25-01 Abdominal Muscles

第25部 Narusawa (全20回)

奥多摩湖畔から13日目


(1)Abdominal Muscles ******************************************** 2244文字くらい



ふっと覚醒する。

視界は薄暗い。

どうやら、顔まで布団が覆い被さっている。

撩の右肩口に頭を預け、お互い裸体のままでぴったりとくっつき、

太い腕が背中から腰に絡んでいる。

それが分かったとたんに、また、かぁぁっと体温が上がってしまった。

左耳の下から、撩の落ち着いた心音が聞こえる。



腕を動かそうとしたが、

左腕は自分と相方の間に挟まれまま、

くの字になって己の脇腹に巻き付き、

抜くことができない。

右手は、田んぼの形をした腹筋に乗っている。



香は目を閉じて、ふと息を吐き出し、撩の鼓動を聞きながら、

その右の指をゆっくり静かに順に折っていく。

あれからようやく二ケタの日を重ね、

あれよあれよと言う間に、こんな関係になって

撩的に言う「もっこりナイト」も、

すでに両手では足りないくらいの回数に届いてしまった。



カウントしていた指を紅葉状にじんわりと広げ、

境目がハッキリしている腹部にひたりと当てなおす。

手の平に感じる凹凸にどきりとして、また頬が染まる。




毎度、こうして意識が戻った時、

この状況が、どうにもこうにも恥ずかしくて、

この状況に、未だもって慣れず信じられず、

この状況で、こうして抱き合っているのが、

本当に自分なんだろうかとまだ疑いたくなってしまう。




恥ずかしくても、照れくさくても、

これがずっと続いて欲しいと、

布団の中でもぞっと動き、より安定する頭の位置を見つけて

肩の力を抜いた。




昔、周囲で見聞きしていた、

好きな人が出来て、人によっては告白をしたり、

告白させるようにアプローチをしたりと、

その相手に思いを通じさせるということが、

相手の一番近い場所で、肌を合わせることを許されるという段階までには、

思い及んでいなかった子供時代。

小中学校の、誰が誰を好きだとか、付き合っているとかのレベルでは、

共に生きて、共に信頼し合い、共に生活をしていくことと比べたら、

次元が違うステージであったことを思い知らされる。



本当は、自分と出会いさえしなかたったら、

この男は、もっと自由に生き、いかなるものにも縛られぬままに、

自分の生き様を貫いていたことだろう。

巡り合わせとはいえ、

長年の多事多難を乗り越えて、今に至った流れは、

男の自由を奪い、身の危険をさらに高めたことは否定できず、

思わず、ごめんねと口に出そうになった。



頬の下のぬくもりを感じながら、

罪悪感と幸福感と陶酔感が入り乱れる。

謝罪と感謝を込めて、

そっと右手を動かし、

撩の腹部を優しくゆっくりとさすってみる。

目を閉じたままのためか、より指先から腹直筋の形が明瞭に伝わってきて、

これまでいやという程に見慣れてきたものだったのに、

こうして直にじっくり触れるのは初めてで、

その感触も自分にはないもので、好奇心に似た思いまでも加算され、

脇腹にも腕を伸ばしてじんわりと往復させた。




「それはお誘い?」



相方の声が突然頭の上から届く。

同時に、前腕につんと生暖かいものが当たった。

ぎょっとして、香は反射で腕を引っ込める。

しかし、それ以上の動きは、

がばりと覆い被さって来た熱い体で妨げられてしまった。

「わわっ!」

半身をぐいっと右に回転させ、香を両腕と両足でぎゅーっと閉めるつける撩。

「んんんー!く、くる…し」

「ボクちゃん、いつでも準備オッケーよぉーん!」

とまたタコちゅう顔で迫ってくる。



この撩が接近してくるまでの短い間、

香の頭の中で、珍しく冷静な部分が選択すべき未来を算出する。



本音は、このまま熱いキスを受け入れて、

朝からでも撩とまた身を繋げたいが、

それは決して表に出したくない性欲の部分。

今回は、強制的にシャットアウト。

そして、今日が不燃ゴミを出す日であり、今の時間を確認せねばならず、

現実の生活に戻るべきと、道筋を決定する。



「ぐはっ!」



顔面にめり込んだ、恥じらい1トンハンマーは、

計画通り、朝のまどろみに区切りをつけた。

撩はそのまま両腕を伸ばした状態で、

また仰向けにばふっとベッドと平行になる。



「ば、ばかっ!きょ、今日はゴミ捨てなきゃって、い、言ったでしょっ!」



顔を赤らめながら、ベッドサイドの時計を手に取る香。

時刻は、7時前。

まだゆとりがあるかと、ほっと肩を下ろす。

落ち着いて朝の準備をしたいので、

ベッドから出ることを決めるも、夕べ着ていた寝間着が見当たらない。

確か、夕べは一気に剥(む)かれてしまったので、

どこに飛ばされてしまったのかと、胸元を隠しながら上半身を動かすと、

足を向けている方の床にちらりと布地が見えてしまった。



「あ!あんなとこにっ!もーっ!」



まだひっくり返っている撩を無視して、

香は、掛け布団を体に巻き付けると、ずるずると引きずりながら、

やや急ぎ目で脱がされた衣類を回収。

布団に包まったまま、パジャマの上とショーツだけ纏うと、

掛け布団を抱えなおした。



「撩!このお布団持っていっちゃうからね!」



天井を向いているソレをなるべく目にいれないようにして、

香は、スリッパをつっかけて撩の部屋を後にした。

今日も、ハンマーでスタートの冴羽家。




「……ったく、早く起き過ぎなんだよぉ。

……せぇ〜っかくボキちゃんが、

優しぃ〜く起こしてやろうかと思ってたのによぉ。」




香にさすられていた腹部に己の手をあてて、

たったそれだけで誘雷されそうになったことを振り返る。



「無自覚こそ最強の武器、だな……。」



ハンマーを転がし、目を閉じる撩。

頭の下に指を組やると、

唇の端を上げて、ふっと軽く息を吐き出した。


***************************************************
(2)につづく。




というワケで、
この日の朝もハンマーでスタート。

十波ちゃんのところのTOP絵更新!

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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