23-10 What Can I Get You ?

第23部 Preparation Of Training

奥多摩湖畔から12日目


(10)What Can I Get You ? ****************************************** 5403文字くらい




「たぁ〜だいまぁ〜んっ!」



元々半開きだったドアから、声が先に入ってきた。

パタンと閉まる音に、もう?と振り返ったとたんに、

香は、後ろからがばりと拘束される。

「ひゃあっ!」

「ちぁ〜ゃんといいコで待ってたかな〜ん?」



短時間過ぎるのではないかというくらいに、

速攻で汚れを落としてきたトランクス一丁の撩。

衣類1枚も纏うのが面倒だったが、

さすがにそれはまだハンマーを食らうかもと、

それなりに自粛する。

まだ若干湿り気を残したままの黒い髪は、

いつもより前髪の位置が長くなり、少しばかり年齢も若く見えてしまう上に、

オトコの色香に大きなプラス効果を与える。



覗き見る相方の視線に耐えられずに、

ぷいっとソファーの方に向き直り、

自分の面持ちを知られないようごまかしに入る香。

「な、なによっ、さっきから『いいコで待ってろ』だとか『大人しくしてろ』だとか、

あたしの方があんたに言いたいわよっ!」

目を閉じながら早口でいうも、もう体温は上がり続けている

後ろからすっぽりと包まれる幸福感。

この後の展開を期待しているとは思われたくない一心で、

機嫌の悪さを誇張する。



「……おまぁが、素直にここで寝ないのが悪い。」

「はぁ?」

目が開くも、太い腕がぐいっと香の脇腹を持ち上げ、

さっきまでは、後ろ抱きで撩のアゴと香の頭頂部が触れていたのに、

香の体が30センチ程ずりあがるスタイルになった。

とたんに、首筋に温かいやんわりとした感触が横滑りで移動する。



「ぁ…。」



ぴくりとする体に、パジャマの上から撩の左手が優しくさすり上げる。

気持ちいい、と思わず声に出そうになるところを、

はぁという息だけでなんとか抑えた。

脈拍が早くなり、目はキツく閉じてしまう。

細い眉も下がり気味で、頬の色がさらに血の色を重ねる。



「おまぁの寝室はここ。」

「あん!」

耳朶に吸い付きながら、明るい口調でそういう撩は、

シーツを握りしめている香の左手に向かって、

自分のそれを肩経由でゆっくりと到達させ、

上から指を重ね包み込む。

それだけで、どきん!と心筋が反応した。

嬉しいのに、それを察知されるのが恥ずかしく、

まだ憎まれ口を選ぶ香。



「な、なによ…、あ、あれだけ、男女だとか、もっこりしないって、

い、言ってたくせに…。」



香の前髪に絡めていた右手の指が、ぴくりと動き、

そのままくしゃっと房を集める。

「…あー、そーゆーこともあったわねん。」

おふざけ口調でその言いながら、

香の体の下をくぐらせている右腕を緩慢にスライドさせ、

頭部から首筋を触れながら、

横向きで柔らかさを増している右の胸を

布の上からやんわりと包み揉み上げた。



「ん…。」



甘い声が出そうになるのをこらえる香は、

心地良さの中で、

会話のキャッチボールがやや辛くなってきた。

もっと直接触って欲しいとも言えずに、

まだ悪態を纏わせた強がり口調を続けようとする。



「あんた、なに、……懐かしがってる言い方、してんの、よ。

ついこの前まで、…そんなこと、ばっかり、……言ってたくせに。」



まだ日が経っていないことを主張するも、

確かに、奥多摩前の日常が遠く感じる程に、

アレから過ごす日々があまりにも濃密過ぎ、過激な変化を重ね、

香自身もまた、撩が「誰がお前なんかにもっこりするか」などと

のたまわっていたことを懐かしく思う。

そんなことを考えていたら、望み通りに、

するりとパジャマの裾から撩の熱い手の平が侵入してきた。

地肌に触れられている心地よさに、

またふるっと震えながら、湿り気のある吐息が漏れる。



「……ありゃ、全部ウソだっつーただろうが…。」



最初に一線を超える直前に聞いた撩の告白を思い出す。

ウソだというのなら、

全部逆のことを思い感じていたと捉えてもいいことになる。

しかし、それはまだ香にとっては、素直に信じられるものではなかった。

兼ねてから持っていた自己分析結果が勢いで口から出てしまう。




「あ、あたしは、…あんたの好みから、完全に、的外れなの、よ…。」



「はぁ?」

撩の手が止まる。

「か、髪も長くないし、がさつだし、オトコっぽいし、す、スタイルも良くないのは

自分でも分かってるし、色気もないのも知ってるもんっ。」

撩に横抱きされたまま、唇を尖らせて、半ば破れかぶれ状態でそう言ってしまった。



きっとガマンさせている。

撩が自分なんかで満足できるワケがない。

撩は、もっと色気のある『ぼんっきゅっぼんっ』のロングヘアで、

フェロモンをムンムン放出している大人の魅力満載の美形美女が大好物、

香はそう強く思い続けていた。

ソレ故に、一線を越えてから

自分なんかでは申し訳ないという面持ちは剥がれることなく、

今に至る。

自分だけを見てほしいとは、自分だけを抱いてほしいとは、

思っても言うことができない禁止ワード。



「はぁあ…。」



大きな溜め息が香の背後から伝わる。

明らかに呆れている、と香が感じ取ったとたんに、

ぎゅうううと、キツく強く抱き込まれる。

「ちょっ!な、なにす…、く、くる、し…。」

撩の左指が香の右肩に食い込み、

撩の右腕は香の肋骨まわりにぐるりと巻き付き、

横隔膜の動きを妨げる。



「おまぁ…、まぁだ、わかんねぇーのかよ…。」



3日前の晩に施した心の手術は、

過去のオンナについて沸き上がった香の不安をなんとか剥離できたものの、

香自身が持つ暗く根深い劣等感までは、未だに除去できていないのだ。




一体、どうしたら伝わるのか。

お前の存在そのものが自分の好みのドツボであることを。

一体、どうしたら分かってくれるのか。

自分には、もうお前しか興味がないことを。

一体、どうしたら納得してくれるのか。

終生、お前だけを抱き続けたいと思っていることを。



この13日間、幾度となく己の真意を伝えてきたつもりだった。

しかし、香の心の奥深くにある自己評価は、

未だ持って『自分なんか』という基本設定が変わっていない。

それもこれも、撩自身が育ててしまった悪性腫瘍の一つ。

撩は、目の裏でツンとにじむものを感じてしまった。



「ボクちゃんと、こぉ〜んなにもっこりしても、まぁーだわかんね?」



おちゃらけ口調で、

さらに腕の力を継ぎ足した。

「ぅ…。」

香は思わず、撩の腕に自分の両手の指をかける。



乱されたパジャマ姿の香は、

布団の中でトランクスしか履いていない撩に、

背後からキツく巻き付かれる。

息苦しさが混じる中で、香は兼ねてからの不安要素をつい話し始めてしまった。



「だ、だって…、あんたって、……い、いろんなヒト、知ってんでしょ?

そ、それに比べられたら、……み、見劣りするに、決まってんじゃない…。」

自分が言った言葉に情けなく泣きそうになる。

「な、慣れてないし…、ど、どうしていいか、わかんないし…」

喉の奥に狭さと重さを感じて、ごくりと溜まった唾液を飲み込む。

「撩はさ…、百戦錬磨どころかさ…、万戦錬磨かもしんないけどさ…」

強く閉じている目の端がじわりとにじんできた。

「あ、あたしは、……あ、あんたしか、知らないし、……知識もない、からさ」

一回深呼吸をする。

「あんたに、…ガマン、させてんじゃないかとかさ、

気分悪くすることとか、しちゃってるんじゃないかとかさ…、

ホントにあたしなんかでい」

思っている心境を続けようとしたろころで、背後のオトコが遮った。



「フツー、こぉーゆぅースタイルで、そぉーゆぅーこと言う?」



香の告白を聞きながら、眉にシワがよってしまった撩。

最後まで聞くに耐えないと中断させる。

腕をほどき、むくっと起き上がったと思ったら、

香を後ろから拘束したまま、超高速早業で、ぽぽぽぽんと

相棒が纏っている布地を一気に取り払った。

「わわわわっ!!なっ!なっ!なにすんのよっ!」

「もっこりするに決まってんじゃん。」

すっぽんぽんになった香を素早く仰向けにさせ、

両腕を伸ばして、相方の手首を押さえ見下ろす撩。

仄暗い中でも、白く映える完璧な裸体に、

自分が咲かせた淡い桃色の華の痕跡が、

香の文言を全て否定しているのに、本人はそれが分かっていないのだ。

あっという間に華麗に脱がされてしまった驚きのまま、

目をぱちくりして真っ赤になっている愛しのパートナー。




「りょ…、ちょ、は、はずかし、よ…。」



「好みじゃないオンナと、こんなにもっこりすると思ってんの?」




もともと暗がりで黒目が多くを占めていた香の瞳孔がわずかに面積を広げる。

恐らく、いくら香に、

お前は綺麗で美し過ぎると、一般的な褒め単語を並べても

今までの所行が悪過ぎる故、本人が納得できるはずもなく、

お前は、俺が知っているオンナの中で、追随を全く許さないほどの

パーフェクトボディーだと言ったところで、

気を良くするはずもなく、

香が抱えている劣等感はそうそう簡単には剥落させることは出来ないと

撩も納得している。



掛け布団を背にかけたまま、浮かせていた上体を香に徐々に近づける。

肘がジャッキを下げるように曲げられて、撩の体が香と重なった。

ふにっと柔らかい2つの丘が円盤状になり、

どきどきどきと香の心音が自分の胸板から伝わってくる。

意地悪な表情のままで、じわりと顔の距離を縮めると、

香はきゅううと目を固く閉じた。

その顔がまた可愛くて、撩もまたぽろりと本音をこぼす。




「確かに、…ずっと、耐え忍んできたんだぜ…。」



つるりと滑らかな表皮の額に、

撩は自分の唇をうにゅっと押し付ける。

ぴくりと反応する香。



「遠慮なく、……こうして、…触れたいと、何年も…。」



鼻筋に下唇だけを滑らせながら、手首を握っていた指をほどき、

香の手の平と自分のソレを重ね合わせ、

ぎゅうと指を絡ませる。

指の間からの心音は、ゼロ距離をより一層実感させる。

香の愛らしい唇に到着するとはむはむと浅く挟み込み、

丁寧にその感触を脳に刻んでいく。



「……んん。」




香は、撩の思わぬ言葉に、

嬉しさと気持ち良さと心地よさで、指先がかすかに震えた。

何年も、自分もそう思っていたことを。

今、撩の体重を感じていることを。

今、撩の体温を感じていることを。

ただ、やはり今現在もガマンをさせているのではという心配は拭えずに、

「で、でもっ…」と言葉を続けようとした。

すかさず、撩は深く深く香の唇を塞いだ。

何も言わなくていいと、これ以上、自分を卑下するなと。



「んんんっ。」



激しさの中で、優しく口腔内を触れていく熱い舌の動きに、

香の体がかぁぁとより熱くなっていく。

鼻だけでの荒い息が続き、お互いの呼気が頬の肌にぶつかる。

長い長い口周りだけの愛撫を経て、

区切りに、きゅうううと自分の舌を吸い付かれ、

そのまま撩の体内に引き込まれるような疑似感を覚えた。

意識が薄れかかったところで、ちゅぽんと吸引終了。



「っん、……っはぁ」



体全体が汗ばんでいることに気付く香。

うっすらと目を開けると、穏やかな瞳で見つめる相棒の視線とぶつかる。

まだ指を絡まされたまま。

「ばぁーか。」

「は?」

「余計な心配すんじゃねーの!」

今日、美樹にもファルコンにも言われた同じ言葉、

通算3人目からのメッセージ。

「……だって」

「だっても、くそもあるか。」

艶の出た唇を軽く歪ませ、

まだ申し訳なさそうな表情でいる香に、

このタイミングで言うべき言葉を探し続け、一つを選択することに。

本当は、繰り返し何度でも言いたいが、今晩で2回目。



「前も言っただろ…。おまぁじゃなきゃ、ダメなんだよ…。」



香の目の面積が再びふわっと増える。

驚きを訴えるその瞳孔に、撩自身がかなり恥ずかしくなってきた。

ここでおちゃらけモードに切り替えることに。



「で、今日は何発したい?」

「は?」



にっとスケベオヤジモードで迫ってみる。

「香ちゃんにメニュー選んでもらうっつーのもありだぜ?」

「は?め、メニュー???」

「2発したいぃ〜とかぁ、3発したいぃ〜とかぁ、

後ろからぁ〜とかぁ、座ってぇ〜とか、激しくぅ〜とかぁ〜。」



香がまだそんなことを考えられる余裕がないのを承知での

意地悪なごまかし作戦。

四十八手&裏四十八手、計96手ありまっせ、とも言おうとしたが、

まぁ、まだ早いかと、このあたりの講義は先の楽しみにしておくことに。



さらに赤い色を増した顔の香は、眉にシワを寄せた。

「あっ、あたしが、そ、そそんなことっ、い、い、い、言えるワケじゃないじゃない!」

「んじゃ、シェフのおまかせメニューってことでぇ〜。」

「んんん!」

撩の言葉尻と熱い口づけが重なった。

ほぼ毎晩繰り返される熱帯夜。

この状況にまだ何ら疑問を持たない香を味わいながら、

撩も器用にトランクスを足から抜き去る。



それに気付いた香は、

まだ意識がハッキリしている前に言っておかなければと、

慌ててやんわりと抵抗をした。



「りょっ…!」

「んー?」

「あ、あしたっ!」

「あ?」

「ふっ、不燃ゴミの日だからっ!」



がくっと脱力する撩。

そのままずしっと香に覆い被さる。

「お、おも…。」

折角のいい流れを、かくも簡単に水質を変えてしまう相方の天然さに、

またそれも捨て難い魅力だと、くくくっと肩を揺らした。



「わぁーったよ!それも心配すんな!」



がばっと身を起こし、

握り込んでいた指をゆるりとほどき、

香を両腕でぎゅうと抱きしめる。

「きゃあ!」

撩は、左手を小さな後ろ頭に滑り込ませて、

そのまま自分の顔に引き寄せた。

歯が当たるキスにピクンと肩がぶれる香は、

恥ずかしがりながら、

広く厚い背中に白い腕をそっと回した。



おまかせメニュー、ご注文ということで、

今晩も幸せな仲良しタイムの始まり、始まりー。


************************************************
24部(1)へつづく。






ホントにゴミ捨て大丈夫?


【Sさんありがとうございます!】
誤植連絡感謝です!
除→覗に修正しました!
度重なるご連絡本当にありがとうございますっ。
2013.12.15.03:21

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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