13-06 Presents Of Professor

第13部 A Week After The Okutama Lake

奥多摩から7日目


(6)Presents Of Professor  ***********************************************2802文字くらい



撩は、居場所に迷い、

応接間の長いソファーに仰向けで転がっていた。



(ったく、だからここに通うのは嫌だったんだよなぁー。)



教授の余計な発言が、香に無駄な心配や不安を与えやしないかと、

内心ひやひやしているが、

今のところむしろその逆の情報を与えられているようで、

教授も教授でそれなりに、配慮しているらしい。

しかし、折々の場所で昔のことが話題に上がり、

正直あまり触れて欲しくない。



(まぁ、今日で通いは終わりだからな。

早くかずえちゃん、戻ってこねぇかなぁー。)



手にしていた新聞を顔にぱさりと被せ、

足を組み直した。






「……ここにおったか。」



ふいにそばで聞こえた教授の声に、体がピクリと動く。

元ゲリラ軍医、実働部隊並に気配を消すのはお手のもの。

考え事をしていたせいで、

教授の接近に気付くのが遅れたことを知られるのが癪なので、

新聞を被ったまま、返事をする。



「ボクちゃん、さっきいーっぱい働いて疲れちゃったから、

お昼タイムだもんねー。」

「ふむ、よかろう。そのまま聞くがよい。」

教授はなにやらじゃらじゃらと金属音がするものを複数テーブルの上に置いた。

「これを香君に渡しておいてもらえんか。

いや、一部はこれまでのように、お前さんがこっそり付けさせても良いが。」

撩は、人指し指で新聞をちらりと上げ、

隙間から音を立てていた正体を視界に入れた。



イヤリングに、ネックレス、ブローチ、ボタン、

コサージュなどの可愛らしいアクセサリーが

ずらりと並んでいる。

撩は、ふぅと溜め息をつき、のっそりと上半身を起こしてみる。

「なんすか、教授、香に求婚でもするんすか。」

「それもいいが、これは今回の礼じゃ。」

否定しない教授にむすっとしながらも撩は話しを聞いた。



「前に渡したもんと同じじゃが、電池寿命が大幅に伸びておるし、

防水機能も水深10メートルまではオッケーじゃ。」

教授はしわの寄った手で、小さなアクセサリーについと触れる。

「こいつは発信機、受信距離は半径5キロ。こいつは盗聴器じゃ。

以前やった猫のやつと同じ周波数じゃから、全てお前さんの車で受信できる。

このブレスレッドはワイヤーが入っておる。

このペンは小型ナイフ、こっちは小型爆弾じゃが、

前のものより威力と時間が調節できるようになっておる。」

たんたんと説明する教授に、撩は黙って聞き入る。



「お前さんは、香くんのために着飾るものを買い与えてやることは滅多にせんじゃろ。

クリスマスでも誕生日でも、ホワイトデーでも好きな時に使うがよい。」

「教授が直接香にやりゃあいいじゃないすか。」

「ほほ、それこそプロポーズになるじゃろ。」

教授ならやりかねないと、撩はこめかみを押さえた。



「今、プラスチック爆弾を模した口紅も開発中じゃから、

完成したら、またお前さんたちに贈ってしんぜよう。」

「あいつ、ルージュは滅多に使いませんよ。」

「……お前さんが、使わせないように仕向けているんじゃろうが。可哀想に。」

撩はぐっと詰まる。

「お前さんさえ、しっかりしていれば、香くんの気持ちがぶれることはあるまいて。」

教授は、全てを紙袋に入れてしまい込むと、ゆっくりと立ち上がった。



「撩よ、どうせ今は暇じゃろ。また武器庫で他の道具も診てもらえんか。」

「俺は、ここの専属整備士じゃないっす。」

「ほほ、どうせお前さんたちも使うかもしれんじゃろうが。

在庫確認も含めて、かずえ君が戻ってくるまで好きにいじっておるが良い。」

「折角、油落としたっつーのにっ。」



立ち去ろうとした教授が振り向き様に、また置きセリフを吐いた。

「撩よ、ちゃんと香君に休息を与えてやらんと、

あとでまとめて負債がくるからのう。

ほどほどにしておくことじゃの。ほほほほ。」

そう言い残して、

ぱたぱたとスリッパの音を立てて応接室から出て行った。



「くそっ、んとに、あのタヌキじじぃはぁ…。」

語尾が小さくなる。



全て教授のペースでことが進んでいることが、心底つまらない。

表面がコーティングされた小さな紙袋にちらりと視線を落とす。

「なんもかも、じいさんの思惑通りっつーのは面白くねぇーな。」

頭をがしがし掻く撩。

しかしながら、全てがセンスのいいデザインばかり。

きっと香によく似合うアクセサリーであることは否めない。



「どうすっかな…。」



教授の言われるがままに、折々の季節イベントや誕生日に渡すというのも癪だし、

だからといってまとめて手渡すのも抵抗がある。

しばし悩みのタネになりそうだ。

撩は、右の人差し指でひょいと紙袋の取っ手をひっかけ、持ち上げた。

「先にミニへ運んどくか…。」

そう呟きながら、通用門に向かって歩き出した。



廊下に出ようとしたら、パタパタと香の足音がした。

「おっと、今これを見られちゃまずいよな。」

撩は、すっと物陰に隠れて、香が通り過ぎるのを待つことに。

廊下の対面から歩いてくる香は、教授と美樹の洗濯物が入ったカゴを抱えていた。

「急がなきゃ…。」

そう呟きながら、撩の隠れている脇を通過するところで、

香がふと足を止める。



「………。」



ゆっくり無言で振り向く香。

「…りょ、撩?」

(だぁ!なんでバレるんだよっ!)

「……そこに、いるの?」

自分は完全に気配を消していたつもりでいたので、本気でかなり驚いた。

紙袋を足元の陰において、姿を見せる。



「あんれぇ?かおりん、どっこいっくの?」

しゃべりながら気付いた。

こっちは風上だ。自分のいる空間の奥の窓が開いている。

「って、撩こそなんでここにいるのよぉ?」

「あ、いや車にタバコ取りに行こうかと思って。」

ちょっとしどろもどろ気味に話すので、香も訝(いぶか)しがっている。

「俺、また教授に武器庫で仕事頼まれたから行ってくるわ。」

香から離れるフリをして、またすぐに戻って紙袋を拾うつもりで、踵を返す。

その足がふと止まる。



「……なぁ、香、なんで今俺がここにいることわかった?」

「え?」

カゴを抱えたままキョトンとする香。

「あ、あんたの匂いが、したから。」

「へ?」

「だって、たぶん午前中の武器庫でついたんじゃないかと思うんだけど、

鉄の匂いとか、油っこい匂いとか、火薬の匂いとか、くんと匂って。」

「んだよ、人を臭いもん扱いかよ。」

香はぷっと笑う。

「ううん、嫌いじゃないよ。ああ、早くスイッチ入れなきゃ。

じゃあ、かずえさんが戻ってきたら、地下に呼びに行くわね。」

そう言い残して、香はまたパタパタと脱衣所へ向かった。



「……まいったね。」



ここに通い始めてから、香の能力に驚かされる事案が増えてきた。

気配を消しても、匂いで識別されてしまった。

風下にいて武器庫臭がついていたとは言え、

ここまでのスキルアップに今後のことを思い巡らせる。



「……嫌いじゃないよ、か。」



(前も言われたなぁ。

まぁた手加減できなくなっちまうじゃねぇーか。)

撩は、にやつきながら残した紙袋を回収して、

クーパーに向かった。


***************************
(7)へつづく。






基本、殺気が伴わない気配には、ガードが薄い撩ちんです。
教授が言っていた「猫のブローチ」は、
北原絵梨子編で出てきます。
現在、これが香の手元に渡るまでのコネタを構想中。
うー、でもアップできるのは、かーなり先になりそう…。
というワケで、本編としては今年最後の記事になりました。
3月末から9ヶ月、ここに来て下さった全てのみなさんへ
感謝申し上げます。
2013年も元日から隔日更新のままスタートです。
素敵な年末年始となりますように!
来年もどうぞよろしくお願い申し上げま〜す。

【Sさんご連絡感謝!】
修正いたしました!ありがとうございます!
2013.12.24.07:44

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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