28-14 Chuck Eye Roll

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜   


(14)Chuck Eye Roll ********************************************* 3155文字くらい



アパートに到着した二人は、

コンクリート打ちっぱなしの壁に挟まれた階段を登っていく。

意外と抱えている荷物が多い。



香は、ショルダーバックを肩から下げ、

腰に訓練時に巻いていたレンズ用のカメラバッグを再び装着し、

汗を吸った衣類を両手で抱えて、

2本指になんとかひっかけているトッレッキングシューズ。



撩は、さっき買った食料品が入った買い物袋を両手で2つぶら下げ、

ひょこひょこと段差を上がって行く。



「靴よこせよ。」

「え、いいよ。もうすぐだし。」

甘えてこない香に、もっと頼れよと、思いながらも口には出来ず、

そうこうしているうちに、5階の玄関に辿り着いた。

今朝の新聞が刺さったまま。

それを引き抜いて、撩はガチャリと我が家のドアを開ける。

「ほれ、入んな。」

ドアを支えて、先に中に進めと促す。

「あ、ありがと。」

この行動にもまだ慣れない香。

ミックじゃないんだから、と頬がわずかに染まってしまう。



しかし、いつまでも照れているワケにはいかず、

訓練で履いた靴を床に置き、カジュアルシューズを脱ぎながら、

これからの動きをイメージする。



「まずは、コレを洗わなきゃ…。」

「こいつはキッチンでいいな。」

玄関から続く階段から6階に向かうと、

ぞれぞれの荷物を置きに、各部屋へ向かう。



香は、客間に入るとまずは、パチンと電気をつけた。

何だか使う頻度が少なくなっている空間に、

本格的に客間専用となるのかと、しばし荷物を抱えたまま、

ドアの前でたたずんでしまう。

ふうと小息を吐きつつ、

部屋の隅々まで目だけ動かして見渡してみた。



「このタンス、…上に運んだ方がいいのか、な?」



一度、ミックが下着あさりに来た時、

ハンマーで壊してしまい、

致し方なく買い直したのは、海原戦が終わったあと。

撩の部屋で朝を迎えることが日常になりつつある中で、

すでに寝室は上と断言してもいい状態。

乱れたナイティーで、うろうろするのは出来れば避けたい。



「うー、でも撩の部屋に下着とか置くの、なんかやだぁ…。」



格段に便利になるに違いないが、

自分のブラを頭に乗っけているヘンタイオトコがポンと浮かぶ。



と、同時に

パタンと隣りのキッチンからドアが閉まる音がした。

はっと我に返って、今すべきことに頭を切り替えた。



「そ、そうよ!さっさと食事と洗濯物!」



香は、荷物をソファーの上にがさがさと重ね置き、

部屋の明かりを消すと、

まずは、料理だと急いで台所に向かった。




撩は、新聞を持ってリビングに。

香は、撩がテーブルの上に置いた買い物袋から、

すぐに使う食材と、早く冷蔵・冷凍しなければならないものとを、

速やかに仕分ける。



とりあえず、シンプルにアメリカ産の牛肩ロースを焼くことに。

手を軽く洗って、黄色いエプロンを食器棚の指定席からすいっと引っ張りだし、

きゅっと後腰に紐を締めた。

ワークトップには、

半額と貼られた黄色いシールが貼られた発砲トレー。

閉店間際の特別セールを見逃すはずもなく、

すばやく選んで来たメインディッシュ。



「んー、つけあわせは…と。」



もうキュウリやらトマトやらの夏野菜はすでに旬を過ぎ、

加熱調理の必要な脇役を用意しなければならない。

大急ぎで白米を研ぎ、主食、主菜、副菜の準備をしつつ、

買ったモノを指定席へ移す作業も手際よく進めた。




「……なんか、やっとまともな食事って感じだわ。」




厚くスライスされた赤身の肉を、フライパンでミディアムに焼きながら、

塩と胡椒を軽く振る。

ビタミン不足を補うためにもと、レモンを縦に二つに割るも、

1人1/2はもったいないと、もう半分はラップに包んで翌朝使うことに。

「どうせ一気にとったって、流れちゃうって言うしね。」

高校時代の家庭科で習った水溶性ビタミンの特性をうっすらと思い出す。



「これでいいかしら?」



シメジとタマネギとワカメの味噌汁に刻みネギをたっぷりと散らし、

シンプルに焼いた牛の切り身に、

ふかしたジャガイモとニンジンのグラッセ、茹でたインゲンを添え、

カットしたレモンを皿の端に置く。

フルーツは王林。

一応醤油とわさび、大根おろしを用意する。

牛の赤身と醤油は意外に相性がいい。

撩の分の皿は、大皿盛りで香の3倍の分量が盛りつけられている。

基本、3人前がこのオトコの一食分。

ここまで配膳が終わると、

香は撩を呼びにリビングに向かうことにした。






「撩?」

ドアを開けると、誰かと電話をしている。

「あー、わかった。さんきゅーな。

……美樹ちゃんに撩ちゃんが会いたーいって伝言たのむわ。」

電話越しにかすかに怒号が聞こえる。

「わーったよ、じゃあな。」

撩は、くくっと含み笑いをしながら、

まだ途中だった抗議らしき声をカシャンと受話器を置いて切ってしまった。

会話と耳に入った聞き慣れた声で察するに…。



「い、今の海坊主さん?」

「ああ、今かかってきた。」

「なんだったの?」

「んー?今日、伝言板チェックしに行ったんだと。」

「ええ?」

「ったく、頼んでもねぇーのに、おせっかいなタコ坊主だぜ。

なんにもなかったから、安心しろだと。」

「ちょっ、な、なんで海坊主さん、見に行けなかったことなんて知ってんのよ!」

香は、訓練についてみんなが知っているのかと、

更には、あの場所でアンナコトをしてきたことまで、

もしかしてもうバレているのかと、

じゅわじゅわと赤くなって状況を尋ねようとする。

「どうせ教授から聞いたんだろ。」



ファルコンにとって、香は可愛い一番弟子。

今回の訓練のウワサを垣間知り、父性本能的に香のことが心配だったのだ。

伝言板を言い訳に、連絡をしてみたが、

しっかりその目論みは撩に読まれていた。

「なんで帰ってくる時間がわかっちゃったの?」

そもそも、こちらの動きは行き当たりばったり的で、

何時に帰宅するということは、当の本人達も未定のスケジュール。



「あーん?留守電にでも残しておくつもりだったんじゃね?

たまたまオレらが帰ったから出れただけの話しだよ。」

と、言いながら実は、

すでに山荘の管理人から撤退済みの連絡を得た教授が、

余計なことをファルコンに漏らしたことが伺えた。

ちらっと電話のそばの時計をみやる。

丁度9時。



「……みんな、知ってるの?」

赤い顔のまま、肩を小さくして、尋ねてみるも、

答えを聞くのは正直怖い。

撩は、香の心配を分かっていながら、まずは、はぐらかすことに。

「んー?ナニを?」

食事が出来たことを言われなくてもキャッチしていたので、

そのままリビングからキッチンに向かう。



「そ、その昨日から、で、出かけてたことよ。」

撩の後を追いながら、香も廊下に出た。

「教授に口止めっつーのは、無意味っちゅーことだな。」

撩は、後ろ頭に指を組んで、んーっと腕を広げながらそう返した。

「ええ?なにそれ?どーゆーことよ!」

「ミック、かずえちゃん、タコに美樹ちゃんにも、たぶんみぃーんなに筒抜け、

んっと、あのおしゃべりじじいが…。」



片手を腰のポケットに入れ、がちゃっとキッチンの扉を開ける撩。

香が廊下で固まっている。

「まぁ、気にすんな。監視カメラとかは、ぜぇーんぶスイッチ切っておいたから。」

「か、カメラ?」

「覗かれてたまるかっちゅーの。」

あの山荘にそんなモノが仕掛けてあったとは

全く想像だにもしていなかった香。

そのスイッチがオフになっていなかったら、

一体どこまでが筒抜けになっていたのかと、

ちらりと連想しただけで、くらりとよろめく。

こめかみを抑えて、廊下の壁に手をついた。



「どったの?かおりちゃん。」

「〜〜〜…。」



言葉が出ないが、

香はもう知らない場所で無防備なことをする訳にはいかないと、

固く心に誓った。



「ほれ、早く食おうぜ。」

撩は、ひょいと入り口から顔を出す。

「うー…。」

やや混乱気味の頭のまま、

香もキッチンにふらふらと入って行った。


***********************************
(15)へつづく。






たぶん、ミックも、かずえも、美樹も、ファルコンも
訓練と山荘のことを聞きたくてしょうがないかもと。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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