11-12 Falcon's Help

第11部 Memory Of Chinderella 

奥多摩湖畔から6日目


(12)Falcon’s Help  **********************************************************2626文字くらい



台所の香は、ファルコンの登場にパンかごはんの追加かと思った。

「海坊主さん、どっちを持って行く?」

「あ、いや、食器洗いをやってやる。

か、香はその間に、こ、コーヒの準備をしてくれ。」

「え?」

「さっさと動け。みんな待ってる。」

赤くなりながらの、命令口調は迫力ゼロ。

香はくすりと笑った。

「かしこまりました。」



ポットで保温していたお湯をヤカンで湧かし直し、

コーヒーカップをそろえ、豆をミルで挽き、

サイホンにかける。

美樹用のハーブティーも合わせてセットする。



その間に、ファルコンは大きな手では似つかわない程に、

超高速で美しく食器を洗い上げる。

気がついたらほぼ片付き、ファルコンは無言で食堂に戻り、

残りの食器を下げて戻って来た。



「海坊主さん、早い…。」

「慣れだ…。」



顔を赤めながら、

視力を失っているとは思えないほどのスピィーディさで、

追加で運ばれた食器もあっという間に片付いた。



「テーブルを拭いてくる。」



大きな手に小さな台拭きを持ってファルコンが出て行くと、

コーヒーもちょうど抽出が終わり、

5つ分のカップにゆっくり注いだ。

焙煎の香りが台所に立ち上る。

ハーブティーも用意ができた。



そこに、ファルコンが大鍋のキャスターを押して戻って来た。

「香、あと一人分しか残っていないぞ。」

「ああ、予定通りだわ。あとは、かずえさんの分。」

「じゃあ、別皿に移しておくぞ。」

「ありがとう、海坊主さん。」

「れ、礼は、いい!」



ギクシャクして赤くなるファルコンに、香は感謝の視線を送る。

ゴムベラで綺麗に鍋から残りのシチューを移し替え、

その手で素早く鍋も洗うファルコン。

このお陰で、食後30分の作業時間が短縮された。

香はかずえの分のシチューにラップをかける。



「海坊主さん、行きましょ。」

「ああ。」

キャスターに、コーヒーや砂糖、スプーンなどを乗せ、

再び食堂へ向かった。



「おまたせ。お砂糖とミルクはセルフね。美樹さんはこれをどうぞ。」

「あ、こんどはジャスミンね。」

「あたしもハーブにはまりそう。」

「これは、カオリが?」

ミックがカップに口をつけながら問う。

「あ、そうだけど、ま、まずかったかしら?」

「No!同じ豆のはずなのに、かずえと時と微妙に違うから、

ファルコンかカオリのどっちのコーヒーかなと思って。」



「ほほ、人によっての僅かな差が、大きな差を生むもんじゃ。」

撩もだまってコーヒーに口をつける。

「今日は、口数が少ないのう。ベビーフェイス。」

ぶっ!と撩がコーヒーを吹いた。

「きょ、教授!昔のあだ名はやめて下さいって、前も言ったでしょ!」

口を拭いながら、苛立ちを隠さない撩。



「そうよ、なんか今日ヘンよ。撩。どうしたの?体調悪い?」

真剣に心配してくる香。

その挙動不振さは、香以外にももちろん伝わる。

「な、なんでもねぇーって!」

注目される視線をそらすかのように、

目を閉じてくっとコーヒーをあおった。



美樹は、その様子を見ながらくすりと笑い、

ちらりと壁掛け時計に目をやった。

「かずえさんは、今日も遅いのかしら?」

「今日、明日でケリをつけるって言ってたわ。

あっ!明日の朝のことしとかなきゃ。ごめんなさい、先に席を立ちますね。」

自分のカップを持って香は立ち上がった。

「カオリ、無理するなよ。」

ミックが声をかける。

「心配しないで。元気だけは人よりあるつもりだから。」

にこっと笑って食堂を後にした。



「……撩。一つ参考情報を伝えておく。」

香がいなくなった席で、ファルコンがおもむろに口をひらいた。

「なんだ?」

「香が、ミックのところに行く前に、店で暴れただろ。

その時、俺と美樹は、背後にいた香の気配に全く気付かなかった。」

美樹もその時のことを思い出す。

「俺たちが後ろをとられることは、あってはならないくらい致命的だ。」

「へぇ、カオリがそこまで気配を消せるとはな。」

ミックが眉を上げた。

「そして、さっきは隠れていた俺の気配を名指しで当てた。」



撩は、ふっと目が細くなった。

「……まぁ、あいつは、まだ本気の殺気を出さないからな。

殺意のない存在に気付かなくても、

そんなに過剰反応することはないんでない?」

「だが…撩、

……香は、俺たちの想像以上に、無意識にスキルアップしているようだ。」

ファルコンがゆっくり語り出す。

「なーるほどね。リョウやファルコンたちと長く一緒にいれば、

知らず知らずのうちに色々吸収しちまってるかもなぁ。」

ミックが後ろ頭に手を組んで胸を反らせた。



撩はカップの黒い水面を見つめたまま、トリップ中。

「ほほ、まだコントーロルはできんようじゃがの。」

教授もずずっとコーヒーをすする。



美樹は、撩のほうを見つめながらゆっくりと口を開いた。

「……冴羽さん、私、怪我が治ったら、…手伝うわよ。冴羽さんが、考えていること。」

撩は、驚いて顔を上げた。

こちらから、後日改めて声をかけておこうと思っていたことを、先読みされていた。

「美樹ちゃん…。」

「あー、お、俺も、

トラップの応用もまだ教えていないことがあるしな!」

ファルコンが斜め上を向きながら腕組みをして、鼻息を出した。

「リョウ、お前が許可をくれるなら、俺も加勢してやってもいいぜ。」



「……おまえら。」

撩は、右手にコーヒーカップを持ったままテーブルにおろし、

左手で前髪を掻き揚げた。

「んと、あいつには保護者だらけだな……。」



「おいっ、リョウっ!

まさか自分もまだ保護者だと思ってんじゃねぇーだろうな!」

ミックは撩の胸をつかみあげた。

「お、おまっ!零れるだろうが!」

「どうなんだ?」

撩は、珍しく真面目顔モード。

ふっと口角を上げた。



「……ミック、お前も、覚悟を決めたんだろ?」

「え?」



逆に質問を返されたミックは動きが止まった。

撩はミックの手を外させた。



「ミック、聞かなくてもきっと大丈夫よ。」

「は?」

「ね、冴羽さん。」

「……さぁ〜ねぇ〜。」

「あ、ごまかした。」

美樹は、苦笑しながらハーブティーをこくりと飲んだ。



その後、

しばらく他愛のない話しで5人が歓談していた。

いつ戻るか分からない香に配慮してか、

2人が一線を越えたかどうかという話題は、

暗黙の了解で避けられていた。

後々、落ち着いた頃に総攻撃してやろうと、

ミックは目論んでいたが、

香がいつまでたっても現れない。



「カオリは、なんに手こずってるんだ?」

「さぁな。」

「レストルームついでに見て来るよ。」

ミックが様子を見に行くことにした。


************************
(13)につづく。





CHキャラのみなさま、
もう詳しいことを聞きたくてうずうずしていますが、
教授以外は、一応香に気遣って自粛中〜。
ちなみに、香キャッツで大暴れ&プチ家出の日が
1991年8月9日であることが判明。
美樹の損害メモノートを
あらためて見直したら日取りが設定されていたとは〜。
これ1年後の面々をネタにできんかな〜。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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