11-07 Instruction Of Kazue

第11部 Memory Of Chinderella 

奥多摩湖畔から6日目


(7)Instruction Of Kazue ********************************************************2575文字くらい



午後2時半、クーパーが教授宅に到着した。

「なんだよ、この重さぁ。」

「水モノが多いのよ。さぁ、運びましょ。」



自宅用は常温保存が可能な物ばかりなので、

そのままクーパーに残し、

教授宅に持ち込む買い物袋を2人でぶら下げて、呼び鈴を押す。

かずえがすぐに応対した。

『いらっしゃい、待ってて、今開けるわ。』



アナログに見える日本家屋の入り口も、最新鋭の防犯装置付きで、

開閉も警報機の解除も監視カメラも室内から自動で操作できる。

ガララララと、横開きの戸が開くと、撩と香は荷物を持って中に入った。

「おじゃましまーす。」

「香さん、お疲れ様。あ、荷物一つ持つわ。」

「ありがと。」

「かずえちゃーん、ボクちゃんの荷物は?」

「黙って運ぶ!」

「へぶっ!」

なぜかミニハンマーが飛んでくる。



台所についた3人は、荷物をどさりと降ろして、

これからの予定を打ち合わせた。

「買い出し、助かったわ、香さん。こっちでなかなか身動きがとれなくって。」

「かずえさんもご苦労様。連日遅くまで実験分析でしょ?」

「ううん、たぶん明日でケリが着くはずだわ。」

「明日?」

「そう、だけど、終日大学にいることになるから、香さん、

悪いんだけど朝から来てもらうことって出来るかしら?」

「もちろん。いいわよね、撩。」

振り向くと、眉をハチの字にしている情けない撩の顔。

「ええ〜っ、ボクちゃん、低血圧だから朝弱いのぉ〜。」

じろっと撩を睨む香。



かずえは、腕を組んでうーんと考えると時間を少しずらす提案をした。

「あー、だったら昼前でお願いしてもいい?」

「あら、それで大丈夫なの?」

「伝達事項を今日の内にしちゃって、

明日の朝の仕事を今日中にできれば、たぶん問題なしだと思うわ。

じゃあ、さっそく説明するわね。」

「じゃあ、ボクちゃんは、フリーターイムっ!じゃあねぇ〜。」

「あ!撩!こら!待ちなさいって!」

すたこらさっさと撩は台所から出て行った。



「ほんと、冴羽さんって相変わらずね。」

(う、変わり過ぎて大変なんだけど)

思わず声に出そうになったのを、慌てて飲み込んだ。

「で、今日、明日のことなんだけど、詳しいことはこの指示書に書いてあるわ。」

「ありがと。いつも分かりやすくて作業しやすいわ。」

「明日は、夕方には戻って来れるから、夕食から私が作るわ。

香さんたち、明日の晩はどうする?」

「うーん、撩と相談してみる。

あいつも、普段していることを先送りしているっぽいから。」



香は、撩が夜の情報収集に出ていないことや、

銃器の手入れをする時間が取れていないのではと、思い返す。

「……ごめんなさいね。二人に負担かけちゃって。

その代わり、教授が報酬を奮発してくれるみたいだから、

楽しみにしててね。」

香は目を見開いた。

「ええ!? ほ、報酬って、そ、そんな、受け取れないわよ!

もともと、この件は私たちが原因なんだし!」



香は完全ボランティアのつもりでいたので、

かずえの情報にかなり驚いた。

「私の代わりのアルバイト料よ。」

「で、でもっ。」

「いいから。きっと教授に直接断りに行っても無駄だと思うから、

受け取れる時に受け取っといて!」



香は、困った表情で言葉に詰まる。

「そ、そんな…。」

「で、打合せの続きなんだけど、明日の朝は、私8時にはここを出る予定なの。

だから、お昼の用意から入ってもらって、夕方まで。

これが終われば、もう通いはなくても大丈夫よ。」

「かずえさんも、1週間大変だったわね。」

「香さんこそ。」

「じゃあ、詳しく話すわね。」



香とかずえは、スケジュール表と指示書とを見比べながら、

細かな打合せに入った。

思いの外、項目が多い。

今日と明日、やや慌ただしくなりそうな気配。



その内容を、台所を出て行ったはずの撩は、

ざっと屋敷内の防犯チェックをして、再び台所のそばに戻ると、

戸の外から2人の会話を終わりの方だけこっそり聞いていた。



「そう言えばミックは?」

「彼も不規則な動きなの。取材で現場に泊まり込みがあったり、

原稿の締切は毎週あるし、何もない時は、自宅かこっちかね。」

「そうかぁ、締切かぁ、うう、聞くだけでも体温下がりそう。」

「こなして行くと慣れてくるそうよ。」

香は、思わず『慣れてくる』というフレーズに過剰反応し、

ドキンと心臓が跳ねた。



「ミックもいきなりこっちに顔出すかもしれないけど、適当にあしらっといて。」

「あはは…、了〜解。」

「じゃあ、もし分からないことがあったら、教授に聞いてね。

あ、もうこんな時間。そろそろ行ってくるわ。」

腕時計をちらりと見る。

「ええ、気をつけて!」

隠れていた撩は、かずえの接近を感じて、素早く天井に移動した。

そのままかずえは、パタパタと裏口に向かって屋敷の廊下を進んで行った。

撩は、音もなくまた元の位置に戻り、ふっと表情を緩めた後、

教授の部屋に向かった。



台所に残された香は、指示書を冷蔵庫に張り付け、買い物袋に向き合う。

「まずは、買ったものをしまわなきゃね。」

素早く頭の中で、タイムテーブルをイメージする。

「早く片付けて、美樹さんのところに行かなきゃ。」

手早く常温保存、冷蔵保存、冷凍保存のものを分けて行く。

まとめ買いは、かるく100品目を超えるので、

それだけでもけっこうな作業。

「あとは、消耗品ね。」

キッチンペーパー、トイレットペーパー、ラップ、アルミホイル、コーヒーフィルター、

石けん、食器洗い用洗剤と、日用品の分別にかかる。



香はトイレットペーパーをかかえて、レストルームに行き、

自分も用をすませて、指定席にペーパーを置いた。

「ここも、掃除しといたほうがいいかもね。」



素早く台所に戻り、エプロンをつけ、お湯を沸かす。

「えーとここかしら?」

食器棚の上に、洋菓子の箱があり、それを背伸びで取り下ろす。

「あ、あった、あった。」

高級銘菓のバームクーヘンとマドレーヌの個装。

美樹と教授のティータイム用だ。

かずえは、もちろん香も一緒にと伝えていたが、今はその時間ももったいないので、

まずは、二人分のおやつセットを用意する。

湯が沸いて、美樹の部屋に持って行くポットに注ぐ。

「先に美樹さんのところね。」



香は、指示書を確認して、トレーとポットを持って美樹の病室に向かった。

午後3時前、廊下には日本庭園から心地の良い秋の風が流れている。

紅葉も散り始め、緑のコケの上では、

一足早いクリスマスカラーの組み合せ。

「あっという間に年の瀬が来そうね…。」

香はぽつりと呟いた。


**********************************
(8)につづく。






イメージとしましては、11月の第2週あたりです。
低地でも紅葉が堪能できる日取りかなと。
というワケで、もうすぐ通いも一区切りです。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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