10-04 Handmade Pizza (side Kaori)

第10部 A Holiday

奥多摩湖畔から5日目


(4)Handmade Pizza (side Kaori) ********************************************* 2799文字くらい



あーん、歩きにくい…。



とりあえずトイレ。

キッチンで水分補給。



リビングに入って窓を開け、

いやに明るい外に時間を確認するため、

電話の横の時計を見る。

「えええーーーっっ!!!こんな時間なのぉ!!」

思わず大きな声が出た。

あと十数分で正午。



「はぁ〜、

 やっぱり起きれないじゃなーいっ。

 きょ、今日が何もなくてほんと良かったわ…。」



早足で玄関に向かい

新聞を取りに行く。

急いで食事作らなきゃ。

その前にシャワーを浴びなきゃね。

キッチンのテーブルに新聞を置いて、

自分の部屋に行って着替えを選ぶ。



脱衣所に行くと、洗濯機の中で、

夕べ自分たちの体の下に敷いていた

薄手の掛け布団が既に洗い終わっている。




「……こ、これ、撩が?……うそ。」




こんなことを進んでするようなヤツではなかったはず。

あたしは、驚きながらパジャマを脱ぐ。




「あ、あれ?」




汗をたくさんかいて、

色んな物でべたついていたはずの体が、

全然汚れていない。

え?え?え?

も、もしかして、撩が、ふ、ふ、ふいて…くれた?

そういえばと、

チェストの上に置いてあったタオルと洗面器を思い出す。

かぁーとまた赤くなってきた。




と、と、とりあえず、シャワー浴びなきゃっ。

真っ赤に火照ったまま、浴室に入った。

ふと、鏡を見る。




「えええーっ!?なによ!これっ!」





増えたキスマークに驚く。

まるで何かの病気みたいじゃない!!

赤に、紫に、藍にとグラデーションの幅がある。

思い出して、下腹部がじわりと熱くなってきた。




「っば、ばか!な、なに反応してんのよっ!」



一応、全部服で隠れるところではあるけど、

これじゃ温泉とかにはいけないじゃない!

って、そんな予定もないか…。

さっさと洗って、

食事作って、掃除に、洗濯に、伝言板に、

明日の準備に色々することがあるから、

午前中のロスを取り戻さなきゃ。



大急ぎで浴室を出て、体を拭き、いつもの服に着替える。

今日も、カジュアルなズボンにシャツ。

脱衣所を出ようとして、

棚の隅に置いてあるペンライトのような物が目に入った。




「何かしらこれ?望遠鏡?まぁ、後で撩に聞いてみれば分かるか。」




なんとなく

湿度の高い所には置いたままにしてはいけない気がして、

それを拾い上げ、自室に戻り、

髪の毛をドライヤーで乾かし始めた。

なんとか身支度を整え、軽く乳液や保湿液を施した。

ほぼノーメイク。




「さ、早く動かなきゃ。」




大急ぎでキッチンで食事の支度にとりかかる。

でも、困ったわ。

これじゃ、また素早い動きが出来ない。

ううん、ちょっと頑張れば対応はできるだろうけど、

この腰回りの動きにくさ、

というか内部筋肉痛みたいな感覚って、

どういうことよぉ?

いざっていうときに、

こんなんじゃ、また撩に迷惑をかけてしまう…。

そんなことを考えながらも、

仕度の手は休めない。



今日も、

朝食と昼食の兼用になってしまうけど、

しかたないよね。

手作りピザをメインにサラダとフルーツをたっぷり用意する。

自分で作った大きめのピザ生地は片面だけ焼いて冷凍してあるから、

トマトソース塗り広げ、

ピザ用のゴーダチーズを散らして、

適当に具材を乗せてオーブンで焼くだけ。

仕上がったら、

イタリアンパセリをちぎって刻んでたっぷりかける。



2枚目を焼き終え、撩を呼びに行こうか迷う。

出来立てのほうがチーズも柔らかく伸びて美味しいので

すぐに食べて欲しいところ。

しかし、

そのまま寝かせておいたほうがいいか、

戸に背を向けて配膳しながら、うーんと悩んでいたら、

突然後ろから太い腕に抱きしめられた。



「うわあっ!」

「おっはよっ、香ちゃんっ。」

ほんっとに、この男は心臓に悪い!

「さっきのお返しぃ〜。」

伸びてきた右手で顎を掬われ、肩越しに鼻先をぱくっと吸い付かれる。

「うひゃあっ!」

ちゅっぽんと離れる撩。




「あ、あ、あ、あ、んたっ!ひ、ひ、昼間っからっっ!」

慌てふためきながら、紅葉シーズンの色になるあたし。

「あんれぇ?カオリンもさっき同じことしたじゃなぁーい。」

ぼぼぼっと沸騰。




「ぼくちゃん、朝昼晩関係ないもんねー。いつでも大歓迎♡」

「あ、あんたっ、まままままたタヌキ寝入りしてっ!」

いやーん、やっぱり、起きてたんだっ!

自分の行動が恥ずかしくなる。



首にタオルをかけ、

かなりご機嫌モードでキッチンに登場した撩は、

テーブルの上の料理を見て、顔がぱっと明るくなる。

「あー腹減った!おっ!うっまそー!いっただっきまーす!」

まだ、呆然としているあたしをそのままに、

チーズを糸状に引きながら

ピースをがつがつ食べる撩。

はっと、思い起こして、立ったまま話しかける。




「あ、あ、あの、ね。りょ…、いろいろありがと…ね。」

「んあ?」

ピザとサラダをたっぷり口に頬張ったまま、

視線を上げる撩。

なんだか可愛い。



「なぁーにをかなっ?」

わざと意地悪っぽく聞き返して来るのに、

速答できないあたし。

「っ〜〜〜。」

ニヤニヤしている撩をじと目で見ながらなんとか言ってみる。

「その、せせせん、たく、とか…、あ、あの、その…。」

だめ、言えない。

着替えさせてくれてありがとうって、

恥ずかし過ぎて言えない。




赤く硬直しているあたしをくすくす笑いながら撩は、

次のピザのピースをパクッと食べた。

「撩ちゃんのアフターケアは高いぞぉ。」

「へ?」

撩がくすりと笑う。

「後でしっかり報酬もらうから気にすんなっ。

ほれ、お前もまだ食べてねぇーんだろ。早く食おうぜ。」

え?報酬?アフター…?え?どういうこと?

撩の言わんとしていることが、

イマイチよく分からず、きょとんとしていたのに、

かまわず、撩はあたしに食事を促した。

「あ、あ、うん。い、いただき、…ます。」



3枚目のピザをオーブンレンジに入れてから席についた。

大急ぎで作ったわりには、なんとかなったわ。

あとは、ヨーグルトとコーヒーが加われば、

とりあえず、食事はオッケーね。

次は…。

食べながらそんなことを考えていたら、

もぐもぐしている撩が声をかけた。




「おまぁ、今日一日休んでろ。」

「はぁ?なんで?」

やることは沢山ある。休む気はさらさらない。




「……夕べ、頑張り過ぎただろ?」

記憶がフラッシュバックして、また赤面。

「う、ううんっ!

だ、だ、だい、大丈夫だからっ!!

や、休まなくても全然平気っ!」

背筋がピンと伸びてしまった。

「ほぉー。いいのかなぁ、そーんなこと言っちまって。」

唇の端だけくっとあげて、ちろっとあたしを見る。

「え?」

なんで?なんかまずいこと言ったかしら?

「とにかく、今日はあんまり動くな。

あーくったくった。ごっそさん!」

撩は、テーブルの上にあった新聞を持ち、

爪楊枝をくわえてキッチンを出て行った。



「て、言われてもやることは沢山あるのよ。わかってんの?」

あたしも、自分の食事をさっさと食べて、

食器をシンクに運んだ。

「あ、あっちにコーヒー持っていったほうがいいかしら。」

食後の1杯がないまま、撩は先に席に立ったので、

ポットのお湯をヤカンに移しガスをつけ、

その間に食器も洗い、

ミルを挽いていつものコーヒーを準備した。



*****************************************************
(5)につづく。






今の町に住み始めた時、驚いたことの一つに、
ピザ屋がなくて
隣の市にあるピザの宅配が対象外の地域であったこと。
(いや色んな店がないけど、隣の市で殆どカバーできるけど)
折しも、丁度「発掘あるある」と「ためしてガッテン」で
手作りピザの作り方を紹介していたので、
我が家ではピザは自家製が定番に。
という訳で、
香ちゃんにもこのスキルを持ってもらうことに〜。
意外と簡単に生地ができるので、
料理が超超苦手なワタクシもすんなり日常にとりこめました。
2日連続朝飯抜きの2人、しっかり食っとけ〜。

【誤植発見感謝!】
グラディエーション⇒グラデーションに修正しました!
全然意味違うじゃん!
他でも同じコトやっとるし!
mさん、ご連絡ありがとうございました!
2016.02.07.10:46.

ようやくゴーダチーズも直しました〜(> <)。
(コダーチーズと打っておった…)
mさん重ねて感謝!
2017.02.13.21:25


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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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