28-04 Parking Area

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜    


(4)Parking Area ************************************************** 2816文字くらい



「道がつながってたんだ…。」



最初、山荘に到着した時、どうしてここに車が侵入できるのか

分からなかった香は、

まるで獣道のような、

見た目では分からないくらいの細い未舗装の通路を抜けて、

林道に入ったことで合点した。



車体に当たる枝葉で

車が傷付きやしないかと気にはなったが、

過去に大きく破損しても、いつの間にやら修繕されていることを思えば、

小さな引っ掻き傷で大騒ぎすることもないかと、

香は、またシートに座り直した。



「まぁ、アジトっつーのは、簡単には入れないっつーのが基本だしな。」

「そうね…。」

間もなく管理人が戻り、

また周囲の森にトラップや侵入者探知装置にスイッチが入れられ、

撩がオフにした監視カメラも起動させられるだろう。

そうこうしているうちに、

あっという間に駅前周辺を通過し、そのまま高速に入る。



「ねぇ、撩…、確かこの先しばらく、パーキングしかないと思うんだけど、

たぶんあまりメニューとか選べないかもよ。」

行きの道のりで各所のPAとSAの場所をチラ見していた香は、

ちゃんと食べるとしたら、

サービスエリアに行くべきかと道を思い返す。

「あー、確かにあそこも立ち食い蕎麦しかなかったしな…。」

途中で寄った日光口のパーキングで、風にはためいていたノボリを思い出す。

2人ともかなり空腹で、すぐにでも夕食にしたい気分は変わらず、

これならば、駅前の店のどっかに入れば良かったかと、

若干後悔する。



「だめだ、腹減った。ソバでもいいから食うぞ。」

高速に乗ってほどなく、上りのパーキングエリアに滑り込む。

正直、ご飯モノでがっつり食べたいところではあるが、

とにかく今、何か食べておかねばと、

クーパーを降りた2人は、まっすぐ飲食コーナーへ向かった。



「いくつか種類があるみたいね。」

店内に入り、壁を見上げてメニューを確認する香。

さっきから、胃と小腸がくぅくぅと可愛い音を小さく鳴らしている。

基本立ち食いではあるが、小さなテーブルもあり、

そこを陣取ることに。



「おばちゃん、これとこれとこれ3つ頼むわ。」

かき揚げと舞茸の天ぷらと湯葉蕎麦の3種をレジカウンターのメニューから指す。

「はいはい、食券買って出してね。」

「撩っ、あんた1人で3杯食べるの?」

「悪いか。」

「んー、まぁ普通、か…。」

このやりとりにカウンターの向こうの年配女性がきょとんとする。

「あたしは、かき揚げをお願いします。」

普段はカロリーが気になる揚げ物であるが、

油脂のエネルギーと旨味を欲して即選択。

「毎度!折角の紅葉なのに、あいにくの雨だったわねー。」

「え?」

「ほら、朝からずっと降ってたじゃない?遠くから見にきたんじゃないの?

今の季節は滅多に崩れないのに、なんだか申し訳ないわぁー。」



奥の調理担当に半券を渡して指示を出し、

白い三角巾を揺らしながら、眉をさげて話しかける女性に、

香は思わずそんなことはないと返そうとする。



「あ、お、おばちゃん!だ、大丈夫だったわよ。昨日十分紅葉見れましたし、

今日は、屋内ばっかりだったから、雨にあたることもなかったですよ。」

胸の前で、小刻みに手を振って否定のジェスチャーをする香。

「あらそうかい。でも寒かったでしょ?」

「い、いえ、暖炉があるところでしたから…。」

と口からぽろっとあの状況が出たところで、

また頭の中がピンク色に塗られる。



「じゃ、じゃあ、向こうで座ってますねっ。」

ぎくしゃく感を混じえて赤面しつつテーブルにつく。

先に座っていた撩は、にやにやしながら頬杖をついている。

「どったの?かおりしゃん。」

「べっ、別に!」

と言いながらも、赤らんだ頬に、パタパタと手を小ウチワ代わりに振っている。



テーブルが小さいので、妙に撩との距離も近くて

こめかみと頬骨に添えられている長い指が、

薄く弧を描いているその唇が、

緩いカーブを持つ黒髪の生え際が、

普段よりも細かく見えてしまい、

思わず、肩をきゅっと狭めて視線を下げてしまった。

もちろん香の皮膚は愛らしく赤らんだまま。



「あー、この時間で食っちまうと、また夜中に腹減るよなぁ〜。」

今度は、両手で頬杖をつく撩。

それはそうだと、香もはっと顔を上げて、すぐに提案を出す。

「ねぇ、帰ってからちゃんと作るわよ。あ!だけど買い物行かなきゃ!」

「あ?」

「だって、昨日の午後にスーパーに行こうと思ってたら、こっちに来ちゃったんだもん。」

香は顎に親指と人差し指を添えながら、視線が斜め上になる。

頭の中で冷蔵庫の中身をサーチ中。



「やっぱり寄らなきゃダメだわ。確か、メモ…。」

無意識に腰のポケットに手が滑ったが、着ている服が違う。

「あ、あれ?」

「どうした?」

「あ、あたし買い物メモどこやったっけ?」

「は?」

顎に添えていた指が今度は鼻と唇の間に移動。

考えごとをする時に、

左手の人差し指の第二関節がそこに触れるのが香のクセの一つ。

うーんと小さく唸っていたら、ふいに目がパチッと開いた。

「あっ!そうよ!昨日履いていたジーパン!」

「あ?」

「ちょ、ちょっと撩!あれ山荘に置いて来ちゃった???」



香が指しているのは、今朝方シャワーを終えた後に脱いだ服を

たたんでソファーに置いていたのだが、

それからどうなったかを確認していなかった。

「うんにゃ、後ろに積んであるぜ。」

両手に顎と頬を預けたまま撩が答える。

「よ、よかった…、向こうに忘れて来たかと思ったわ…。」

肩がふうと落ちて脱力する香。

帰ったらすぐにアレも洗濯しなければと、

帰宅後のすべきリストが1つ2つと積み重なって行く。



「じゃあ、どっか寄って行こ。明日の朝の分もないし。」

「りょーかい。」

4日前に買い出しに出て以来、生鮮食品を仕入れていないのだ。

とりあえず必要最低限のものだけ買って帰れば、

明日、明後日にでも再出動すればいいかと、

すでに頭の中は主婦モードに。

すーと、赤みが引いていく香の表情を見て、

撩はくくっと小さく笑う。



「な、なによ!」

「うんにゃ、なんでもねーよ。」

このころころ変わる表情に、どこまで惚れてんだかと、

見惚れていたことを誤摩化すべく、

両手で頬杖をついていた手の平をそのまま顔にぴったりとつけて、

顔面の表皮をびよーんと左右横延ばしにしてみた。

「撩ちゃん、帰ったらお肉食べたーい。」

どこの百面相だと思うほどに、別顔になった相方にぎょっとするも、

香は、撩の顔を視界に入れないように、腕組みをしてぷいっと窓の方を向く。

「わ、分かったわよ!

帰ったら昨日出来なかったことが色々溜まってんだから、

邪魔しないでよね!」

「あーい。」



そこに店の方から声がかかった。

「お客さーん!そば4つ上がりましたよー!」

「あ!はーい!」

香は、注文した食事を受け取りにガタリと席を立った。

「撩の分も持ってくるから。」

「あいよ。」

撩は、自分が選んだ服を纏った香の後ろ姿を見ながら、

片方の頬杖に変えて、ふっと薄く笑った。


******************************
(5)につづく。






撩が顔を伸ばすシーンは、
第330話暗殺決行!!完全版32巻の表紙をご参照に〜。

ここのそば屋が91年にあったかどうかは未調査…。
たしか96年か97年にちょろっと寄ったときは
あった記憶が…。
でも急ぎの移動中だったので、蕎麦食えなかったのだ…。
蕎麦好きの仲間が、意外と上手いぜと、教えてくれたのを参考に
実在のお店を出してみましたが、
レイアウト等は妄想です。
こんなことなら、ちゃんと見とけばよかった…。

【10/13にコメントを下さった方へ】
メッセージ本当にありがとうございます!
&ごめんなさい!近日中に返信をさせて頂きますっ!
2013.10.05.23:32→お送り致しました!10.22.02:30

【訂正しました!】
Sさま、ご連絡感謝です。
シをジに変えましたっ!
ご一報ありがとうございました!
2013.10.22.02:34

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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