23-06 Have A Drive With Falcon

第23部 Preparation Of Training

奥多摩湖畔から12日目  


(6)Have A Drive With Falcon ********************************* 2324文字くらい



15時頃、

香は教授とかずえに簡単にあいさつをすませて

ファルコンの待つ場所に向かった。

「海坊主さん、お待たせ。」

ここの広い食堂でも、ファルコンがいるだけで、狭く見えてしまう。

「いくか。」

のっそりと立ち上がった巨体は、無表情で廊下へ出て行く。

「お、お願いします。」

大きな広い背中を見つめながら、数歩後ろをついていく香。

玄関とは反対の方向へ進む。

クーパーは、正門の前に駐車したが、ランクルは通用門側に止めてあった。



「乗れ。」

「あ、はい。」



初期はため口だったのに、

つい、ですます調になってしまうのは、師弟関係が基盤にあるためか。

やや緊張感が込み上がる。

こうして、ファルコンと2人だけでこの車に乗るのは、

撩にナイショで、トラップの訓練を受けていた時以来。

グォンとエンジンがふかされ、教授宅を離れる。

住宅街を抜けるところで、

香は気になっていたことを尋ねることにした。



「……撩は、仕事なのかしら?」

「いや。」

すぐに運転席から返事が返ってきた。

「お、お前のための、じゅ、準備、だ!」

「え?海坊主さん、何か知っているんですか?」

「あっ、い、いやっ、そ、そのっ、く、詳しいことは、俺も知らんっ!」

ファルコンはしまった、という表情になりつつも、

香の気をもませないように、言葉を選ぶ。

「余計な心配はするな。」

「……さっき、美樹さんにも同じこと言われたの。」



ふっと軽く息を吐き出すファルコン。

全く問題のない軽やかな運転に、

香は運転手が失明していることを完全に忘却している。

なぜ信号機が変わるのを、感じることができるのか、

なぜ微妙なカーブを難なく曲がることができ、

十字路を間違わずに右折左折ができるのか、

それは本人にしか知り得ないスキル。

ミックが遠方の取材で不在だったので、

撩もファルコンの運転技術を信じての声かけだった。



「りょ、撩からは、昼に連絡が来た。その時、香のことを頼まれた。」

「え!そうなの?」

「まぁ、美樹と会わせるのもあったかもしれんが、

教授から鍵を受け取ってそのまま現場に行く予定だったんだろう。」

「鍵?現場?」

「うっ!い、い、いや、気にするなっ!」

もう、一応秘密にすべきと思っていることを

ついボロボロと喋ってしまう自分に、

これも香の空気になせるワザかと、苦笑いするファルコン。



「と、とにかくっ、心配することはない!」

「し、仕事じゃないって…。だったら」

香の疑問も最もだと、ファルコンも肩の力を抜く。

「す、全てはお前のためだ。」

「え?」

「香、……トラップの訓練を始めた頃のことを覚えているか?」

突然、数年前の話しにもっていかれる。

「え?」

「俺が、香に最初に言ったことは忘れていないか?」

廃ビルに連れて行かれて、火薬に電気コードに導線に工具箱にと、

様々な道具を目の前にし、ごくりと生唾を飲んだあの夜を思い返す。

「……うん、覚えてる。」



— お前に人殺しの方法を教えることはしない —

— お前が生き残るために、相手の動きを抑えるための技術しか教えん —

— 間違った使い方は絶対にするな。わずかなミスが生死を分ける —

— 中途半端な気分だったら、すぐに帰れ —



そんなことを言われていた。

「なら、大丈夫だ。」

「?」

一体どういうことなのか、

多くを語らない隣りの巨体に疑問符ばかりが浮く。

「お、俺も詳しいことは分からんが、

や、ヤツはちゃんと帰ってくるはずだ。」

穏やかな表情の横顔を見ながら、香もふっと肩の力を落とす。

「ありがと、海坊主さん。」

膝の上の手を組み直した。

「あいつが出かけると、ツケばっかり増えるから、

少しは大人しくしてほしいもんだわ。」

そういうところが行き先ではないことを分かっていての言葉に、

ファルコンも乗ることにする。



「ああ、例の報酬は、店のツケと物損を差し引いた分だ。」

「えええ!そ、そうだったの?」

思い出したスリーセブン。

「あぁ、聞いておいてよかったわ。支払をしなきゃって思っていたから、

なんか得した気分だわ。」

経理係として、心底ほっとする。

「あ!そう言えば、あの夜でも見える小さな望遠鏡、

撩から海坊主さんからのプレゼントだって聞いたけど、

本当にもらっちゃっていいの?」



大井埠頭の時に、

ファルコンが念のためにと撩に手渡したノクトビジョンの単眼鏡。

撩は、ファルコンが余計ないたずらをしたせいで、

香が倒れてしまったので、その対価代償として、備品を頂くことにした。

ファルコンは、そう言えば、まだ返してもらっていなかったかと、

瞬時にそのやりとりを思い出すも、

この香の一言で、



— このタコ、余計なことしやがって、代わりにコイツはもらっとくぜ。 —



という撩のココロの声が着信する。

「あ、ああ、も、もちろんだ。う、受け取っておけ。」

調子を合わせるために、最も適した返事をした。

「なんだか、もらってばっかりで、申し訳ないわ。」

「き、気にするな。それも報酬だ。」

美樹の面倒を見てくれた礼にするには安いかもしれんがと、

言いかけた言葉をつぐんで、運転を続ける。

「あ、ありがと、じゃあ遠慮なく使わせてもらうわ。」

気付けばもう、アパートまですぐそば。

晩秋の4時前、日が落ちるのが早くなってきている。



「着いたぞ。」

「海坊主さんありがと。」

高い助手席からよっと足を下ろす。

「い、いや。」

「早くお店が再開できるといいですね。」

窓の開いている運転席に向かってそう言う香。

「ああ。」

短く返事をしたファルコンは、

そのままグォンと排気口から熱を出して

冴羽アパートを後にした。

香は、車が見えなくなるまで見送る。



「それにしても、仕事じゃなくって、準備って一体…。

撩、どこにいっちゃったのかしら?」



訝しがりながら、我が家へと入って行った。


************************************
(7)につづく。





どうして海ちゃん、運転できんの??
クーレンズの海ちゃんサングラス、売り切れだって…。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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