13-03 Works Of Ryo & Kaori

第13部 A Week After The Okutama Lake

奥多摩から7日目


(3)Works Of Ryo & Kaori ***************************************************2482文字くらい



撩と香は、新宿駅の伝言板を確認した後、

そのまま教授宅へ車を走らせる。

車内で撩を待たせて、香だけが依頼の有無を見てきたが、

ご多分に漏れずこの日も呼び出しの暗号はなし。

香の気分としては半分ほっとして、半分残念。



都内の住宅街にある敷地の広い日本家屋に、

クーパーが横付けする。

「車、このままここに置いておく?」

「んー、裏へまわしてくるわ。先に入ってろ。」

「うん。」

撩は、香だけを降ろして、通用門のある方に車を移動させた。



呼び鈴を押す香。

「こんにちは、槇村です。」

『おお、入りなさい。』

書斎のパソコン画面でモニターをチェックしているであろう教授の声が聞こえる。

かちゃりと自動的に鍵が解除され、中に促される。

玄関をくぐると、教授が迎えてくれた。



「ほほ、午前中からすまんのう。」

「いえ。本当はもっと早かったほうがよかったかもしれないんですが、

かずえさんが昼前でいいと言ってくれて。」

2人はツヤのある廊下を歩きながら台所へ向かった。

「いや、朝食の準備もしてくれておいたようで、かずえくんが感謝しとったよ。」

「かずえさんから何か伝言とかありますか?」

「おお、そうじゃった。この指示書を渡してくれと。」

香は、白衣のポケットから出されたメモ書きを受け取る。

いつも通り分かりやすい内容に彼女の心使いを感じる。



「分かりました。じゃあ、さっそくお昼の準備からしますね。」

「頼むよ。ああ、ファルコンも所用で夜まで戻れんと聞いておる。

今日は、わしらとおまえさんらで4人の食卓かの?」

「用意する分は、たぶん7、8人前くらいにはなると思います…。」

香は苦笑しながら答えた。

「ほほ、いずれにしても賑やかなほうがよい。

頃合いになったら、また声をかけておくれ。」

教授は、そう言い残してスタスタと台所を出て行った。




ふと足を止める教授。

「撩よ、盗み聞きは感心せんのう。せっかくのワシと香君の語らいに、

いらぬオーラを発しおって。」

陰からぬっと出てきた長身の男は、機嫌悪く答える。

「教授が、また余計なことをくっちゃべらないか注意していたんです。」

「適切なアドバイスの間違いじゃろ。」

ぐっと詰まる撩。

「どうじゃ?うまくいっておるかの?」

教授は、にやりとスケベ顔で細い視線を投げかける。

「何も報告することはありません。」

「ほほほ、今のうちに強がっておくんじゃな。

そのうち、連中から総攻撃が待っておるぞい♪」

教授は杖をくるくるとご機嫌よくまわしながら、

廊下を歩いていった。

「ったく、あのタヌキじじぃめ。」



撩は、この後どうするかしばし迷う。

香を手伝うにしても、自分の仕事だと断られるだろうし、

いつ教授が監視カメラで覗いているか分からないこともあり、

台所で並んでいる姿も見られたくない。

ファルコンも夜まで不在なら、からかって遊ぶ相手もなし。

美樹のところに行っても、香のことで逆に突っ込まれそうだし、

ミックも取材だの、締切りだので、オフィスにも戻れていないようだし、

教授のところには、しばらく近寄りたくない。



「あー、どーっすかなぁ。」



はっきり言ってヒマである。

後ろ頭に手を組んでうーんと伸びながら、

とりあえず香のいる台所へ行くことにした。





「今日は何作んの?」

いきなりずいっと現れた撩に、作業に夢中になっていた全く香は気付かなかった。

「うぁ!…もー、びっくりしたぁ。

どうして、ここの男共はみんなして気配消してここに入ってくんのよ!」

「男共?」

「昨日の海坊主さんに、ミックよ。」

撩は昨日の話しを思い出した。

「まぁ、おれらも含めて商売柄仕方ねぇーんじゃねぇの?」

「人のモモ触りにくるのが商売柄?」

なにぃ?」

海坊主はそんなことをするハズないので、すぐにミックだと分かった撩。

「その前にあんたかと思ってフライパンで殴っちゃったから未遂だったけど。」



撩が昨日、ミックと香のやりとりを聞いていたのは、

この先からだった。

ミックがそっと近づいて香を驚かそうとしていたのは、

話しの内容から聞き取っていたが、太腿狙いだったとは、

撩のこめかみにぴしっと青筋が浮く。



「今日は、豚汁とおにぎりとお漬物、フルーツは日本の秋の盛り合わせ。」

香は、大量の根菜類を用意して切り始めた。

「あ、そうそう。さっきもらった指示書にね、

撩にしてもらいたいことがあるって書いてあるの。」

「ああ?」

手を止めて指示書を撩に見せる香。

「武器庫に行けば分かるみたい。」

「なぁーんで、俺まで使われんのぉ?」

「文句言わない!さぁ、行った行った!」

香に背中を押されて、台所を追い出された。



「ったく、何なんだよ。」

撩はぶつぶつ言いながら、この家屋の外見に相応しくない武器貯蔵庫へ向かった。

地下にある武器庫は、一個師団が十分使える装備が揃っている。

「あん?」

鉄の扉に張り紙がある。かずえの文字だ。



『レミントンM870とモスバーグM500の調子を見て下さい。』



ぺりっと紙を剥がす撩。

「ふーん。」

ゆっくり鉄の扉を開ける。

海上自衛隊やアメリカの警察で採用されているメジャーなショットガン。

「確か、両方とも10丁以上はあったよな…。」



自分の足音だけが響く武器庫で一人呟きながら、その指定席に向かう。

「ミックの手じゃ、細かなチェックは難しいかもな…。」

道具の管理をきちんとしていないと、いざという時に使えない。

自分もいつ世話になるか分からないので、

一応真面目に診察してみることにする。



黒光りする銃身をひょいと持ち上げる。

重さ3キロ強、撩にとっては使い勝手のいい重量感であるが、

しばらく本戦では使っていない。



そばの木製テーブルにごとりと置くと、メンテナンスグッズを持ってきた。

「どーすっかな、…全部ばらすか。…ったく、めんどくせーなぁ。」

口ではそういいつつも、表情は決して嫌がっているものではない。

むしろ、銃火器の整備や調整は、雄の本能的なところに、心地良い刺激を与える。

機械いじりは、男脳が得意な傾向があるもの確かだ。



金属がぶつかる音が響く部屋で、

撩は口笛を吹きながらもくもくと

ショットガンの分解、メンテ、組み立て、調整を進めていった。


******************************
(4)へつづく。






男脳女脳に関しては、
以前、NHKスペシャルで興味深い番組が放送されていました。
立場上、色々な生き物たちのオスメスの違いや生態を見ていますが、
根底にある生物学的オスの存在意義は、なかなか切ないもんです。
というワケで、教授宅の武器庫、銀狐編で出てきた場面に、
さらに奥行きがあることにしております〜。
今日はイブ、他のサイトさんでのクリスマスネタを楽しんできま〜す。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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