぁも、さっさと食っちまえよ。この後、ここでちょっとすることあっからよ。」

「へ?」

まだ赤さを残した表情で思わず撩のほうを見た。

「こ、ここでって、リビングで?」

「そ。」

2つ目のロールパンが撩の口元に運ばれた。

粗挽きソーセージと粒マスタードに、レタスと薄切りタマネギの組み合わせ。

さっき言っていた訓練のことなのかと、

詳しく聞こうにも、またナイショと言われるのがオチかと、

とりあえず自分も昼食に手をつけることにした。

パンは3種類、どれも軽くトースト済みで、具材と触れ合う部分には、

ちゃんとバターも塗ってある。

「い、いただきま…す。」

おずおずと香がまず手にとったのは、

6枚切りの食パンを耳付きのまま横方向で2つにカットし、

調理用ハサミで袋状になるように深く切れ込みを入れ、

その中に、スモークサーモンとキュウリとレタスを詰め込んだ

サンドイッチモドキ。

今の季節、キュウリは高いのよね、と思いながら、

はぐっと一口目を味わった。



「撩、こ、これで足りる?」

香も、もぐもぐと咀嚼しながら、唇の端にはみ出そうになった具材を

親指で拭いつつ隣りのオトコに聞いてみる。

「こんだけありゃいいんでない?」

昨晩、日光の帰りに閉店間際に飛び込んだ馴染みのスーパーで、

割引シールが貼ってあったブレッド類を一通りかっさらって来たのだ。

それらを元に、数種類のお手製調理パンが並ぶことに。

一般家庭では数日かけて消費される量が、

冴羽家では1食で片付いてしまう。

たっぷり作った昼食はみるみるうちにカサを減らしていく。



「んと、あんたって良く食べるわよねー。

今時、成長期の男の子でもそんなに食べないって聞いたけど、

そのうち中年太りになっても知らないから。」

準備したのは、自分だけど…、と思いつつ、

相方の日常の食欲を思えば、

朝のやや軽めな和食と対照的にがっつり洋風ランチで決めたメニュー。

まぁ、味はそんなに悪くないわねと、

仕上がりを確かめながらの食事に、

また撩が余計なことを言い始める。

「ふふーん、心配無用!そーゆーのは、運動不足のヤツが心配するこった。

食った分だけカロリー消費、これが基本だろ?」

食パンのサンドをパクつきながら、撩がニヤリチラリと香に視線を流す。

「つーワケで、夜の運動でもしっかりカロリー消費せんとな!」

ぐふふっと両手で可愛らしく歯形が残る焼き色のついたサンドイッチを持って、

いやらしく寄り目になる撩。



香は、きょとんとしたまま。

“夜の運動”の意味が分からず、持っている情報を脳内でかき集める。

あっ、と思い立った事柄は、

自分が知らされていないシゴトのこと。

食べていた手が止まる。

「ね…、りょ、撩?もしかして、今日の夜、どっか行くの?」

「あ?」

ミニハンマーでも飛んでくるかと思っていたが、

想定外の質問に撩の方が目を丸くする。

確かに、今日は1週間ぶりにパトロールに出ようかと思っていたところ。

「あー、晩飯食った後、ちょっくらぶらついてくるわ。」

一通り主食を片付けた撩は、

口の中にまだ食材が残ったまま返事をして、

ヨーグルトとフルーツにスプーンを伸ばした。

香は、その言葉にギクリとし、動きが止まる。

「戻ったら、香ちゃんと一緒に運動すっから、ちゃんとボクちゃんの部屋で待ってること!」

「は?」

自分の知らないところで受けた依頼で、

どこぞの組織の要人やチンピラを退治するための運動

という訳ではなかったのかと、

じゃあ、自分と一緒に運動とは、撩の部屋で護身術訓練でもするのかと、

まだ撩の言っている¨運動¨の意味が分からない香。

「あ、グローブとか使う?」

「へ?」

香が言っているのは、

先週吹き抜けで使った薄手のパンチング用グローブのこと。

会話が噛み合ない。

アノ最中に、さすがにそれは必要ないだろと、ぷっと小さく吹き出した。

きっちり思い違いをしている香を理解しつつ、

撩はどこまで内容を把握させるか、しばし迷う。

この天然の反応もまた、

飽きさせない好みのドツボだと、ニヤリと心の中で含み笑いをしながら、

とりあえず話しを合わせることに。



「うんにゃ、あれは使わねぇ。」

ガツガツと一気にデザート系をかきこみ、甘いジュースで流し込む。

「使うもんは、俺があとで考えとくわ。」

「あ、そぉ?」

香は、運動イコール訓練のことだと微塵も疑っていない。

はぐはぐと愛らしい口元を動かして、自分の食事を進める。



「ごっそさん!食い終わったら、もう1杯コーヒー頼むわ。」

そう言いながら、撩はソファーの短辺側にごろんと仰向けになった。

コーナー側に頭を向け、座椅子部分からはみ出た足は高く組み、

角に落ちていた先ほどのエロ雑誌をひょいと拾い上げて

また、ばさっと自分の顔に伏せさせた。

今度は、折り込み写真は、背もたれ側にはみ出て

香から見えない位置に滑り込む。

その動きをドキリとしながら、視界の端で追っていた香は、

食事のピッチを大急ぎで上げて、

「ご、ごちそうさま!」

とワザと大き目の声を出し、昼食を終えた。

「ちょっと、ま、待っててね、コーヒー、い、入れてくるから!」

また不自然に咬みながら、ガチャガチャとトレーを抱えて

リビングを出てく香。



撩の表情は愛読書の下でクエスチョンマークが湧いて浮かぶ。

やはり、どこかおかしい。

そういえば、いつもだったら床にこの手の書籍があるだけで、

「だらしないんだから!」

と、さっさと拾って指定席に納めるかトラッシュコースを選ぶ香が、

今顔に被せているブツには、目もくれなかった。



(気付いていなかった、ってワケじゃあない、よな?)



いつもらしからぬ行動の小片に、

夜ベッドの中で聞き出してやろうかと、

本日の夜の運動タイムの楽しみを一つ追加した撩。

すーっと、深く息を吸えば、

鼻から細く呼気を出して、

香とコーヒーの到着を大人しく待つことにした。


******************************
(13)につづく。







あらー、あとがき入れ忘れ…。
というか保存し忘れとった…。
「アップ前に見直していたら、腹減った」と
打った記憶が…。
自己サイト管理が手薄になっておりまして申し訳ないです〜 m(_ _;)m 。
[2014.02.06.02:24]

プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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