15-10 Sauteed Rice Noodle

第15部 Mean Of Luck  

奥多摩から8日目


(10)Sauteed Rice Noodles  ********************************************1950文字くらい



「いいから、ほれ、さっさと食え。」

「もうっ。…ぃ、ぃただきます…。」



鈍感と言われて、否定できる要素がないと思った香は、

ちょっとプンとした表情で、ぱくっと一口頬張る。

撩が作った五目ビーフン、

材料はあらかじめ用意してはいたものの、

素早く調理され、

加熱の加減も調味料の量も絶妙な塩梅。



「あ、美味しい。胡麻油とお醤油がすごくいい。」



『あれ』から、何度撩の手料理を味わっただろう。

以前は海辺のホテルのオーディションや、次原舞子の時とか、

ごくごく限られた時じゃないと、撩が料理すること滅多になかった。

しかし、その数少ない事例の中でも、

そこで見せられた腕前もレストランのシェフ並。

一体どこで身につけたのやらと不思議に思った。



「まさか、あんた、料理学校とかに通ってた訳じゃないわよね。」

「あ?」

「あんたが作るもの正直全部あたしが作るのより美味しいし、

いつだったかしら…、

フランス料理のコースメニューみたいなものも作ってたわよね。」

「あーん?随分前の話しだな。」

「和洋中なんでも出来そうよね…。誰かに教わったの?」

頬を膨らませて箸をくわえた撩は、香を見て目をぱちくりさせる。

が、すぐに皿に向かいはぐはぐと食べながら、

何口目かの時に小さな声でぽつりと言った。



「……部隊に、色んな国のヤツがいたからさ、手に入るもんで色々作ってたんだよ。」

「ぁ…。」

滅多に昔のことを言わない撩が、ゲリラ時代のことを呟いた。

「それにぃー、料理できる男のほうが、何かとモテるしぃー、ぐふっ。」

ミニハンマーを期待して吐いた後半のセリフだったが、

香の表情は予想と違った。

視線が合うと、香は申し訳なさそうな顔で下を向いた。

「ご、ごめん、…りょ、また、あたし余計なこと、…き」

「基本的に作るより食う方が性に合ってるから、まぁよろしくたのむわっ。」



香の謝罪を遮るかのように、少しボリュームを上げた明るい声で答える撩。

そのままガツガツ食べ始めた。

このやりとりも、きっと撩の配慮。

聞かなくてもいい質問をしてしまったことを、

必要以上に重く受け止めてしまった香。

その空気を変えようとしてのおちゃらけに、

さすがにそのままでは便乗できなかった。



「……ぅん、…わかった。」

ぱくりとまた一口運ぶ。

「うん、ほんと美味し…。なんかさ、すごく贅沢かも…。」

申し訳ない表情を少し残しつつも、薄く微笑む香。

「んぁ?」

頬を膨らませた撩が目を点にしている。

「あ、あたしも、う、腕が上がるように努力はしてみる、わ…。」

照れくささを隠すように、慌てて食べ始める香。



「でもさ…、な、なんか…、あ、味付けの希望とか、

好みのメニューとかを教えてくれればいいんだけど、」

もぐもぐと口を動かしながら言ってみる。

「あんた、いくら聞いても言ってくんないから、

こっちもどうしても自己流になっちゃうのよねぇ。」

できるだけ、急いで食べなきゃと思いながらもついしゃべる方の口が動いてしまう。



「だから、食えりゃあいいって、いつも言ってるだろうが。」

頬袋をぱんぱんにしたまま、

撩ももしゃもしゃと食べながら返事をする。

さっきの言葉で、省略と置換したくなかった言葉は、

のどの手前まで出てきたのに飲み込んでしまった。



— 基本的に作るより

    『おまぁの作る食事を』食うほうが『好きだ』から、よろしくたのむわ。 —



せっかく日頃、伝えたくても伝えにくかった言葉を

口から出すチャンスだったのに、

こんな調子だから、

ローマンを渡した時も「おまえへのあ だ。」と

肝心な台詞をかんでしまうのだと、自身の苦みのある記憶を振り返る。

ずずーと、中華スープを飲み干すと、がたりと席を立つ撩。



「ごっそさんっ!」

食器をシンクに運び、爪楊枝を取ると、シーシーと掃除をしながら、

キッチンのドアに向かった。

「おまぁ、食べ終わったら、下だけトレーニングウェアに着替えてこい。」

振り向き様にそう香に伝える撩。



「え?」

「まずは、吹き抜けで軽く準備体操すっぞ。足元も運動靴な。」

「吹き抜けで?」

香はもっと別の場所でするものかと思っていたが、

6階の吹き抜けのフローリングが

どうやらトレーニングルームになるらしいことを伝えられ、

一体何から始めるのかと、少し心拍が上がる。

「あ、ちょっと待ってて。

片付けもあるし、お金もここに置きっ放しできないから、

少し時間頂戴。」

「りょーかい。」

パタンとドアが閉まった。



「は、はやく食べなきゃ…。」

大急ぎで食べ終わり、食器を片付け、夕食の下準備も軽くし、

客間でパンツだけをスポーツウェアに着替えた。

いきなり2件立て続けに入った報酬は、鏡台の引き出しにそっと入れる。



「明日、支払いと預け入れに行かなきゃね…。」

香は、明日の動きをイメージしながら、部屋を出て、

そのまま吹き抜けに繋がる扉をそっと開けた。


*****************************
(11)へつづく。




さやかにも弁当作ってましたよね〜。
たぶん、店出せるくらいのスキルと知識はあってしかりかと。
しかも多国籍料理なんでもこい的で。
でも、結局食べたいのはカオリンの料理なのだ。

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きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
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十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
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