SS-05 Shadow (side Kaori)

60000HIT企画

原作穴埋めバージョン
1989年9月頃
第231話(完全版23巻) 「愛と悲しみの誘拐犯」の巻
香が伍島あずさを尾行するお話し。


【SS-05】 Shadow ( side Kaori ) *********************************** 3551文字くらい



「……たぶん、自作自演、だな。」

「え?」



伍島社長の邸宅を出てから、あたし達はアパートに戻り、

リビングのソファーに腰を下ろした。

すると撩が先に口を開いた。

なんのことかとすぐには理解できなかったあたしは、

ぽんとガラステーブルの上に投げられた

茶封筒の宛名に目を丸くした。



「な、なにこれ?」

「社長の部屋でみっけちゃった。」



訝しがりながら、そっと封を手にして中身を見てみる。

「!?…っこれって!脅迫状じゃない!」

「そ。」

「ぞ、象牙の密輸?」

「そ、ハナから怪しいとは思っていたんだが、

その内容から見て、ほぼ間違いない。あずさくんが差出人だ。」

「え!」

「しかも、密輸は明日の夜だ。」

「あっ、ホントだ。」

「彼女は間違いなく明日中に行動を起こすはずだ。」

「密輸をやめさせるために?」

「んもぉ〜、あずさちゃんたらぁ、動物のことで頭いーっぱいなんだもんなぁ〜。」

撩は頭の後ろに手を組んで、んーっとのけぞった。

あたしは、封筒と手紙をテーブルの上にそっと戻す。

一瞬、これにあたし達の指紋がついたままでいいのかしら?

と心配になるも、撩が何もそのあたりに言及しないので、

気に留めないことにした。



「香、おまぁ、明日は見張り役な。」

「え?」

「とりあえずぅ〜、朝からお邪魔しちゃってぇ〜、

あずさくんに一日、ぴぃ〜ったりくっついておかんとなぁ〜、ぐふふっ。」

あたしはひょいっと1トンハンマーを投げる。

「でっ!な、なにすんでいっ!」

顎をさすりながら、撩は抗議するも、

あたしは何を言っても明日の未来が変わりそうにない気がして、

言葉少なめで返すことに。

「その、ぐふふってなによ。ぐふふって。」

「いや、仕事に打ち込まねばという

意気込みと気合いに決まっているではないかっ。」

胸を張ってポンと拳で自分の胸板を叩く撩に、

はぁ、と溜め息を出すあたし。



「で、あたしは尾行?」

「そ、車でな。」

「わ、わかった。」

撩は封筒の中に手紙を戻すと、ジャケットの内ポケットに仕舞い込んだ。

そしておもむろに立ち上がる。

「俺、ちょっと出かけてくるわ。メシまでには戻る。」

「そ、そう。」

たぶん、これから裏情報の収集やら密輸に関する小細工やらを整えに、

行くであろうということがなんとなく分かったけど、

あえて言葉には出さないでおいた。



「ちょ、ちょっと!へんなところ行って、

余計なツケとか作ってくんじゃないわよっ!」

「へいへーい。」

撩は片手をひらひらさせながらリビングを出て行った。

気をつけて行って来てね、と言えない変わりの言い回しに、

ふぅと溜め息をつく。



「あずささん…。」



確かに、初めてあずささんと出会った時から、

彼女はターゲットにされている人が持つ特有の

恐怖心によるゆとりのなさというものが

全く見受けられなかった。

それを早くから感じ取り、今日あの短い時間で社長の部屋を特定し、

素早くこんなものを見つけてくるなんて…。

まぁ、人が見られたくない物を隠す場所を絞るなんて、

撩にはお手のもんだろうけどね。



「明日、か…。」



その後、遅く帰宅した撩に軽くハンマーを喰らわし、

食事と入浴をすませ、あたしたちはさっさと休むことにした。



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。



翌朝、早めの朝食を済ませ、

あたしと撩は別々の車であずささんの住むRマンションに向かう。

とりあえず2台とも車内電話が搭載してあるから、

離れても連絡はとれる。

先に、撩が彼女の部屋に向かって、

あたしはマンションからやや離れたところで、車内待機。



「撩のヤツ、まぁーた彼女に

やあらしぃことをしてんじゃないでしょーねぇ??」

心配と不安が沸きつつあったところで、

思ったよりも早く2人が外に出て来て、ちょっと驚く。

車内に常備してある双眼鏡で様子を伺う。



「え?歩いて行くの?」



てっきりクーパーに乗って2人でどっかに行くかと思っていたら、

最初っから予想を裏切られる。

向かう先は、あずささんのマンションから徒歩15分ほどのところにある

最寄り駅裏の歓楽街。



あたしは、気付かれないよう慎重に徐行しながら

2人のあとをつけた。

「っま、まさか、りょぉ〜、ほんっとにホテルに入る気じゃないでしょ〜ねぇ〜。」

握るハンドルに思わず力が入る。

会話が聞こえないので、やりとりはさっぱり分からない。

しかも、あずささんが嫌がっている感じじゃないし〜。

あ!彼女がホテルを指差した!

あそこに入るっていうの???

かろうじて見える看板の名前に、一瞬ひるんだ。



「ホテルアニマルハウスぅ???」



えーっ!も、もしかして、あたしも中にはいんなきゃだめなの?

2人であんなとこ入ったら、撩が大人しくしているワケないじゃない!

ど、どうしよう…。

ううん、出てくるのを待つほうがいい?

だ、だめっ!あずささんが危険だわ!

と、とにかく出入り口が他にないか確認して追わなきゃ!

なんてことを考えながら、駐車する場所を目で探していると…。



あ、撩があずささんから離れたわ。

まったく一人にさせないようにって自分で言ってなかったっけ?

あああっ!あずささん!どこ行くの!



ホテルの入り口で職員となにやら話している撩から、

足早にあずささんが離れる。

「も、もうっ!」

あたしは、あずささんが死角にならないように、

車を少し移動させた。

そもそもこんな場所、心理的に良くないわっ!

角を曲がったところで、

あずささんが路駐している車に素早く乗り込んだ。

「え?」

全てスモークガラス。

中が見えない。

少しだけ運転席の窓が下がり、そこからあずささんの悲鳴が響く。

「キャアアアア」

大きくエンジン音が轟(とどろ)いた。

「冴羽さーーん!!」

グォォォン!

「これか!」

あたしは、すぐにアクセルを踏み、間を少し開けて後を追った。




たぶん、これは撩の計算の範疇。

追跡の失敗は許されないわ。

ばれないように、適当な距離を保って見失わないようにしなきゃ。

たぶん、撩はこの間に、大急ぎであずささんのマンションに戻って、

駐車場に停めてあるクーパーに乗り、

発信器でまずはあたしの居場所を確認するはずだわ。

進行方向が分かれば、きっとすぐに追ってくるはず。



あずささんは、あの車をあらかじめあそこに置いていたのかしら?

マンションの駐車場じゃないところに停めておくなんて、

やっぱり撩をこっちに誘ったには計画的だったってこと?

ん?それでも、撩が来ることなんて絶対的なものじゃなかったし…。

そもそも、あの車はあずささんのもの?

ううん、誘拐劇を仕組むなら、本人の車の可能性は低いわ。

でもレンタルだとそこから足がついちゃうし、誰かから借りたのかしら?

朝はそんな動きしようがなかっただろうから、

昨日の夜のうちに仕組んだってこと?



そんなことを考えながらも、あたしは、

前方に神経を集中させ尾行を続ける。

「……埠頭に、向かってる?」

車窓から東京湾がちらほら見える。

あずささんの車はスピードをあげ、港の倉庫街に入って行った。

これ以上近い距離だとバレてしまうわ。

あたしは、ぎりぎり視界に入る距離を保ちながら

車が止まる場所を見定める。



すると一つの倉庫の前で、あずささんの乗った車が止まった。

あたしも離れた場所の影に停車する。

双眼鏡で確認するも、乗っている人はたぶん彼女一人。

「……さらわれたフリ、か。」

切羽詰まっている彼女を思うと切なくなってきた。

あずささんが倉庫の大きな扉を細く開け、中に入ったのを認めると、

あたしはすぐに車内電話で撩のクーパーに連絡を入れた。



「撩、今横浜の埠頭にいるの。」

『あいよ。もう向かってる。』

「場所は、一番南の倉庫街よ。」

『りょーかい。もうすぐ着くから、大人しく待ってな。』

「なによ!大人しくって!」

『余計なことすんなってこと。

そこからあずさくんが移動するかもしれないから、しっかり見張っとけよ。』

「あ、うん、わかった。」

『んじゃ、あとでな。』

ぷつっと切れた受話器に目をやるも、

なんだか心は複雑な気分。



こうして、久しぶりに仕事らしい仕事の動きをしているのに、

これが依頼人の娘による自作自演の誘拐脅迫事件で、

しかも動物学者である彼女の出来うる範囲の抵抗であり、

さらに、密輸は今夜。

「撩は…、どうやって決着をつけるのかしら?」

たぶん、夕べのうちに撩が色々と手回しをしていたのは

なんとなく分かるけど…。



とりあえず、あたしは車の外に出て撩の到着を待つことにした。

言葉通り、撩はあたしの予想よりも早い時間で現場入り。

聞き慣れたエンジンとブレーキの音に振り返る。



「お早いお着きね 撩!!」

「あそこか」

「ええ あの倉庫の前」

「まちがいない あずさ君をさらった車だ」

車を一瞥する撩。

「ほんじゃ 行きますか」




あたしたちは、建物に近付き

倉庫の扉をわざと大げさに開放した。

撩、どうするかお手並み拝見だわ。




あとは、みなさんご存知の通り。


**********************************
END





シンデレラデートの時も顕著でしたが、
香がきょとんとしたり、怒ったり、くすくす笑ったり、むかぁっとしたりと、
短時間でころころ表情や感情が変わる様が
なんとも愛らしくて、
本編でもそんな場面をちまちまと作っております。
きっと、このあずさの尾行の時も、
緊張したり、怒ったり、戸惑ったり、焦ったりと、
複数の思いが出たり入ったりのカオリンだったのではと。
そんなワケで、
原作ではきっちりカットされた尾行シーンを
勝手に思い描いてみました。
しかし、あの誘拐劇に使った車、
本当にどういう計画であそこから発進できるようにしていたのか、
かなり謎でございます。
カオリンに代弁させてみました。
友人知人に鳥類学者とか森林学者がいたりするもんで、
この伍島あずさ編は生き物屋的にも好きな作品故、
またどっかで使っちゃうかもしれません。
もちろん密輸現場が横浜というのも何の根拠もございません〜。
香の車にも電話付き設定も原作では見受けられなかったネタですが、
携帯も使っていなかった2人が合流するのに、
発信器だけでもなんとかなったかもしれませんが、
とりあえず少し便利にしといてあげました。
というワケで6万ヒット御礼企画でした〜。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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