15-14 Shower

第15部 Mean Of Luck  

奥多摩から8日目


(14)Shower  **********************************************2810文字くらい




「も、もうっ!まじめにやろうとしているのにぃ。」

客間で顔を赤らめながら、

さっきまで撩の唇が触れていた首筋に指を当てた。

しっとりと汗をかいてしまったので、

とりあえず下着とタンクトップと、

カッターシャツにさっき脱いだジーンズを用意する。



「はぁ、朝もお湯使ったばかりなのに、なんかもったいないなぁ。」



撩と体を重ねる心地良さを覚えてしまい、

自分も所構わず、撩の流れに乗ってしまいそうで、

自身のセーブが揺らぎそうな思いもある。

しかし、

それ以上にまだ恥ずかしさが大きく脳を占領しているので、

まだハンマーは出せる。

それを撩が受けてくれなかったら、

一体どうなっていたか。

脱衣所に入った香は、

勝手な妄想でボボボッと顔が赤くなる。

「っだ、だ、だめっ!あんなところでっ!」

持っていた衣類で慌てて顔を隠す。



あれから8日、

まだ撩のベッド以外では、

そんなことを受け入れる気分には到底なれないという気持ちと、

撩が望むなら、どこでもいつでもという思いが、

目盛りを押し合いこしている。

しかし今現在、

爆発しそうな羞恥心故、後者の割合は圧倒的に小さい。



「はぁ……。」



服を脱ぎながら、小さく溜め息をつく。

今後のための大切な訓練なのに、

自分も撩と体が触れるたび、視線が合うたび、

意識が別のところに持っていかれそうになる。

ふと目に入る、二の腕の赤い華。

吸い付かれた時の感覚が蘇り、ドキリとする。

纏っていたものを全て取り去ると、

自分の白い肌にこの8日間の内に刻み込まれた所有の証が、

グラデーションを変え咲き誇っている。

朝も同じものを見ていたはずだが、また似たセリフが漏れる。



「つ、つけすぎよっ!も、もうっ。」



恥ずかしさが込み上がってくるままに、

フェイスタオルを持って誰も見てなくても

隠しながらとりあえず浴室に入る。



「また、夜浴びるのは不経済だから、今しっかり洗っちゃおうかな…。」



軽くすませようと思っていたシャワーを、

全身洗浄に方針を変えた。

シャワーの回数も、

これまでの1.5倍から2倍、

寝具を洗う回数も数倍以上になっている。

「できるだけ節約したいのに…、

光熱費を気にしなきゃならないなんて思わなかったわ…。」

香は髪の毛を泡立てながら、

想像していなかった変化の影響にまた溜め息をついた。



「なんか、工夫しなきゃだめか、な…。」



しかし、

どう考えても撩と夜を過ごすと翌朝は汗やらなんやらで全身がべたつき、

大事な所もちゃんと洗わないと、大変なことになっているし、

これから各種訓練が日常生活の中に取り込まれるとしたら、

汗をかくのは必修だろうし、

かといって一日に何度も浴室を使うのは

出来ることなら避けたい。



香は、もんもんと思考をめぐらせながら、

体を洗い、泡を流した。

「濡れタオルで体ふくだけじゃ間に合わないだろうし…。

その前に、布団よ布団っ!」



これから寒くなるので、

掛け布団も敷きマットも厚手のものに変える予定だが、

これがこのペースで洗わなければならないとなると、

ただ事ではなくなる。



「あーん、どうしたらいいの?」



滴が落ちきって、

持ち込んだタオルで軽く体を拭こうとしたら、

浴室のドアの向こうでカタンと音が聞こえた。

びくっとした香は、

瞬時に撩の接近と分り、慌てて体をタオルで隠した。



「かぁーおりちゃぁーん、機嫌なおして続きしよぉー。」



コンコンとノックをしながら、なよなよな声が聞こえる。

「なっ、…続きって、ど、どっちのことよっ!」

思わず出てしまったセリフにかぁっとなるが、

お願いだから入ってこないでと、

ドアを見ながら後ずさりして、リモコンを探す。

「……カオリンは、どっちがいいぃ?」

ドアの傍から聞こえてくる撩の楽しそうな笑いを含んだ声。



「っば、ばかっ!もう出るんだから、早くそこからどいてっ!」

リモコンに手が伸びたとき、かちゃりと金属音が聞こえる。

顔の上半部だけ扉の端から直角ににょっと出した撩。

「わぁお♡水も滴る…」

「きゃああああっっ!」

反射でソレ目がけて熱いシャワーが浴びせられる。

「ぶはぁっ!っちち!」

そのまま後ろにドテッと転がる撩。

「も、もう!なに考えてんのよっ!あんたはっ!」

すぐに戸を閉めロックをする香。



「おいおい、今更だろぉ?」

「とととととにかく!

恥ずかしいから、早く脱衣所から出て行ってちょーだいっ!」

真っ赤になった香は、また汗が出てしまい、

なんのためにシャワーを浴びたのか、

自身の体の反応に複雑な気分になった。



向こうでふっと笑う撩の気配を感じる。

「んじゃ、恥ずかしくなくなったら、一緒に入ろっか。」

「むむむ無理っ!と、とにかく早く出て行ってっ!」

「拭いてやろうかぁ?」

ボボっと体が反応する。

まだしつこく食い下がってくる撩に、

戸に背を預け香は深く溜め息をついた。

真っ赤な顔のままで、

このやり取りがやっぱり信じられないと、

こめかみを押さえた。



これは、

かつて宿泊していたもっこり美人の依頼人に向けられていた言葉。

それが、自分に使われるようになって、

まだ戸惑いや違和感を拭えない。



「……香?」



返事がない扉の向こうの気配に、

撩も心配の色を含んだ声で名を呼んだ。

無視するつもりはなかったが、

返す言葉が見つからない。



ふいに、鼻がむずっとし、肩がふるっと震えて寒さを感じた。

「くしゅんっ!」

「おい、湯冷めすんぞ!」

その声は、正面の壁から聞こえた。

はっと顔を上げると、

キッチンからの抜け穴がぱかっと開かれ

撩が覗いていた。



「きゃああああああっっ!!!」



反射でそばにあった洗面器が飛ぶ。

見事、撩の顎にヒット。

そのまま、またどさっと後ろに倒れる音がした。



香は、速攻で浴室から脱衣所に移り、

ばたんと戸を閉めた。

「も、もう!一体いつ移動したのよっ!

ああ、うかうかしてられないわ。早く服着なきゃ!」

またいつ襲撃を受けるか分からないと、

慌ててバスタオルを取り、

体を拭こうとした。

すると、脱衣カゴの中に、

さっきはなかったものが入っている。



「?」



さっきのペットボトルが自分の衣類のそばに置いてあった。

飲み過ぎるなと言われていたので、殆ど減っていないが、

さっきの縄跳びと軽い護身術訓練に、

今のシャワーで確かに喉が渇いている。

持ってきてくれたのは、間違いなく撩。

「こーゆーことが信じらんないのよ…。」

香はボトルをピンと指ではじいて、

まずは大急ぎで服を着ることにした。



「洗うのは明日でいいわね…。」

香はランドリーバスケットの中身をちらっと見て、

スポーツ飲料を手に取りきゅっとキャップをまわし、

一口だけこくりと飲んだ。

フタをしめ直すと、

ドライヤーとタオルとボトルを持って脱衣所から出ようとした。

カーテンに手をかけたところで、

前にここで待ち伏せされていたことを思い出し、

いつもとは反対側からそっと仕切りをめくった。



「い、いないわね…。」



香は、懸命に気配を読んでみたが、

撩が近くにいることをキャッチできず。

心を決めて、隣りの客間へダッシュした。


**********************************************
(15)へつづく。




撩ちん、遊んでいます。



【誤植発見感謝!】
「グラディエーション」⇒「グラデーション」に修正致しました!
全然意味がちゃうやんけー!
発見&ご報告大大感謝です!
K様ありがとうございました!
2015.11.01.20:37

スポンサーサイト
プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
CH専用Twitter
 


拍手1000パチ記念につけちゃいました。



かなり便利なサーチツール

登録サイト最新情報はこちらをチェック!


試運転中…

カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
現在の閲覧者数: