19-13 Battery Charging

第19部 Shopping

奥多摩湖畔から10日目


(13) Battery Charging  *****************************************3944文字くらい



食後、香は買ってきた荷物を所定の場所に入れる作業をする。

その前に、撩にコーヒーを出すのを忘れない。



衣類のタグを取るだけでも結構な手間で、

客間兼自室で、ハサミでもくもくと、

除去作業を続ける。



トランクスに手が伸びた時、

神宮寺遥と出会った歓楽街で聞いた撩のセリフを思い出す。

確かに、生地がヘタレてきたら買い足していたのは自分。

そんな自分に疑問を少なからず感じていた頃もあった。

「家族、だから、ね…。」

そう切り替えようとしたのは、彼らの依頼が終わってから。



妹みたいでいいのよ。

本当の家族になれなくったって、いい。

撩がそばに置いてくれるのなら、こんな買い物もお安いもの。

そう心の整理をしたつもりであった。

しかし、深層にある本音はそれで納得してくれるはずもなく、

その抗議の声を押し殺しての日々。



それが今、たぶん、

本当の家族に近い位置に格上げされた。

そんな気がすると、

撩のために選んだ衣類に触れながら思い返す。



撩にはこんなことを考えているとバレたくはないが、

あのオトコは、一人でもきっと難なく仕事をこなしていくはず。

ただ、自分がそのサポートをすることで、

撩の持つ能力がより発揮しやすくなるように

出来うる限り努めたいと理想を抱えるも、

今の状態では足手纏いのレベルから脱していない。

支え援護していくには、自分自身もスキルアップは最重要課題と、

己を振り返る香。



今、一番撩に近い位置にいることを正式に許され、

曖昧な関係を終わらせたことに、

正式な奥さんではないけど、

そんな肩書きを得られずとも、

気持ちだけは夫を支える家族でありたいと、

さらに、共に生きる決心を固くする。




「はぁー、やっと終わった!」

全ての値札を外し終えて、立ち上がる。

「とりあえず全部一度洗ったほうがいいわよね。」

衣類用のノリの匂いも残っているので、

新品はまずは未使用でも洗って生地のパリパリ感をとることにする。



「今日だけじゃ、終わらないかも…。」

大量の布類を抱えて脱衣所へ向かう。

まずはシーツ類を2枚先に洗濯槽に落とし入れ、

他は、ばさりとランドリーバスケットに詰め込む。

力一杯はみ出て山盛り状態。

今晩中に、できたらシーツ4枚は洗って吹き抜けに干してしまいたい。

香は、洗濯機に洗剤と柔軟剤を入れてスイッチを押した。



次に、日中かけておいた乾燥機をぱかりと開けて、

中身を取り出す。

「さてと、これもたたまなきゃ。」

これから、香は使ったお金を家計簿に記録して、

明日の朝食の準備をし、夕食の食器を片付けて、

吹き抜けに干しているシーツも回収してたたんで、

可能なら買ったばかりの寝具も全部洗って干してしまいたい。

そして、入浴、歯磨き、トイレ、ピルの服用、伸びた爪を切って、

保湿液・乳液セットを施し、

ようやく休めることになる。



しかし、既に体はお休みモード。

「うー、眠たい…。」



最初の2枚のシーツが洗い終わったのは10時近く。

カゴに移すと、

間髪入れず、起毛の敷パットを1枚投入。

すぐにスイッチを押す。

これは、1枚ずつでないと十分に水流が回らない。

香は、洗濯バサミをカゴの中にいくつか入れると、

よっと抱えて、7階の撩の部屋の前を通って、本棚の前で作業を始める。

今日の昼に見つけたばかりの新たな臨時干し場で、

2枚の薄手のシーツは、手すりからはらりと垂れ下がり、

端を洗濯バサミで固定される。



「この間に他のをたたまなきゃ。」

パタパタと階段を降りる香。

「あっ、そ、そうだ。」

途中でUターンして、撩の部屋に入る。

ベッドにギシリと体重をかけ、目覚まし時計を手に取る。

またここで寝ることになる可能性大であるなら、

とりあえず7時半には起きれるようにしておかなければと、

時間をセットし直す。

「これで、よし!と。」



再度、階段を降りる香。

ふと見上げると、干された広く大きな布地がまるでタペストリーのようにも見えた。

ここにあと、2枚追加予定。

さっさと片づけなければと、歩みを早めた。







「おまぁ、いつまで洗濯もんにかまってるんだ?」

「あ、あと1回だから。」

しばらくして脱衣所に様子を見にくる撩。

香は、3回目の洗濯機のスイッチを入れる。

時間はすでに12時前。

とにかく、今日買ってきたものは、ひと通り洗って干しておきたい。

「んなの、明日でいいんじゃねぇの?」

つまんなそうに、そう言う撩。

「ううん、明日洗う分もあるから、今日はシーツだけでもやっちゃおうと思って。」



今日も1日動きっぱなしの香は、

この時間になってもまだバタバタしている。

「はぁ。」

撩は、自分の部屋に強制連行しようかと思ったが、

それでまたご機嫌を損ねるのも避けたいので、

とりあえず、ここは撤退することにする。



頭をぽりぽり掻きながら、隣りのキッチンに入る撩。

区が配布しているゴミ収拾日付きのカレンダーを見る。

「明日は、……と。」

一応、ビン缶の日。

キッチンの指定席には、わずかしかない。

確か1階の駐車場の隅にいつもゴミ出し用として待機させている場所にも、

ごみは溜まっていなかったはず。

「……じゃあ、大丈夫だなっ。」

にやりとご機嫌よく情報を確認する撩。



香は、ようやく今晩最後の洗濯物を終わらせる。

4枚のシーツ類が7階の手すりにずらりと並んだ。

みな大きいサイズ故、かなり目立つ存在になっている。



「お客がいる時はできないワザね。」



既に撩も香も入浴は終了。

もちろん、まだ別々ではあるが。

やっと寝るだけとなったところで、

香ははっと我に変える。



「やっぱり、自分から行かなきゃだめ、かな…。」



そういえばと、今撩はどこにいるのかと疑問に思う。

柵の対面にある相方の部屋は扉が開いていて中にはいない。

7階の吹き抜けの通路でしばらく悩む香。



先に部屋に入って待っているということは、

まだ気分的に出来そうにない。

そもそも、

今までもお姫様抱っこで連れ込まれることの方が圧倒的に多いのだ。



「うーん、どうしよう…。」



リビングにいると思われる撩のところに行き、

「ねぇ、そろそろ寝ない?」と自分から言うのは、

色々余計なことを考えてしまって、

とてもじゃないがこれも出来ないと却下する。

しかし、いつまでもここにいる訳にはいかない。

パジャマに、カーディガンを羽織っているだけなので、

広い空間のここは思った以上に冷える場所でもある。

そう思ったとたん、足元からひんやりとしてきた。



「……さむ。」



香は、ゆっくり撩の部屋に向かって本棚沿いに歩みを進めた。

ちょうどその時、6階の扉が開く。

香は上から吹き抜けのフロアにいる撩の姿を見下ろす。

「終わったか?」

見上げながら、階段に向かう撩も髪を乾かし終えて、

Tシャツにスウェット、首にはタオル。

「うん。」

「こっちも、戸締りはオッケーだぜ。」

「あ、ありがと。」

「さっさと寝よーぜ。」

撩の部屋の前の手すりに寄りかかる香。

この短い会話のうちに、もう相方は自分のそばに到着。

「ほれ。」

両肩を後ろから軽く押されて、部屋に誘導される。



「ぁ、…ちょっと、…まってよ。あんた電気とかちゃんと消したの?」

顔を赤らめて振り返り気味にそう尋ねる香。

「もっちろん!」



ベッドのそばまでくると、

羽織っていたカーディガンだけを脱がされ、

あれよあれよという間に、布団の中に連れ込まれた。

ぽぽんとトランクス一丁になった撩は、スリッパも投げ置き、

するりと香を抱き込む。



香は、照れながらも、

今日もこうして一緒にくっついて寝られることがたまらなくうれしく、

撩の肌に顔を埋めたまま目を閉じ、素直にふうっと力を抜く。

左頬を寄せながら、遠慮気味に

自分の右腕を撩の脇腹経由で背中にそっと回した。



温かい。



撩は、左手で香のふわりとした髪を優しく描き上げながら、

耳にかかる茶色い束をくるりと耳介にひっかける。

頬をなで、そっと上を向かせると、

瞼を下ろしたままの赤い顔が腕の中でお目見えし、

その愛らしさに、体が反射で動いてしまう。

角度をつけて、

薄く開いている形のいい唇をやんわりと己の唇で挟み込む。



「ん…。」



背中に回されている香の指にくっと力がはいる。

足をからめ、右腕をさらに自分に引き寄せ香の体を密着させる。

後ろ頭を左手で支えて、ゆっくりと香の顔の各パーツにキスを施す。

そのたびに、ふるっと震えるまろやかな体。



「…ぁん。」



くすぐったいけど、

気持よくてそのまま寝てしまいそうになってしまう。

香は、眠気と必死に戦う。

ここで寝てしまったら撩をきっとがっかりさせてしまうと、

うとうとしながら、踏ん張る香。



「……今日は、やめとくか?」



相変わらず、肌から唇を離さないままで、小声で聞いてくる撩。

驚く香。

なにか、まずいことでもしてしまっただろうかと、

色ごとに慣れない自分のミスを疑う。



「……な、なぜ?」

「もう眠たいよぉって顔してるしぃ。」

ああ、バレていたのかと、隠し事ができないことを再度思い知る。

「りょ…の、好きに、していいって、言ってるで、しょ…。」

「寝ちまっているオンナを襲う趣味はねぇーの。」

「起きてる、か、ら…。」

「ムリすんな。」

「ん……、りょ…と、こ…してる、だけで、きもち、よく、て…。」

もう言葉が途切れ途切れ。



「………おれも、だよ。」

「………。」



すでに返事が出来ないところに行ってしまった香。

今の撩の台詞は脳には届かなかった。



撩はくすっと笑って、くっと抱き込む。

「おやすみ…。」

時間は1時半過ぎ。

「……おまぁは、いっつも働き過ぎなんだよ。」

憎まれ口の内容と全く噛み合わない穏やかな口調。

自分の右腕を枕にし、静かに目を閉じる香。

ぐっと自分に引き寄せ、こめかみにキスをする。



「とりあえず『充電』だな…。」

そう言って、撩も瞼を下ろした。


**********************************
第20部(1)へつづく。パス付きです。





それでなくても、
慣れないことがてんこ盛りで
色々お疲れだと思います。
カオリン、とりあえずゆっくり休んで下さいな。
撩単品でも完全版の言葉を一部借りると
パーフェクトワンマンアーミー状態ですが、
カオリンが一緒になることによって
更にパワーアップの相乗効果ありという感じかなと。
だからこそ「2人でCH」RKじゃなきゃダメなのよ〜。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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