17-03 Residue

第17部 Compensation Of Bill 

奥多摩から9日目


(3)Residue **************************************************  2409文字くらい



6階に戻ってきた香。

書籍の並ぶ吹き抜けに立ち寄り、

テーブルの上にある縄跳びを確認する。



「あれ?あたし、昨日運動靴どこやっちゃったっけ?」



昨日のトレーニングを思い返して、

脱衣所の一角が頭に浮かぶ。



「あ!あそこだわ。」



慌てて、室内用のシューズの居場所へ飛んで行く。

洗濯機の脇に置いたままだった。

モノを目視でチェックして、自室に着替を取りに戻り、

再び脱衣所へ。

「あー、これも今スイッチいれちゃお。」

香は、ランドリーバスケットの中身を確認しながら、

洗濯槽に移しスタートボタンを押した。

「よし、じゃあ、やろっかな。」

指2本で室内履きの運動靴をぶら下げて、

リビングに寄り、時計を持って再び吹き抜けに戻る香。



「確か、5分間を2セットだったわよね。さっさと終わらせちゃお。」



テーブルに置き時計をごとりと置く。

「今度ストップウォッチでも買ってこようかしら。

1個、トラップの計測用に工具箱に入っているけど、

いちいち持ち出してくるもの面倒だしね…。」



香は、縄跳びをほどき、足で踏むとくっと伸ばした。

すっと息をすって、タンと床とロープがぶつかる音が最初に1回響く。

それを皮切りに、小気味よいリズムで、空気が切れる音と、香の着地の足音が

安定して重なっていく。



もちろん、その音と気配をキャッチしている素っ裸の撩。

一応腰から下は掛け布団の下、腕を後ろ頭に組み、ベッドの上で仰向けになったまま、

くすりと口角をあげる。



最初の5分が終わりかける頃、

どういう訳か、香の困惑する気配が寝室まで伝わってきた。



「いやーんっ!」



その声に、撩の目がぱちっと開く。

「あ?な、なんだ?」

撩が声を出したとたんに縄跳びの音が止まった。

上半身を起す撩。

耳をすませてみる。



「な、なによっこれ!」



照れと焦りが混じった香の声に、

何事かと、そっと寝室を出て階下をこっそりと見下ろす。

香は、縄跳びを放り投げ、顔を赤らめながら、

慌てて吹き抜けから出て行くところだった。

行き先は浴室。

撩は、なぁーんとなく理由が分かってしまった。



「こりゃ、大変なこって。」



思わずにやつき、肩を揺らした。

原因がおおよそ判明したところで、撩はまた後ろ頭に指を組み、

ベッドにどさりと仰向けになった。



一方、浴室に飛び込んだ香は、全身真っ赤になっている。

「も、もうっ!!これじゃ、縄跳びもまともに出来ないじゃないっ!」

脱ぎ取った下着は、まわっている最中の洗濯機に大急ぎで放り込んだ。

シャワーのコックを慌ててひねり、

水圧をやや高くして、全身に飛沫(しぶき)を当てる。

特に下半身は念入りに流すことにした。



夕べの一戦の汗を流す前に、ついでに縄跳びのノルマをこなしてから、

一緒にべたつきを流そうと目論んでいたら、

あえなく、縄跳びは中断せざるを得なくなった。

飛んでいるうちに、

慣性の法則で体の中に残っていた撩のアレが落ちてきて、

香の下着をしっかり濡らしてしまったのだ。



「うう…、計算外だわ…。」



これまでは、撩がある程度ベッドの上で拭き取るなどしていたが、

今回は、たっぷりと出て来たので、

頭にクエスチョンマークもたっぷりである。

それもそのはず。

香本人は気付いていないが、昨晩は(昨晩も?)抜かないまま、

というよりも抜けないまま朝を迎えて、

何も事後処理なしで、今に至るのだ。

香は、この一件で何かを学習してしまった。



シャワーを浴びながら、

縄跳びの続きをどうするか考えを巡らせる。

「あと半分だったけど…。」

体と髪を洗い終わると、訓練の時間と内容によっては

夜も入浴しなければならないのかと、

頭には水道料金とガスの明細書がぽんと浮かぶ。

「ふ、不経済だわ…。でも、大事な訓練だし…。」



泡を流し終わり、滴をある程度落とすと、

香ははぁと溜め息を付きながら、

浴室の扉をかちゃりと開けた。

「お、出たか。次俺な。」

何食わぬ顔して、すっぽんぽんで、香と入れ違いで浴室に入る撩。



香は、事態を飲み込むのに、

神経系の伝達スピードが人生最大級の延滞モードになった。

パタンと戸がしまる音、シャワーの水音に、はっと我に返り、

ギギギギと硬くなった首を後ろに振り向かせた。

確かに、いる。

幻であったかのような、一瞬の光景に、

香はやっと状況を理解した。

恥ずかしさと、照れと、混乱と、意味不明の腹立たしさが一気に湧いてくる。



香はしばしの硬直後、

バスタオルをくっと掴んで、ぐるっと自分に巻き付けると、

バンッと浴室の扉を開けた。



「あんれー?香ちゃん、一緒に入りたくなっちゃった?」

のんきにシャワーを浴びている撩に、

渾身の恥じらいハンマープラチナバージョン100トンを振り落とした。

轟音&震動の後、しゃわーと水が降り注ぐ音だけが残る。

香は、赤いまま無言で浴室を出ると、

さっさと身を整え、脱衣所から離れた。



髪の毛にタオルを巻いたまま、ばさっと客間のベッドに倒れ込む。

「はぁ…。」

うつ伏せのまま、ちらっと時計を見る。

「8時半、か…。」

朝からドタバタして、本日3発目のハンマーを使い、

なんだかどっと疲れてしまった。



(た、確かに、今まで撩のハダカなんていくらでも見てきたけど、

あんな突然で明るいところで、しかも、また気配けして!

近過ぎるし!なんも隠してないし!せめて腰にタオルくらい巻いてよっ!)



関係が変わってから、まだベッド以外では、

もといベッドでも美し過ぎる相方の筋肉を直視できない香にとって、

心構えが出来ていないところにあの場面は刺激が強すぎた。



「んとにもー、冗談抜きでこっちの心臓がもたないわよっ!」

再度溜め息を吐く。

「今日、夕方にはツケの支払いにまわりたいのよね…。

でも、射撃訓練するって言ってたし…。」

今日のスケジュールも慌ただしくなりそうだと、

時間配分を計算する。

「朝ご飯、……作らなきゃ。」

香は、むくっと起き上がって、髪を揉みながら客間を後にした。


**************************************
(4)につづく。





シャワーの最中の乱入を抑えていた撩ちん。
カオリン、
やっぱり頑張れとしか言葉がかけられません。
タイトルの英訳、残渣は本来なら適切な単語ではないかもと。
代替品が見つかったら変更するかもしれません。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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