19-04 Relax Time ?

第19部 Shopping 

奥多摩湖畔から10日目


(4)Relax Time?   ****************************************************2339文字くらい



なんとか朝食を食べ終わった香は、

洗い物まで片付けて、昼食の下ごしらえをする。



「簡単に済ませられるほうがいいわよね。」

香はホットプレートを戸棚の下段から引っ張り出し、

軽く洗ってテーブルの上にセットした。



「えーと、薄力粉もあるし、卵もあるし、青のりもある。うん、大丈夫ね。」

必要な食材の在庫を確認してから、

豚肉の切り落としを解凍すべく、冷凍庫から選び出し常温放置とする。



「キャベツは後から切ればいっか。」

そう呟いたところで、ヤカンが鳴った。

「あ、いけない。」

早く撩にコーヒーを入れてあげなければと、

ミルを大急ぎで挽き始める。



「どうしようかな、一緒に飲もうかな…。」

ちょっと迷って、コーヒーカップを2つ用意した。

この午前中、すべきことはたっぷりあるので、

買い物までの間にバタつきそうな未来は容易に想像がつく。

ただ5分でもいいから、リビングで落ち着きたい思いもあるので、

二人分用意して運ぶことにした。





「りょー、コーヒー入ったよー。」

ソファーの短辺サイドで新聞を読んでいる撩。

「あー、さんきゅ。」

テーブルに置かれたカップに、紙面から目を離さないまま手を伸ばす。

香も、長辺側に腰を下ろして、持ってきたトレーをガラステーブルの上に置き、

両手で自分のカップを包んで、つと口に運んだ。



「はぁ…。」



目を閉じて視覚を休ませる。

その代わり、耳が敏感になって、

いつもは気にしない撩がコーヒーをすする音や、

新聞のめくられる紙の音が、

明瞭に聞こえてくる。

目を閉じているのに、撩の動きが鮮明に脳で映像化され、

ちょっと恥ずかしくなり、

慌ててコーヒーを傾けた。



自分の分には、砂糖が入っているので、ほんのりとした糖分が

疲れを軽減させる。

しばらく瞼を下ろしたまま、ゆっくりと時間をかけてカップの中身を味わう香。

そろそろカラになりそうなところで、

隣からかしゃりと音がした。

撩がコーヒーカップをガラステーブルに置いた音だとすぐに分かったが、

香はそのまま目を開けることなく、

両手で持っていたほぼ飲み終えたカップを腿に下ろした。

ふぅーと一息出す。



「なぁーに、瞑想してんの?香ちゃん。」



唐突に真下から聞こえてきた撩の声に、

びくりと肩が上がり、目がパチっと開く。

離れて座っていると思っていた男は、

香の左隣りにぴたりと寄り添うように位置を変え、

自分の顔を下から覗き込んでいる。

彼女の目に飛び込んできたのは、素の撩のアップ。

スケベ顔でも、おふざけ顔でもないノーマルの表情に、

香の顔面は一気に朱に染まる。



「っうわ!」



ソファーに吸い付くように、のけぞってしまった香。

はずみで、持っていたカップが手からこぼれ落ちる。

「っと、おいおいちゃんと持ってろよぉ。」

床と接触する直前に撩の手がカップを受け止めた。



「だだだだって!あんたが、きゅ、急にっ!」



近づくからでしょ!と言い終わる前に、

3つの事が同時に発生した。

唇が重なり、

撩の右手は香の後ろ頭に滑りこみ、

左手はカップをテーブルに置き終わると素早く香の背中を引き寄せた。



「んんんっ。」



またの不意打ちのキスに、瞼は条件反射できゅっと閉じられる。

唇をついばまれるだけのライトな口づけ。



(急にこれってなんなのよぉー。)



とか考えているうちに、

撩は香を後ろから抱き込むスタイルになり、

そのまま引っ張られてソファーのコーナーへ移動させられる。



「わわわっ、ちょっ、ちょっと撩っ!」



なすがままに抱き寄せられた香は、

自分の髪に撩が顔を寄せているのを感じた。

腰まわりで撩の腕がクロスする。

鼻息が頭皮に当たり、くすぐったさに肩がきゅっと上がった。



「……買い物は、ちょっと遠出すんぞ。」



後ろから聞こえてきた声に、きょとんとする香。

「え?」

「近場でうろつくと、また余計な連中に会いそうだからな…。」

「はぁ?」

「おまぁ、この界隈の情報屋とかに、シーツ買い込むところ見られてもいいのか?」

「うっ。」

それは、駄目だと、赤い顔で首を横に振る。

このタイミングで、複数の寝具を購入することが、バレルところにバレたら、

また撩も自分も出先でからかわれるネタとなる。

香も容易に撩の提案を理解した。



撩はくすりと笑って、香を抱き直した。

「昼飯食ったら出るか。」

「あ、う、うん。そ、そうしよ。」

香は、撩の体温を感じながら、

午前中の残り時間ですべきことの優先順位をイメージしようにも、

照れで考えがあまりまとまらないので、

ひとまずここから離れることにする。



「じゃ、じゃあ撩、あ、あたし洗濯物片付けなきゃ。な、縄跳びもあるし。」

だから、離してちょーだい、と言いたいところだが、

撩がちょっとだけ腕に力を込めたので、どきりとして言葉が途切れた。




「……だな。じゃあ、駅は出かけるときに寄っていくかな。」




ふっと、拘束が緩み撩はすっと立ち上がった。

「んじゃ、ボクちゃん、ちょっくら出かけてくらぁ〜。

メシまでには戻るわ。」

ひょこひょこと、リビングを出ていく後ろ姿を

香はきょとんとしたまま、見送った。



「はぁ…。やっぱり、慣れない…。」



ばふっとソファーのコーナーに体重を預ける。

熱くなった顔を片手で覆い、その温度差に驚く。



5分だけでも、と思ったリラックスタイムは、

前半戦のみ実践できたが、

後半はドキドキタイムになってしまい、

気分が高ぶったまま、コーヒータイムは終了。



「や、やっぱり、1人分だけ出せばよかった、かしら?」



それでも、撩と触れ合える時間は、恥ずかしながらも、

嬉しさの割合も十分高いので、

正直なところ、家事を先送りして、もっと、と思ったのも事実。



「は、早く洗濯物しなきゃっ。」



ちょっとしたスキンシップの余韻に浸りながらも、

はっと我に返って、主婦モードに切り替える香は、

大急ぎで脱衣所へと向かった。


**********************************
(5)へつづく。






とにかくカオリンに触れておきたい撩ちん。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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