28-13 White Dress

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜  


(13)White Dress *************************************************** 2035文字くらい



あの日、

奥多摩の教会で、ほんのコンマ数秒見ることが出来た

香のウェディングドレス姿。



まさか、美樹の衣装を着ているとは全く考えていなかった故、

オフザケでそのまま勢い良く飛びついた。

冗談抜きで、

あの驚き目を見開いた香の表情を認めた瞬間までは、

自分の判断ミスに気付かず、

結局ハンマーで潰される。



……わずかコンマ数秒。



オンナにとって特別な意味を持つ衣に身を包んだその姿が、

しっかり記憶野に焼き付いてしまった。



あれを着させて

他のオトコのトコロに行かせるワケにはいかんだろ、

と、埠頭に向かう時にファルコンと交した会話が甦る。



「……さすがに、ウェディングドレスは脱がせたことねぇーな…。」



もう周りが見えていない撩。

つぶやきが、そばを通る客の耳に届いたことにも気付かない。

このオトコは、周囲の異変に気付く能力は言うまでもなく

ずば抜けて長(た)けているが、

その心配がない時には、

自分中心妄想ワールドにどっぷりひたひた状態。



「これまた、初体験になっちまう、か…?」



んーっ、と両手の指を組んで頭の上で伸ばしていたら、

「なんのことよ?」

と聞き慣れた声と気配。

両腕に買い物袋をぶらさげた香が、不思議なものを見る様な表情で、

撩を見下ろしている。



「ぅ、お!も、もう終わったのかよ。」

何もなかったかのように、よっと立ち上がる撩。

「急いで回ってくるって言ったじゃない。」

若干動揺中であることを悟られまいと

いたって問題なしという雰囲気を作る。



この前の食品売り場でも、

こんな感じで香の登場に気付かなかったことを思い出す。

どうもカオリンの事を考えていると、

危険性のないものに対して、注意力が散漫になると、

当の香の接近にまで感覚が鈍る己に苦笑する。

そこに、閉店を知らせる追い出しメロディーと案内の放送が流れ始めた。



「んじゃ帰るか。」

「食べるの9時過ぎちゃうかも。」

「いいんじゃね?ちょうど小腹がすく頃合いだ。」

自動ドアをくぐり、駐車場に向かう二人。

「で、何が初体験なのよ?」

「あー?」

「あんた、すっごい、やーらしい顔してたわよ。」

会計中にちらっと見た相方の様子を思い出す。

「一体何考えてたの?」

しまった、顔に出てたかと、

誤摩化すか、直球にするか、暫し悩む選択肢。



「まっさか、レジのお姉さんにちょっかい出そうとか思ってたんじゃないでしょーね???」

「ば、ばーか、ちげぇよ。」

クーパーまで辿り着くと、まずは、荷物を受け取った。

「ほれ、よこしな。」

「あ、うん。」

バクンと開けられたトランクに、買い物袋がガサリと2つ置かれる。

「バッグは?」

一緒に中にいれるか短い言葉で問う撩。

「あ、このまま持ってる。」

「んじゃ、行くか。」

バンとハッチを閉め、運転席に向かう。

駐車場の照明に照らされるルーフの向こうの香を

視界の端に捉えながら、シートに先に座れば続いて、香も助手席に収まる。



キーを差し込もうとする撩の手が止まり、

財布の中のレシートのありかを再確認する香の姿をチラ見する。

さっきまで考えていた、白い衣装を纏い、薄いベールを被る姿が、

ぼんやりと重なった。

美樹が着ていた白の布地、

頭が中身だけ香に入れ換えてしまった。



「……香。」



「ん?何か買い忘れ?」

と振り向いたとたんに視界が暗くなる。

顎に、温かい撩の右手の指がかかったと感じたと同時に、

はむっとライトに唇を重ねられた。

瞬時に、ボシュッと顔も体も赤くなる。



「っっっっ!」

突然のことにドアまで体がずり下がってしまった。

ドンと後ろ頭が窓に当たる。



「なななななにすんのよっ!ととと突然っ!!!」

耳から上がる細い湯気。

「んー?だからしたくなったから。」

コーン!と左頬にヒットするミニハンマー。

「でっ!」

「も、もうっ!さ、さっきもそうだったじゃない!

だだだ誰かに見られちゃったら、

恥ずかしいじゃないっ!」

くすりと唇の端をあげながら、ぐいっと左腕を伸ばして、

シートの端で困惑している香の髪の毛をくしゃりと掻き回す。

「確かに、その顔を他の連中には見せたくないよなー。」

「はぁ?」

そのままくっと自分に引き寄せると、

耳元で小さく囁いた。



「おまぁとは、全てが初体験、だからな…。」



「…………ぇ?」

「まっ、これからもよろしくっ、っつーことで、帰るか!」

「は…?」

キーを差し込んだ撩は、グォンとエンジンをふかして、

滑らかに駐車場を後にする。

となりのシートで、まだきょとんとしている香は、

先の店内から今に至までの撩の言動がイマイチ理解できずに、

頭の中は、クエスチョンマークだらけ。



「……ワケ、わかんない。」



何回唇を重ねても、何回体をつなげても、

やはり慣れないことは慣れないまま。

火照らせたままの表情で、

香は座席にゆっくりと座り直した。



ふうと視線を左前方に流してみる。

夜の新宿の見慣れた車窓。

ああ、戻ってきたんだと、自分たちのテリトリー内の光景を

瞳に映しながら、

香は、丸めた左の人差し指をそっと自分の唇に当てた。



***********************************
(13)へつづく。






撩が第三者の前で、
コイツは俺のモンだとアピールするのに、
一体どこまでしちゃうもんなのか、
ハグ&チューくらいまでは、このサイトの設定上では、
年明けくらいから解禁?
それ以上は、撩自身が許さんかも?

【御礼】
10/31より初回から拍手を押して下さっている方に、
御礼申し上げます!

【補足】
撩とファルコンが車内でウェディングドレスの話しをするのは、
05-06で出てきます。
2013.11.16.


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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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