23-03 Spaghetii Napolitana

第23部 Preparation Of Training

奥多摩湖畔から12日目


(3)Spaghetti Napolitana ********************************************** 2413文字くらい



キッチンでは、

撩が朝昼兼用の食事を、一人でもそもそと口に運んでいた。

まだ温かさが残っているナポリタンを、フォークで大量に巻き込み

ずごごごっと頬張っていく。



撩の耳には、香がリビングのベランダに出て、

午前中に干していた布団を取り込む気配をキャッチ。

パタパタと聞こえるスリッパの音は、台所の前を通過して、

客間へと続く。

さっきも、自分がトイレに入っている時にも、

香が7階と6階を往復していたのを気配で拾っていた。



「んと、よく働くこと…。」



干さなければいけない原因を作った本人は、

全く他人事のように、ぼそりとつぶやく。

ついつい夕べのことを思い出しながら、

フォークをくわえてにんまりと口元が緩む。



「ぐふっ、これからどこでシちゃうかボクちゃん迷っちゃう〜。」



初めて自室以外での合体に味をしめた撩は、

脳内で本気の「どこでももっこり作戦」を勝手に描き始める。

恥ずかしがり屋の香が、どんな反応をするのか、

それを想像するだけでも、妙に楽しく、

いかに逃げられず拒否されないように

コトに持っていくか、完全自分中心天動説状態で妄想中。

それでも、付け合わせのサラダを口に運ぶのは忘れない。



「風呂は、まだダメっつぅーだろうな…。」

「え?今からお風呂入るの?」

「ぶっ!」

レタスが口から吹き飛んだ。

「や、やだ!何吹いてんのよ!」



キッチンに入ってきた香は、

眉を下げながらシンクの端にひっかけていた台拭きを取り、

撩が吹き散らかしたところを、手早く拭き上げた。

「お、おま、」

いつからそこに?とは聞けずに、珍しく素で言いよどむ。

脳内はまた香の気配に気付かなかった己に言い訳中。

これは香自身の無意識のグレードアップと、

相方とのもっこり妄想中に、

自身の油断の相乗効果がまた重なったと、とりあえず分析。



「なぁに?お風呂入るんだったら、早く上がってよ。

伝言板見に行くの遅くなるじゃない。

一人で行くなって言うんだったら、午前中にちゃんと起きてきてよね。」

撩の困惑をよそに、香はまた台拭きを流しで洗いながらそう言ってきた。

「あー、風呂は今は入んねぇーよ。すぐ食い終わるから待ってろ。」

撩は、わずかながらに赤くなり、バツの悪そうな味を含んだ顔のままがつがつと

残りのパスタとサラダを一気に片付けた。

「そう?だって、さっき…」

「あー、なんでもねぇって。」

添えられているスープをくいっと傾け、カラにする。

「ごっそさん!」

「お粗末様でした。」

香が食器を下げようとすると、撩はかしゃかしゃと自分でソーサーを重ねて、

シンクへ運んだ。

「あ、ありがと。で、でもお風呂入りたかったらいいよ?すぐ済むんだったら。」

「だから、今の話しじゃねぇってーの。」

「そ、そうなの?」

流しに並ぶ2人。

ちろりと香を見下ろす撩。

「……香。」

「え?」

ちょっと真面目な顔になってる相方に、香はドキンと鼓動が跳ねる。

「な、なに?」

思わず、胸に手を当ててしまった。

「……なぁ。」

「え?」

じっと見つめてくる撩。

ゆっくりと口が動く。



「今じゃねぇーけど…。」



トトトと、心音を自分の手で感じながら、

その唇から目がはなせない香。



「いつ、一緒に入ろっか?」



「は?」



きょとんとする香をシンクと自分の体で挟み込み、

両腕でも流しのへりに手をかけて香の逃げ場をゼロにする。

互いの距離ももうちょっとでゼロになるほどに撩の顔が香に近づく。

「な、な、な」

なんのことよ!と言いたい言葉が出てこない。

顔面のサーモグラフィは間違いなく高温を示しているに違いないと思いながら、

この撩の行動に理解ができず、口パクになってしまう。

見下ろしてくる撩の左右の瞳を交互に見つめ上げながら、

言葉の真意をさぐろうとするも、香にとっては全く言葉が足りないのだ。

鼻先同士がつんと当たり、

香がひゃっと小さく声をあげて、瞼のシャッターが落ちた。

とたんに、人工呼吸が始まる。



「んんーっ。」



自分の作ったナポリタンのソースの味がはっきりと分かる口づけに、

今何をされているかがより明確に認知され、

受けた刺激がまた脳を混乱させる。



「ふ…、ぅん。」



角度を変え、圧を変え、深さを変えと、

唐突に始まった接触に、困惑と照れと恥ずかしさが体をふるわせる。

ちゅっと吸引が軽くなったと思ったら、

唇を触れ合わせたままで、聞いてくる。



「こんだけで、こーんなになるんだったら、風呂だと爆発しちまうかもな…。」



ぎょっとして、香の目がパチンと開く。

もちろんドアップの撩の顔がピンぼけで視界に入る。

目を閉じている相方の容相にドキンと激しく脈打つも、

言っていることが今の言葉でやっと理解が出来、

同時に勝手に頭の中で一緒にシャワーを浴びるイメージが浮かんだ。



「でっ、出来る訳ないじゃない!って言ったでしょっ!」



ほぼ反射で100トンが振り落とされる。

こんなことを考えてしまった自分をごまかすための恥じらいハンマー。

見事に食らった撩は、

ハンマーの下から手足だけをぴくぴくと振るわせている。



「ま、全くっ!何のことだと思ったらっ!」

どすどすと足音を立てて、

キッチンを出る香の顔は濃〜いクランベリー色。

「さっさと出られる準備しちゃってよ!」

そう吐き捨て言葉を残して、バタンと扉を勢いで閉めた。



床とハンマーのサンドになった撩は、

くすくすと肩を揺らしながら、

ごろんと100トンを転がした。

「んと、かぁーいーこと。」

打ち付けた鼻先を指でこすりながら、

薄く微笑む。

「食後のデザートにしちゃ、ちょいとばかしオイタが過ぎたか…。」



うぶ過ぎるパートナーとのやりとりが、

まだまだ楽しめることに嬉しくもあり、

慣れたら慣れたでどんな香になるのか期待感もあり、

体を重ねるようになって、

12日目の今日もまた

どうやってイチャイチャタイムに持っていくか、

すでに撩は12時間後のことに考えを巡らせる。



「っと、その前に教授んちに電話だな。」

撩は、ひょこひょことリビングに向かっていった。


**********************************************
(4)へつづく。





撩ちん、からかうのも程々にしな…。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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