08-17 Return

第8部 Oi Wharf 

奥多摩から4日目


(15)Return *********************************************************************2517文字くらい



クーパーのエンジンが切られる。

駐車場に2人が降り立つ音が響く。

日付が変わった深夜。



香は助手席から出たところで、車と撩にいきなり挟まれてしまった。

「りょっ…。」

「続きは帰ってからって言ったろ?」

ここなら教授の監視カメラもない。

車内で香に触れるのを我慢していたので、

自分たちのテリトリー内に戻ってきたとたんに、

周囲への遠慮の箍が取れてしまった。

「んんんっ…。」

クーパーを背に深く抱き込まれ、さっきよりも激しいキスが始まる。



香は突然の撩の行為に戸惑っていたが、

男の体温を感じているうちに、

2人での無事の帰宅に、込み上げて来るものを感じ、

口付けの最中に、自分から撩の背中にゆっくりと手を回してしまった。



自分の腕では届かない広い背に、少し力を込める。

撩は、香の反応にやや驚いたが、嬉しそうに表情を緩ませ、

動きを加速させた。

調子に乗った撩は、今すぐここで致すつもりはなくても、

ついつい、香のふくよかな胸に手の平がさわさわと移動してしまう。

「ぇえ?」

「撩ちゃん、お部屋までガマンできなぁ〜い♡」

驚き少し身を捩った香の視界には、自分の胸に顔を埋めるスケベ面の撩。

「ちょ、ちょっと待ったあああああっー!」

恥じらいハンマー100トンが出現。

コンクリートの床に潰されたゴキブリ一丁。

ヘッドと床の間から、手足だけがピクピク動いてる。



「ああああんた、こここ、こんなところで、な、なに考えてんのよっ!

服もぼろぼろで、汚れ放題なんだから、は、は、早くお風呂入ってきなさい!!」

「へべろ〜ん…。」

香は赤い顔のまま、平らにつぶれた撩をずるずると引っ張り上げ、6階へと昇って行った。

玄関を開け、浴室に向かい、脱衣所にぽいっと放り込まれる撩。

「き、着替え、も、持ってくるからっ。」

どもりながら、そう言い残し、

すぐに出て行こうとする香の後ろから撩の声が追いかける。

「あー、いらんいらん。どうせ脱いじゃうし。」

沸騰する香。

「だっ、だだだめ!家の中、すっぽんぽんで歩く気?

は、早くシャワー浴びちゃいなさいっ!」

湯気を出しながら、香はパタパタと廊下に出て行った。



(あ、安心したらトイレ行きたくなっちゃった。)

教授のところでは用足ししていなかったくらい緊張していた。

脱衣所を出て、客間に手提げを置くと、すぐにトイレに寄り、

撩の部屋に服取りに7階へ上がる。



ミックの話しを聞いた時、150人を2人で相手にという事態に、

もしかしたらと、ぞっとした。

中に、一人訓練を受けたヤツが混じっているという情報も、

撩たちが出発した後にキャッチしたことも聞き、

安心できる要素が削られた。



いくら、教授やミックが、心配無用の言葉を用意してくれても、

やはり、撩も生身の人間。

間違いが起こらないという保証はどこにもないのだ。

ただ、手元にある情報を抱えながら、

待つことだけしか出来ないもどかしさと不安に、

神経がピンと張りつめていた数時間。



そこに、ファルコンの悪戯が重なったのだ。

再会の喜びを膨らませるには十分過ぎた。

香は、撩のインナーを抱きしめてベッドに膝ま付き、涙を一筋流す。



「…っかった。ちゃんと戻ってきてくれて…。」



これまで幾度となく味わった、失うかもしれない恐怖。

ファルコンとの2度にわたる決闘も、

黒蜥蜴に勝負を挑まれた時も、

海原戦で撃たれた時も、

そして、自分には教えられていない裏の仕事に関わっているだろうと思われる時も、

撩の生還が100%という訳ではないことを

そのつど思い知らされ、

自分の存在をも足元から崩れ落ちて行く感覚に、

何度も押しつぶされそうになった。



いつもの生活空間に戻ってきた安堵感から

力が抜けそうになるが、

香は気を取り直して立ち上がった。

その刹那、

いつのまにか接近していた撩に、後ろからがばりと抱きしめられてしまった。



「?!?!?!」

「そんなもんより中身を抱きしめろよ。」

顎を掬われ肩越しに熱い唇が降りてくる。

「!!」



一応撩の腰にタオルは巻いてある。

首にもタオルはかけてあるが、

拭くのも煩わしいと思ったのが分かるくらい

いい加減なほど水滴が残っている。



撩の急襲にバランスを崩した香は、

そのまま撩と一緒にベッドの上に弾んでしまった。

「きゃあっ!」

持っていた着替えが床に落ち、倒れ込んだ弾みで二人の唇が離れた。

組み伏せられている自分に気付く。



「も、もう上がったの?」

「おまぁが、早くしろっていうから。」

髪はまだ薄ら濡れたまま。

「し、し、しずく垂れてるじゃないっ!」

撩はにやりとして、鼻先同士を触れさせた。

「……拭いてくれるぅ?」

「!!」



シャンプーの香りが漂う。

香はかぁーと赤くなり、硬直してしまった。

「俺はこのままでも、かまわねぇーけど、

おまぁが嫌だったら拭いてちょーだいっ。」

ちゅっと鼻先に吸い付く。

「うひゃあ!」

(こ、こ、この変わり様は、一体何なのよぉぉ。)



激変した自分たちの関係、

つい5日前までは、これまでと何ら変わらなかった距離。

それが奥多摩から戻ってから今日で4日目。

とにかく触れ合ってくる撩に、まだ自分の気持ちが追いついていない。

香は、ちょっと悔しさを込めて、むっと唇を結んだかと思いきや、

撩の首にかけていたタオルで撩の黒髪を

がしがしわしわしと激しくかき回し始めた。



「てててっ!」

事ある度に心臓が跳ね上がる驚きや照れが悔しくて、

仕返しの思いを込めて、乱暴に撩の髪の湿り気を取っていく。

「お、おい!もうちっと優しくしろよっ!」

「ちゃんと拭いてこないほうが悪いんでしょっ!」

向き合った二人の視線がからむ。

香の手がふと止まった。

茶色い瞳の表面は先ほどの涙で潤んでいる。



撩が、戻ってきた。

そう思っただけで、涙腺がまた緩んでくる。



「りょ…、お疲れ、様…。」



ちょうどタオルがカーテンの役割を担い、

次の撩の動きを隠してしまった。

撩は両肘を香の脇につき、

その小さな頭を2つの手の平で包んだ。

撩の頭にタオルを乗せたまま、香の指にくっと力が入る。

二人の接点から聞こえる、唇と舌の絡む音と呼気が、

タオル越しに撩の部屋に重なっていく。



「ん…、ふ…。」



(撩のキスってずるい…。何も考えられなくなる…。)

そんなことを思いながら、

香は愛しいパートナーの帰還に、

今のこの流れを抵抗なく受け入れはじめた。


*********************************************
第9部(1)につづく。第9部はパス付きでございます〜。







大井埠頭編、な、長かった…。
お二人とも、
いわゆる一仕事終わった後のエロい気分になっちゃうモードです。
翌日は、フリーなので心おきなくいちゃついてくれ〜。
とにかくパス付きの中身については、
過剰な期待はしないでねぇ〜(逃っ)。

【ホトトギス】
庭の株が今日の朝、咲きました〜。
2012.10.09.22:40

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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