29-24 Meet And Potato Stew

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目



(24)Meet And Potato Stew  ********************************** 3390文字くらい




「ん、いい味。」



黄色のエプロンを纏い、

姿勢よくガスコンロの前に立つ香は、

丸い小皿を手に主菜の味を確認中。

今晩は肉じゃがの気分だったので、

豚肉の切り落としを使って、緑豆はるさめもたっぷり使い、

にんじん、じゃがいも、たまねぎ、冷凍いんげんと、

大きめにカットされた野菜たちも、

ごろごろくつくつと一緒に煮込んだ。




調理にかかるまでに、

冷蔵庫の庫内を掃除したり、食器棚を片付けたり、

シンク周りの水垢をとるために重曹で磨いたりと、

先送りにしていた作業をあれやこれやとこなしていたため、

この空間の滞在時間が随分と長くなる。




「そういえば、撩どこにいるのかしら?」



エプロンで手を軽く拭くと、

あとは盛りつけるだけの食材をそのままにし、

器の配膳だけすませて、

相方の捜索に出ることにした。



まずはリビングを覗くことに。

かちゃりと扉を開けてみるが、

中は暗くレースのカーテン越しに

奥の街の光がちかちかと見えるだけ。

「あら?どこいっちゃったのよ?」

入口そばのスイッチに指をかけ、パチッと照明をつけたら、

いつもの明るさで部屋が照らされる。

香は、パタパタとスリッパを鳴らして窓際に近付き、

戸締まりがされているかを確認すると、

少し背伸びをして、

ついでに向かいのビルの様子を伺ってみるが、

くだんのオフィスも暗いまま。

ふぅと一息もらせば、

斜光カーテンもシャッと閉めて、テレビの方を振り返る。

そばの置き時計は午後7時前。




「もしかして、でかけちゃった…?」




奥多摩以降も、

撩が外出する時は何かしら声かけがあったので、

自分が寝ている間に遠方へ出向いた可能性は低いと思いながらも、

とりえあえず、電気を消して玄関に向う。

吹き抜けのフロアを抜け、階段を少し降りたところで、

狭い玄関に、

自分と相方の靴がゆるく揃えられて並んでいるのが見えた。



「外じゃないんだ…。」



6階フロア内にあるトイレにも浴室にも自分の部屋にも、

リビングもその気配はない。

(ま、まさか、探し当てるっていうのも訓練じゃないでしょうね?)

「肉じゃが冷えちゃうじゃない!」

まるでかくれんぼの鬼状態。

7階の部屋とその向かいの部屋も確認してみるが至って静か。

「んー、射撃場?屋上?」

階段そばで腕を組んでやや悩む。

ここは7階、一番下まで降りるのは正直面倒。

腿の筋肉痛もまだ引かないので、

先に近い方の屋上へ探しに行くことにした。



ひんやりとした無機質な階段を登って行くと、

すでに通路には照明が付けられている。

外へ続く重い鉄のドアを押し開ければ、

ネオンを背景に

探していたオトコがそこにいた。

香には背中を向けたままで、

コンクリ柵に体を預け片頬杖をついている。

足元はやはり香と同じスリッパのまま。



「いた!撩、ごはんできたよ!」



ちろっと振り向き様に、香の姿をその瞳に映せば、

またふっと鼻だけで薄く笑った。

「何やってんのよ。」

「べっつにぃ。」

「寒いじゃない。早く中に入って食べよ。」

11月中下旬。

上着なしでは、ここは肌寒い。

ドア口から先に進もうとしない香は、

むくっと上半身を起こして背筋が伸びた相方の背中を見つめる。

夜景を背負い、

縁取られたその体の輪郭に一瞬どきりとするが、

それもバレるのがしゃくだと、出て来たのは平静さを装う台詞。

「ねぇ!冷めちゃうよ!」

わざと苛立ち感を混ぜて繰り返し呼んでみる。

「はいよ。」

含み笑い入りでそう返す撩は、両方の手をジャケットに突っ込み、

そのまま真っすぐ屋上の出入り口に近付いていく。

悪ふざけの表情でなく、いたって素の顔のままで間を縮めて来る様に、

頬骨のところがじわっと赤くなり、

また捕まるかもしれないと、とっさに判断する香の体。

撩の合流を待たずに勝手につま先が階下へ進み、

また誤摩化し用の言葉が出て来る。

「温め直すと余計にガス代かかっちゃうじゃない!」

「だな、さっさと食うか。」

まだ距離があると思っていたオトコとの距離は、

自分の頭の上に置かれた大きな手でゼロになったことを知った。

(ちょっ、りょっ、追いつくの早っ!)

いつも温かいその指先が、少し冷えていることをうっすら感じる。

思っていた以上に外気にさらされていたのかと、

そんなに長い時間何をしていたのか、

かすかな疑問となるが、

深く考える前に撩が先に質問をしてきた。



「メシなに?」

「に、肉じゃが…。で、でも明日は買い物行かなきゃ。お肉在庫切れだわ。」

と照れと疑問を引っ込めて、普通を演じるための応答が続く。

しかし、心の中では、

(ひゃあぁぁ、なんでこんなにくっついてここ歩いてんのよぉー!)

とか

(す、すぐに、触って来るしぃー。)

と、もう「照恥」という熟語を自分で作ってしまいたくなるほどに、

この感情で胸の中が一杯になる。

体温は湯気が出て来る寸前。

この赤くなった顔を見られたくない思いと、

もっと触って欲しいけど、

そんなことを素直にオモテに出せない思いとが

マーブル状に入り交じる。

この2人きりで、左肩が撩に触れそうな近さで、

自分たちの生活空間を歩いているということが、

どうにもこうにも耐えきれず、

いかに切り抜けるかを考え始める香。



そこに撩が、あの長い指をいつものように

くしゃりと香の柔らかいくせ毛の中に泳がせた。

「っひゃ、りょっ、ちょっ、そ、そうだった!

あ、あたし、ヤカンの火かけっぱなしだったんだっ!

と、止めて来るっ!」

と、バタバタしながら撩を置いて一気に階段を駆け下りた。



「………… 。」

撩の右手は空で浮いたままになる。

フェードアウトする香の足跡を聞きながら、

ぷっと吹き出した。

「あらまー、上手に逃げたわねん。」

スキあらば、そのへんの壁に押し付けて、

夕食前の前菜とか言いながら、

また唇を味わおうかと目論んでいたところ。

きっと真っ赤な顔になり、

— ああああんたってば、一体一日に何回ちゅーちゅーしてくんのよっ —

激しく照れながら抗議するだろうと、

撩の頭上にその姿がクリアに浮かぶ。



「ま、一日あたりの最高記録を毎日更新っつーもの悪かぁないがな。」



にやつきながら宙に浮いていた右手を

そのまま左手と一緒に後ろ頭に組み直すと、

またトントントンと階段を降りて行く。



ビル内の警備システムのチェックを一通りすませた後、

屋上で数時間、夕焼けを見送りつつ、

多岐にわたるこれからのことを考えていた撩。

あっという間に夜景が眩しい頃合いになってしまった。

ミックから得た昔の情報、

香の訓練のプログラム、

訓練以外に教え伝えておくべき案件の数々、

機材の補充に、

教授から貰い受けた小道具の受け渡し方法、

エトセトラエトセトラ、

共に生きていくために、

心にとめておくべき事案がそれこそ山のようにある。



「あー、アレも注文しとくか…。」



そういえばと、

冴羽家の書庫にはない、とある資料を入手すべきと

また一つチェックリストが加わる。

そんなことを思い描いていたら、いつの間にか6階の目的地へ。

肉じゃがの香りが鼻をくすぐる。

「はらへった。」

匂いの発生源となっているダイニングキッチンの扉をチャッと開ければ、

もはや“妻”状態の相方は、

ちょうど味噌汁をついでいるところ。

主食は白米に炒りごまを一緒に炊き込み香ばしさと艶を高め、

汁物はワカメとしめじと油揚げ、

主役の肉じゃがに、

副菜は小松菜とベーコンと炒り卵を炒めたもの、

デザートは巨峰と、

いつもながら多種の食材を使った献立てで食卓を整える。

もちろん撩の肉じゃがは大盛りの3人前。

これが当たり前になっていることの奇跡がまたくすぐったい。



「くっていい?」

「手は洗ったの?」

「ちぇっ。」

白木の長イスに座ろうとしたところを、しぶしぶシンクに向かうオトコ。

香のとなりに並んでいい加減に手先に水を流す。

まるで母親に注意をされて

いやいや言いつけを受け入れる大きな子ども。

かけてあるタオルで面倒くさそうに水気を拭き取れば、

香はもう汁碗を配膳し、エプロンをはずしていた。

「冷めないうちに食べちゃお。」

「あいよ。」

そう言いながら2人が一緒に席に着く。

「頂きまーす。」

「いったらっきまーす。」



あれから15日目の夕食の時間。

これまでと別段変わらぬメニューではあるも、

関係が変わってから初の肉じゃがに、

伸ばす箸も感慨深い。



願わくば、

共に年を重ねても、

こうして食卓を共にしていけるよう、

そんなことを心の隅に思いながら、

2人同時に、大きなじゃがいもを

はぐっと口に運び入れた


*****************************
(25)へつづく。






屋上の撩ちゃんは、
シンデレラデート後のイヤリング返却シーンの
ところをご参考にと。

【ご連絡感謝!】
今、子ども会行事から帰宅っ。
Nさん、Sさん、ほぼ同時ご連絡ありがとうございます!
「じゃかいも」「ゆくる」修正させて頂きましたぁぁ〜。
いつもお手間をとって頂き本当にありがとうございます!
2014.04.29.23:15

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29-23 Tracesmarks

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目



(23) Tracesmarks  *************************************** 2403文字くらい




(な、なに…?この香り…。)



目を閉じたままで、うっすらと覚醒すれば、

香水のような匂いが漂っていることに気付く。

ゆっくりと目を開けると、

視界にはガラステーブルの端が映る。



「あ、れ?」



パチッと瞳が見開き、

むくっと上半身を起せば、

客間にあったはずの毛布が香の肩から腰にずり落ちた。



「へ?あ、あたし、なんでここで寝てんの?」



寝起きですぐに状況がつかめない。

まさか、出先で拉致されて薬か何かで気を失わされて、

撩が助けに来てアパートに連れ戻された?

と悲しいかな、職業柄の痛い選択肢が先に思い浮かんだ。

「んー……。」

と指で両目を軽く押さえて、

なんとか前後を思い出そうとする。

随分深く眠っていた。



「あ!」


(そうだった。かすみちゃんが来てたんだ。)

ざっと昼過ぎのことを思い返し、

撩とくっついて休息タイムに至った経緯までの記憶が蘇る。

そこでまたじゅわぁ〜と赤くなり、

目覚ましも兼ねて、自分の頬をぺんぺんと叩いてみる。



時計を見れば、5時過ぎ。

「やだ!もうこんな時間?」

買い物は省略できるが、

台所周りの雑用と食事作りを始めなければならない時間。

(それにしてもこの香りは…?)

と、後ろに振り向いてみれば、

目に飛び込む色鮮やかなバラの花束。



「……な、なにこれ?」



全く心当たりがない。

それにしても、正装をした女性が纏うような

ローズ系の芳香に、

きちんと整えられた花の飾り方に、

今見ているモノの正体や機序の理解が出来ない。



そもそもここには、以前ミックが9日前に持って来た

黄色いサンダーソニアが飾られていたが、

日光に行った日の午前中に家事の雑用の中で、

くたびれた花卉を処理して花瓶も撤収したはずの場所。

またそこに、

しれっと同じように花が置かれている。




「???」



そういえばと、

うっすらと同じ香りをかすみが纏っていたことを思い出した。

「かすみちゃんが持ってきてくれたの?」

(花瓶ごと?ううん、これウチの花瓶だし?わざわざ活けてから帰ったの?

ええ?だとしたらいつ???)

確か、あの後かすみはすぐに玄関に向かってこのアパートを出たはず。

扉が開閉される小さく音も聞こえていた。

「じゃ、じゃあ、リビンクに来る前に?」

だとしても、この白い花瓶を倉庫から見つけるのに

音無しで出来るとは考えにくい。

倉庫はちょうどリビングにめり込む形で位置している。

異変に気付くように集中していたのにも関わらず、

壁越しの倉庫の異音に全く気付かなかったということか、と

花と左側の壁を交互に見やる。



「あ、そういえば…。」



帰り際、かすみが言い残した台詞を思い出す。

— 冴羽さん、非常口の扉の所にプレゼント置いてあるんで、

あとでちゃんと拾っておいて下さいね。 —

と確かに言っていた。

「これのこと?」

花瓶ごとのプレゼントではないことは間違いない。

きっと普通に花束で持ち込まれたのだろう。

ならば活けたのは誰なのか?

適当な該当者が出てこない。



「まっ、まさか、撩!?」



あまりにもミスマッチな行動に、

にわかには信じ難い推論。

が、あの変態オトコ以外どう考えても思い当たるフシはなし。

飾られた5色のバラを見つめたまま、

何十秒かのフリーズタイム。

窓の外から伝わってくる車のエンジン音やクラクションに

はっと我に返り、

とにかく、起きなければと足元のスリッパを探してつっかければ、

毛布を持ってリビングからまずは客間へ向かうことに。



「あいつ、どこいったのかしら?」



気配がない。

廊下を進んで、自室兼客間に着くまでの間、

同じフロアーに相方の存在を感じなかった。

シングルベッドの上で毛布をたたみ指定席に戻すと、

寝起きの顔を確認すべく、

鏡台を覗き込んだ。



「もう!寝ぐせあるし!」



指で立ち上がった房を搔き上げて、

くしゃくしゃとくせ毛に混じらせ誤摩化すことに。

「先に、キッチン片付けなきゃ。」

とりあえずは、

いつもふらふらしている相棒のことはさて置くことに。

昨日おとといで家を空けたぶん、

しそこなった雑用が保留になったままなので、

主婦モードのスイッチが入った香は、

自室をあとにしてダイニングキッチンの扉をチャッと開けた。

夕刻で薄暗くなった空間、

壁際のスイッチに触れてパチッと照明をつける。



「あ…。」



藤のゴミ箱からはみ出ている水色の不織布に、

三角コーナーに残っているバラの葉とトゲ。

かすかに漂う残り香に、

ここであのバラが処理されたことがうかがい知れた。

調理バサミも洗われて水切りカゴの中に入っている。




「……暇つぶしにしても、らしくないことを……。」




やはり、どうも状況に納得がいかない。

これは、本来ならば自分の仕事であって、

ましてや、頼んでもいないのに自ら進んで花を飾るとは、

これまでの撩の所業を見返しても、

得心できる部分が何一つない。




— リョウちゃん、

  カオリンが休んでいる間に一つお仕事したぁーげたからぁ

  ごほーび欲しいなぁぁぁ〜   — 




突然、ポン!と頭に浮かんだ、にへら顔の変態オトコの台詞に、

香の表情がひくひくっと右上に引きつる。

「ま、まさか、後で見返りなんて言い出すんじゃないでしょうね!」

不自然過ぎる行動の裏に、

とんでもないことを要求してくるんじゃないかと、

このテーブルで、にやつきながら花を切りそろえる

撩の姿が思い浮かぶ。




「もう!何考えてんのよ!あいつはぁっ!」




今の時点では、“何考えてんのよ!あたしはっ!”と

自分に突っ込むべきところであるが、

おおかた間違っていない妄想であったことを、

約8時間後に知ることになる。



「さ、片付け片付け!」



頭の上の像を片手でぱっぱっと追いやると、

香は、水回りの整理整頓と

夕食の下ごしらえを同時並行で進めることにした。



ダイニングキッチンの小さな窓の外は、

すっかり暗くなり、

11月後半の日没の早さを感じさせる。



「何つくろっかな…。」



メニューを思い描きながら、

節々の筋肉痛らしき痛みでわずかに顔をゆがめつつ、

せわしく動き回る香であった。



*****************************
(24)へつづく。





ミックが持って来たサンダーソニアは、
6日目の17-09で登場します。
片付けさせるシーンを入れ損なっておりました〜。
よく撩がゴミ箱に捨てなかったもんだと…。

わぁ!2万拍手だ!

うわあぁ!

12万ヒットの準備もまだ整っておらんのに、

拍手が2万を越えとるがな〜。



ポチッとして下さった皆様全てに

御礼申し上げます!




今抱えている長期物件が一区切りついたら

また改めて何かの形で記念記事が作れればと思います。

(シゴトじゃないのよ、でも営業活動込みかも?)




取り急ぎご報告でした〜。



あ、そうだった…。
拍手系キリ番はバトン&アンケートモノ特集をしていたんだったぁ。



29-22 Gift From Kasumi

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目



(22) Gift From Kasumi  *********************************** 2555文字くらい




ジャー!ゴボゴボボボ…



ガチャッと開いたトイレから出て来たのは、冴羽社長。

「あー、すっきりぃ。」

ご機嫌にそうつぶやけば、

パタパタと廊下を歩く。

目指す場所は非常階段。




用足しする前に、

香の部屋兼客間に入り毛布を調達。

あれからソファーでそのままお昼寝タイムになってしまった相方に、

そっとくるませる。

自覚無自覚含めて心身各種の疲れが蓄積中のはず。

奥多摩から帰宅後、間髪入れず教授宅へ通い、

訓練も日課となり、

昨日までは慣れない山中でのビバークを体験し、

あっという間の2週間の中で、

一体何度撩と身を重ねたのか。

両手では足りない回数に、

わずかながら申し訳なさを感じながら、

毛布を持って来た男は、香の髪の中のそっと指を差し込んだ。



「メシまでは休んでろ…。」



そう言い残して、静かにリビングを出れば、

廁経由でかすみが言い残したくだんの場所に向かうことに。

1階駐車場からではなく、

外付けの非常階段から5階に来るように言い渡した通り、

かすみはそこからアパート内で合流。

侵入者に反応するトラップは

撩がそこだけオフにしていた。

辿り着いた非常口の扉の前に立て掛けてあるものが目に入る。




「これか…。」




香が花屋さんのイメージが云々と言っていたことの謎が解けた。

花の香りがかすかに漂っていたのは撩も気付いてはいたが、

注意事項を言い渡していたので、

わざわざ匂いをつけてくることはないだろうと、

アパートに来るまでの間に、

利用した電車や立ち寄った店舗で連れて来た臭気かと思っていた。



「油断したな、かすみちゃん。」



かさりとその置き逃げされたモノを拾い上げる。

店任せではなく、

きっとかすみ本人のアレンジと思われる華やかな演出。

蕾の状態のもあれば、開きかけ、全開、と

各ステージが様々に混じった花弁は、

全部で5色、各5本ずつ。

水色の不織布とポリプロピレン、

クリーム色のリボンで可愛らしくラッピングされた、

赤、白、オレンジ、ピンク、黄色と暖色系のバラの花束。



色ごとに、咲き具合ごとに、国ごとに違う花言葉は、

もはや言ったもん勝ちの世界。

認知度の高いものだけは押さえていはいるものの、

ここまで混ぜ込まれたら、

この花束に込められている裏のメッセージは絞り込めない。



「ま、お祝いっつーことで…。」



狭い空間にローズ系の芳香が漂う。

撩は、左手で花束を逆さにして持ち直し、

右手で頭をがしがしとかきながら、

通路を戻ることに。

この花をどうやって香に見せるのがベストか、

まずは置き場所から悩むことに。



「どーすっかな…。」




今、リビングに行ってテーブルの上に置くパターン。

(休んでる香をわざわざ起して教えるのもなぁ…)



キッチンのシンクに浸け置きするパターン。

(んー、切り口きんのとかめんどくせぇし…)



花瓶を出してキッチンに飾るパターン。

(だぁー!俺が花仕事ってあわねぇしっ)



フラワーアレンジメントのスキルとセンスがないワケではないが、

どこかこっ恥ずかしい思いがある。

このボリュームだとダイニングテーブルの真ん中に置けば、

配膳に支障が出るだろうし、

やはりリビングのソファーの裏の物置あたりが適当かと

そんなことを考えていたら、

あっという間にキッチンまで戻って来た。



廊下の真ん中で立ち止まって、

花束を逆さに持ったまま、

左右にちらりちらりと視線を往復させる。

最後にバラの束を見やれば、

ふっとお決まりの細い息を出した。



「ま、たまには、いっか…。」



撩は、キッチンにずいっと入れば、

一度テーブルの上に花束を仮置きして、

倉庫に向かった。

以前、西九条沙羅をボディーガードした時に、

立てこもりに使われた場所。

ここに普段あまり出番のない花瓶がしまってある。



「こいつでいっか…。」



そう選択肢もない故、

大きさで選んだ白い四角柱の陶器を

ひょいっと持ち上げる。

これなら20本オーバーの花卉も十分飾れるだろうと、

撩は、倉庫の扉をパタンと閉めた。



「さてと、やりますかね…。」


花瓶に水を勢いよく注ぎ、すぐに蛇口を止めれば、

適度な水量がたまり、

それをゴトリと白木のテーブルの上に置いた。

剪定ばさみを探すのが面倒くさかったので、

引き出しを開けて探し当てた

調理ばさみをチャキーンと握って、

冴羽流花道スタート。



するりとリボンを解けば、

透明なポリプロピレンにツーっとハサミを滑らせる。

手早く茎の切り口を落とし、

適度に葉も間引きして、

ちゃっちゃかと形を整えつつ、

頭の中では、この花をちょっとひねったことに使えないかと、

再び複数のパターンをはじき出す。



これが、隣りの堕天使からの花束だったら、

即可燃ゴミにしたくなるが、

協力要請に応じてくれたかすみからの進呈品なら

気分もまた違って来る。



「ぐふっ!いーこと思いついちゃった!」



表情が崩れたことは言うまでもない。

ふふんと鼻を鳴らしながら花をいじるスイーパー。

この緩んだ顔を香が見れば、

きっと『ろくでもないことを考えているんでしょ!』

ツッコミが入ること間違いなし。

そんなことはおかまいなく、

このミスマッチを楽しみながら、

さっさかとオフホワイトの花瓶へバラを差していく。




「へへ、こんなんでいっか。」



鼻先をぴっと親指で軽くこする撩。

短時間で仕上がった飾り付けに満足し、

周囲をてきぱきと片付ければ、

なぜか、2本だけ咲き加減の違うバラをテーブルに取り置いている。




「今日明日ですぐに枯れるこたぁないだろ。」



くすっと笑みを漏らしながら、

姉妹のような成長の違いのある花を拾い上げ、鼻翼に寄せる。



「意外と濃いな…。」



開く前には、まだそんなに匂いを漂わせないと思っていたが、

そこそこ存在感のある香り。

仕上がった花瓶を残して、

一度キッチンから出て行った撩の手には2輪の花。

数分でまた戻ってきたが、その手には文字通り手ぶら。



「ふふーん♪楽しみ楽しみっ!」



ご機嫌モードで作品を持ちリビングにそっと入れば、

まだ香はソファーで意識不明。

音を立てずに、

花瓶を長辺側の背もたれの向こうに置いてみれば、

なかなか感じがいいことに、

(さすがリョウちゃん、いいセンスじゃん。)

と心の中で自分を褒めてみる。




(さてと、警備システムをオンにしてきますかね。)




撩は、すーすーと寝息を立てている香の顔を覗き込むと、

得意技の起さないほっぺちゅうを残して、

再び無音でリビングを後にした。



*****************************
(23)へつづく。






すいません。
撩が花いじるワケないじゃんという方も
いらっしゃるかと思いますが、させてしまいました〜。
(原作中女装を何回かしている撩なので着付けもオッケーなら花もいけるかも?)


頂いたご質問の一つ。
Q:「あとがき」はいつ書いているのですか?
A:もうバラバラです…。

更新日直前の事もあれば、
オリジナル原稿が生きている場合は、
1年前、2年前のあとがきだったり、
数週間前だったりと…。
時事的ネタは、更新日が近い時ですが、
うっかり、あとがきナッシングの時も複数回やらかしていますので、
そのような時は、したくないのにサイトネグレクトかもと。

今回は、更新時間直前の書き込みです。
はやくのんびりCH風呂に浸かりたい…。

[修正…]
ごめんなさいっ!
取り置いた2本のバラの表記を変えさせて頂きましたっ。
矛盾が生じたことに今気付いた…(><)。
2014_06_25

リンクノート追記のお知らせ

こちらの桜は、花吹雪状態です。

カオリンの髪にピンクの花弁が…と

妄想しながら、雑務に追われております〜。



本題のお知らせです。

新年度、また新たなサイト様が立ち上がりました!

ご連絡感謝ですっ!

CHファンにとって、楽しみが増えていくことに、

本当に有り難い限りです〜。





LINK NOTE 1
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❏ 033 kaoriryou3298 さん    
    FLAT
    2014.04.04 〜 / テキスト
    [各種の場面で、冴子さんのポジションが作風をより味わい深く感じさせます!]

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他、まだ頂いた情報の対応に
追いついておりませんので、
今暫くお待ち頂ければと思います。


以上、新規サイトさまのお知らせでした〜。

(2日間くらいCHだけに時間を使いたいよぉ〜)

29-21 Endurance ? ( side Kaori )

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目



(21) Endurance? ( side Kaori ) ***************************** 2119文字くらい




「ねぇ…。」

目を閉じたまま小さな声を出す。

「んー?」

「あたし、今日、縄跳びしてないんだけど…。」

「そんなもん、あとでいいって…。」




さっき後ろからあたしを抱き込んだ撩は、

そのままソファーのコーナーへ一緒にずるずると移動して、

どさっと背もたれに広い背中を寄りかからせ、

長辺側の座椅子に長い右足を投げ出した。

左脚はクッションに乗らないので、床に垂らすことに。

あたしの指定席は、その足の間に作られる。

3本の足が目の前に川の字に並んだ。

あたしの腰回りには、

シートベルトのように熱のある両腕が絡み付く。



やっぱり、この状況が

どうにもこうにも恥ずかしくて照れくさくて、

背筋を伸ばして固くなっていたら、

撩の右手が動いて温かい指が額の生え際に滑り込んで来た。

そのままくいっと後ろに引っ張られ、

さっきと同じように、またあたしが撩を背もたれにして、

座らせられる姿勢になってしまい、

撩の腕はまた安全ベルト状態に。

もうドキドキしてしょうがないのに、

それもバレていると分かっているのに、

つい誤摩化そうと口に出てしまったのが、

冒頭の台詞。



撩は、あたしの髪に頬を刷り寄せ

穏やかな呼吸をしている。

背中に伝わってくる肋骨の動きが全く乱れてなくて、

あたしだけが、真っ赤になって心臓がパクパクしていることが、

なんとなく悔しくて癪に思ってしまう。



それでも、

触れている全ての部分から感じる体温に息づかいに、

匂いに、感触にと、どれもこれもが心地よくて、

逃げ出す気も全く失せ去ってしまう。



本音は、

今あたしの脇腹に触れている撩の指に、

そこじゃなくて、

違うところを触って欲しいなんて思ってしまっている。

頭の皮膚に感じる撩の鼻からの息は、

そこじゃなくて、

キスをしてくれる時のように、

頬にかかって欲しいなんて思ってしまっている。

本当は、

振り向いて、自由になっている左腕を伸ばして、

撩の頭を引き寄せて唇を合わせてみたい。



この先に進むつもりは今はないと、宣言してくれたのは撩なのに、

あたしのほうが、進みたがっている。

なんで、こんなに欲張りになっちゃったんだろう。

このままでも、十分なはずなのに。

撩にこうして抱き込まれているだけでも、

前は考えられないことだったのに。



今は我慢、なんて思っている自体、

ちょっと香っ、あんたどうしたのよ!

と前のあたしを知っているあたしが、

目を見開いて驚いている。




心地良いけど、足りない…。




あたしは、頬に熱を持たせたまま、はぁ…と上向きに息を吐き出した。

「ん?」

わずかに動いたあたしの頭から撩の顎が浮く。

「どーした?」

「べーつに…、なんか昨日の疲れもまだ残ってるのかな…。」

あたしは、自分の欲求の部分をひた隠しにしようと、

なんとか普通に返事をしてみる。




手の居場所がない。

撩に触れたい。




足りなさの穴埋めに、

あたしにとってギリギリの折衷案を選んだ。

撩に上半身を預けたまま、

そっと右腕を伸ばして、撩の膝にゆっくりと指先を添えた。

わずかに、撩の上体が動いたことに気付く。

少しでも反応してくれたことが、ちょっと嬉しくて、

あたしは目を閉じたまま、

すすーっと、手の平を広げて撩の膝を低速でさすってみた。

するとあたしの腰のところに当たっている

ちょうどおへその下あたりの腹筋が

1回かすかに波打つのを感じた。

面白い。

撩の動きが分かって楽しいかも。

布越しに手の平へ伝わる撩の熱が、無性に愛おしくなり、

半ばぼんやりとしながら、

あたしは、普段触れることがない、

厚い筋肉に包まれている太ももを、撩があたしにしてくれる時と同じように、

さわさわと超スローで優しくさすリ続けた。

空いていたもう一方の手は、

撩の腕に重ねることに。




「はぁ…」




頭皮に撩の湿ったため息が当たる。

またさっきと同じ下腹部の波打ちを腰で感じた。



「香ちゃん…。」



そう言いながら、撩は片腕を解くと、

あたしの手の上に、自分の手をくっと重ねて、

さすっていた腕の動きにストップをかけた。

「?」

「……夜まで、待てなくなるだろーが…。」

「は?」

あたしは目がパチッと開いてしまった。

だって、たださすっただけなのよ?

待てなくなるって、その、りょ、りょうも、なに?

が、がまん、してるってこと?

撩の左腕にぐっと力が入ったかと思ったら、

より密着させられた。



「だまって休んでろ。今は休憩時間っ。」



抱き直されて、というよりは抱き込まれ直された。

撩の手が温かい。

指と指の間に入り込んで来たあいつの長い指を

ぼーっと見つめながら、目を閉じた。

離れないでと、言葉には出さず、

指に少し力を入れて撩の4本の指を挟んでみた。

すると一拍置いて色の違う指もあたしの全部の指を挟んできた。



これだけで、心臓が溶けるくらいに嬉しい。



買い物は行かなくても大丈夫だから、

このまま夕食の準備の前まで、

ここでのんびりしててもいいかな…。



耳に届く撩の呼吸に混じって、

外の雑踏もガラス越しに伝わってくる。

いつ招かざる侵入者が来るか分からない生活だけど、

今は、それを少しだけ忘れてもいいかしら…。




あたしは、恥ずかしさを残しつつ、

力をふぅっと抜いて、

撩に体重を預け、

言われた通り¨休憩時間¨を過ごすことにした。


**************************
(22)につづく。







撩もけっこう耐えつつ、
こーゆー時間も実はそれなりにじっくり味わっていたりして。
うちの冴羽家は、まだくっついて半月ということで、
どこでもいつでも合体までは、
撩がカオリンを気遣って、
もーちっとかかるイメージなもんで。

順番としては、
撩の部屋⇒香の部屋⇒お風呂⇒キッチン⇒射撃場⇒冴羽アパートのどっか
⇒やむを得ずラブホ⇒このあたりでリビング?…、
屋上はきっとカオリンかなり嫌がるかもなぁとか、
でも他のサイトさんで読むのは好きだしぃ、
クーパーの中は狭過ぎるしぃ、
とか妄想している自分を客観的に見たら
何も肯定できない今日この頃…。

プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
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拍手1000パチ記念につけちゃいました。



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試運転中…

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