15-17 An Order

第15部 Mean Of Luck  

奥多摩から8日目


(17)An Order  ************************************************1655文字くらい




撩が向かった先は、開店前の「ゲイバーエレクトラ」。

店の裏口から、勝って知ったる雰囲気を纏わせ、

当たり前のように入店する。



「よぉ、準備中悪いな。」

「あら!撩ちゃん!久しぶりぃ〜。どぉーして昨日ウチに寄ってくれなかったのぉ?」

ガタイのいいママが、カウンターから身を乗り出した。

「もうウワサで持ち切りよっ。」

はち切れんばかりの笑みを浮かべて、撩に近付く。

「勘弁してくれよ、昨日で集中砲火は十分受けたぜ。」

「もぉ〜聞きたいことは山のようにあるんだからっ!」

にじり寄ってくる巨体のママ。



「ちょ、ちょい待ちっ!今日は注文したいもんがあって来たんだよっ!」

「あら、久しぶりのお買い物ね。」

にやりと頬を緩ませて、裏の仕事の顔になったママ。

「少し急ぎで欲しいモノがいくつかあってな。」

撩は、内ポケットからすっとメモを渡した。

落ち着いて受け取るママは、すっと眼球だけを動かして内容を確認する。



「30キロ…、ということは小学校高学年くらいの重さね。」

「お、よく分かるな。」

「ふっ、ウチで預かっているコの子供の面倒なんて何人も見てるもの。」

軽くウインクをする。

「出来る限り、本物に近い作りがいい。」

「分かったわ。出来次第知らせるわ。これ、香ちゃんには内緒?」

「あー、実際に使うのはアイツだけど、本番まではナイショにしておいてくれ。」

「他の品は、特に注意事項はなし?」

「ああ、ノーマルでオッケーだ。」

「分かったわ、すぐに手配するわ。」

「頼んだぜ。」



ママはカウンターに戻り、グラスを選んだ。

「香ちゃんが待っているだろうけど、久しぶりなんだから1杯だけ飲んでってよ。

お祝いさせて。」

太い腕で器用に注がれたのはシャンパン。



「クリュグか…。」

「本当は香ちゃんと一緒の時に出したかったんだけど、あなただけ一足先にどーぞ。」

すっとカウンターを滑ってきた背の高いガラスの容器に、

細かい泡が上品に弾けている。



「まったく、どいつもこいつもおめでたいこって。」

撩は苦笑しながらくっとグラスを傾けた。

ママは、両手で頬杖をついて首をかしげカウンターに体重を預けた。

「あん?」

「…撩ちゃん、…本気で、香ちゃんを受け入れることを決めたのね。

アレを使って、…何か訓練するんでしょ?」

「…さぁてね。」

「…ふふっ、まぁ、まだ寝掘り葉掘り聞くのはやめておくわ。

出来ることがあったら何でも言ってちょうだい。

あなたたちのためなら協力するのは当然だから。」

「…夕べも、あっちゃこっちゃで同じセリフを聞いたよ。」

撩はカラになったグラスを、同じようにカウンターに滑らせた。

「ごっそさんっ。じゃあまた来るわ。」

当たり前のように裏口に向かいながら、片手をひらひらさせて

店内を後にした。



「…撩ちゃん、本当におめでと。」



巨体のママの肩が少し震え、

目尻に一粒光るものが零れた。



夕方の新宿の裏道を選びながら、撩は軽く見回りモードでうろつく。

昨晩、見損なった場所も含めて視覚と聴覚から得られる情報を

素早くサーチ。

特に異常はなし。



出来る限り、今は顔見知りに会いたくない。

「ったく、おせっかいな連中ばっかだよな…。」

そうグチりながらも、口元は笑っている。

「こりゃ、何をやっても筒抜けになりそうだな…。」

アパートまでの道のりは、すでに香とのことで頭が満たされる。



海原戦の後から、美樹とファルコンの結婚式までの間、

裏の仕事で、小さなミスが相次いだ。

銀狐が香を狙っていた時と似た心理のブレとバグ、

集中力に欠ける事態に、己の精神の不安定さを思い知らされた。

それが今は、より以前よりも研ぎすまされた感覚が漲(みなぎ)り、

自身の中で築き上げてきた土台と基礎が間違いなくより補強されている。



「んと、すげぇ女だよ。」



ぼそっと呟いた時は、すでに慣れ親しんだビルの前。

ポケットに手を突っ込んだまま、

見上げて6階の明かりを確認する。

おのずと感じる安堵、目を細めてふっと息を吐く。



「さて、今日のメシはなぁにかっなー。」



夕闇の中、

軽く笑みを浮かべながら撩はアパートの扉をぐっと押した。


**********************************
(18)へつづく。





「ゲイバーエレクトラ」は北尾刑事が連れ込まれたお店です。
なんとなく、香に本気になり始めた頃から、
女の子と遊ぶよりも、気心の知れた、
かつ裏の仕事のやり取りもあるゲイバーの方に頻繁に通う撩がいたのかもと。
原作にはいくつも名前が明示されたお店が出てきますが、
冬野葉子と行った寿司屋の名前が表記されていないのは個人的にかなり残念!
原作で撩が寿司屋のカウンターにいる貴重なシーンなのにぃ。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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