10-05 Overprotection

第10部 A Holiday

奥多摩湖畔から5日目


(5)Overprotection  ***********************************************************1681文字くらい



リビングで新聞を読む撩。

ソファーに腰を降ろして長い足を組み、両手で新聞の端を持つ。

速読で必要情報をインプット。

まだ埠頭のニュースは載っていない。

テレビでは朝の全国ニュースあたりで、

原因不明の爆発事故があったとかで報道済みのはず。



「撩、コーヒーはいったよ。」

香がトレーを持って入ってきた。

「あぁ、すまん。」



撩は、自分が香のために煎れてやるべきだったかと、

いつも通りに、コーヒーを出してくれた香に、

先を越された気分になった。

一緒に飲むのかと思いきや、テーブルの上にはカップが一つしかない。

香は、座らずにそのまま、

えーと次は、とか言いながらパタパタとリビングを出て行った。



(あーあ、あいつは、まぁーたいつも通りバタバタ過ごすつもりだな。)



読み終わった新聞をガラステーブルの上に投げ置き、

コーヒーをくっと飲む。

いつもの旨味に心地良い安心感を覚える。



カップを持って、立ち上がった撩。

廊下を出ると、洗い終わった薄手の掛け布団を抱える香と出くわす。

「おいおい、休んでろって言っただろ?」

ベランダに干しに行くであろう腕に抱えているものを受け取ろうとする。

「ああっ!カップの滴が垂れるじゃない!」

「っと。」

そう言われて、慌てて右手を確認する。

(忘れていた。コーヒーカップを持ったままだった。)



その隙に、香は撩の脇をするりと抜け、

ちょっと赤らめた顔で振り返りながら言った。

「大丈夫、休む必要はないわ。撩こそ、いつもはナンパに行く時間でしょ。」

(はぁ、お前、そこでそのセリフかよ…。)

廊下に残されて溜め息をつく。

とりあえず、カップをシンクに置きに行った。



香は、ベダンダに出ると、ばさりと掛け布団を広げ、形を整えた。

(これは薄手だから夕方回収すれば乾くわよね。あれからずっとお天気いいし。)

窓を開けたまま、レースのカーテンを引き、空気の入れ替えをする。

ちらっと時計を見て、次の行動に移ろうと、客間兼自室に向かう。



(撩が、また過保護モードになっている。

初めての時の後と同じように、

必要以上にあたしに気遣っている。

あたしのことは、気にしなくていいから、

いつも通りの撩でいて欲しいのに…。

正直まだ、全然慣れていない。

体のこともそうだけど、心の方が当分かかりそう…。)



ドレッサーの上に、

持ち物を揃えながらこの数日を振り返る。



(あいつが、あたしに表立って優しさや、

気遣いを行動に移してくることが、

まだ、どこかで、

あいつがあたしにそんなことを言ったり、したりするわけがないと、

なんだか拒絶反応みたいなのをおこしているみたい。

完全に諦めていたことなのに、

いざ叶えられると、

これまでのキャップが大き過ぎて

気分が全然追いつかない…。)



そんなことを考えながら、香はショルダーバッグを持ち、

上着を羽織って出かける準備をした。

廊下に出ると、キッチンから顔を出す撩。



「あ、撩。あたし伝言板見に行って来るから。」

「だぁーかぁーらぁー、今日は休めって!冴羽商事は休業!」

「って、この間も言ってたけど、その間に、もう後がないって、

助けを求めている人がいるかもしれないのよ。」

撩は、ぐっと口をつぐむ。

言い返せない。



「あたしは、大丈夫。もし依頼がなかったら、撩も今日は好きに過ごして。

どうせ明日も教授のところに行くんだし。

今日片付けることは、ちゃっちゃとしちゃうから。」

そう言って吹き抜けのフロアに出た香を、

撩はむすっとした顔で追い越した。

「じゃあ、好きにさせてもらう。

すぐに着替えてくっから玄関で待ってろ。」

「へ?」



撩は、玄関へつながる階段を降りようとした香を視界の端にとらえながら、

大股で7階へ昇り、自室であっという間に着替えて、

玄関に降りた。



「は、早っ!って、い、一緒に行くの?」

目を見開く香。

いつものスタイルの撩、ちゃんとパイソンも携帯している。

「じゃ、行くか。」

呆然としている香の肩をポンとたたき、さっさと靴を履く撩。

「おい、なぁーに突っ立ってんだよ。」

「……だから、そーゆーことが信じられないっていうのっ。」

香は目を伏せこめかみを押さえた。


***************************************
(6)へつづく。






まだケジメつけてから5日ですからのう。
つーか、たぶんこの美樹復活の3週間が過ぎても、
カオリンの嬉し恥ずかし混乱モードは、
トーブン続くでしょう〜。

スポンサーサイト
プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
CH専用Twitter
 


拍手1000パチ記念につけちゃいました。



かなり便利なサーチツール

登録サイト最新情報はこちらをチェック!


試運転中…

カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
現在の閲覧者数: