28-10 Secret Savings

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方


(10)Secret Savings ********************************************* 2631文字くらい



「ちょ!ちょっと!今のどーゆーことよ!」



預けていた右半身を完全に浮かし離して、

撩の表情を伺う。

運転中なのに、目が上向きで泳いでいる。



「あー…、つまりだな…、ボクちゃんのへそくり?」



なぜそこで語尾に疑問符が付くの?と訝しがる香は、

おぼろげに感じていた別出納の存在を確信する。

真剣な面持ちで、撩の方を見つめる。



「……そこから、銃や弾丸を買ってたってワケね。」



ぴくんと肩が動いた撩。

もう隠す必要はないかと、一部情報公開することを心に決めた。

しかし、撩が説明を始める前に香が話し始める。



「だいたいさー、

これまでこの車けっこー大破したり、痛んだりしていたけど、

半分くらいは、あたしが知らない間にちゃかり直されてて、

支払いの記録がなかったのよねー。

あ、海坊主さんのランクル壊したときは、しっかり請求されたけどさー。

でさ、いつのまにかメタルジャケットも補充されてるし、

銃器もちまちまと増えてるし、

どっから補填してんのか、ずーっと気になってたんだけど。」

香は、そう言いながら、

どさっと、助手席の背もたれに深く座り直した。



「ナゾが解けたわ…。

今まで聞いても、あんたはぐらかせてばっかりだったしね。」

自分の両腕を組んでくすっと細く笑った。

教授が言っていた、撩の方の口座と言っていたのは、

恐らくこのことだろうと、

あえてその聞き知った情報は伏せておくことにする。



「でも、嬉しい。

だって、撩があたしに服なんてプレゼントしたことなかったじゃない?」



組んでいた腕をゆるくほどきながら、前腕に手の平を滑らせて、

膝の上で指を組み直す。

出所の詳細は不明であれど、この事実は変わらない。

それがたまらなく嬉しく舞い上がりたい気分でもあるが、

静かに気持ちを押さえつつ、短く感謝の言葉を言う。



「撩…、あ、ありがと、ね。」



撩の鼻腔から、ふっと軽く空気が動く。

「とりあえず、今は値段の追求はしないでおいたげる。」

「そりゃどーも。」

撩の台詞と共に伸びてきた左腕にまた引き寄せられた。

ばふっと、同じ位置に戻されて、

布越しに腕と肩の温かさを頬から感じ取る。



体重を預け直しながら、さきの¨へそくり¨発言については、

またいずれ説明してもらおうかなと、

目を閉じ頭の位置を微調整する。

そこで、香は、はっとあることを思い出した。

閉じた瞳が、またパチンと開く。

慌てて身を起すと、撩の腕を掴んで、

顔を赤くしながらとあることを確認しようとする。



「ね、ねえ!撩っ!あ、あ、あの、あああたしが着てた、ししし下着!

あ、あれっ、ど、どうしちゃった?」

「は?」

「あの山荘で、バスルームに用意されてた新品の黒の!」



香は、撩と暖炉の前でカラメルソースのような熱くて甘い時間を過ごしていた時、

ショーツとキャミソールをつけていたのに、

目が覚めた時は、それがなかった。

あの場所を去る間際、ラグの上には何もなかったことを

2度ちゃんと確認したはず。

ならば、一体どこにあるというのか。

あんな情事の痕跡が残るインナーを言わば、

ヨソ様の住まいに置き忘れてしまったのかと、

一気に恥ずかしが込み上がる。

あれも、一応撩から贈られた上下セット。

急に、思い出しクーパーの中にある可能性を信じて、

顔を真っ赤にしながら撩に尋ねた。




「あー、アレどこやったっけか?」

撩は、香が握っている左腕をハンドルに乗せ、

斜め上を見ながら、

右手の人差し指で、ぽりぽりと頬骨あたりをかいてみる。

本気で思い出せない。

「まっ、まさか、山荘のどっかに放りっぱなし???」

「いんや、それはない。…が、あり?ホントどこやっちゃったっけか?」



撩は、確かに香の使用済みのシルクの上下があらぬところで、

管理人のばぁさまに見つかったら、それこそバツがわりぃと、

後で、教授にどんなことを言われるか分かったもんじゃねぇとか思いながら、

香といちゃついた時間を振り返る。

とたんに、元気になる下半身。

にょっと目の前にタケノコのごとく伸びてきた円錐形の布に、

香はぎょぎょっと表情をひきつらせ、

反射で左コブシがアッパーカットの弧を描く。

「ぐあっ!」

「ば、ばかっ!運転中にナニ考えてんのよ!」

「ナニってナニですが…。」

顎をさすりながら、前方を見直す撩。

その台詞にさらに1トンハンマーが側頭部にヒットする。

「でっ!」

「も、もう!本当にどこにあるのよっ!」

撩から身を離す香を視界の端にとらえながら、

ぼんやりと、バスローブと黒のキャミソールとショーツをまとった香を連想する。

「あっ。」

頭部にめり込んでいたミニハンマーがぽろっと落ちる。

「お、思い出した?」

「……ポケット。」

「え?」

「たぶん、俺が着ていたローブのポケットだ…。」

「はぁ?」



山荘の様子を思い出す香。

確か、撩はあの場所を出る前に、

白いバスローブを洗い終え、乾燥機に突っ込んでいた。

「わりぃわりぃ、ついクセでアレもポケットに詰めちゃた〜。」

ほぼ無意識での行動、もはや疾病(しっぺい)の類と言ってもいい。

香は、撩の証言を元に状況を解析する。

つまりは、ローブと一緒にフツーに洗われてしまい、乾燥機までかけられて、

山荘にしっかり忘れてきてしまったということに。



「……撩、あれ、シルク、よね。」

香はこめかみを押さえる。

「た、たぶんねぇ〜。」

「乾燥機に入れるもんじゃないの知ってるわよね。下着コレクターのあんたなら。」

「そ、そぉーだっけかぁ?」

「し、しかも、か、乾燥終わったら、管理人の人が、か、回収するんでしょ?」



想像するだけでもう羞恥心の目盛りがキュイーンと伸びてくる。

「は、はずかしいじゃないっ!」

とりあえずは、使用済みそのまんまのものが、

そのへんに転がっている事態はさけられたものの、

見知らぬ老婆が、ガウンのポケットから、ブツをつまみあげて、

あらま、とつぶやくシーンが勝手に想像される。



「もーっ!なんであんたは、いっつもいっつも下着をポケットに突っ込むのよっ!」

「い、いやこれは、なんちゅーか、もうクセっちゅーか、無自覚っちゅーか。」

スコーンと当たったのは、再びミニハンマー。

「ぐっ!」

「運転中なんで、控えめにしておいたから感謝しなさい。」

「ここで、さ、3連発2セットはキツいぜ…。」

腕組みをして頬を染めたままにお怒りモードの香。

「自業自得でしょうが!」

そう吐き出すと、はぁとシートにもたれかかる。



こんなやりとりを続けながらも、

撩は制限速度を3割ほど超えて、

ぐいぐいと都心に向かって加速して行った。


******************************
(10)につづく。





ここで、撩のヘソクリについて妄想。

個人的には、撩が自由にできる資金は
総額で、億単位は持ってんじゃないかと…。
ただし、ある時期から、
殺しで稼いだ分と、その他仕事の収入は
別管理してそうな気もするんですよ〜。

だって、たぶん原作後半を思い返せば、
撩が、ヒトを殺して得た収入で
カオリンのために何か買うとか、
万が一の時のためのカオリン基金とかに回すのは、
あんまし考えられんでからに…。
やつも、意外とそのあたりデリケートに考えてんじゃないかと。
(あ、ウチでは撩がもしものことがあった場合に備えて、
教授管理の元、カオリン基金があることにしております)

うーん、銃機の補充って言っても、
アパート所蔵のものだったらこれもカオリン使うだろうから、
これもなんか抵抗感じるなぁ〜。
あ、たぶんさやか編の1億円使っちゃったというのは、
きっと口ではああ言っておいて、
武器類の購入やらに当てたんとちゃうかと。

じゃあ、一体、撩が裏の仕事の中でも殺しで得た収入は、
どうまわっている形がスッキリするのか、
うーん、まだ分からんです。
きっとカオリンに本気になる前は
出所ごちゃまぜだったのではと勘ぐっておりますが…。
いずれにしても「出所」っていうのは
私らの日常生活でも心理的問題大きいかもかも。
初任給で親にプレゼントとか、
パートの奥さんが自分で稼いで旦那に贈り物とかね…。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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