28-08 Turnout

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜    


(8)Turnout ********************************************************** 3004文字くらい



「りょ…、撩?ど、どうしたの?」



急停車に驚き、

一体何があったのかと状況の解析がついていかないままに、

カシャンとシートベルトが外される音が聞こえた。

「え?」

音の発信源に目を向けたとたん、

髪の毛を軽く掴まれ、左手首を固定され、口を丸ごと塞がれてしまう。

「んんーーっ!」

クーパーの中での口付けは何度目だろうと、

まだそんなに回数を重ねていないことをぼんやりと思いながら、

撩の動きに、

なぜ、どうして、このタイミングで?と疑問符が頭の中で溢れかえる。



激しい唇と舌の動きに気を取られていたら、

掴まれていた右側頭部の髪の毛から撩の指がするすると落ちて、

肩経由で脇腹を降り、香のシートベルトをカチャンと外した。

「!!!」

その手が背中に回ったかと思いきや、

掴まれていた手首から撩の右手がふわりと浮き、

リクライニングレバーをくいっと引いた。

とたんにガクンとシートが後ろに倒れてしまう。

「んんっ!」

ここまでわずか十数秒。



暗い車内で、

ギアを除けて重なった二人は松葉状のスタイルになる。

リアウィンドウから時折ライトが入って通過していった。

撩は、ぎゅうと香を抱きしめたまま、

角度をつけて深く荒いキスを繰り返す。

「ふぅ…、ぅんん。」

撩の両腕を握りしめる香。

なんでこんな事態になっているのか全く分からない。

きっと、怒っている。

そう思っていたのに、この状態はどう理解したらいいのかと、

苦しさと気持ちよさと混乱の入り交じる感覚の中、

時折、そばを通過する大型車のエンジン音が耳に届いた。



暴風雨のような長い長い接吻に、

ついには酸欠気味になり意識がぼやけ、指先が震えてくる。

舌は甘噛みされたまま強く引き込まれ、

そのまま飲み込まれてしまいそうな吸引力。

溢れる唾液に嚥下が追いつかず、唇の端からつと漏れ出る。



一体いつまで続くのかと、不安が込み上がってきたところで、

ふいに撩の動きが静かに止まり、鼻から細く息が吐き出された。

覆い被さっている肩の力がふうと落ちていくのを感じた香。

撩は、区切りにライトキスへ切り替え、

舌先で香の唇の全周を筆のように優しく撫で上げると、

下唇にちゅうと吸い付き、

ゆっくりと引っ張り上げちゅっぽんと離れていった。



「っはぁ…。」



深く息を吸い込む香を、

撩はさらにぐいっと抱き込む。

撩の腕をジャケット越しに握り込んでいた香の指も重ねて力が入る。

「りょ…、く、くるし…。」

薄く目を開けるが、

車内も車外も暗くて目にちゃんと情報が入ってこない。

涙目でぼやける向こうにうっすらと街灯の光源だけが確認できた。



「……こんまんま、運転して帰れねぇーかな…。」

「……はぁ?」

この男は一体何を言っているのだと、香の眉に浅くシワがよる。

顔の半分が撩の胸に押し付けられて、上を向けない。

「お、怒ってるんじゃ、ないの?」

「あ?」

「と、トラップ、除けられなかったから、怒ってるんじゃないの?」

小さな声で再度聞いてみる。

すると、また髪の毛の中にふっと息が当たるのを感じた。

くいっと抱き直される。

「そんなんじゃねぇーよ。」

途切れていた高速を走る光りがまた流量をあげ、

車内に不規則な照明を施す。



運転そのものは嫌いではない。

むしろ機械モノを動かすのは好物な方。

しかし、今はそれを二の次にしたくなる。

きっと未来の車だったら、どこぞの映画で描かれていたように、

運転手のコントロールなしで、目的地まで運んでくれるんだろうなと、

その移動の間に、べったりできれば申し分なしと、

勝手な妄想を巡らす撩。

差し当たってこの世は1991年現代。

陳腐なエロビデオのようなことをするワケにはいかないかと、

困惑している香を、またくいっと抱き締める。



実は、地獄絵図をよりリアルに思い描いてしまったのは撩の方で、

その像に香の言葉が重なった。



— どんな目にあっても、生き抜くから… —



そんな状況には、決してもっていかせない。

言葉が出るより先に、体が動いてしまった。



「……じゃ、…な、なぜ?」

「んー?」

この流れが飲み込めない香は、

撩の腕の中で困惑しながら問うてみる。

「ちゅーしたくなっちゃったからっ!」

重ねて力をこめてぐいっと抱き寄せた。

軽い口ぶりではあるが、ウソではない。

「ぅぶっ!」

鼻と口が胸板に被る布地で塞がれる。

「さっすがに、こっこじゃぁー狭いよなぁ〜!」

「???」

おちゃらけモードでの唐突な車内空間の話しは、

ますます理解に苦しむ香。

ふっと周囲の圧が緩む。

目をパチッと開けたら、顔と頭を大きな手でくしゃりと包まれた。

ライトにちゅぱっと唇を吸われる。

「んっ。」

「続きは帰ってからすっか!」

「はぁ???」



このオトコの言うキスの¨続き¨は、アノことを指すということが、

一線を超えてからの2週間で

十分に分からされたつもりである。

しかし、つい3、4時間前まで濃密な触れ合いをしたばかリだというのに、

今晩もまた¨もっこりタイム¨を想定しているのかと、

見開いた目をパチパチとしぱたかせた。

夜の瞳孔は、

お互い面積を広げ虹彩部分が少なくなっている。

香は、吸い込まれそうな漆黒の瞳を見つめながら、

先の撩の言葉を分析する。



続きのもっこりタイムは帰ってから。
 ↓       
ここでは狭い。
 ↓
つまりはクーパーの車内でほにゃららをしようとこのオトコは考えていたらしい。



香は頬を赤くしたまま眉間にシワを寄せて目を閉じた。

「撩…、あんた、反省会って言ってたくせに、

なんでこぉーなるのよ!」

「んー?だから、したかったからっ♡」

ゴキッと音がしたのは、

香の左腕が振りかぶって、撩の後頭部に1トンハンマーがめり込んだ効果音。

「し、信じらんないっ!そんなんでいちいち車止められたら、帰れないじゃない!」

「ってぇ〜。」

左腕を支えにしてわずかに上体を起し、右手で後ろ頭をさする撩。

「も、もう!買い物にも間に合わなくなっちゃうわよ!」

撩の両肩をぐいっと押して、起き上がろうとする香。

「んじゃ、ワンボックスでも転がす時のお楽しみっちゅーことで。」

ベシッと2発目のミニハンマーが、撩の右側頭部にヒット。

「ば、ばかっ!!!なんであんたの頭の中ってそうなのよっ!!!」

可愛い恥じらいと小さな怒りのこもった衝撃を受けながら、

撩は、わざとよろよろしながら、運転席に寄りかかる。

相方の重さから解放された香は、

撩のキスで融かされそうになった頭で、

なんとか起き上がり、シートとベルトを元に戻した。



「す、スーパー8時までなんだから!買えなくなっちゃうわよ!」

今の時間は、5時半過ぎ。

冗談抜きで食料品が買えなくなってしまう。

「いででで…。」

頭をさすりながら、座席に座り直す撩。

「お肉買うんでしょ!もうきっとギリギリよ!」

「はいはい、行きますか…。」

腕を組んでぷんぷんと愛らしく怒る助手席の香に、

くすりと薄く笑うと、撩はエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。

移動している間も触れておきたいと、

右へのウィンカーを出し、本線に合流するとおもむろに、

ギアから手を浮かせて左に伸ばす。

「わわわ!」

頭を引き寄せられた香は、撩の上腕にばふっとぶつかった。



「くっついとけ。」



視線だけを斜め上に移動させて、その横顔を覗き見る香。

前方を静かに見据えるノーマルの表情にドキンと脈が振れた。

スピードが加速される。

ギアがトップに変わり、操作する腕の動きが直に香の頬に伝わってくる。



「ま、まったく…、一体何考えてんだか…。」



まだキスの余韻がたっぷり残っている中で、

香は目を閉じて、

頭をごそっと動かし居心地のいい場所を決める。



「急ぐぞ…。」

「うん…。」

滑らかに追い抜きを繰り返しながら、

クーパーは、

新宿に向かって夜の東北自動車道を南下して行った。



******************************
(9)につづく。






このところ毎週1回某フィールドに通っておるのですが、
途中でいつも深緑のクーパーが停まっています。
この中で186センチ、170センチ強?、
やっぱりシートに収まっていても狭いだろ…と。

【お知らせ】
大変遅くなりましたが、
9万ヒット御礼企画を本日の1818でアップしております。
でも、あまり期待はしないでね…。

【Nさんいつもありがとう!】
「ぞ」を「そ」に修正しました!
発見大感謝!
お礼のブツ本日投函です!
2013.10.27.22:00

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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試運転中…

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