11-01 Sleep Talking (side Ryo)

第11部 Memory Of Chinderella  (全16回)

奥多摩湖畔から6日目


(1)Sleep Talking (side Ryo) **************************************************2113文字くらい



もうすぐ香が目覚める時間だ。



こいつは、目覚まし時計がなくても、

だいたい毎日決まった時間に起床する。

右腕は自分の枕にし、左腕で香を抱き込み、

頭の高さをキープしてやろうと、

夜のうちに香の頭の下に枕を滑り込ませた。

Tシャツ越しに、香の温度のある呼吸が規則的に届く。



向かい合って、抱き込んで女と横になるなんざ、

今まで殆どありえなかった。

他の女とは、しようとも、したいとも思わなかったのに、

今では、香の体温を感じていないと

眠れないまでになっている。



茶色い髪を見つめながら、

左手で、頭から背中をそっとさする。



失いたくない。



お前が俺の前から居なくなることなど、

想像すらしたくない。

今は、間違いなく、俺のそばにお前がいる。

いずれは、自分も香もこの心臓が止まる日が確実に来る。

ただ、それは限りなく先であって欲しい。



奥多摩でお前と抱き合って、今日で6回目の朝。

まだ一桁だ。

これから、60回、600回、6000回と、

桁を増やしていければいい。



だから、香、焦るな。

ゆっくり慣れればいいから。



左指を香のくせ毛に埋めて、自分に引き寄せる。

「……ん。」

香の目覚める気配は分かりやすい。

そろそろ覚醒するだろうが、今はまだ意識は夢の中。



「…ぁ、……ニキ…。」



「なんだ?槇ちゃんの夢でも見てんのか?」

眉間にしわを少し寄せて、

閉じている瞼の下が緩やかに動いている。



「…だ、…ぃじょうぶ、だから…。」

「?」



「きょ…は、ふりかえ、…きゅ…じつ…だから、

がっこ…は、…や、…す、みなの…。」



「何のこっちゃい?」

「え?」

ぱちっと香の目が開く。

「……。」



視界には俺の赤Tシャツで一杯だと思うが、

まだそれが何だか分かっていないようだ。

香の見開いた瞳が、ふうと上に向き、俺の視線と直線になる。



「きゃああああああっ!」



キーンと耳元で響いたソプラノの悲鳴に、

俺の方が驚いた。目が星になる。

ばさばさっと布が擦れる音がして、気がついたら香は一気に後ずさりし、

布団と一緒にベッドの端から転落寸前。

反射でその細い腕を掴んで、場外落下を未然に防ぐ。



「っと、なにやってんだよ。」



すでに俺のシャツと同じ色に変わってしまった香が可笑しくて、

そのまま、腕を引っ張り、また元の指定席に引き戻した。

「…ぅあ。」

ぱふっと、胸の中に戻って来た香は、目をパチパチさせてる。

「なーんの夢見てたのかな?香ちゃんっ。」

「ぇ?……ぁ。」

更に赤くなる香。



あの寝言で、どっか恥ずかしい場面があったとは思えないんだが。

「槇村でも夢に出たか?」

「ぅ…。」

「学校がとか、なんとか、寝言いってたぞ。」

「っ〜〜〜。」

「な〜にっかなぁ?俺に言えないような、やぁ〜らしぃ夢でも見てたのぉ?」

「っち!ち、ちちちがっ!」

香は、真っ赤になった顔で一度きっと俺を睨むと、

Tシャツを両手で握り込んで、顔を伏せた。

たぶん、この様子じゃ直前まで見ていた夢をはっきりと覚えているのだろう。

香が見た潜在意識下での脳の情報整理に伴う映像がどんなものか、

槇村の名が出て、こんな態度だと、尚更内容を聞きたくなる。



「教えてくんないのぉ?」



抱き込みながら、また顔を上に向かせてみる。

この赤は一体何に例えたらいいんだと思う程に

また茹で上がって、目も潤んでいる。

「な、な、なんでもないのっ。わ、忘れちゃったっ!」

100%ウソと分かるこの言い様に、ますます聞き出したくなった。



「……ふーん、…香ちゃんさぁ、…俺って、自白させんの結構得意なんだよねぇ。」

香の表情がぎくりと変わる。

「……ぃ、ぃ、言わなきゃ、……ダメ?」

泣きそうな顔に上目遣いで目を合わせられた日にゃ、

こっちが白旗上げたくなるだろうがっ!



「都合が悪いことか?」

「………ぅ。」

本気で悩む香がまた愛らしい。

「ぁ、…あ、後で、話すから…。先に、起きていい?」

俺はふっと目を細めた。

「じゃ、予約な。」

そのまま、その口唇に吸い付いた。

「んんっ。」

ライト級でそのまま、ちゅぽんと離れる。



「昨日、おはようのちゅう、もらったからな。」

ぼぼぼっと音がするほどにまた赤面している香。

フリーズしたままの香を、ますますからかいたくなる。

「ご希望なら、今からちゅうの続きでもすっか?準備できてるし。」

布団下の朝もっこを指差す。

予定通りミニハンマー出現。

素直に食らっておく。

さらに顔を赤らめた香は、

口をぱくぱくさせながら、目をぱちぱちさせている。

「ば、ば、ば、ばかっ!あ、あたしっ、朝の、し、仕度してくるからっ!」

がばっと起き上がって、つまずきながら、ベッドサイドを離れる。



「りょ、撩も、今日午後から、で、出かけるから、ね、ね、寝直さないでよっ。」

ノブに手をかけながら、振り向き様にそう言い残した。

階段で踏み外す音が聞こえる。



大丈夫かよ、まったく。

そこまで、動揺する夢なんて、一体何見てたんだ?

さて、どんな話しを聞かせてくれんのかねぇ。



俺は、顔にめり込んだハンマーをころんとどけて、

のそりと立ち上がって伸びをし、ひとしきり筋を伸ばす。



まぁ今日は、香を連れて行きたい場所もあるから、

ヘタにご機嫌損ねるワケにはいかねぇーか。



俺は、夕べ脱ぎ捨てた衣類を纏うと、

階段をにやつきながら降りることにした。


**********************************
(2)につづく。





カオリンはどんな夢を見ていたんでしょうね〜。
という訳で、奥多摩から6日の一日がスタート。
今回は全16回…、また1ヶ月かかるじゃん!
もうちょっと文章のダンシャリができんかのうぅ。
欲張ると、どうしてもこうなっちゃって……(_ _;)。

【お知らせ】
本日からSS-02「Dentist」の続きを連続3回でお送り致します。
更新時間は1818です。
30000Hit御礼企画?ということで〜。
とにもかくにも皆様に大感謝です。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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