23-04 Key

第23部 Preparation Of Training

奥多摩湖畔から12日目   


(4)Key ************************************************************** 1727文字くらい




午後、冴羽アパートから赤い小さな車が軽快に出て行く。

新宿駅につくと、いつも通りに香は伝言板をチェック。

ざっと見回して、何もないことを確認すると、

ふうと息を一つ吐き出して、

撩の待つクーパーへ小走りで戻った。



「今日もなしよ。」

助手席のドアを閉めながら報告する。

「じゃあ、教授んちに行くぞ。」

「え?」

香は、突然の提案に驚く。

「受け取るもんがあるから、ちょっと寄って行くぞ。」

「まさか、エロ本とかエロビデオじゃないでしょうねぇ〜。」

じと目で相方を見つめる香。

「ち、ちげぇーよ!」

「ほんとに?また依頼人が泊まりに来た時、

目につくところにあったら即廃棄だからね。」

「だから、ちげぇーっつーのっ!」

「まったく、2人ともこのあたりは全然信用がないから信じらんないわ。」

ふうと背もたれに体重を深く預ける。



「美樹さんも、どうしてるかしら?」

4日の間が開いている。

「まぁ、治療も進んでんじゃないの?とりあえず行くぞ。」

「う、うん。」

軽やかに進む車体と相反して、

個性的なバフバフという鈍いエンジン音が車内に響く。

撩は、左手だけをハンドルに乗せ、右肘を窓枠にひっかけ、

いつものスタイルでアクセルを踏む。



教授宅へ着いたのは14時半。

正門の前に駐車したクーパーから、

出てきた2人は慣れた足取りで、玄関に向かう。

呼び鈴を押そうとした香が、あっと声をあげた。

「なんだ?」

「お花とか買うの忘れちゃった!」

「いいんじゃない?気にすんな。」

香の指ごと撩がインターフォンのボタンを押した。

「あ…。」

な、なにすんのよ!と、

照れの抗議を訴える間もなく、スピーカーから声が出た。

「撩か、入りなさい。」

「お、おジャマ、します。」

香がぎくしゃく気味に返事を返す。




「香さん、冴羽さん、いらっしゃい。」

解除された門をくぐると、かずえの出迎え。

「かっずえちゃぁーん!ボクちゃんがいなくて淋しくなかったぁ〜ん?」

と急接近しようとしたろころに、いつも通り香の1トンハンマーが

顎にスコーンと当たる。

「って!」

これも計算済み。

「撩…、大人しくしててちょーだい。」

手をパンパンと叩きながら、澄まし顔でそう告げる香は、

くすくす笑うかずえの方を見ながら、美樹の様子を尋ねた。



「美樹さんの具合は?」

「順調よ。もう抜糸も近いし。あ、冴羽さんは、そのまま教授のところに行ってもらえる?」

「あいよ。」

何のために何を受け取るのか何も聞かされていない香は、

このやりとりがよく分からず、クエスチョンマーク。

「?」

「冴羽さんが何か教授に頼んでたみたいよ。」

撩の背中を2人で見送りながら、一緒に美樹の部屋に向かった。




一方、撩は艶のある廊下を猫背でひょこひょこと歩き、

教授のいる書斎へ向かった。

「入りますよ。」

「ほほ、こんなギリギリでよかったのかのう?」

「別段問題はないでしょ。」

教授は相変わらず積み上げられた書籍の山の隙間から、

目だけを動かして、その小さな体をややかがませた。

机の引き出しをからりと開けて、

チャリンとキーが2つぶら下がっているリングを取り出し、

撩に差し出す。

「ほれ、これじゃ。」

「ありがとうございます。」

カチャリと撩の大きな手の平に乗せられた金属は、

鍵山がないディンプルキー。



「お前さんには、いちいちカギは必要なかろうて。」

「あそこのセキュリティーがやっかいなのは知ってますよ。

めんどくさいんで、カギ使える時は使わせてもらわないと。」

「ま、それもそうじゃな。」

「防寒だけはしっかりと準備しておくがよかろう。薪は十分にあるがのう。」

「ありがとうございます。」

「新宿とはちーっとばかし標高が違うからのう。

くれぐれも無理はさせるのではないぞ。」

「分かってますって。」

撩はキーをジャケットのポケットに仕舞い込んだ。

「ホントかのう?」

教授はにやりと口元を緩ませて、ぎりしと黒い革製の回転椅子に深く腰をかけなおす。

「明るいうちのほうがいいじゃろ。」

「はい、もう出ますよ。」

「香君は?」

「タコに声はかけてますから。」

「ほほ、なるほど。」

「じゃ、明日、明後日お借りします。」



撩は、そんなやりとりをした後、教授の部屋を出ると、

美樹がいる病室へと向かった。


******************************
(5)へつづく。






何かを企て中の撩ちん。
1991年当時は、
まだディンプルキーはそんなに普及していなかったかもと。

今日は半夏生…。
町内で生育している場所は一ヶ所のみ。
湿り気のあるところが好きな植物がどんどん減ってる感じです。

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きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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