11-02 Prophetic Dream

第11部 Memory Of Chinderella

奥多摩湖畔から6日目


(2) Prophetic Dream  **********************************************************4000文字くらい



(あー、驚いたぁ。もう現実と夢が大混乱だわ…。)



香は自室で赤面しながら着替えた。

ひざ丈のタイトスカートにジャケットで、

カジュアルとフォーマルのちょうど中間のような組み合せ。

薄手だが保温性の高い黒いタイツを履いて冷えを抑えるのも忘れない。



朝の身支度も整えて、新聞を取りに行き、

香は、朝食の準備を進めた。

今日は、和風定食風。

塩鯖に、煮物、お浸し、ご飯、味噌汁。

フルーツの柿は、シーズンのピーク。



配膳を一通り終えて、撩の席を見ながら考える。

「……やっぱり、話さなきゃ、ダメかな…。」

「そんなに言いにくいのか?」

「わっ!」

また、突然現れた相方に、口から心臓が飛び出しそうになる。

「ま、ま、またっ、気配消してっ!」

「怒るのは、お門違いだぜぇ。

これはカオリンのためにやってるのぉ〜。」

首にタオルをかけたまま、

ちょっと顎を反らせて、人差し指をちっちと動かしながら、

撩は意地悪っぽく口角を上げた。

「ぐっ。」

言い返せない香。



「お、今日は魚か。もう食っていいのか?」

席につき箸を持つ撩。

「あ、ちょっと待って。大根おろし用意するから。」

そう言いながら、香はまな板の上にあったカット済みの大根を

しゅわしゅわと音を立てておろし始めた。

「はい、これ。」

大さじで、塩鯖の脇に添える。



槇村と暮らしていた時、お互いが作る食事は、

日常的に焼き魚に大根おろしをセットにして食卓を整えていた。

古(いにしえ)の知恵に科学的根拠が存在していたのを知ったのは

このアパートに住み始めて間もない頃。

この組み合せを定着させた古人の知恵に、

配膳するたびに感心してしまう、と香は短い時間で思いを巡らせた。



「……で、どんな夢見たんだ?」

撩の声で現実に引き戻される。

「……あ。」

香も困った顔をしながら食卓についた。

撩はもぐもぐしながら、その解答を待っている。



香も一口ぱくっとご飯を口に放り込み、

どう説明するか切り出しに迷う。

いただきますも言い損なって、箸を動かしてしまった。



もぐもぐ。

「あ、あのね…。」

もぐもぐ。

箸を休めずに、撩とは目を合わせずに、口を動かす。

「高校の頃の、」

もぐもぐ。

「文化祭の、」

もぐもぐ。

「振替え休日。」



「は?」

「アニキが起しにきたかと思って、たぶんそんなことを言ったんだと、…思う。」

兄と二人暮らしだった時は、自分が寝過ごすことは殆どなかったし、

現実でも、体育祭の振替え休日でも、いつも通り起床していた。

だから、朝寝をしている自分は病気以外あまり考えられないシチュエーション。

恐らく、撩と一緒に寝るようになってから、

自分としてはとんでもない時間に目が覚めたことを繰り返した混乱が見せた夢だろう。

香は、自分なりにそう分析していた。



「にしては、ひどい慌てようだったな。」



平静に装いながらも聞き慣れない用語にやや動揺する。

学校に通っていない撩にとって、

文化祭や振替え休日という単語は、殆ど馴染みがなく、

道行く高校生の会話やテレビの話題などを拾って、

かろうじて知っている言葉でもあった。

それ以前に高校生レベルの年代は興味の対象外だったので、

若干疎い分野の情報に、

香が普通に生徒としての時代を過ごしてきたことと、

自分との差をほんの僅かだけちくりと感じた。



「ぅ…。」

口ごもる香。

「槇ちゃんが、布団にでも潜りこんできたか。」

「ち、ちがうわよっ!アニキがそんなことする訳ないじゃないっ!」

ムキになって怒る香。

思わず『あんたじゃあるまいしっ』と、言いそうになったが、

かろうじて止めた。

赤い顔をしたまま、もくもくと食べる香。



その表情で、撩はピンときてしまった。

これは白状させてみたい、そんな悪戯心がぴょこっと芽生える。

「……夢の中で、お前を起しにきたのは、…槇村じゃあないな。」

食べながらあえて目を見ず言ってみる。

「え?」

どきんと肩が揺れる。

茶碗と箸を持ったまま、目を見開いて撩を見る香。

視線が合うと、かぁーとまた赤くなった。

慌てて食事に集中し直すその姿を見て、撩は確信を持った。



「ふーん、だーれかっなぁー?」

「いいい、い、いいじゃないっ。そんなこと気にしなくてもっ。」

「……女じゃなさそうだな。」

がつがつもりもり食べながら、まだ続ける撩。

ギクっとする香。

絵梨子が来たと言い訳しようとした矢先に先手を打たれた。

(もぉーっっ、撩、絶対分かってて、からかってるっ!)



あまりにも明確に残像が残っている先ほどの夢。

ここまで撩が内容に執着するとは、思いもよらなかったこともあり、

増々、白状する方向へ持っていかれそうな気配に、

さらに焦る香。

「あ、あんたこそ、どーして、そこまで気にすんのよっ!」

口からご飯粒が飛びそうになり、慌てて口元を拭う。

「だぁあってぇ、夢の中に槇ちゃん以外のオトコが出たとなると、

槇村も無視は出来ないと思うぜぇ。しかも、すごーく話したくなさそうだしぃ。」

撩は柿をプスっと刺してあーんと頬張る。



「アニキと撩は違うでしょ!」

「じゃあ、カオリンは俺が他の女の夢見てても気になんないの?」

「はぁ?それって、日常茶飯事じゃない。

酔って寝言で、リエちゃんとか、マリナちゃんとか、ルリちゃんとか、

何人の女の名前聞いたか分かんないくらいなのに、

いちいち気にしてられっかっ!」

ガタタタン!

撩がテーブルからこけた。



「……なにやってんの、あんた。」

「……いや、……ごもっともでございす…。」

フォークをくわえたまま再び席まではい昇ってきた撩。

答えを白状させるために、少し嫉妬心を煽ってやろうと思った作戦は玉砕。

(まさかそう切り返して来るとは、……いや、当然か…。)

撩は、最後の柿を口に投げ込んでぶすっとしたまま、

バツの悪さを隠せないでいる。



「だから、誰の夢に誰が出ようといいじゃない。」

香は、もしかしたら、言わなくてすむかもしれない、と

流れを変えようとした。

「俺は気になるのっ。」

ごっくんと飲み込む音と同時に、半ば焼けクソ気味で撩は言った。

香も主菜、副菜を食べ終わり、自分のフルーツも残りわずか。

フォークに刺した柿を持ったまま、きょとんとした。



「……あなた、……もしかして。」

「あんだよ。」

頬杖を付き、爪楊枝でしーしーと歯の掃除を始める。



「妬いてる?」

「ぶっ。」

爪楊枝が吹き飛んだ。

「ぷっ!」

香は笑いで吹き出す。

形勢逆転状態に、香がやや強気になった。

ふふっと肩を揺らしながら柿を食べる。

「ふふーん、おっかしっ。」

もぐもぐ。

「何がだよっ。」

どう切り返そうか、頭の辞書をめくっていた撩に、降ってきた言葉。



食べ終わった香は、食器を下げてコーヒーの準備を始めた。

「だって。」

ミルを回しながら、穏やかな微笑みで、続ける。

「自分で自分に焼き餅妬くなんて、おかしくって。」



無意識だったか、もう解答を言ったようなもの。

撩は、この一言で、夢の登場人物が、

ミックでもなく、ファルコンでもなく、高校の仲間でもなく、

自分であったことを確信し、らしくもなくほっとした。

一方で、その夢の中の自分にさえも妬いていると、

自覚のなかった心理を指摘され、絶句状態の撩。

イメージしていた形と違う解答方法に、柄にもなく戸惑う。



「9年前の撩だったの…。」

「は?」



お湯を注ぎながら、香はそう言った。

今は1991年11月、夢にでてきたのは、

香が高校2年生の1982年3月26日に初めて出会った、あの時の撩。

香が17才目前、そして仮の誕生日で逆算すると、撩は23才目前。



「そ、正確には、…9年と8ヶ月前、なのかな?。」

香は、ふっと息を吐いた。

撩は少し眉をあげた。



「はい、コーヒー。」

渡されるカップに、撩もふっと表情を柔らめた。

「サンキュ…。」

煎れたての濃茶褐色の液体が揺れる。



香が見たのは、

シュガーボーイと呼んだあの撩が、自分の寝床にやってきて、

起しにきたという夢だった。

「で、その9年前の俺はナニしてたの?」

香も席について、一緒にコーヒーに口をつけた。

「別に…、起しに来たのがアニキだと思っていたら、

あんただったから、驚いた所で、目が覚めたの。」

目を閉じて、カップを持ったまま、ちょっと顔を赤らめ視線をそらす。

「だったら、そーこまで言いにくいってこたぁないんでないかい?」

コーヒーをすする撩。



「そ、それはっ、ちょっと、だ、だから、その…。」

「なんだよ。」

撩のカップはほぼカラになる。

「そ、その。覗き込まれた時、あまりにも距離が近かったらから、

だ、だから、び、びっくりしちゃって…。」

「近かったって、これくらい?」

こつんとおでこに何かが当たった。

「うぁ!」

全視界撩で埋まる。

強烈な恥ずかしさで、視覚情報を感知したとたん、瞼のシャッターが降りる。

ちゅうっと鼻先に吸い付かれた。

右手をテーブルについて、前屈みになり、

左手で香の頬に手を添えている撩。

香は赤煉瓦状態。

形成また逆転。

撩のペースに持って行かれる。

(ま、正夢じゃないっっ!)



「んじゃ、夢の続きは、また今晩ってことで。」

撩は、香の鼻尖からつと唇を離すと、頬にも唇を寄せて、

対面に座っている香から離れた。

「!!」

(こ、今晩?続きぃぃ?)

「んじゃ、撩ちゃん、地下に行って来るからねーん。」

手の平をひらひらさせながら、

そう言い残して撩はキッチンを出て行った。



「もぉおおーっ!一体なんなのよぉーっ!」

しゅうしゅうと湯気を出しながら、頭を抱える香。

途中、攻め側に回れたと思ったが、すぐにペースに巻き込まれ、

結局終始、撩に翻弄されっぱなしだった。



そして、鼻ちゅうもまさに、見た夢の通り。

「やっぱり、夢と現実、混乱しまくりだわ…。」

はぁ、と呆れ気味の溜め息がもれる。

「…9年、…10年近くか…。」

顔を赤らめたまま、ぱたっとテーブルに突っ伏す香。



「……なんとも、…年季の入った初恋よね…。」



しばし、あの時の思い出のコマが頭に浮かんでは消えを繰り返していたが、

閉じていた目をぱちっと開けた香は、

すっくと立ち上がった。



「そうよ、午前中はやることいっぱいあるのよ!

昼過ぎには出かけなきゃいけないんだからっ!」



香は、気分を切り替えつつも、

まだほんのり頬を染めたまま、

片付けに取りかかった。


***********************************
(3)へつづく。






という訳で、
今朝の夢の中身はこんなんでした〜。

【Sさん大感謝!】
もうバカバカバカーっという大間違いをしでかしてました。
これは、かなり恥ずかし過ぎます!(専門のはずだったのにっ)
ご指摘本当に有り難うございましたっ!
関係箇所全面撤去いたしました〜。
改稿、また後日お知らせできればと…(本当にバカ…)。
2013.12.07.01:20

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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