28-11 Hand In Hand

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜 


(11)Hand In Hand ******************************************* 2135文字くらい



「少し休めよ。」

「え?」



先のやりとりに一区切りついた後、

香は、ややくったりと脱力したまま、

暗くなった高速道路を車窓からぼーっと見ていた。

「まだ疲れたまってんだろ?

あと1時間くらいかかっから、それまで寝とけよ。」



確かに、筋肉の疲労は取れていない。

昨晩の睡眠不足は、

午前中の数時間の仮眠では十分補えたとは言えない。

その状態で、一体撩と何時間身を繋いでいたのかと、

慣れない訓練と重なって、

やはり体力気力の目盛りは下がり気味。

ただでさえも、この2週間は色々あり過ぎて、

変化に体がついていっていない感も大きい。

たぶん今、

目を閉じたらそのまま寝れてしまいそうな疲労感。



「うー、どうしよっかな…。」



目元を人差し指と親指で押さえながらしばし迷う。

運転している撩を差し置いて、

自分だけ休むのは忍びない。



「シート倒せよ。その方が休めんだろ。」

ぴくんと肩があがる香。

さっき、待避所で押し倒されたことを思い出した。

かぁーと頬が染まり、肩幅が狭くなって縮こまってしまう。

「なんにもしやしねーって。」

「えっ、あ…、や、やだ!そ、そんなこと考えてるんじゃないんだからっ!」

いや、一瞬考えちゃったけどと、言葉ではとりあえず否定しておく。



静かに左腕をハンドルにひっかけたまま、

アクセルを踏み続ける撩。

正面を向いたまま重ねて休息を薦める。

「着いたら起してやるから、一休みしとけ。」

少し迷ったが、こう何度も言われると無視もできない。

「んー、……そ、しよっか、な。」

香は、両指を組んだまま、手の平をフロントガラスの方に近付けるように

んーっ、と伸びをした。

左手をレバーに添えてくいっと引くとシートの抵抗がなくなり、

背中の圧とともに傾いた。

カチンと音がした角度は、わずかに「逆への字」になった程度。

それでも、体重を預けて仮眠するには香にとって十分だった。



「へ、ヘンなこと、しないでよ…。」

ごそっと撩の方を向きながら無意味な忠告をしてみる。

ちらっと目だけ動かした撩。

「んー?スキンシップは、ヘンなことじゃないだろぉ?」

「はぁ?」

「いいから休め。」

香は、撩の言葉に、

まさかこいつは運転中にもよからぬことを企てているんじゃと、

一瞬警戒心が膨らむも、

眠気の方がそれを上回ってしまった。



車内も一応暖房が効き、

タイトスカートでも足元の冷えを気にしなくてもいい温度。

わずかに顔を傾けて、右に座る撩をぼんやりと見つめながら、

ゆっくりと瞼を下ろした。

意識も同時に堕ちそうになる。



「ごめんね…、りょぅ…も、ぁまり、寝てなぃんで、しょ…?」



そう、小さな声でつぶやかれたかと思ったら、

すー、とほどなく寝息に変わった。

撩は、前方を見据えたまま、目を優しく細めてふっと小息をこぼす。



しばらくギアを変える必要はなし。

窓枠にひっかけていた右手をハンドルに添え、

左手を香にそっと伸ばす。

右膝の上に重ねられた両手を、そのまま大きな手でゆっくりと包み込んだ。

はぁ…、と熱い息が肺から漏れる。



「どこまで…、バレてんのかね…。」



山荘で合流してから、交す会話の中で、

尾行をしていたことは全く触れられていない。

ただ、今の香の一言で、

自分の動きが全て見透かされていたと、

しかも、それを香が気付かないふりをしていた可能性もあると、

一歩先を行かれてしまったような感覚に、

感情の行き場にしばし迷う。



その逃げ場を作るがごとく、包んだ香の手にくっと力を込めた。

少し冷えていた指先が己の体温でじんわりと温まっていく。

加温された毛細血管の中身が、

早く全身に巡ってほしいと、抱きしめて温められない代わりに、

さらに指先を丸めて熱が漏れるのを防ごうとする。



「よく、頑張ったな…。」



山荘到着時に伝えた同じ台詞を繰り返す。

初めての野外訓練。

ボクちゃんもよく耐えたと、

見守りに徹しなければならない苦悶を乗り越え、

ほぼ予定通りに山荘で落ち合えたことに、

まずは初級編については成功と合格の結論を出す。



「次は、同伴、だな。」



目の前にいる香に、触れられない苦しみはもうごめんだと、

次回以降の類似の訓練は、

自分も行動を共にする形での中身に勝手に決定する。

次のフィールドは、未定。

都市部にするか、地方にするか、選択肢は無数にある。



「ケガはさせたくないんだがなぁ…。」



かつて、自分が幼少から少年時代にかけて、

厳しい訓練と実戦を重ねていた時、

大なり小なりの傷は必修だった。

より実用的な生き抜くスキルを修得させねばという思いと、

その白い肌に余計なものを刻みたくないという願望が、

バチバチとぶつかり合う。

こいつの肌に残るのは、自分のキスマークだけで十分だと、

香の指の間に浅黒く太い指を滑り込ませる。

かすかに感じる心音に自身の血流もじんわりと熱を帯びる。



さっさと買い物を済ませ、

とっとと帰って、

速やかに追加のメシを食って、

早く馴染んだあのベッドで、

お前を抱き込んで横になりたいと、

さらにスピードを上げる赤い車。

上下とも観光シーズンのためか、いつもより多い交通量ではあるが、

器用に間をすり抜けて、都心を目指す。



「んーとぉ、まず香ちゃん用のタンスだろぉ?

それにぃ、ふっかふかのラグ買ってぇ、

冷蔵庫もちっこいヤツ選んでぇ、タオルも買い足してぇ〜♡」



撩の頭の中で、カオリンとの快適もっこりライフのための

オオモノ買い物リストが勝手に作られる。

そんなことも露とも知らず、

香は、撩と手を重ねたまま、

くーくーと深い眠りに身を任せていた。


******************************
(12)につづく。





いつ買い物行かせようかな…。

ところで、某きのこ会社のCM、話題になっておりますね〜。
あーゆーのケッコー好きなんですが、
どうしよう…、第3幕の某○○日目で
夕食のシーンにキノコ鍋の予定なのよね…。
定番のシモネタ、
そのまま使うか、改稿するか、現在悩み中…。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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試運転中…

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