28-12 A Dress-Up Doll

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜


(12) A Dress-Up Doll ****************************************** 2644文字くらい



「香!着いたぞ!」



「……ん?」

大きな目が、パチッと音が聞こえそうな勢いで開く。

「あ、あれ?」

なぜクーパーの中?と反射でがばっと身を起す。

周囲は夜の光景、現在地は見慣れたスーパーの駐車場。

まるで気分はタイムスリップ。



「も、もう着いたの?」

「予定通りだぜ。ほれ、さっさと買いにいくぞ。」

そう言いながら、撩は先に運転席を降りる。

そういえば、さっき撩は1時間くらいと言っていた。

まさに60分ワープしたような感覚に、

「ん〜〜…」と顔を少し歪ませながら、

目元を指でこする香。



バンというドアが閉まる音にはっとして、

慌てて香も降りようと、ロックを解除して助手席のドアを開けた。

先に行こうとする撩の背中に、ストップの声をかける。

「ちょっと待ってよ!お財布とらなきゃ!」

「あー?」

「後ろ開けないと。」

「あいよ。」

面倒くさそうな口調とは相反し、思いの他素早い動きでトランクを開ける。

昨日、香が持っていたショルダーバッグもそこにあった。

そのままくいっと引っ張り出すと、

肩にひっかけ、いつものスタイルに。



「撩、いこ。」



バタンと閉じられたリアハッチの音を背に、

とりあえずは、素早く店内を巡るべく、目的地に向かった。

香は歩きながら、ちょっと腿が筋肉痛かと、若干の鈍い痛みを感じつつ、

腰のポケットに詰め直した買い物メモを取り出すと、

寄り目になって、んーと考えを巡らせた。



照明が必要以上に明るいスーパーマーケット、

閉店時間まであと15分程。

自動ドアをくぐると、香はすかさずカートとカゴのセットを準備する。

「ねぇ、撩、あっちで待ってて。あたし大急ぎで回ってくるから。」

紙切れを片手に、香は全てを言い終わらないうちに、

ガラガラと2つのカゴのせたカートを押して生鮮食品売り場へ直行。

その姿を見送りつつ、

あっ、とそのタイトスカートから伸びている美しい足に視線が落ちる。

ストッキング越しに、うっすらと透けて見えるふくらはぎの吸引痕。



「あちゃ…。」



蕎麦屋でどうしてキャッチできなかったのか、

車内でも位置と光度が悪く全く気付かなかった。

香の服を準備した時、

実はそんなことを想定はしておらず、

アノ最中も半ば夢中で、

らしくもなく考えが及んでいなかった撩。



「ジーンズのほうがよかったか…。」



まぁ、正体が分かる輩は殆どいないだろうと、

ジャケットのポケットに手を突っ込んだままの撩は、

ふぅと肩から脱気して、

ひょこひょことレジ向こうのベンチを目指す。



多くの世帯がすでに夕食中か、もしくは食べ終わっている時間。

並んでいるレジも半分しか店員がいない。

どさっと長椅子に腰を降ろすと、壁に寄りかかり

軽く店内をサーチ。

とりあえず、小うるさそうな連中の存在はキャッチ出来ず。



「まぁ…、疲れてんだろう…な。」



だらしなく座ったまま、手はポケットに入れたままで、

少し上向き加減になる。

天井の照明に目を細めながら、頭の中で足し算をし始めた。



「初心者だっつーのに…。」



ぼそっと漏れる独り言。

さっき車内で香を押し倒した時、

続きは帰ってから、とは言ってみたものの、

この2週間のことを思えば、

さすがにそれはキツいだろと、箍がはずれまくっている己の行動に、

小さな喝を入れてみる。



確かに、昔毎晩オンナを抱いていた時期もあった。

ミックと知り合った頃も、競う様に相当遊んだ。

新宿を拠り所にしてからも変わらず、

厳選を楽しむ様に各所をふらついていた。

正直、オンナに不自由することがなかった日々。

しかし、相手にしたソレは毎回別個体。

同一人物と二度濡事を交すことはなかった。



それが、今たった一人のオンナにどんだけ注ぎ込んでんのかと、

己の持つ熱エネルギーを慣れないながらにも

単独単体で必死に受け止めようとしている香に、

申し訳なく思いつつも、

やはり止められないのはどうしようもないと、

頭をぼりぼりと掻いてみる。



「良過ぎんだよ…。」



目を閉じると、

見えてくる今まで知り得なかった蠱惑的な香の姿が、

瞼の裏に15秒CMのような映像で流れ始めた。

とたんに、にょっと息子が盛り上がる。

「わっ!たっ!ちょっ!こらっ!ひっこめっ!」

らしくなく、わたわたしながら、ぷしゅぅーと血流を慌てて撤退させ、

まわりをきょろきょろ見渡し、

今のにょきっとぶしゅっとに気付いた他人はいないかと、

視野360度を全チェック。

とりあえず誰の視覚にもひっかからなかったらしい。



ほっと肩を降ろして、ごそっと座り直す撩。

こんなところで、おっ立てたことが知れたら、

それこそ店の一番遠い所からでも香のハンマーが飛んでくるだろうし、

他の客やら店員やらが気付いたら、

即警備員に通報だなと、

いつぞや電車内で帽子を失敬して隠し歩いたことを思い出す。



そういやあの時はと、仕事とは言え、

香の制服のコスプレが拝めたことを思い出す。

とたんに、ビデオ屋のオヤジが進めていた学園モノのエロ動画に、

香が重なってしまった。

「はっ!い、いかんっ!俺はそんな趣味ないっちゅーねんっ!」

両膝に腕をくの字にして両手を添えて、ぶるるるっと顔を高速で横に振る。

その様子に、一番近くのレジ係の女性が、

訝しがりながら横目でベンチに座る大きなオトコをちらりと見やる。



「い、いや、他の色んなもん着せて楽しむっつーのはありだよな、うん。」



本人、声に出ていることを気付いていない。

腕を組んで、斜め上を見上げながら、

脱がせて楽しそうな衣装を今後どんな場面で着させるか、

この先数ヶ月分のイベントスケジュール表と照らし合わせる。

まるでカードゲームのデザインのように、

フォーマルスーツから水着、カジュアル、ナース、スチュワーデスと、

過去経験済みの容相と勝手な願望が入り交じった香のコスプレイメージが、

ぱらぱらと捲(めく)られていく。



こりゃ当分楽しめる、そう思いながら、にへらと顔の筋肉が緩くなり、

これまで何もしてやれなかった分、仕事や節目やらを口実に、

色々ブツを送りつけたら、きっと顔を赤くし、激しく照れて、困惑し、

小さな声で、感謝の言葉をつぶやくキュートなカオリンまで

先走って妄想中。



「うん、基本何着せてもかぁーいんだよなぁー。撩ちゃん、まよっちゃーう。」



自分の頬を左右から手の平で挟み、くねくねと体を揺らしつつ、

これから脱がすための服をどうやって選び入手するか、

まだ頭の中で、

対戦カードがカシャカシャと切り替わる。



その中で、不意に出てきたのは、

白いドレスを纏う香。



「あ…。」



衣装カードの動きがピタリと止まった。


***************************************
(13)につづく。






白いドレスっつったらねぇ…。

ああ、11月になってしまう…。


【大感謝!】
Nさま〜、毎度有り難うございます!
校正手数料を支払わねばという気分です。

今は、もうスチュワーデスは死語扱いかも?
昭和の単語ということで、
キャビンアテンダント、うう、どっちも言いにくい…。

2013.10.31.01:58

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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