13-04 To Greet Everyone

第13部 A Week After The Okutama Lake

奥多摩から7日目


(4)To Greet Everyone ****************************************************1915文字くらい



「こんなもんでいいかな?」

額の汗を拭って、香はふぅと一息ついた。

大鍋で湯気を上げている具沢山の豚汁に、おにぎり各種。

漬物に、切り分けられた、苺に柿と林檎の盛り合わせ。

ダイニングテーブルにそれらを運んで配膳をする。



「よっと。」

大鍋をワゴンキャスターに乗せ、

食卓のそばに待機させると、次は丼と刻みネギを用意する。

「さ、美樹さんたち呼んでこなきゃ。」

香は、エプロンで手を拭きながら美樹の部屋に向かった。




一方、撩も一区切り。

「こんなもんでいっか?」

いつもは手を汚さずにする作業だが、

数が多かったためか指先がガンオイルで若干汚れてしまった。

全てを元に戻し、撩は武器庫から撤収。

手を洗いに洗面所に向かった。



その頃、美樹を呼びに行く前に、香も洗面所に立ち寄ろうとしていた。

ふと、廊下で足が止まる。

(この匂いは…。)

自分のところの武器庫と同じような匂いがかすかに漂う。

火薬と硝煙とオイルの入り交じった独特の香り。

じゃーと水を流す音が聞こえ、どうやら撩が先に使っていることが、

洗面所の入り口手前で読んで取れた。



(そっか、かずえさんから銃の手入れかなんかお願いされていたのかな。)

撩の残り香だということが分かり、警戒を解いた。

(びっくりした。誰か同業者が忍び込んでいるかと思ったわ。)

香は、撩がいるところの脇を通ってトイレに行くのが何となく恥ずかしかったので、

少し離れた死角にしばし隠れ、撩が出て行くのを待った。

(あーん、早くしてよぉ。)



すると水音が止まり、撩が動く気配がした。

香は見つかるのがいやだったので、

そのまま息をひそめて撩が遠のくのを待った。

その香の耳に撩の独り言が聞こえてくる。



「……あいつには、つけさせたくねぇな…。」



(え?)



思わず声がでそうになったのを手で慌てて押さえた。

そっと角から覗くと、もう撩は視野から消えていた。

教授の部屋に向かったようだ。

「『あいつ』って?」

香は頭の中に疑問符が浮かぶ。

主語も目的語も略された呟きに、全く真意は分からない。



「なんのことかしら?」



香は立ち止まったまま動けずにいたが、トイレが近いことを思い出し、

慌てて個室に飛び込んだ。

「は、早く美樹さん呼びに行かなきゃ。」

大急ぎで用を足した香は、美樹の病室に足早に向かった。





「美樹さん、こんにちは。」

「香さん。」

ベッドで上半身を起して、本を読んでいた美樹はぱっと顔が明るくなった。

「調子はどう?」

「順調よ。」

傍らに読みかけの本を置く美樹。

「よかった。とにかく早く治って欲しくて。」

「大丈夫よ。心配しないで。ところで、さっきからお味噌の良い香りがするんだけど?」

「ええ、お昼が出来たから呼びにきたの。今日は豚汁ね。」

「わぁ、うれしい!やっぱりこれからの季節は、温かい汁物っていいわよねぇ。」

「もう作っている最中から温まり過ぎるくらいよ。

じゃあ、あたし教授の部屋に行ってくる。」

「わかったわ、先に行ってるわね。」

そんな会話を交わして、香は書斎へ向かった。



長い渡り廊下、スリッパを履いていないと、冷たさでもう素足では歩くのが辛い気温。

はらっと落ちる紅葉を横目で見ながら、目的地に着いた。

コンコン。

静かにノックをする香。

「教授、お昼ごはんできましたよ。」

「ほほ、今日は何かのぉ?」

机に山積みさている書籍の間から、ふと教授が顔を上げた。

「日本風でまとめてみました。」

「どれ、行くかのう。」

回転椅子をゆっくりと動かし立ち上がる教授。



「あら?撩がこっちにいると思ったんですけど。」

「ほ、あヤツならついさっきちょっと寄りよって、すぐに出て行ったがの。」

教授の部屋に続く通路は、香が来た廊下と、庭に続く方面があるが、

どうやら撩は庭に出たようだ。



「まったく、呼ぶ手間増やして…。

教授、先に食堂へ行ってて下さい。撩探してきます。」

香は、ふらついている相棒の姿を求めて奥の庭が見える縁側へ足を進めた。

「あ、いた。」

つっかけを履いて池の傍で遠くの水面を見ているように見える。

両手はポケットに入っているが妙に姿勢がいいので、

そこにいるだけでも様になっている様子に、香は一瞬目を奪われた。



「…っ、あーだめだめ。」

ちょっとだけ赤くなった香は、すーと息を吸って口に手を当てた。

「りょおぉー!ごはんよーっ!」

「あー、今行く。」

香の気配に少し前に気付いていた撩は、まるで夕食が出来たと呼びにくる母親のようだと、

振り返りながらくすりと笑った。

「早くして!冷めちゃうから!」

香はそう言い残すと、小走りで食堂に向かった。



「食いにいきますかね。」

撩は縁側の踏み石を上がると、

またごまかしポーズのがに股猫背で遅れて香の後を追った。


***********************
(5)へつづく。





撩ちん、覚悟を決めたにも関わらず、
自分たちと同じ匂いを纏ってほしくないと、
往生際悪く、まぁーだ考えています。
とーぶん、この感覚の呪縛から解かれそうにないヤツ。
この先、悪あがきがちょこちょこと出てくる予定です。
カオリンの鼻の良さ、これは彼女に限らず女性の方が体臭に関して
男性よりも若干敏感な傾向があるとか。
匂いから自分と遺伝的に離れた個体を識別できる潜在能力が備わっているとのこと。
年頃の娘が遺伝的に近すぎる父親に拒絶反応を示すのも生き物的にごくごくフツーの理だとか。
そういえば、ウチの旦那東北系、ワタクシ九州系、
確かに遺伝的に離れちょるがな。(鼻水垂らしている時の方が多いけど…)

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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