19-11 Makimura In The Frame

第19部 Shopping

奥多摩湖畔から10日目 


(11)Makimura In The Frame ********************************************1360文字くらい




愛車は、いつの間にかアパートに到着。

既にカレージのシャッターも降ろされ、

撩は、荷台を開けて買い物袋を取り出している。

その気配で、香の目がパチっと開いた。



「ご、ごめん!また眠り込んじゃったっ!」



慌てて、助手席から降りる香。

膝の上に置いてあったショルダーバッグがドサッと落ちて、

これまたわたわたとして拾い上げる。

「おー、先に食いもん上に上げるぞ。」

「あ、お願い。」

香は目をこすりながら、後部座席を開けた。



食料品は撩が全部持ってくれた。

自分は、衣類関係を持てる分だけ抱えることにする。

「さずがに1回じゃ運べないわね…。」

「あー、後は俺が取ってくっから、おまぁメシの準備な。」

「え?いいの?」

「残りは俺一人でいいだろ。」

二人で階段を登りながら、役割分担を確認する。

「そ、そうね。じゃあ、お願い。」



撩は、買い物袋をキッチンへ運び入れ、テーブルの上にどさりと置くと、

また猫背がに股でひょこひょこと、玄関に向かった。

香は、衣類一式を客間兼自室のソファーに置くと、

すぐに台所に戻って、買ったものを袋から出し始めた。

色々買い込んだので、指定席にしまいながら、

調理作業も同時並行。



荷物を持って戻ってきた撩は、とりあえずキッチンを覗く。

「あー、腹減った。メシなに?」

「あ、生魚出すから、あとはロールキャベツ、ちょっと待っててね。」

「こいつは、おまぁの部屋でいいか?」

寝具にバスタオル、運動靴の入った袋ががさりと音を立てた。

「あ、うん、適当に床にでも置いといてくれる?」

「あいよ。」



両手に買ったものを抱えて、香の部屋に向かう。

電気を付けないまま、無遠慮に立ち入る撩。

香の匂いが薄くなっている。

第一印象はまず鼻から来た。

すでにソファーの上に置かれている荷物。

その隣りに並べるように、

がさがさとモノを手から離す。



ポケットに両手を突っ込み、ベッドサイドの写真立てをふと見つめた。

暗がりの中でも、その二人の顔と視線が合う。



「……言いたいことが、一杯あるだろ、槇ちゃん。」



返事など聞けるはずないと分かっていても、

この状況をどう思っているのか、

知る由もない胸の内を聞いてみたくなる。



もし、槇村が死なずに、

あの3月31日が何事も無く平穏に3人で祝いの席となっていたら、

一体どんな未来になっていたのだろうか。

考えても無駄な「もしも」にまた意識が持っていかれる。



「……それでも、……もらっちまっていたかもしんねぇな。」



どんな設定で出会っても、どんな流れを辿っても、

行き着くところは、同じであろうと、妙な確信が心をよぎる。

比喩できない葛藤と迷いの中で、結局自分たちで選んだ今の形は、

きっと他の未来でも変わりないだろう。



「お前の最大のミスは、冴子を置いてけぼりにしちまったことだろうな…。」



ふーっと一息吐き出す撩。

全ては自分の責任。

あの場所へ一人で行かせてしまった判断ミス。

いくら後悔しても、変えられない過去。



「あれから、6年以上、か…。」



すまないと、いくら詫び続けても足りないであろう。

ただ、今は槇村から与えられた有形無形のものに感謝したい。



「……ありがとな。」



目を細める撩。

くんと、コンソメの香りが漂ってくる。



「じゃ、メシ食ってくるわ。」



そう言い残して、

香の部屋の扉をパタンと閉めた。



**************************************
(12)につづく。




死にキャラだったとは言え、
やっぱり死んで欲しくなかったわ…槇兄ぃ。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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