11-04 Before Noon

第11部 Memory Of Chinderella 

奥多摩湖畔から6日目


(4)Before Noon  *********************************************************2315文字くらい



「今日も、なし、ね…。」



撩が地下にいる間に、香は伝言板を見に外へ出た。

呼び出しの暗号がないことを確認すると、

寄り道をせずに、速やかに帰宅。

撩は、射撃場の奥にいながらも、

1Fの出入り口が開く気配をキャッチし、

香の動きを把握していた。



「お、帰って来たか。」



見守りを兼ねたナンパが常だったが、やはり一人で街を歩かせるには、

どこかしら『もしも』が渦巻き、正直気が気でない。

すぐに戻ってきたことに一人安堵する。



香は、とんとんとんと、早足で階段を昇って行き、

そのまま真っすぐ客間兼自室に戻った。



「よし、食事までの間に片付けなくちゃ。」



ショルダーバッグをドレッサーの前に置くと、

両頬をペンと叩いて気分の切り替えをした。

キッチンへ移動し、戸棚の引き出しからエプロンを取り出し、

きゅっと後ろ腰に紐を結んだ。



「さて、まずは掃除機ね。」



廊下に面している物置から、掃除機を引っ張り出して、

掃除を見送っていた6階の吹き抜けのフロアから

始めることにした。

「っんと、ここって無駄に広いのよねぇー。」

ガァーとノズルをフローリングに這わせて行く。

モーターの音がよく響く。

本当は、ゆとりがあれば

普段使っていない階の部屋もちゃんと目を配りたいのだが、

まずは生活空間が優先と、依頼中や今回のような教授宅通いの時は、

どうしても先送りになってしまう。



「誰かに部屋を貸して家賃収入って言っても、

いつ賊が侵入してくるか分からない危険なところに、

長期間人を住まわすのは、やっぱりダメよねぇ。」



いつこのビルごと吹っ飛ばされるか分からない家業。

不審物の有無の確認も含めての日々の掃除に整理整頓は、

自分たちの身を守るための体に染み付いた習慣ともなってしまった。

掃除機をかけながら、香は今の事案が一区切りついたら、

このビルのどこからチェックするかを考え巡らせていた。



一方、撩はひとしきりいつもの筋トレを終え、

汗を拭いてから、6階に上がって来た。

7階の本棚のコーナーで、テーブルを拭いている香を見つける。



(そぉんなとこまで、拭かんでもいいのにぃ。)



いつも快適に過ごせる空間は、彼女の気配りの賜物。

いつでも依頼人が泊まりに来てもいいようにと、

掃除好きの動きにさらに拍車をかける。



(今からそんなに頑張ると、あとでバテるぞ。)



撩は苦笑しながら、

廊下につながる扉を開けてリビングに向かった。



パタンと閉まる音に、香がはっと顔を上げる。

「あら?撩、戻ってきたのかしら?」

台拭きと雑巾とバケツを持って、すっと体を起こすと、

香も脱衣所へ向かって階段を降りて行った。



「次は洗濯物ね。」

今日は午後から出かけるから、外には干せないので、

乾燥機利用になる。

後は、昼ご飯。



「何作ろうかなぁ。」

洗濯機のスイッチを押しながら、冷蔵庫の在庫をイメージする。

「短時間でたっぷり出来るもので、美味しいもの、か。」

ご飯はある。

「マッシュルームの缶はあったわよね。玉ねぎもいっぱいあるから…。

ハヤシライスにしようかな。ルーもあるし。明日にもまわせるし。」



時間は、もう11時台。

朝食を食べ、片付けて、伝言板見に行って、

ゴミの整理をして、掃除機をかけて、

拭き掃除をして、洗濯機をまわして、と動いていたら、あっという間に昼前。

「お肉解凍しておかなくちゃ。」

香は、濡れた手をエプロンで拭きながら、キッチンに向かった。




撩は、リビングで朝読み損なっていた新聞に目を通していた。

香がちょこまかと忙しそうに動いている様子を感じ取りながら、

いつもの速読をこなす。

そこに、電話のベルが鳴った。

「あーん、誰だぁ?」

面倒臭そうに立ち上がる撩。



「はい、冴羽商事…。」

『はぁーい、撩。』

「冴子か。」

チェストによりかかる。

『一昨日はご苦労だったわね。』

「ふっ、かぁーなり気ぃ使ったんだぜ。色々壊しちゃ後がうっせーからな。」

耳をほじりながら、ふっとかすを飛ばす。

『あなたたちの痕跡は適当にごまかしておいたから。』

薬莢だの、トラップの残骸なことを言っているのだろう。

「サツが下手に手ぇ出してたら、

殉職者何人出たか分かったもんじゃねぇぜ。」

『そのようね。感謝してるわ。…ねぇ、撩。』

「あ?」

『クロイツの件の後、槇村のところに行ったの?』

突然話題を変えられた。

「はぁ?なんで?」

『花が供えてあったから。他に来る人はいないだろうし。』

「あー、なんだよ。お前もあいつのところに行ったのかよ。」

『香さんも一緒だったようね。』

「あ?」

『花の意味、あなたちゃんと分かってたんでしょうね。』

冴子も花言葉を読み取ったようだ。

ということは、その先も更に先読みしている可能性が高い。

「あーん、何のことかなぁー?」



『……ふ、まあいいわ。立て続けに、

国際犯罪が2件片付いたから上層部もご機嫌なの。』

ごまかす撩をあえて深く追求しないワザはかえってあとが怖い。

「そりゃ、よぉーござぁーました。」

『ファルコンにも御礼を伝えといて。』

「自分で言いに行けよ。」

『そのうちね。2連続で撩もファルコンも大変だったと思うけど、

こちらとしては助かったわ。ありがとね。

香さんにもよろしく伝えておいて。じゃぁね。』

こちらが、貸し何発だと言う前に、

言うだけ言って、さらりと切られてしまった。

「んだよ、一方的に。」

受話器をじろっと見て、かしゃんと元に戻した。



「あいつも、おみとーしって感じだなぁ。」

どさっと、ソファーに身を預ける。

あれから6日目。

あまりにも濃密な1週間。

それでも、普段通りに過ごそうとする相棒の気配に

ふっと口元が緩む。



かすかにデミグラスソースの香りが漂って来た。

「お、もう昼飯か。」

撩は、ごろんと横になり、目を閉じると、

呼ばれる声を待つことにした。


*********************************
(5)へつづく。




こうしてあっちゅーまに、
午前中は過ぎて行くのであった〜。

【御礼!】
拍手5000パチパチになっていました〜。
皆様のポチッにどれだけ救われていることか…。
明日の1818で改めて御礼を申し上げたいと思います。
取り急ぎご報告まで!
2012.11.19.23:50




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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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拍手1000パチ記念につけちゃいました。



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