11-08 Teatime

第11部 Memory Of Chinderella 

奥多摩湖畔から6日目


(8)Teatime  ******************************************************************1785文字くらい
 


「美樹さん、おかげんはいかが?」

ノックのあと、香は美樹の病室を開けた。

「あら、香さん、…ということは、かずえさんは、もうお出かけ?」

「ええ、夜には戻るみたい。」

香は、ポットと洋菓子をサイドテーブルに置くと、

ジャーマンカモミールの葉に、

お湯を注いだ。

「あ、いい香り。」

「かずえさんが、これが今日のおやつタイムですって。」

「うれしいわぁ。」

「この後、教授に傷の消毒をしてもらうことになっているみたいだから、

後で呼んでくるわね。」

「ええ、お願い。」

「海坊主さんは?」

「彼も夕方こっちに来るって言っていたわ。」

「あ、こっちの古い方のポットは持っていっちゃうわね。

あと、検温もあるけど、それは、大丈夫かしら?」

「ええ、朝昼晩と3回食前にちゃんと記録とってるから、気にしないで。」

「えーと、あとは、夕食後にお風呂とシーツ交換があるの。」

「じゃあ、また食べ終わった時、声かけてもらえるかしら?」

「分かったわ。香さん、あんまり頑張り過ぎないでね。」

「え?そ、そ、そんなことないわよっ!

あ、あたし下手に頑張ると失敗ばかりしちゃうから、

『適当に』を覚えようと思ってさ、あははは…。」

見透かされていることに、どきまぎとしながら返事をしてしまった。

「ま、また後でね。」

「はーい。」

香は慌ただしく病室を出て行った。

「香さん、あとで疲れが出なければいいけど…。」

美樹は苦笑した。





香はポットをかかえて、また台所に戻り、

今度は教授のお茶菓子と緑茶を用意した。

鎌倉彫のお盆に乗せて、書斎に向かって零さないように慎重に廊下を進む。

それが、無意識に気配を消していたことに繋がったのだろう。

コンコンというノックの音に、教授も撩も目を見開いた。

「教授、お茶を持ってきました。」

かちゃりと扉が開く。

「か、香?」

「おお、もうそんな時間かね。」

教授は何もなかったかのようにいたって普通に答える。

「かずえさんから、今日はこれを出してと言付かって。」

「ほほ、ありがたく頂くとするかの。」

「この後、美樹さんの診察をお願いします。消毒を兼ねて経過観察と聞いています。」

「ふむ、かずえ君からしっかり引き継いでいるようじゃな。」

ずずっと緑茶をすすりながら、教授はにこやかに答えた。

撩はまだ呆然としている。

「撩、どうしたの?あなたもおやつ欲しいの?」

「ばっ、ち、ちげぇーよっ。」

「何、香君の成長に驚いておるだけじゃ。」

「きょ、教授っ!」

「は?セイチョウ?」

(整腸?成鳥?生長?)

きょとんとしている香の表情で、漢字変換が出来ていないことを悟った2人は、

香らしさに、ふっと顔が緩んだ。

「撩、コーヒー欲しかったら煎れてくるわよ。」

「あー、頼むわ。菓子はいらねー。」

「はいはい。」

急ぎ足で香は書斎を出て行った。



「……全く気付かなかったのう。」

「……たぶん、あれは無意識だと思います。」

「ほほ、コントロールできるようになるのは、そう遠い未来じゃなさそうじゃの。」

「ふっ。」

複雑な表情の撩に教授はバームクーヘンを齧りながら話しを続けた。

「さっきの件じゃが、場所の希望は?」

「できるだけ、民家、公共施設から遠い方がいいです。」

「だとすると、ちぃーとばっかし標高が高いからのう、

使うんじゃったら早い方がいいじゃろ。

凍死でもしたら元も子もないわい。」

「そんなヘマはさせませんよ。」

「……ところで撩よ。」

「なんです?」

「香君とは、もう何回シたんじゃ?」

がしゃんっ!!

寄り掛かっていた椅子ごと倒れた撩。

「ほーほほほ、まーだまだ青いのう〜。」

「っきょ、教授っ!」

ずずっと緑茶をすすり湯飲みをカラにした教授は、

ドクターズバッグを開けて中身を確認した。

そこへ香が戻ってきた。

「失礼します。撩コーヒー持ってきたわよ。って、撩、なに座り込んでんの?

あら、教授、もう行きます?」

「ああ、香君も一緒にくるかね。」

ちょっと躊躇ったが、香は逃げてはならないと、背筋を伸ばした。

「そうします。あっ!撩は来ちゃだめよ!」

「ええ〜、なぁんでぇ〜、撩ちゃんも美樹ちゃんの半裸見たぁーい。」

スコーンとハンマーが飛ぶ。

「ぐっ!」

「大人しくここでコーヒー飲んでてちょーだい。さ、教授行きましょう。

教授も美樹さんにヘンなことしたらハンマーですよ。」

「か、香君、お、お手柔らかに…。」

肩をすぼめてとぼとぼ歩く教授と、背の高い香とのアンバランスな後ろ姿を

撩は苦笑しながら見送った。


********************************
(9)につづく。






第193話の武田季実子のお茶運びシーンでは、
たぶん撩ちん、素で接近に気づいていなかったような表情です。
殺気込みでは、数キロ先からのオーラも感じちゃうような奴ですが、
条件によってはセンサーにかかりにくい時もあるってことで?

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きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
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十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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