19-01 Earth Calendar (side Kaori)

第19部 Shopping (全13回)

奥多摩湖畔から10日目


(1) Earth Calendar (side Kaori) ***********************************2697文字くらい



朝の気配を感じる。

目を閉じたまま、意識がはっきりする。



ゴミ捨てどうしよう…。

うーん、今日はいっか。

そんなに溜まってなかったし。



ん?あ、あれ?

……腿に何か挟まって、る。



目を開けると、今あたしは、

撩に後ろから抱き込まれて横になっている。

違和感を覚えるそこに意識を向けると、

あの長いゴム風船にお湯をいっぱい入れて膨らませた様な、

生温かいその物体が内股の最上部から飛び出ている。

正体に気付いて全身フリーズ、体温が一気に上がる。



どどど、どうしたらいいのよぉ!

自分の脚も絡められて動かせないじゃない!



「りょ、撩っ!」

「……んー?」

「……は、は、は、はさ、…は、はさまって、る。」

「んあ?」

「挟まってるんだってばっ。」



「ああぁ?んー、なんだったらまた入れてやろうか?」

より密着してくる撩。

振り返り様に、ミニハンマーを落とすあたし。

「へぐっ!」

そのはずみで抜けてくれた。

「ま、ま、まったくもーっ!」

こんな恥ずかしいこと、朝からなんだっていうのよぉー。

あー、のど乾いた。

た、確か…。



「……撩、あ、あのね…。」

「んー?」

顔に埋まったハンマーをどかしながら、めんどくさそうに答える撩。

「そっちのベッドの下にあたしのグラスがあると思うの。

とってくれる?」

「あー、これか?」

撩が腕を伸ばしている間に、

あたしは上半身をよいしょと起す。

どうしても動きが鈍くなる。

裸なのを思い出して、慌てて掛け布団を握って胸元まで引っ張り上げる。



「ほれ。こんだけしかねぇーぞ。」

「あ、うん、いいの。」

底から1センチだけ残っている液体。

2万年前の氷が溶けた跡。





左手でグラスを受け取って、

くちびるをぬらす。



「……氷、なくなっちゃった。」

あたしは、ベッドボードに向き直り、

カラになったグラスを、静かに撩のグラスのとなりに置いた。



「……2万年前っつったてなぁー、

地球の歴史上では、ほぉーんの一瞬なんだけどな…。」

「え?」

くいっと腕を掴まれて、また撩の腕の中に戻される。

「あっ…。」

お互い何も着ていなくて、

外が明るいから、ものすごく恥ずかしい。



「おまぁ、地球カレンダーって聞いたことがあるか?」

「なにそれ。」



撩はあたしを再度抱き込み、髪の毛に指を絡めながら話し始める。

「地球46億年の歴史を1年365日に置き換えて、

何月何日に何があったかイメージするカレンダーだと。」

「へぇー。」

「地球誕生を元日の0時00分スタートで、

今現在を12月31日の深夜0時寸前で計算すっとな、」

「うん。」

「2万年っつったって、元日に変わる1分半くらい前のもんだぜ。」

「……え?……えええーっっ!!」

目を見開いて、思わず撩の顔を見上げる。

「だっ、だって、2万年って、日本も今の形じゃなかったんでしょ?」

「まぁな、最後の氷河期のピークらしいから、陸地が今より広かったらしいしぃ〜。」

あのバーテンとの話しが重なる。

「んじゃあ、おまぁ、恐竜が絶滅したのは、どれくらい前か知ってるか?」

「え?恐竜?」

「そ、あいつらは、隕石が落っこちまって、一気に絶滅した説が有力らしいが、

それが一体何年前か。」

「えー、テレビで何回かそんなシーン見たことあったけど、

わかんないよぉ。」

「地球カレンダーだとな、クリスマスの翌日。」

「は?」

自分でもきょとんとする顔になったのが分かった。



「12月26日、6500万年前だと。」

「え、え?ちょ、ちょっと待って、26日って……、たった5日、前なの?」

「そ。」

「う、うそっ、もっと昔のことだと、思ってた…。」

「この地球で、生きものらしい奴らが賑わい始めたのが11月18日、

5億5000万年前のカンブリア紀からだ。」

「あ、もうダメ。数字についていけない。」



「つまりだな、千年前、一万年前とか言っても、

地球の歴史の中では、まばたきみたいに短けぇーっつぅこと。」



撩が深いところで何を感じ、何をあたしに伝えようとしているのか、

なんとなく流れこんできた。

けれど、それは決して軽いものではなくずしりと重さのあるもの。

その重さから逃れるように、

あたしは話題を逸らすことにした。



「撩、……あんたさ、昨日から、ウンチクばぁーっかり垂れ流しているけどさ、

今まで、あたしにそんな話し、全然したことなかったじゃない。」

「へ?」

「どっかのスナックかバーでもっこりちゃんの気を引くための豆知識を

ココでわざわざ披露しなくてもいいんじゃないの?」

「は?」



夕べ、奥底にあったどろどろした嫉妬心を

撩のおかげで溶かしてもらったけど、

撩が博学なことを自分に話す度に、

きっと他のオンナにも同じように、感心させて口説いている様子が目に浮かび、

相づちを打つ見知らぬその相手にまで、

ちょっとした心のざわめきがあたしの中で勝手にうずく。

それをつい路線変えの動力にしてしまったのは、無意識だったのかも。



くすくす笑う撩。



「おまぁ、こぉんな話しの内容にまで嫉妬すんのな。」

「し、嫉妬なんかしてないわよっ!」

「かぁーいーなぁー。」

そのまま、また抱き込まれた。



「そ、おまぁの気を引くための無駄な豆知識さ。

いろんな生き物がこの地球で生まれたり死んだり、進化したりしてんだが、

そいつらが途切れずに、今いるっつーことは、

みんなせっせともっこりに励んでんだぜ。」

た、確かにその通りなんだけど、

あんたがそんなこと言うと、

壮大な地球の歴史が全部もっこりモードでみえちゃうじゃないっ。

そ、それに、あ、あたしの気を、ひ、引くため???

なんなのよー、それって!



「どぅ?おれらも見習って朝のい」

もちろんハンマー出現。

今度は10トンでお見舞いして、

朝の講義を強制終了させちゃう。

「遠慮させて頂きます。」

あたしは、そう言うと撩の腕から脱出を図る。



「も、起きなきゃっ。」



あ、あたしの着替えは?

まわりを見回すと、近くに着るべきものがない。

あーん、パンツもボトムも遠いしぃ〜。

手の届くところにあるのは、パジャマの上だけ。

そんなに裾が長くないから、

股下10センチほどしか隠れない。

しかたなしに、それだけ羽織って、ベッドからゆっくりと降りる。

散らばっている服を見るだけで恥ずかしい。

急いで掻き集める。

撩の衣類もつまんで、ベッドの上に。

チェストの上のタオルと2つのグラスも回収。

ほんのりと薫る色々な匂いがまた心を乱れさせる。



と、スリッパはと。

いやーん、床がもう冷たい。

「あ、あたし、とりあえず下に行くからっ。

ご、ごはんまでには降りて来てよっ。」

まだ顔にハンマーの乗せたままの相方にそう言い残して、

撩の部屋をあとにした。



*****************************
(2)につづく。




「地球カレンダー」、
高校時代の生物か地理の時間にこんな話しをうっすらと聞いていた記憶が。
さらにそれを科学番組に仕立てたのはNHKさん。
山崎努氏がナビゲートする「地球大進化」(2004)。
よくもまあ、生命が生き残ってきたもんだと思います。
ちなみに、恐竜絶滅は1990年代は、
まだ6500万年前という表記が主流でしたが、
最近のデータでは6550万年前と少しだけ具体的になっています。


【100パチ越え記事御礼】
17-20の記事にて、本編中初の100パチオーバーを頂戴しました。
本当にありがとうございます。
今後もそのつど対応できるか分かりませんが、
カテゴリー内に新しく「100パチ越え記事御礼」の
コーナーを作りました。
明日の1818で付録記事を更新したいと思います。
内容がプライベートなものですので、
一応パスをかけております。
あーるじゅうはち系ではございませんので、ご注意下さい。
全ての都道府県にお住まいの方へというイメージでございます。
(海外の方ごめんなさい)
あまり期待はされないでくださいね〜。
面白いものではないかもしれませんので。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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