28-19 Night Of Two Weeks After

第28部 Let’s Head Home

奥多摩湖畔から14日目の夕方から夜


(19)Night Of Two Weeks After ************************************* 3192文字くらい



香は、トイレを済ませた後、

洗面所で、

寝る前の必要最低限の仕事を肌に施した。

歯もしゃこしゃこと磨いて、一区切り。



ついっと引っ張ったタオルに、

撩が使ったサインを指先で感じる。

「……ぁ。」

こんなことは、これまで日常だったはずなのにと、

はやり妙に過剰反応してしまい、

頬を染めながらゆっくりと少しだけ湿っているタオルを

口元にそっと押し付けた。

目を閉じて、わずかにくんと布地をかいでみる。

かすかに感じるオトコの痕跡に、くっと胸が締め付けられ、

はぁと小さく熱い息を吐く。



「好き過ぎて…おかしくなりそ…。」



空気だけの極消音でつぶやかれた独り言。

もういちいち心臓に悪い。

あの瞳も、指も、唇も、腕も、髪も、傷跡も、体温も、声も、息も、

撩のパーツの全てが、

自分の心拍を乱してしまう。


「やっぱり、当分慣れないよ…。」



眉間に複雑なシワを寄せながら、

明日の朝の為に、タオルの交換をすることに。

トイレと洗面所からそれぞれ回収すると、

脱衣所から新しいタオルを2枚取り出して、

一方はランドリーバスケットに、

一方は各々の指定席に手早くかけてしまう。

照明をぱちりと消せば、ここでの作業は一段落。



そして、さっきの悩みがまた議題にのぼる。

「撩は、どこかしら…。」

もう自室にいるのか、居間か、

はたまたこの寒い中屋上にでも行っているか、

まずは、一番近いリビングの扉を開けることにした。

かちゃっと音を立てると、

その先には、ソファーに転がる心臓に悪い物体が。

「あ。」

スースーと聞こえる規則的な呼吸に、

ドアを開ける時にもっと静かにすべきだったかと、

発しさせた雑音を気にするも、出してしまったものはしかたないと、

今度は後ろ手に慎重にノブを戻す。



無防備な姿ではあるが、

きっと自分に気付いている。

そんなことを思いながら、恥ずかしながらも撩に触れたいと

ほんのりと体温を求める

母性と雌性の本能が入り交じった感覚が降ってくる。

香は、スリッパのままゆっくりとなるべく音を立てずに

ガラステーブルを回り込み、ソファーの短辺側に近付いた。

Tシャツ越しにサスペンションのように上下する

厚い胸板にどきりとする。

肌に密着している布越しに

わずかに盛り上がった2つの小さな突起にも気付いてしまい、

かぁとなって慌てて目をそらしたら、

今度はベルトのバックルと目が合い、

その周囲に意識が奪われ、さらにじゅわっと赤くなる。



見るだけでこんな反応をしているんじゃ、

とてもじゃないけど、自分から撩にタッチなんて、

この状況ではとても行動に移せないと、

へなへなと冷たい床に座り込んで、半身だけソファーに寄りかからせた。

撩の呼吸音が近くなり、さらにドキドキが増す。



ちらりと電話の横にある時計をみやると、

午後11時前。

まだ大人にとっては早い時間かもしれないが、

昨日今日のことを思い出していたら、急速に眠たさが膨らんできた。

重ねて、さきのタオルくんくんで、妙なところが刺激された香は、

手を伸ばす勇気はまだないけどと、

珍しく自分から撩との距離を縮めてみた。



寄りかかっていた場所のすぐそばに、撩の脇腹が位置する。

目を閉じながら、香はそっと撩の右側面に頬を寄せた。

とたんに薄い皮膚へ体温が伝わる。

緩く収縮と膨張を繰り返す肋骨付近に、

もうバレてもいいと思いながら、頭を預けた。

触れているだけで気持ちがいいと、

このまま眠ってしまいそうな面持ちになる。



すると、長い右腕がごぞりと動いて、

香の髪の毛をくしゃりと軽く鷲掴み、くいっとより密着させられた。

「ぁ…。」

香の頬骨あたりが内と外からさらに赤く染まる。

「もう休むか?」

「ぇ…?」

頭の下に敷いていた左手を抜き出すと、

顔に被せていた雑誌をぽいっと長辺側のソファーに投げ置いた撩。

同時に右手は、優しく茶色い髪の束を掻き揚げる。

香はきゅっと目を閉じたまま、

早く脈打ち始めた自分の鼓動が恥ずかしく、

平静を装うべく、こんなことを言い出した。



「きょ、今日は、縄跳びまだやってなかった…。」

「ああ?」

パジャマに着替えてからするべきもんではないだろうと、

咄嗟に出た香の台詞に、ぷっと吹き出す。

「今日はいいだろ!十分相当の運動したんじゃね?」

そういいながら、撩は素早く上体を起き上がらせると、

香の脇の下にひょいと手を差し込んで引き寄せたと思ったら、

そのまま立ち上がりながら、

左肩によいしょっと担いでしまった。

その弾みで、スリッパがテレビのほうへ飛んでしまう。

「わわわわっ!な、何すんのよっ!」

すたすたとリビングのドアに向かう撩に

じたばたと手足を動かしながら抗議する香。

「んー?良い子は早く寝ましょうねーっ。」

パチンと電気が消され、さっさか廊下を進みながら、

あっという間に7階へ。



「ほれ。」



肩からころんと降ろされたと自分の位置を確認する間もなく、

目の前に弧を描いて、

撩の着ていたジャケットやズボンや靴下が投げられた。

それが床に落ちる音と同時に、

Tシャツとトランクスになった撩は、

ベッドの中に香を抱き込みながら、布団をひっぱりあげ、

素早く就寝スタイルに持っていく。



「ちょ、ちょっと!あ、あ、あんたがこの時間から寝るなんて、

お、お、おかしくない???」

もう抱き枕状態で撩に巻き付かれている香は、

驚きと照れで体温を上げつつ、

この展開についていけないことを訴える。

「んー?もう今日は他にすることないんだろ?」

撩の左手の指が香の額にかかる前髪をかき分けた。

映画の効果音のように、ちゅっと音がする。

「わひゃ!」

肩がぴくんと上がり、そこを降りてきた温かい手がやんわりと包む。



「今晩は充電日、だ。」

「は?」

「ボクちゃんはいつでもチャージできてっけど、

香ちゃんはお疲れだろ?」

「……ぁ。」

抱き込まれて、撩の顔は見えないが、

あの優しさに満ちた表情が思い浮かぶ。

『続き』があるのかと、ドキドキしていたが、

指摘された通り、

確かにこの2日間の往復移動と訓練と+アルファで、

随分とくたびれてしまった。



「ご、ごめ…。」

「ばぁーか、謝るところじゃねって。」

またくいっと抱き直される。

「道は、覚えたな?」

「え?」

「あの場所は、依頼人を匿(かくま)う時にも使う可能性がある。

いざとなったら、一人で行けるな?」

香は、撩の心音を頬の皮膚から感じながら、

目を閉じて往復ルートを思い返す。

「……うん、だ、大丈夫。上からでも下からでも行けるわ。」

ふっと頭皮に風が当たった。

「さすがカオリン。」

さっきと同じ台詞が耳に届く。

また自分の髪の毛に潜っていく撩の指。

「明日はゴミ捨てもなしだろ?」

「え?」

香は唐突の質問に、そうだったっけ?とドキッとしながら、

台所のカレンダーを思い返す。

「た、確かその、はず…?」

自信なさげに答えるも、たぶん大丈夫だと、

明後日捨てるべきものは可燃ゴミだったかと、

ぼんやりとイメージする。

「じゃあ、ゆっくり休め。」

「……ん。」

家事のことを思いめぐらせるのも面倒くさくなり、

もうこのまま、このぬくもりと心地よさの中で、

意識を落としてしまいたい。

「おやすみ。」

顎にするりと指がかけられ、極軽く唇に吸い付かれた。

「ん…。」

いわずもがな¨おやすみのちゅー¨に、

更に赤さを増しつつ、目を閉じたままで、

香も朦朧としながら言葉を返した。



「おやすみなさい…」



ほどなく、撩の腕の中で寝息が聞こえ始めた。

滑るシルクの感触と、柔らかな質感の体、温かさと香りに、

触れ合いながら夜を過ごせる有り難さを

改めて噛み締める撩。

まだ、自分のペースを押し付ける訳には早過ぎると、

折々に休息を与えねばと、

必要以上に若葉マークの香を気遣う撩。

ただ、一般的にすでにヤリ過ぎていることは、

まだ香には認知されていない。



「『続き』は明日、な…。」



そう言って、

もう一度、ほんのりと桃色が残る白い額に唇を押し付ければ、

撩も満たされた面持ちで、

ゆっくりとレム睡眠の波に乗ることにした。


************************************************
第29部(1)へつづく。





みなさんもお疲れさまでした。
やっと一区切りです。

【重要連絡事項?】
明日11月14日の1818で
第29部以降の連載についてのお知らせをさせて頂きます。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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