19-10 You Are Masher ?

第19部 Shopping

奥多摩湖畔から10日目


(10)You Are Masher ? *********************************************** 1775文字くらい



帰りの高速では、すでに日没後。

夕闇の中で、人工的な明かりが視界を流れる。



「はぁ…、遅くなっちゃった…。」



香は、撩に先ほどの文句を続ける気力も失せて、

溜息とともにそう呟いた。

スタート時点では、なんだかデートみたいとドキドキしていたが、

買い物中、結局4本のハンマーを出し、

しまいには、不意打ちのキスまでしてくるし、と

撩に終始振り回されっぱなしで、買い物が終了。



ただ、今回はなぜか撩のナンパが一切見られなかった。

あれだけ、あちこちのフロアで可愛い店員さんにお客さんもいたのにと、

少し顔を動かして、ふと運転席を見る。

視線に気づいた撩は片眉を上げた。



「なんだ?疲れたか?」

「……撩こそ、体調悪いわけじゃぁ、ない、わよ、ね?」

「ああ?」

「ううん…、なんでもない…。」

ぱふっとシートに背中を深く預けて、香は目を閉じ少し上向き加減になる。



なんだかんだ言いながらも、一緒に出かけられて楽しかった。

恥ずかしいやりとりが多くて、困惑ばかりだったが、

嫌がらずに、一緒にこうして買い物に付き合ってくれただけで、

嬉しさと幸せ感に今も浸れる。



しかし、やはり何か足りなくてヘンなのだ。

それは、恐らく日課となっている

他の女性への必要以上とも言えるアプローチ。

昨夜、撩はこれからもナンパ続けるかもしれない的なことを白状していたので、

今日もいつそれが来るか、

香自身も通りすがりの女性客や店員に注意を払っていたが、

むしろセクハラ対象は香自身であった。



(ガ、ガマンさせちゃってる、のかな?)



確かに、今の状況で他のオンナにへらへらしている相方の姿を見せられるのは、

はっきり言っていい気分ではない。

かといって、ナンパを全くしない、周囲の適正年齢のオンナに無関心である相方も、

撩じゃないようで、ムリをしているのではないかと勘ぐりたくなる。



(うー、あたしって撩にナンパ続けて欲しいワケ?

それともやめて欲しいワケ???)



自分でもよく分からない心理を抱えて、

むむむと唸りながら、眉間にシワを寄せる。



「な、なんだぁ?」

撩の声に反応して、はっと目を開ける香。

「ううん!なんでもないっ!」

両手のひらをぴっと伸ばして、

ふるふると首と同調させて横に降る香。



クエスチョンマークを頭に浮かべた撩は、

軽く息を吹き出して目を細める。

運転しながら、右腕をぐいっと伸ばして、

香の頭を自分の左肩にばふっと預けさせた。

「わわわっ!な、なにすんのよ!」

「……よっかかってな。」

「ぁ…」



高さが丁度いい。

三角筋と上腕の硬さと柔らかさと温かさが、実に絶妙なバランスを持つ。

(あ…、気持ちいい、かも。)

やや照れつつも、香は腰の位置を少し運転席側に近づけて、

居心地のいい場所を決めると、

目を閉じそのまま力を抜いて体重を撩に預けた。



「……ありがとね、買い物付き合ってくれて。」



撩の体温に、考えていたことはどうでもよくなった。

誰に声掛けしようと、

自分が撩と生死を共にすることになんら変わりはない。

この温度が、今自分で感じられている。

それだけで、十分ではないかと。



少し顔を左に向ければ、

香の柔らかいくせ毛に自分の息がかかり、数本の髪が揺れた。

撩も表情を柔め、ふっと鼻から呼気を出す。

返事をするべきだが色々なセリフが浮かぶも、どれを使っていいかのか暫し迷う。



『いくらでも付き合ってやるさ。』

(あー、らしくねぇな。)

『ボクちゃん、ごほうび楽しみにしてんだけどぉー』

(車外に逃げられるかもしれん…。)

『しばらくは勘弁だぜぇ。』

(本気にしちまって、二度と一緒に行こうと言わなくなるかも…。)

『たまにはな。』

(これが一番無難かぁ?)

と、考えあぐねていたら、すー、すーと寝息が聞こえ始めた。



「……あれま。」



くすりと鼻で笑う撩。

「……着くまで休んでな。」

そう優しく言うと、

しばらく変える必要のないギアから左手を浮かし、

香の膝の上にある本人の手にそっと重ねた。

少し指先が冷えているのが伝わる。

自分の体温を分けるべく、指の隙間を指で埋める。



たったこれだけで、

くすぐったい幸福感がじわりと脳に送られる。

お互いの人生が変わったあの日から、

今日でやっと二桁。

まだまだ、日は浅い。



「先は、長いんだぜ…。」



寄りかかる香のぬくもりを感じながら、

撩はそうつぶやくと、

家路に向かってなめらかに速度を上げた。


**********************************
(11)につづく。






というワケで、お買い物終了〜。
カオリン、お疲れさんでした〜。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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