10-07 Memory Of Sonia

第10部 A Holiday

奥多摩湖畔から5日目


(7)Memory Of Sonia ************************************************************1473文字くらい



撩は、アメリカ時代の幼いソニアの面影を思い浮かべながら、

香の肩を抱き直した。



「…キャッツで、あいつと再会した時、

俺を狙っていたことはすぐに分かっていた。

そして、あいつがお前をターゲットにすることもな…。」



香は、ソニアに監禁される時に彼女から聞いた話を思い出す。

「海坊主との決闘で、俺が生き残ったら、

家族を奪われた悲しみと苦痛を、俺にも抱かせることが、

あいつが自力で出来る唯一の復讐だったんだ。」

仮の話しとは言え、口に出すときつい。



「……お前を、その、…大事な人間だとあいつに悟られてはならないと思って、

あの時、屋上であんなことを言ったんだ。

ソニアが近くで聞いているのが分かってたからな…。」



「そ、そんな…。」

香は、ソニアが言っていた

『ヘタな芝居をしていたようだけど』というセリフの意味が

今になってようやく分かった。



「結局、ばれちまって、お前には苦しい思いをさせちまったな。」

ソニアの誤解も解け、決闘した二人は幸運にも生き残り、

お互いの記念日を生きて過ごすと誓ったあの日。

それからまた、

いつもの生活に戻り、

いつもの二人に戻ってしまった。



「だ、か、ら、あの自由恋愛ウンヌンの話しは、

なかったことにしよう!うん!」

撩は、間を置いて、口調をころりと変え、香の髪をくしゃりとした。

「これからは、俺がちょっかい出す相手が、

依頼人であろうと、道行くもっこりちゃんであろうと、

おまぁには、十分ハンマー出す資格があるんだぜ。」

立ち止まり、頭頂をわしっと掴んでくいっと、顔を自分に向かせる。

「ぁ。」

潤んだ瞳が撩を見る。

「そして、そのハンマーやらコンペイトウやらを受けていいのは、

俺だけだっつーのも分かる?」

「りょ…。」

まだ表情が暗い。

伏せ目で視線をそらせた香は、まだ悩んでいる。



(まぁーだ、わかんねーかな?遠回しのつもりじゃないんだが…。)



撩は背中を押して、また一緒に歩き出す。

色事に至極疎く、

自分を蔑(さげす)むことが常となっている香の心理を修正するのは、

やや手こずりそうな気配。



「…で、でも、やっぱり、

撩の自由を奪うなんて、あたしが、束縛するみたいなことなんて…。」



撩は、深く大きな溜め息をつく。

「おまぁさぁ、…俺がもし、香ちゃんは自由だから、

他の男のところに行って夜遊びしてきていいよーって言ったら、

嬉しいかぁ?」

自分で言いながら、

もしそんなことがあったらと仮定するだけで、胸が苦しくなる。

「え?」

「どうなんだ?」

「い、いやっ。」

香は顔を青くした。

「そ、そんなこと、あ、あたしが、出来るわけないじゃないっ。」



撩はふっと笑った。

「嬉しくないだろ?…撩ちゃんも同じなのっ。

あーあ、さっきのカオリンの問題発言でボクちゃん傷付いちゃったぁ。」

気付いたらもうアパートの前。



「あとできっちり癒してもらおっかなー。」

「は?」

「ほれ、階段くらいは持たせてくれ。」

撩は、するりと買い物袋を受け取ると、ビルのドアを開け、香を中に促した。

これまで、何度かこの役回りをミックにとられていたこともあり、

地団駄踏んでいた不器用な自分を思い返す。



香は、まだ撩の真意が読めないでいた。

(同じって、ど、どこが同じなのよ…。)

その表情を見た撩は、やや眉を下げて、頭をかいた。

(こいつ、やっぱり分かってねぇーのかよ…。)

階段を上りながら、香を振り返る。

「おまぁ、まーだ、分からねぇって言うんだったら、

撩ちゃんが体できっちり分からせてやっから、覚悟しとけよぉ。」

ちらっと向けられた色を帯びた視線。

「ひっ。」

香は思わず肩をすくめて声が出てしまった。


************************************
(8)へつづく。






原作では、
ソニアが香をファルコンのアジトに連れ去った
3月26日の朝(午前中の早いうち?)から、
決闘当日の3月31日深夜までの5日間、
完全に省略されています。
しかし、関わった人物、
美樹、ファルコン、撩、香、ソニアが
それぞれ、その100時間余りを
どんな思いで過ごしたのか、
これは、穴埋め妄想をするには、かなりキツイの一言です。
例えば、香のその間の食事や入浴、着替えは
一体どうしていたのか、
26日と31日の服装が同じだったということは、
その間は別のものを用意してもらっていたのかとか。
そして、撩と美樹は、
ちゃんと5日、睡眠や食事が出来ていたんだろうかとか、
恐らく、原作内では、ギャンブラーの話しの時に
香がスキー旅行に行ったということ以外では、
アパートから5日もいなくなる設定はなかったと思いますので、
かなり異例なシチュエーションだったはず。
もしかしたら、撩もこっそり、安全を確認するために、
ファルコンのアジトに様子を見に通っていたかもしれませんし。
(撩が複数あると思われるファルコンのアジトの場所を知らないはずないと)
とにかく、この5日間は、
あまりにもそれぞれのキャラが抱えている中身が重過ぎるので、
1990年3月末というのは、
ワタクシにとって、まだ手を出せない領域だったりしてからに。
誰か変わりに手ぇ出して欲しい(他力本願っ)。

スポンサーサイト
プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
CH専用Twitter
 


拍手1000パチ記念につけちゃいました。



かなり便利なサーチツール

登録サイト最新情報はこちらをチェック!


試運転中…

カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
現在の閲覧者数: