29-02 Ryo's Arms As A Pillow

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目 


(2)Ryo’s Arms As A Pillow ***************************************** 3108文字くらい



指で感じた圧で目が覚めた。



薄く瞼を開いてみる。

布団の縁(ふち)から少しだけはみ出ている絡んだ右手が、

目覚めの原因と分かるも、

その視覚情報が本当なんだろうかと、

朝一から疑いたくなってしまう。



撩が自分の手を握っている。

交互に滑り込ませている指に、

手の平も空気の逃げ場がないくらいに

ぴたりと合わさっている互いの利き手。



まだ、半開きのままの瞳でそれを見つめながら、

今の状況を分析してみる。

撩は、Tシャツとトランクス姿で、自分の背後に密着し、

4本の足も接地面が最大になるかのように、

もつれて触れ合う。

撩のふくらはぎの筋肉が香の膝下にずしりとかかり、

思わず、重い…と声が漏れそうになった。

香の背面と撩の腹面が隙間なく重なり、

長く太く熱い左腕が、離れるなと言わんばかりに、

腰から肋骨にきつく巻き付いている。



照れと恥ずかしさで、

覚醒した時からじわじわと上がっていた体温は、

額から足の指先まで香を赤く染め上げる。

それでも、

抱きつき絡んでいるモノの方が熱を持っていて、

心地よく温かい。



香は、またゆっくりと目を閉じて、

はぁと湿り気のある吐息を細く出した。



背中で感じる撩の肺の動きが、

耳に届く規則的な落ち着いた呼吸音が、

触れている全ての部分で感じるぬくもりが、

この時間を、もっと長くしたいと思わせてしまう。



毎朝、毎朝、この状態が信じられない。

撩と自分が同じ布団で、

こんなにくっついて一緒に寝ている光景など、

先月までは到底考えられなかった。



こうやって人の体温を感じながら眠りにつき、

目覚めることそのものが、

激レアの出来事。

稀に、依頼人やその連れ子と同じ寝具を使ったこともあったが、

触れ合いながら、というスタイルは近年殆ど記憶にない。




いつが最後だったかと

目を閉じたまま、10代の頃を思い返してみる。

兄と共に過ごしたあの小さな住まい。

あ…と、浮かんだ光景は、たぶん9才前後の自分。

たぶん、その頃まで一緒の布団で腕枕をしてもらいながら、

寝ていた日々が蘇(よみがえ)る。



いつしか、狭いながらも2組の布団が敷かれ、

別々に寝るようになったのは、年齢が二ケタになったあたりかと、

今は亡き槇村との思い出のシーンが瞼の裏に浮かぶ。

それ以降、

誰かとこんなふうに密着して横になることはほぼ皆無。



一人寝が当たり前だったのに、

いきなり今月から、二人寝の生活になってしまった。




腕枕をしてくれたのは、

これまでの人生において、兄と撩、2人だけ。



ただ、槇村の時とは明らかに違う感情の存在は無視出来ない。

心許した相手と、体温を感じながら同じ寝具を使うことが、

こんなにも気持ち良く、心地よく、幸福感を抱けるのかと、

やはり振り出しの ¨信じられない¨ に戻ってしまう。




指の関節に伝わるのは、自分の心音なのか、

トトトと、やや早くなった脈を自覚する。

きっと、もう目が覚めていることは、撩にバレていると確信しつつ、

さらに目をきゅっと閉じて、寝たふりを選ぶことに。



今の時間を見損なってしまったが、

今日の朝は、ゴミ出しはしなくていい日のはずと、

香にしては珍しく、二度寝の惰眠コースに舵を切ろうと、

ごそりと少し体を動かして、枕により頬を埋めることに。



その時、香の唇がつと撩の上腕に触れてしまった。

ちょうど半袖Tシャツの縁がめくれてずれていたのだ。

直に肌へ触れた上唇下唇に、

撩もぴくりと体が動く。

とたんに、熱の塊が、

香の内腿の間からにょっと突き抜けて顔を出した。



「え?」



声が出て、目が見開く。

ぎりぎり布を被っているも、その円柱形のモノは、

白いシルクのパジャマの間をぬって、

その摩擦でぴくんと振り子のように反応する。



「んー…。」



眠気をまとった撩の声と同時に、

右手をつなげたまま、ぐいっと両腕で抱き込まれ、

足の絡みも一段よじられ、

腿の間に挟まれている物が、より強くサンドされる。



「なっ…、ちょ…っ。」



完全な拘束状態。

動けない。

むにゃむにゃと、わざとらしい口の動きが耳に届く。

髪の毛に頬ずりをされる感触が伝わってきた。

しかし、足の間にあるブツがどうにもこうにも気になって、

この体勢を変えなければと、真っ赤になった顔で、

あがいてみることにした香。



「りょ、撩!ちょっと!苦しいんだってばっ!」

「ん〜…。」

より強く抱き込んでくる相方に、

もしかして、これは朝からアレが始まってしまうのかと、

かぁーとなって、どぎまぎとして、ちょっと先まで想像してみるも、

今日の午前中は、

それなりに片付けなければならないことが指折り並ぶ。

今はちょっと勘弁してもらいたいと、

ちらりと思うも、

一方でこのぬくもりの中、

また、されるがままに、甘い時間を過ごしたいと思ったもの事実。



「ね、ちょっと、い、今、何時よ…、う…息できない、ってば…。」



内股で撩のナニが、一層固く大きくなった気がして、

自分の敏感なところとわずかに擦れ合う。

香の中でも、起床と合体の目盛りが押しあいこし始めた。

逃げられない。

もう諦めてしまおうかと思った時、

後ろから、ぐふふぅ〜と怪しげな含み笑いが聞こえる。



「むふふぅ…、あやめちゃーん、すみれちゃーん、チカちゃんもぉ〜、

りょうちゃん、モテモテで、こまっちゃぁ〜う♡」



コンマ数秒の間で、

寝起きながらも、香の前頭葉が高速で情報を解釈する。

これは、ハンマーを待っている寝言を模した台詞。

自分から解放できる自信がないという、

捻(ひね)りを入れた撩なりのメッセージ。

ご希望通りに、

絶妙なタイミングでホンの一瞬緩んだ腕の感覚を逃さずに、

やや控えめの50トンハンマーを登場させた。



「ひぶっ!」



疑似寝言から、撩の上半身がそれに潰されるまで、

1秒かからず。

「まったく!どんな夢見てんのよっ!あ、あたし、もう先に起きるからっ!」

ハンマーから腕だけ出している撩。

頬を染めたまま、するりとベッドから降りた香。

とたんに、ふるっと寒さで身が縮こまる。



「あ、れ?スリッパがない…。も、もうっ!どこやっちゃったのよ!」

ソファー側から、ベッドの周囲を見渡すも、探している物は見つからず。

撩の脱ぎ捨てられた衣類が投げられているだけ。

カーペットからフローリングに素足をひたりと付ければ

より冷たさを感じて、つま先立ちになってしまう。

「うー、冷たい…。さ、先に降りてるからね!」

白いパジャマ姿の香は、両腕をさすり皮膚に摩擦熱を与える。

夕べ部屋に連れ込まれた状況を思い出しながら、

いつまでスリッパを履いていたか記憶をたぐりつつ、

階段を降りていった。








「ふ…。」



ころんと、50トンの塊をベッドの下に転がせば、

今日もハンマーで始まったことを、薄く笑う撩。

一応作戦通りだと、この結果に満足しながら、

組んだ指を後ろ頭に差し込んだ。



「ハンマー出なくなったら、それはそれで、やばいよな…。」



今日の午前は、香の予定通りにしてやらないと、

午後に支障が出ると、分かってはいても、

放し難いこの朝のまどろみ。



「んー、希望としては朝昼晩1回ずつ…、いや、2回ずつぅ?」



決して食事の話しではない。

もちろんハンマーの話しでもない。



「ま、慣れるまでは、な…。」



本当は、起きている間中でも、

身をつなげ、何発でも溢れる愛を注ぎたいと

熱のこもった願望を持ってはいるが、

まだまだ、相手は若葉マーク。

しばらくは、夜の寝る前の合体で抑えておかねばと、

休息日もちゃんと思慮して、

徐々に1日平均6回コースへと、

勝手な未来を思い描く冴羽撩。



「ぐふふ…、楽しみ、楽しみ♡」



にんまりとしたまま、

ごろんと香が頭を乗せていた枕を引き寄せ、

言葉通り抱き枕にすると、

また、叩き起こされるのをベッドの上で待つことにした。



*****************************************
(3)につづく。






撩がワザとつぶやいた女の子の名前は、
全て実在する野生生物の名前です。

あやめちゃん:アヤメ科アヤメ属の草本
すみれちゃん:スミレ科スミレ属の草本
ちかちゃん :キュウリウオ科ワカサギ属の海水魚

ズバリ和名のお名前大好きなんで、
こーゆー機会に登場させて自己満足。
ちなみに、上記3名様、すべて当方の友人知人もしくはそのお子様に
使われていたりして…。

しっかし、槇兄ぃと香がいつから2人暮らしになったのか、
具体的なイメージがよう絞れません。
(少なくとも中学の時はすでに親はいなかった?)
とりあえずは、
男親と一緒にお風呂に入らなくなる女の子の平均年齢に合わせて
別々に寝る時期を妄想してみました。


【リンクノート追記と変更のお知らせ】
小谷野さまの「種馬アンテナ」と臼井さまの「いきあたりばったり」についての
お知らせを1つ前の記事にアップしております。

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プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


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とりあえず作ってみた
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