17-05 Inner Reserves (side Kaori)

第17部 Compensation Of The Bill 

奥多摩湖畔から9日目  


(5)Inner Reserves (side Kaori)  **************************************2262文字くらい



まんまと言いくるめられたわ…。

ズルい、ズル過ぎる…。



朝食が終わり、食器を洗い、相方にコーヒーを出し、

洗濯物を干し、台所の拭き掃除をするあたし。



分かってはいるのよっ。

あれは、あたしを論破するための演出だって。

しゃべり方も、一つ一つの動きもっ!

分かってて当てられちゃうんだから、

あたしって、……救い様がないわ。



思わず雑巾に力がこもる。



た、確かに撩と離れて寝るってわたしも嫌だけど、

ああでも言わないと、本当に朝困ることが多過ぎるんだものっ!

はぁ、次のゴミ出しできる、かな…。



昼ご飯は簡単にしよう。

確か、夏の残りの素麺(そうめん)があったらから、

煮麺(にゅうめん)でも作ろうかな。

で、床、シンク、テーブル、冷蔵庫にと…、

拭けるところは一通り拭き上げたわね。



小さなバケツで雑巾を絞り、それをかかえてとりあえず脱衣所へ。

汚れた水をお風呂の排水溝に流し、軽く漱ぐ。

ひっかかった埃や髪の毛を回収して、

脱衣所のゴミ箱へ捨てて、バケツは指定席へ。

雑巾は別洗いするから、洗濯機のわきに仮置きしておく。

洗面所で、手を洗って、次の予定に頭を巡らせる。






「撩、あたし伝言板見に行ってくる。」

リビングでごろ寝していた相方に声をかける。

「あ?夕方でいいだろ?」

「ううん、ゆとりがあるときは午前中と夕方の2回チェックしてるの撩も知っているでしょ。

最近1回だけが続いているから、とりあえず今行ってくるわ。」

「じゃあ、行くか。」

「あ、撩はゆっくりしてていいよ。」

「は?」

「あたしが車運転してさっと行ってくる。

姿を見られなきゃいいんでしょ?キー貸してくれる?」

「駅前駐車すんのに、一人はまずいだろ。着替えてくっから待ってろ。」

「ちょ、ちょっと、いつまで一緒に見に行くつもりよっ。」

「とーぶん!」

あたしはどこか納得がいかないままで、

昨日に引き続き、一緒に駅に向かうことに。






車内で、あたしはぼそっと聞いてみた。

「ねぇ、撩、あたしがみんなにからかわれるのが、そんなに嫌なの?

そんなこと言っていたら、あたし一人じゃ外出もできないよ?」

「おまぁ、根掘り葉掘り聞かれるかもしんねぇーのに、言い返すことできんの?」

「う…。」



あれから9日……。

クロイツ親衛隊の事件と美樹さんの結婚式の後の噂は、

あたしたちを知る新宿界隈では、すっかり共有の情報となっているみたい。

色々聞き出し、話題のネタの餌食として

そのタイミングを喜々として待っていると、撩から聞いた。



「で、でもそうも言ってられないじゃない。」

あたしも、いつも伝言板を確認したらキャッツでおしゃべりコースという習慣が、

禁断状態で普段とかなり調子が狂わされている上に、

こうも毎回、撩が一緒だと、自分の仕事としての位置付けも

心理的に霞がかかってくる。



「とりあえず、さっさと見に行ってこい。」

いつの間にか駅前に着き、停車。

あたしは眉を八の字にして東口に入って行く。

駅は相変わらずの混雑振り。

伝言板には、文字は沢山あれど該当する暗号は見当たらない。

ごく稀に、すみっこに小さく書かれることもあるので、

とりあえずもう一度端から端までチェックする。



「……やっぱ、ない、か。」



まわりに不審な人物がいないか、念のためざっと周囲を見回してみる。

特に異常は確認できない。

あたしは、足早にクーパーに戻ることにした。





「なかったわ。」

ドアを開けながら、そう撩に伝えた。

「ほいよ。」

エンジンをかける撩、ふと思い出したように、こっちを見る。

「おまぁ、他に寄るとこないか?」

「え?」

「ついでだから、買い物とかあったら寄っていくぞ。」

「………。」

きょとんとするあたし。



「なんだよ。」

もしかして、撩は自分で気付いていないんだろうかと思うくらい、

今までにないセリフがあまりにも多い、多過ぎる。

今のもそう。

自分から、どっかついでに、だなんて言うヤツじゃなかった。

あたしが頼んでも、面倒くさそうに、あらかさまに嫌々な態度で、

日常生活に協力してくれること自体が極稀だったのに…。



あたしは、撩らしくないセリフに脳の処理がついていかず、

目を閉じてこめかみを押さえる。



「な、なんだ?頭でも痛いのか?」



手を伸ばしてきた撩は、あたしの手首を掴んで顔からどけると、

もう片方でぺたりとおでこに触れて来た。



「っうわぁ!」

「熱はないな…。」

思わず後ずさって、助手席の窓にガンっと後ろ頭がぶつかる。

「った!」

「おいおい、なにやってんだよ。買い物とかいいのか?」

あたしは、おでこと後ろ頭を押さえて、撩を見直す。

おふざけではない表情。

たぶん、今あたしは顔が真っ赤だ。

熱はないなと言われたばかりなのに、完全に発熱状態。



「……ぅ、うん、だ、大丈夫。帰ってお昼、た、食べよ。」



口元がまともに動かない。

もう恥ずかしくて、目が合わせらんない。

「んじゃ行きますか。」

軽い返事のあと、クーパーは駅前から家路に向かう。



徒歩でも動ける短い距離のドライブに、

このやりとりだけで、あっぷあっぷ。

余裕綽々の撩と、余裕皆無のあたし。

これってやっぱり経験の差、かなぁ…。

助手席に深く座り直して、上向き加減になり、はぁぁと息を吐き出した。



「なんだ?盛大な溜め息だな。」

運転中の撩は、にやついて視線をちらっとよこす。

「べ、別にっ!」

説明する気もさらさらないので、

ぷいっと車窓に顔を向けて、腕組みをした。

撩はふっと細く笑うと、

スピードをあげて、家路に向かう。

車窓を眺めていると、瞬く間に

愛車は我が家のガレージに滑り込み指定席に収まった。


****************************
(6)につづく。





もちろん撩も余裕のフリです。
カオリンよりも実はゆとりはないかも?


【1週間ぶりにログイン…】
自分であとがきに何を残したかも忘れておりました。
こちらをなかなか構えず、
もくじの白紙が続きご迷惑をおかけしております。
もうちょっと自分の要領が良ければいいのですが…。
年度末の重複事案が来週再来週でピークになりそうなので、
なんとか24年度を乗り切りたいところです。
きっと他の方も年度末はなにかと慌ただしいと思いますが、
近隣でインフルB型が流行り始めましたので、
お互い健康には配慮して、満開桜を愛でたいものですね。
(2013.03.18.21:45)

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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