10-11 So Only You…

第10部 A Holiday

奥多摩湖畔から5日目


(11)So Only You… ************************************************************3555文字くらい



「あら?」

リビングに撩がいるかと思ったら、不在。

丁度9時台のニュースの時間だったので、

ソファーの長辺側に腰を下ろし、

テレビをつけてチャンネルを合せる。

新聞の番組欄を横目で見ながら、ニュースに聞き耳を立ててると、

聞いたことのある地名が複数耳に入った。

香はふと顔を上げる。



『……と、見られています。

なお、南ガルシア政府は外部からの告発により、

軍事施設に大量のアメリカドルの偽札を隠し持ち、

偽造の造幣工場の建築計画が

政府機関内あったという見解が持たれています。

さらに、国務大臣、厚生大臣などが

麻薬の製造密売に関わっていたという情報も流れ、

現在、ICPOが調査団を送ることを検討中です。

また、昨晩の大井埠頭の原因不明の爆発事故や、銃撃戦なども、

南ガルシア政府の密輸が関連していると思われ、

警視庁による捜査が進められています。

では、次のニュースです。』



「これで、タコが受けた依頼は完全遂行だな。」

「りょっ…。」

また突然現れた男に、

気配をどうして読めないのか悔しい思いが沸いて来る。

撩は遠慮せず、香の右隣にどさりと座った。



「で、あとすることは?」

「ぅ、…と、くに、なぃ。」

近過ぎる撩に、体がそって、逃げ腰になる。

「りょ、撩こそ、今から出かけるんじゃないの?」



いつもなら、『撩ちゃん、飲みに行ってきまぁーすっ!』と、

いなくなってしまうのが常。

ツケで店を渡り歩き、日付けが変わる前に帰るのはマレ。

大概、深夜か明け方における大虎状態(のフリ)での帰宅が日常。



撩は、『あれ』からまだ一度も、夜の街を出歩いていない。

情報収集の名目があることは、分かってはいるが、

『飲み』ではない、外出もあったことを

香はおぼろげながら捉えていたので、

どんな理由にせよ、

無事この場所に帰って来ることを

一人でひたすら待っていた日々。



それが、あの一線を越えた日から、

毎晩一緒のベッドに横になっている。

それ自体、冷静に考えれば信じられないこと。



「あたしなんか、ほっといていいから、飲みに行ってもいいんじゃない?

6日も夜出かけていないなんて、なんか撩らしくないよ。」

香の『あたしなんか』発言に、撩はまたチクリとくる。



「おまぁ、俺に出かけて欲しい訳?」



香の両肩をやんわり掴んで、自分に向かせる。

ちょっとむっすり顔の撩のドアップに、香は軽くパニックになる。

「だだだ、だって!じょ、じょ、情報収集とか、

あ、あ、あるんでしょ?」

「んなことより、こっちが大事なの!」

ばふっと耳に聞こえたのは、自分の顔が撩の胸にぶつかる音。

撩はやっと捕まえたと、

太い腕を香に巻き付け自分に引き寄せた。



「公園でする訳にはいかんかったからなぁー。」

「!?」

香の体温は瞬時に39度オーバー。

耳朶が熱くなっている。

「駅や公園は情報屋がいつもうろついてるからな…。」

香の髪に頬を寄せる。



「……おまぁさ、自分のこと『あたしなんか』って言うのやめろよな〜。」

「え?そ、そんな言い方してたっけ?」

赤い顔のまま疑問符を浮かべる。

「あー、無意識だろうなぁ、やっぱり。」

くしゃりと茶色い髪をかきあげる。



「……お前は、世界一のスイーパーが認めた女なんだぜ。」

「へ?」

一瞬、誰のこと?と疑問符が浮かぶ。

混乱していたら、もの凄く小さな声で、耳元に囁かれた。

この俺と、ずっと、一緒にいられるのは、お前だけだ……。

「!?」



次から次に出て来る撩の糖度を纏ったセリフに、

香は発熱して思考がついて行かない。

今、自分にしゃべっているのも『一体誰?』状態。

腕の中にすっぽり入っているので、撩の表情は見えない。



(し、信じられないっ。う、うそでしょっ!

こ、この男が、こんなことを言うなんてっ。)



「だ、か、ら、教授んところが一区切りついたら、

訓練始めっから覚悟しとけよ。」

(どうだっ!香!いくら鈍感でもこれなら分かるだろっ?

これでお前の自己評価もすこぉーしは高まるんじゃねぇかぁ?

あーくそっ、恥ずかし過ぎて、顔合せらんねぇ〜。)



しばらくしてから、真っ赤に熟れた香が、

撩の腕の中で、ぽつりと話し始めた。

「りょ…さ、……いろいろ、ガマンしてるでしょ…。」

「はい?」

(どぉ〜して、そぉ〜ゆ〜話しになるのかなぁ〜。)



ヒトの心理を読むのが得意な撩でも、

香には通用しないことが多々ある。

この場合もそうだ。



「…あたしを、パートナーにしてさ、

……撩に、…いろんなものを、背負わせってしまっている、よね…。」



あまりにも間違いのない的確な言葉に、

何かがぐさりと胸に刺さる。



(…香、…お前にも、

背負わなくていいものを、俺は背負わせてしまっているんだぞ…。)



抱き込む腕にきゅっと力を込め直す。

その度に思う。

この華奢な体に、一体どれほどのものを抱え込んでいるのか。



(…だめだっ、ここでシリアスモードに流れたら、

ソファーで合体ってなことになっちまうっ。

い、いや、実は、それもいつか♡、と思っちゃいるがっ、

今日は休息日って決めてんだっ!やめやめっ!)



撩は、猿芝居を打って空気と場所を変えることにした。

「撩ちゃん、ガマンなんかしてないもんねぇー。

自由にしてもいいってゆーんだったら、

好きにさせてもらうからねーん♡」

そのまま、香をがばっと抱き上げ、お姫様抱っこ。

「えええ?!」

「ささ、撩ちゃんの部屋にレッツゴー!」

「ちょ、ちょっと!撩っ!」



言うや否や、香を抱き上げた手でリモコンを拾い、

テレビのスイッチをオフにて、ぽいっとソファーに放る。

リビングの照明を消し、廊下も消し、あっという間に7階についた。

撩は、香をいつもの場所にすとんと降ろすと、

ぽぽぽんと自分の服を脱いで、

パンツとTシャツになった。



「むふっ♡良い子は早く寝ましょうねー。」

そう言いながら、香の隣に滑り込んで来て、

ふわりと毛布と掛け布団をかけた。

気がついたら、もう横たわりながら抱き込まれている。



「こっちむけ…。」

後ろ頭にある撩の指から軽く力を感じて、

わずかに顔の角度を変えさせられた。

「りょっ…。」

唇を塞がれる。

「んっ!」

慌てて目を閉じる

受ける刺激はライト級、食べられてしまうようなキスではない。



(や、やっぱり、こ、今晩もぉ??

あーん、嬉しいけど、恥ずかしいけど、

明日のこともあるから、今晩はしっかり寝たい…。

でででも、どどどうしよう。

このまま、また2ラウンドとかいうことになっちゃったら…。

明日、それこそ動けなくなるわよぉ。

いやいや、このもっこり男のこと。

3回でも、4回でも平気そう。

あ、あたし、こんなことで、パートナー、つ、つとまんのかな…。)



そんなことを混乱した頭で考えていたら、

ふっと唇が離れて、撩の優しい声が聞こえてきた。



「さっき、体で分からせてやるっつーたけど、

……今日はちゅうだけな。」

「え?」

「あんれぇ?香ちゃん、シたっかったぁ?」

「っば、ばっ、ばっ…!」

「ここはちゃんと休ませんとな…」



撩が温かい左手で布越しに下腹部をゆっくりさすってくる。

かぁーとなる香。

温度と感触が伝わってくる。

(ぁ、気持ちいい…。)

手を当てられているだけなのに、

まるで本当に手当をされているかのような気分になる。



また唇が降りてきた。

「ぅんっ…。」

啄まれるようなバードキス。

下腹部を優しく撫でられている気持ち良さと、

唇に与えられる心地のいい刺激で、

もう頭の中は、とろみがかかってきた。

相方を寝かせ休ませるのが目的と言わんばかりのテクニック。



(ほんと、撩のキスってずるい…。)



「……おやすみ。」

ぼやける意識の中で、撩の声が聞こえた。

全部、読まれてる。

隠そうとしても、自分の不安や緊張は丸見えの様だ。



「…ん。」



撩の腕の中は、深い安堵感が得られる。

ちょっと高めの体温に、心音、

自分の身長差とぴったりくる体格だからこそ、

体全体が包み込まれるフィット感もある。



小さい頃、兄と一緒に寝ていた時とはまた違った感覚なはずなのに、

どこかしら言葉には言えない共通項もある。

香は、もぞっと動いて、一番頭が安定する場所を見つけて、

そこに落ち着くと、ほどなく、

そのまますーと眠りに落ちた。






「……んと、寝付きいいなぁ。」



撩は、香の髪をそっと撫でた。

自覚のないところでやはり疲れていたのだろう。

睡眠薬なしで、こうも簡単に自分の作戦の効果が出たことに、

やはり今日は一日ちゃんと休ませるべきだったかと、

昼間の香を思い出す。



「もう、俺が他のオンナのところに行く訳ないだろ…。

…お前だけ、だから。…心配するな。」



(……お前は、俺にとって、……最後の女だから。

俺も、お前にとっての最初で最後の男でありたい……。)



大人にしては、あまりにも早い就寝時間。

撩は、香を抱き寄せて、体を密着させた。



(今晩は、ゆっくりこの時間を味わうとするか。)



街の雑踏と香の寝息を聞きながら、

撩も満たされた休息を取ることにした。


********************************
第11部(1)に続く。






やっと第10部一区切りつきました〜。
今更ですが、第○○章にすればよかったかいな。
原作中で、撩は香に
「おれの おまえへの あ… だ。」
とか
「家族のひとりになってほしい…」
とか
「愛する者」
とかとかとか言っちゃってる訳ですから、
まぁ、オーバーライン後も多少の糖度のあるセリフを
頑張って言わせちまってもいいかしらん、と。

ちなみに明日11月11日は「ポッキーの日」。
ちょうど「恋愛軌跡」の斉藤聖 さんが、
「ブログで書いた小ネタログ 04」で、
「ポッキーの話し」を書いていらっしゃいます。
時事感と重ねるにはベストタイミングです!

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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