01-16 Bathroom

第1部 After The Okutama Lake Side


(16)Bathroom *****************************************************************1382文字くらい




撩は自室へ戻り、扉を閉めた。

そして、そのまま背を預けて寄りかかり、少し上向き加減で、

大きく溜め息をつく。



「っはぁ〜っ。」

(ボクちゃん、けっこーガマン強いかも。)



今までも、何度も何度も、

普段の生活をしている香に触れたい衝動が襲い、

その度に無理矢理押さえ込んで来た愛おしい者への強く深い欲。

傍にいることさえも危険だと思い、夜の街に逃げ込んでいた日々。




しかし、今は違う別のガマンが必要かと、

くつくつと込み上がってくる願望になんとかフタをした。

撩は、ぷるぷると頭を振って、

素早くスウェットと下着を持ち、脱衣所へ向かった。

脱いだ服をランドリーバスケットに放り込む。

浴室に入り、シャワーのコックをひねった。

ややのぼせ気味の頭を冷やすのに、まずは冷水を浴びる。

両手を伸ばして壁につき、

目を閉じて天井を向いた撩は、思考の泉に入り込んだ。

筋肉質の裸体をなぞるように落ちる水が、足元へと集まり排水溝へ流れて行く。



(俺は…、どんな未来を期待しているんだ?)



いつ死んでもおかしくない闇の生活の中で、

未来への希望や期待は、タブーのようなもの。

アメリカにいた頃は、あえて考えもしなかった。

ただ、今を生きてればいいと。

ましてや、自分にとって大切な人間を作ることなど、

生きる上で、デメリットにしかならないと思っていた。



しかし、槇村と出会い、香と出会い、失っていた、

誰かのために「生きたい」「生き抜きたい」という思いが芽生えてきた。

幼き頃、かつて、その誰かとは、オヤジと呼んだ海原であり、マリーの父親であった。

自分を生かすために訓練を施してくれた育ての親たちのために、

生き抜く、それが使命のような思いもあった。



しかし、海原に裏切られ、ゲリラ生活が終わり、

裏の世界に身を置くうちに、

「生きたい」という思いよりも

「いつ死んでもいい」と考えるほうに等符号が開き、

未来への願望を自分の中から排斥したはずだった。



しかし、日本に来て、

この兄妹と出会い「生き抜きたい」という感情が再び蘇った。

その思いの目的語が「香」であることを自分で認めることは、

決して開けてはならない扉が破られるようなもの。

何重にも鍵をかけ、幾重の扉で壁を作り、表に出てこないようにしていたその感情。



いつしか、扉の厚さも薄氷のようになり、

鍵も壊れかけ、ミックの登場がきっかけで、

しまい込んでいたモノが一気に奥底から水位を上げてきた。



「…まぁ、限界だったんだろう、な……。」



ぼそっと、独り言がこぼれる。

何年抱え込んで来た想いだったか、

それがついに限界を超え溢れ出てしまった今日を振り返り、

また苦笑する。



まずは、さっさと土や硝煙で汚れた体を洗いすべく、

撩は、わしわしと全身を洗い始めた。

なまじ、さっきまで、やっとこさ想いを交わした相手と密着していたら、

余計にこの離れている距離がもどかしい。

ふと、泡だらけの元気な息子が目に入る。



「何だ、お前も限界か?」

苦笑する撩は、誰に言い聞かせる訳でもなく、話しかける。

「まぁ、焦るな。姫の気持ちが第一だろ。」

ざっと泡を流すと、すぐに浴室を出ようとしたが、ふと思い立って、

浴槽に熱い湯を勢いよく注いだ。



「ふっ…。」



勢いといい、温度といい、たまっていく様は、

まるで自身の心の内のようだと、

取ってきたタオルで体を拭きながら、浴槽を眺めていた。


***********************************************
(17)へつづく。






撩はすっかり気分はもっこりモードですが、
必死に押さえてガマンしちゃってます。
「泡だらけの元気な息子」は、第274話の隆々泡盛をご参照下さいませ〜。
原作のミック登場から海原戦の流れを経験しているこの2人なら、
もういつ合体してもおかしくない空気を持っていたはずなんですけどね〜。
もし、海原戦の後の香の一時的な記憶喪失がなかったら、
どんなストーリーが紡がれていたのか、
これもまた妄想が広がりますが…。
とりあえず夕食タイムへ〜。


【追記】
サイトオープンから早1ヶ月経ちました。
いつの間にやらカウンターも2600を越えて、
日々お立ち寄り頂いている皆様に改めて感謝申し上げます。
別で運営している表のブログでは、
一つの記事に拍手が二ケタ越えることは
滅多にないので、
こちらでは当方の拙い創作にこんなに拍手を頂き、
恐縮しております。
他のサイト様では、訪問者の皆様に、
丁寧な返信をされている方が多くいらっしゃり、
ファンの心を大切にされていることが
とてもよく伝わってきて、ただただ頭が下がります。
当方、諸事情により
双方向でないスタイルをとらせて頂いておりますことを
重ねて深くお詫び申し上げます。
(表サイトもコメント&メッセージ非設定だったりして…)
皆様からの反響を目で見られる拍手とカウンターの数字を励みに
今後暫くは、一日おき更新を続けていきたいと思います。
基本、いんちき主婦ですが、
末長くどうぞよろしくお願い申し上げま〜す。


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きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
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中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


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ホトトギスの英名。
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