03-02 Kaori's Mind

第3部 Turning Point

奥多摩の翌日


(2)Kaori’s Mind ****************************************************************1616文字くらい




「報告って?」

赤い顔をしたまま呟く。

撩の残した言葉の目的語がよく分からない。



部屋に残された香は、下腹部の鈍い痛みに少し顔を歪めた。

確かに、いつも通りの動きがスムーズにできそうにない。

とりあえず、ベッドの上で撩が渡してくれたパジャマとショーツを身につける。

ふと波打ったシーツの海に視線をやると、

とたんに思考は熱を分け合ったあの時間に引き込まれる。



(ここで撩と…。)



しわが複雑に寄っている乱れた白い布に、つと手をついた。

決して実現しえないと思っていた、諦めていた望み。

撩に女として抱かれてしまったその事実が、まだ現実味を帯びてこない。

いまだに夢の中ではないかと思ってしまう。



確かに痛いだけじゃなかった。

もしかしたら、体験こそしたことがなけれど、

赤ちゃんを産む時の痛みを連想させる程の、

激痛と圧迫と質量を感じた。

まるで新生児と同じサイズのものが、自分の体内に戻ろうとして

入り込もうとしているかのような、熱と体積。

だけど、それ以外に、

今まで味わったことのない、気持ちの良さがその痛みと均衡していた。

心地良く溺れていきそうな波にずっと揺られていた気がする。

心を許した相手を受け入れるという初めての経験の中で感じた

例え様のない感覚。

快楽とか官能的なとかいう単語では当てはまらない。

全くいやらしさとかを感じなくて、

想いを寄せていた男に抱かれることが、こうも幸せな気分を味わえることだとは、

全く思いもしなかった。

もっと、どろどろとした嫌な先入観を持っていたが、それは全く違うものだった。



「りょ……。」



同じ家の中にいるはずなのに、離れているこの距離が無性に淋しさを覚える。

撩の手も、腕も、唇も、体のどれもが温かく、熱く、こんなに体温が高いものかと、

肌を合わせることによって初めて知ったことが、あまりにも多過ぎた。



— もう、後戻りはできないぞ… —



あの時の撩の言葉を思い出す。

自分たちの関係が大きく変わった。

もう、今までのような、あやふやな輪郭ではない。



あの屋上で、ローマンを受け取った時に、ずっとそばに居続けると決心を固めた。

しかし、海原戦での自分の短い記憶喪失の後から、撩の気持ちが見えずに、

望んでいる未来や関係のことを考えることは、触れてはならないエリアと思っていたりもした。



しかし、今はもう違う。

この変化に、急に適応するのは難しいかもしれないが、

共に生きる道を選んだことを、決して後悔はしないと、

香は静かに決意を新たにした。



しばし、思考のループに入り込んでしまっていたが、

いつまでもこのままでいる訳にはいかない。

トイレとシャワーを済ませるために、パジャマのボタンをかけなおし、

タンクトップと飲みかけのボトルを持って、重い腰をゆっくりと動かした。



「うそ…。まともに歩けないじゃない…。」



香は、まだ体の中に何か挟まっているような感覚が残り、

生理痛の時と同じかそれ以上の不快感と違和感を覚えた。

その原因が、撩のアレだと思っただけで、また赤面する。



「と、とにかくゆっくりでもいいから、歩かなきゃ。」



家具や壁に手を添えて、体重を分散させながら、

スローモーションで階段を下りていった。

キッチンから食器の重なる音が聞こえ、撩がいることをドア越しに感じる。

とりあえず、キッチンのドアの前を通過して、先にトイレに寄る。

昨日の夜から行っていなかったから、貯水率ギリギリ一杯。

しかし、どうもいつもの用足しと感覚が違う。



(あーん、この違和感いつまで続くの?)



自分の部屋までなんとか辿り着くと、

今日着る服を選ぶ。

何となく、いつもの服を着るよりも、気持ちを新たにしたいと、

以前、絵梨子からもらった未使用のセットを奥から取り出した。

浴室に向かおうと、部屋を出る時、ふと振り返って、ベッドサイドの

写真に視線を送った。



「アニキ…。」

(あとで、ゆっくり話すね…。)



香は、まるで全てを知っているかのような槇村の顔を見て、

頬を赤くしながら、客間を出た。


*******************************************
(3)につづく。




かおりん、よろよろです。
撩ちゃんのナニのサイズ、
原作では、ふにゃもっこでも尿瓶に入らなかったり、
モグラたたきと同列扱いだったり、
瓶ビールで代用したりと、その表現は様々でしたが。
あらためて、10代の頃よく平気で読んで楽しんでいたよなぁ〜と、
ある意味、嫌悪感を持たせるような厭らしさでなかったことが、
不思議で仕様がないです。
これも職人北条パワーのなせる技?
個人的には、ちょろり。さんの「茶筒」の例えが大好物で〜す。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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