03-03 Ryo's Morning

第3部 Turning Point

奥多摩の翌日


(3)Ryo’s Morning  ************************************************************1647文字くらい




時間は少し遡る。



香が目を覚ます少し前の撩は、彼女の眠りの深さを確認した後、

ゆっくり身を起こし、トランクスだけはいて部屋をそっと離れた。

キッチンに入ると、冷蔵庫を開け、ペットボトルを手にする。

中身はミネラルオォーター。

水割用に常備してある。



撩はそのまま静かなキッチンで、「腹案」について考えていた。

一緒に生きることを前提に、これから共に過ごすのなら、

何があっても生き残れるように、生き延びるように、

身につけておくべきことがいくつもある。



(槇村…、俺は香を失いたくない…。

香の手が汚れるようなことは、絶対にさせないから…、

だから…これから俺がしようとすることを、お前は許してくれるか…。)



しばし、深い想念の中にいたが、水分補給を終えると、

香が目覚めた時のために未開封を1本持って行くことにした。

そして、香が起きないうちに、またベッドに戻り、

細く柔らかい裸体を抱き直してその感触に浸っていた。



しばらくして香が目覚めた時、撩もそれにすぐ気付いた。

と同時に、胸板を何かがくすぐる感覚に驚いた。

(な、なんだぁ?)

香の長い睫毛が、自分の胸板を筆のようなタッチで触れているのだ。

まばたきの度に、ぞくぞくぞくと刺激が登ってくる。

(こ、これが、バタフライ・キスかよっ。)

話しには聞いていたが、自分が体験するのは初めて。

動揺が走る。

そもそも、今まで致した後に、その相手と一緒に寝直すなんてしたことがない。

一服して、金を置いて、さっさとその場を去るのが定番。



過去とは違いすぎるシチュエーション。

余韻を味わう至福感に浸っているところに、

マスカラなんかつけなくても、

1センチ以上はある香の長い睫毛が肌をくすぐる感覚。

それが、ここまで自分に衝撃を与えるとは、らしくもなく焦る撩。



そうとも知らずに、まだパチパチとまばたきを繰り返す香。

(だぁああ〜、や、やばいってっ…、それはぁああっ。)

すると急に香の心拍数が上がり、全身がほんのり赤くなる。

(お?状況に気付いたかぁ?)

まだ、睫毛が胸をくすぐっている。

(いかーん、また火がつきそうだ…。)

撩は、まだこの感触を楽しんでいたい気持ちと、忍耐との葛藤の中で、

声をかける決心をした。



「……香ちゃん、くすぐったい。」

と、2度目の目覚めを迎えた訳だが、

混乱した香にハンマーでも食らうかと覚悟していた予想は裏切られた。

意外な程大人しく素直な反応に、やや面食らったが、

それだけ受けた創痍(そうい)が大きかったということだろう。



先に自室を出た撩は、香の反応を思い返しながら、

今後、どう動くことがベストかを思案する。



— 痛いだけじゃ、なかったから… —



この一言に正直安堵した。

初めてがトラウマにでもなってしまったら、その後に及ぼす影響は決して小さくない。

ヘタなことをしでかしたら、もう次はないかもしれないという緊張感もあった。

どうやらその心配はないようだが、いずれにしても、インターバルが必要だ。

(……しばらくは、傷が癒えるまで次はオアズケかなぁ。)

時と場所を選ばずして組み敷きたくなる衝動を抑えねばと、

相棒に声をかけた。

「おい、大人しくしてろよ。」



洗面所に来た撩は、夕べのシャツをランドリーバスケットに放った。

シャワーを浴びようか迷ったが、香の残り香を流してしまうのがなんとなく惜しくて、

顔だけ洗うことにした。

いつも通り、シェービングをし、水でばしゃばしゃと顔の皮脂を落とす。

持ってきた新しい赤Tシャツを着て、

顔を拭いたタオルをそのまま首にかけ、口を漱(すす)いだ。



ふと、視界の端に見えるお揃いの歯ブラシに意識が向く。

随分前からこうして普通に置いてあるが、

今日に限って、この2本の歯ブラシが、まるで

恋人同士か、夫婦かの、

長く連れ添った仲を強く象徴しているように見えるのはどうしたことか。



「ふっ。」



撩は、おのずと顔が弛み、香の歯ブラシをピンとはじいた。

「さて、遅い朝飯を作りますかねー。」

キッチンに向かう撩は、頭をかきながら、わざとガニ股で足を進めた。


***************************
(4)につづく。





いやね、本当は香ちゃんの睫毛が、
撩のびーちくをくすぐる表現にしたかったんですが、
原作では、殆ど描かれていなかった部位なので、
とりあえずパスなしコーナーでは自粛しました〜(爆)。
さて、メシだ、メシ。
ところで、原作ではあの間取りでまともに冷蔵庫が出てきたのは、
野上唯香ちゃんの回からだったような。
「から」というよりは、そこしかない?
こりゃ、見直してみよ〜。


【追記】
サイトオープンから明日で2ヶ月。
なのに、まだ奥多摩翌日が終わってないってどーゆーことぉ?
今後も、の〜んびりだ〜らだ〜らと続きます。
お立ち寄り頂いている全ての皆様に
改めて感謝です。

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きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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