26-09 30kg

第26部 Mountain Villa

奥多摩湖畔から14日目の朝    


(9) 30kg ************************************************************** 2053文字くらい



「寝てんのか?」

「え?」

ぱちっと大きな目が開いた。



香は暖炉に向かって、

クッションに体の側面を預けたまま体育座りをしている。

その膝の上に腕を組み、頬を乗せて頭を預けていた。

はっと顔を上げると、もう撩がテーブルにコーヒーを乗せて、

また隣りへ座っていた。

2人が手を伸ばしても届かない微妙な距離。



「ううん!だ、大丈夫!眠たくないからっ!こ、コーヒーありがと、い、頂くわね。」

「探すのメンドーだったから、何にも入ってないぜ。」

両手で持ったコーヒー、器からも手の平に熱が伝わる。

「い、いいよ、こ、これで、じゅ、十分っ!」

かみまくる香は、

撩と同時にカップに口を付ける。

やっかいなもので、撩がしばし離れている間は、

寝不足と疲労のためにまた眠気が再来し、

相方が傍に戻ってきたとたんに、神経が興奮状態となる。



この状況に落ち着かない面持ちを知られたくないと、

香に、おしゃべりモードのスイッチが入った。

「ねぇ、あのコ、一体何キロあんの?」

「あ?」

「あの人形よ、子供にしては重たすぎない?」

ソファーの上で、いつのまにかブランケットをかぶせられているダミー人形を

ちらりと見やる。

「うんにゃ、アベレージのはずだぜ。」

「だって、きっとお米袋よりも重たいはずよ。」

いつもスーパーでまとめ買いする時は、撩が車を出してくれる時は10キロを。

自力の往復の時は5キロをと慣れた重さの食材を比較対象に出す。

「何キロだと思う?」

コーヒーをくいっと飲みながら、そう問う撩。

香は、感じた自分との体重差から背負った感覚を思い出そうとする。

「んー、に、にじゅう、…5くらい?」

「はずれ。」

「は?もしかして、もっと重たいの?」

自分の体重の半分かそれより重いとは思っていたが、

即不正解を言い渡された。

「30、ま、小学生のガキだと4、5年生あたりみたいだな。」

くいっと一気にコーヒーを飲み干す。

「さ、さんじゅう…?」

「そ。」

撩はローテーブルに左肘をひっかけ頬杖をついた。

「おまぁさ、あとでキッチンに行ってみ。」

唖然としていた香は、キッチンという言葉にまたきょとんとする。

「え?」

「ばぁーさんが製粉した小麦粉30キロが1袋(たい)あっから、それが持ち上がるか試してみ。」

「は?ど、どーして?」

「んー、やれば分かるって。」



撩は飲み終わったカップをコトンと丈の低い木製テーブルに置き、

すっと立ち上がると、また薪を二三放り込んで追加した。

細かな火の粉が舞い、パチンパチンと中の材が弾ける。

「同じ重さのモノを?」

かがんでトングを使い位置を塩梅良く整えると、

火の勢いが増して撩の顔がより明るく照らされた。

「そ、ちょっとした心理実験、かな。」

香は、撩のローブに包まれた広い背中を見つめたまま、

会話がよく飲み込めないと、撩の言葉を繰り返す。

「心理実験?」

「ま、脳をいかにダマして、眠っている筋力を使わせるか、だな。」

「よく、分かんない。……でも、子供ってあんなに重たいなんて思わなかった。」

その間に、香もコーヒーを飲み終わる。

「あれじゃ、大人を背負って長時間歩くなんて無理だわ。」

尾根を登りながら、自分にはあれが限界だと悟る香。

そう言いながら、香もカップをテーブルに戻した。

「そーゆー時は、その場を動かずに助けを待つ方が賢い。」

「動こうにも動けないわよ。」

揺らめく炎に照らされている撩が、にやっとしながら香の方に振り向く。

「いや、おまぁだったら、大人の一人や二人くらい背負えるかもしんねぇーな。」

からかい口調で、くくっと肩を揺らす。



目が合った香は、その瞳の奥にあるものを、

心の深いところで感じ取ってしまったような気がした。

つま先から脳天までぴりっと何かが走り、じわりと体温が上がる。

からかい口調には、こっちも本音を誤摩化すモードで返すのが常。

目を合わさなければ、

¨どうせあたしは色気のない怪力オンナですよーだっ¨と

言い返す予定だった。



しかし、広葉樹の薪が燃える火の熱にほだされたのか、

それが映り込んでいる相方の瞳孔に翻弄されてしまったのか、

違う台詞が出てきてしまった。



「これじゃ、……こんな体力じゃ、

……撩に万が一何かがあって、動けなくなった時、

一緒に、逃げらんない、じゃない。」



目を合わせたまま、頬を染め、下がり気味の細い眉の表情は、

こんな調子では、何かあった時、撩を守ることが出来ないと、

自分のふがいなさを醸し出していた。

すぐに伏せ目になり、顔の上半分が前髪の陰になる。




眉を上げる撩。

はぁと、今日何度目になるか分からない深い溜め息。

右手に持っていた火ばさみをポイと積み上げられている薪に投げやり、

大股で香に近付く。

上背の半分に斜光があたり、長い影が動いた。

足音で接近の気配に気付いた香は、はっと顔をあげる。

撩の動きは早かった。

捕獲された。

そう気付いた時は、撩に強く抱き込まれてしまい、

クッションを枕代わりにしたのは相方で、

香は撩の上に重なる様に密着し、2人でラグの上で転がっていた。


*******************************
(10)につづく。






本当は、35ぐらいにしようかと思ったんですけどね…。
中1の娘、ついに私の高校生の時の体重と同じになりやがった。
で、先日試しに背負って、
家の階段を少し登って感覚をチェック。
1往復だったらなんとか移動可。
しかし下りはやばし。
もちろん意識がある状態なので、背中の乗り降りは自力で出来、
楽なもんでしたが、この状態で近隣の低山を登れって言われたら
やっぱりダメですわ。
以前、我が家の自主防災訓練も兼ねて
旦那(176cm)を背負って階段を登ろうとしたのですが、
足が一歩も上がりませんでした…。
背骨が潰れるかというくらいの負荷に、
結論「だめだこりゃ」と…。
というワケで、
我が家は防災を意識する9/1、1/17、3/11あたりの
日付けでは、非常食チェックと共に、
でかくなった子どものおんぶも訓練?とかいいながら、
家族のスキンシップチャンスです。
小さい頃はイヤってほど抱っこしていましたが、
年があがってくるとおのずと
ハグも抱っこもおんぶも激減するんですよね〜。
この訓練が出来るのも期間限定かな〜。

【台風18号】
該当地域の皆様、どうかお怪我などなさらないよう、
無事この暴風雨等を超えられます様お祈り申し上げます!
[2013.09.16.07:22]

スポンサーサイト
プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
CH専用Twitter
 


拍手1000パチ記念につけちゃいました。



かなり便利なサーチツール

登録サイト最新情報はこちらをチェック!


試運転中…

カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
現在の閲覧者数: