11-13 Alamists

第11部 Memory Of Chinderella 

奥多摩湖畔から6日目


(13)Alarmists  **************************************************************2771文字くらい



香は、美樹の部屋のシーツや枕カバーを取り替えて、

ベッドメイクをした後、洗濯機を回し、

明日の朝食の下準備を終えていた。

日中気になっていた、トイレ掃除をしているところで、

ミックがやってきた。



「カオリっ、そんなところまで掃除しなくてもいいんだよ!」

ミックは驚いて歩み寄った。

「もうすぐ終わるから。大した手間じゃないし。」

「明日も早いんだろ?カズエが午前中からいないから。

今日は、もう帰ってゆっくり休んだらどうだい?」

「ええ、これが終わればもう大方片付くから、心配しないで。」



ミックは眉を少し八の字にした。

「カオリ、頼むから無理はするなよ。」

「あら、ミックって意外と心配性ね。

そういえば、なんだか最近、撩もそうなのよねぇ。」

「あいつが?」

「あたしがいくら大丈夫だって言っても、休めだの、動くなだのって、

今までそんなこと言ったことなかったクセにね。」

手を休めずにそう言う香をミックは後ろから見つめる。



奥多摩の結婚式があったのは1週間前。

たぶん、あの香を救出した時、この2人は大きな変化があった。

そして、もうお互いの間にあった壁を壊していることを、

ミックもなんとなく感じていた。

もの凄ぉーく聞きたい事案ではあるが、

超奥手で初心な香に、気になる質問をダイレクトに尋ねるのは、

あまりにも配慮がないと、一応今の段階では自粛することにしていた。

しかし、今しがた香が口走った内容で、

撩の過保護の意味がすぐに分かってしまった。



「あのバカ…。」



「え?」

「い、いや、なんでもないよ!」

ミックは手袋をした両手の平を香に向けて、ぶんぶんと首を振った。



「さ、こっちも終わったし、あとはコーヒーカップの片付けね。」

「そんなの、俺たちがやっておくよ。」

「で、でも。」

「いいから、いいから。」



背中を押すミック。

ひそかに香にタッチできたことを小学生のように喜ぶミック。

香は困りながらも、思い出したことがあった。

「あ、でもキッチンには寄らせて。かずえさんの指示書を持ってこなきゃ。」

振り返りながらそう明るく言う香に、ミックも顔が緩む。

「じゃあ、向こうで待ってるよ。リョウにも帰る準備しておくように言っておくから。」

「ありがとう、ミック。」



香は、かずえに伝言を残して、

自分の荷物と冷蔵庫に貼付けていた紙を持ち、

食堂に向かった。





「おまたせ。ねぇ、美樹さん、食後にお薬とお風呂ってかずえさんから聞いているけど、

また私が髪洗いましょうか?」

「大丈夫よ、今日はファルコンにしてもらうからっ。」

美樹は流し目でファルコンに視線を送った。

じゅわっと赤面する巨体から湯気が上がる。

「美樹ちゃーん、そんなタコ坊主より、ぼくちゃんが手伝ってあげ」

最後まで言う前に、撩の顔に1tハンマーがめり込んだ。

「カオリ、Good Job!」

ミックが親指を立てた。



「じゃあ、明日の朝食はもう温めるだけにしておいたから。」

「ありがとう、香さん。」

「明日お昼前にまた来ます。教授、お邪魔しました。」

「また頼むよ。香君。」

「じゃあ、撩、行きましょうか。」

「美樹ちゃんとお風呂ぉ〜。」

「だまらっしゃいっ!」

首根っこ掴まれた撩は、ずるずると廊下を引きずられて撤収。



「はぁ、冴羽さん、わざと今まで通りに振る舞おうとして…。」

美樹がフェードアウトしていく2人の気配を感じながら呟いた。

「まったく、不器用な奴だ…。」

ファルコンも腕を組んで溜め息をつく。

「でもさ、逆にいきなり目の前でベタベタされたら、

それこそ俺らが居る場所に困るんじゃない?」

ミックがカップを片付けながらそう言った。

「そうね、この雰囲気の方があの2人らしいかもね。でも、

香さん、ちゃんと休息できるかしら。心配だわ。」

「確かに…。」

ミックがさりげない大人の会話に同意する。

ファルコンは無言で再び赤くなる。



「まぁ、明日が一区切りじゃろうが、終わってからも、色々予定がありそうじゃ。」

教授が立ち上がりながら意味深なことを言った。

「予定?」

美樹が不思議そうに聞き返す。

「お前さんが手伝おうとしていることを、もう撩は始めようとしておるからのう。」

美樹は、はっと表情を変えた。

「さて、ワシはもうしばらく書斎におるが、何かあったら呼んでおくれ。

ああ、食後の薬も忘れずにのう。」

「あ、はい。」

スタスタと高齢とは思えない姿勢と足取りで杖が飾りのように食堂を出て行く教授を

美樹とファルコンは見送った。



「ミキ、俺はカズエが戻ってくるまでキッチンで待ってるから、

先にバスタイムにしたらいいよ。」

ミックはワゴンキャスターにみんなの分のカップとソーサーなどを乗せながら、

美樹とファルコンを促した。

「そうさせてもらうわ。ミックありがとね。」

「No Probrem!」

ミックは白い手袋をはめた手をひらひらさせて、食堂を出て行く。

「じゃあ、ファルコンお願いしていいかしら。」

「っぁ、…ああ。」

カチンコチンに赤く固まっている大きな夫を見て、美樹はクスリと笑った。





「ってーな、かおりちゃーん、

そんなに乱暴に引きずらなくてもいいんでなぁい?」

首根っこを掴まれたまま、廊下を滑っていた撩は

玄関に着いたら、

しゃがんだまま喉仏を押さえながら文句を言った。

ローパンプスを履きながら香は、

じろっと撩を見る。

「仕向けた本人が何を言っているのかしら?

しかも、ワ・ザ・ト でしょ?」

「へ?」



香は、いつものやりとりを演出した撩の行動と、

今日の日中の挙動不審な言動が、対局にあるような気がして、

自分の理解の及ばないことを承知で『わざと』という言葉を

あえて強調してみた。

スリッパラックに履いていた物を指定席に置き、

玄関の戸を開けた香の後ろ姿を、

撩は立ち上がりながら眺め、ふっと口角を上げた。



「あらぁ?バレた?」



後を追って、香の肩に手をかけ、くいっと自分のほうに寄せる。

「あいつらの前で、いちゃつく訳にはいかねぇだろ?」

「え?」

香の顔が瞬時に赤くなり、体がロボットのようにギクシャクする。

これで形勢逆転。

そのまま、細い肩を押して前進、ドアを開けクーパーの助手席に座らせた。

「ちょ、ちょっとっ、りょ…。」

「ほい、閉めるぞ。」

バタンという音と間を置かずして、運転席のドアが開く。

撩は、どさっと座りながら、ドアを閉めすぐにエンジンをかけた。



「ちょっと、寄り道して帰るぞ。」

「ええ?ど、どこへ?」

「ナ・イ・ショ。」



いかにも悪巧みをしている視線を香に向けて、

撩はアクセルを踏んだ。

「ちょ、ちょっと、明日も午前中から動くんだから、

遅く帰るのはキツいんだけど。」

「時間はそんなにかかんないよ。」

そう言いながら、クーパーはスピードを上げる。



(一体、どこに行くのかしら?)



撩の秘密主義は今に始まったことではない。

無理に聞き出そうとしてもきっと教えてくれないと思い、

香は、助手席からの車窓を眺めながら、

目的地への到着を待つことにした。


**********************************
(14)につづく。






さてさて、こんな予定がタイトな時に、
撩ちんは一体どこへ行く気でしょう〜。
鋭い方は、11-01のスタート時点で分かっちゃってたかも?

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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