29-03 Lip Balm

第29部 Calm Day?

奥多摩湖畔から15日目


(3)Lip Balm ******************************************************** 1748文字くらい



「あ!あった!」



どこもかしこも冷えた床となり、

スリッパなしでは、

足の裏から体が冷却されてしまうと、

7階から6階へ降りてきた香。

やや筋肉痛気味の体で、リビングに入ると、

テレビの前にひっくり返って乱雑に転がっている

1対のスリッパを発見。



「はやく靴下も履かなきゃ。」



白いパジャマ姿で、素早くそれをつっかけると、

パタパタと客間兼自室に向かった。

ドアを開けると、

レースのカーテン越しに、部屋が明るく照らされている。

ベッドサイドの時計は、8時台。



「ずいぶん、ゆっくり寝ちゃったわ…。」



普段は、7時前には起床する生活リズム。

このプラス1時間が、結構体の休息につながったと、

窓際に近付きながら、んーっと背伸びをした。

「今日も晴れそうね。」

カーテンをすっと摘んでわずかにスライドさせれば、外の景色が瞳に映る。

ビル街の上空は快晴。

11月の第4週になった。

もう北の方では、積雪の話題も聞こえる。

関東は、比較的好天が続く予報に、低地の紅葉も見頃までもうすぐ。

来週あたり中央公園か新宿御苑にでも行ってみようかと、

伝言板を見に行く時のコースを思い描く。



「さてと…。」



ジーンズに、黒のハイネック、

色を合わせて靴下も厚手の黒を選び取り、

素早く着替えると、

鏡台の前で適当に髪を整えて、洗面所に向かった。



「ちょっと寒いな…。」



暖房が行き渡ってない古いビルの建家。

室内でも軽く何かを羽織っておきたい気温に、

手を擦り合せながら蛇口をひねった。

水温18度。

これが夏場に出てくる温度であればいいのにと、

ぱしゃぱしゃと小顔に冷や水を浴びせれば、

肌が引き締まり、目がしっかり覚めてしまう。



「冷た…。」



昨晩のうちに取り替えたタオルを引っ張り、

軽くパフパフと水気を拭う。

コップで口を漱(すす)ぎ、寝起きに残る粘つきもすっきりさせた。

ここ数日、乾燥注意報も出ているので、

匂いの少ないベビーオイルとクリームを薄く施して、

リップクスティックを塗れば、最低限の保湿は完了。




鏡を見ながら市販されている一番安いそれを下唇に滑らせると、

つい違う感触が蘇ってきた。



「……っ。」



思わず手が止まってしまう。

真向かいに映る自分の顔がみるみるうちに

カーディナル色に染まっていく。



「やっ、やだっ!あ、あたしったら!な、何考えてんのよ!」



他人にはこれまで殆ど触らせたことのなかった場所。

そこだけ、というワケではないが、

今、ただ唇に、

ワセリンとラノリンを主原料とする油膜成分を塗っているだけなのに、

唐突に、リップクリームの形が撩の指に置き換わり、

感触があの男の唇に重なってしまった。

ついには、執拗に触れてくる¨もっこり男¨の残像が、

鏡の中で自分の背後に現れる始末。



「も、もうっ!」



香は、まるで犬猫が濡れた毛を振り払うように、

プルプルプルと高速で顔を左右に動かした。

前髪にわずかに残っていた雫がピピッと鏡面に跳ねる。



「はぁ…。」



右手でスティックを指に挟んだまま、

うつむき加減の赤い顔で、両手を洗面台についてしまった香。



「な、なんなのよ…、一体…。」



たかだか唇に何かを塗るという行為だけで、

己は何を連想しとんのじゃ!と自身にツッコミながらも、

頭の中は、これまで繰り返してきた撩とのキスシーンが

勝手に流れていく。



「やーんっ!だめだめだめっ!!!」



両腕を突っ張らせて、バンと洗面台の縁を叩けば、

持っていたスティックをぐいぐいと唇に塗り直し、

きゅっと勢い良く捻(ひね)ってアイボリー色の円柱をひっこめ、

素早く小さな白いキャップをパチンと被せると、

お肌セット入れにしている、こじんまりとしたカゴに中に

カシャリとしまい込んだ。



「さっ!ご飯!ご飯っ!」



切り替えなければと、

頭の中で無理矢理メニュー検索モードのスイッチオンにして、

ふんと鼻息をふかしながら、隣りのキッチンへ入る。

冷蔵庫を開け、昨晩、日光の帰りに寄って買ったものを再確認、

在庫処分しなければいけないものをガサガサと捜索し、

いつも通りに朝食の準備にとりかかる。



「昨日炊いたご飯と味噌汁が残っているのよね。

だったら、あとはメインと副菜ね。」



そう言いながらも、

緩く丸めた右手の人差し指が

時折、自分の上唇をかすめることに

本人は気付いていなかった。



********************************
(4)へつづく。






今日のカオリンのコーディネートは、
さおり姉ぇのボディーガードの時の衣装で妄想中。
再燃するまでは、カオリンの原作中の服装を
そんなに気に留めたことがなかったのですが、
じっくり見直すと、どれを脱がせ…、ごほごほっ、
色々あって結構楽しめますっ。

緑のリップクリーム、
最後まで使い切った試しなしです。
その前に行方不明になってしまうのよ…。
で、奮発してビーワックス リップクリーム (木製容器)を
使ってみたら、完食じゃなくて、完塗成功。
リップクリーム使い切ったのは人生初じゃなかろうかと、
こんなことで感激したワタシって…。
そのうち、カオリンにも
絵梨子ちゃんか撩経由でプレゼントしてやりたいなぁ…と。

スポンサーサイト
プロフィール

きまりも

Author:きまりも
since 2012.03.31.


5周年記念に
プロフ画像を貼ってみた。
十波ちゃん作。


中学高校時代に読んでいた
シティーハンターに
再燃しハマってしまいました。


ブログのタイトルは
ホトトギスの英名。
基本カオリストです。
丑年といえば年がばれるか?


9万hit記念に
とりあえず作ってみた
CH専用Twitter
 


拍手1000パチ記念につけちゃいました。



かなり便利なサーチツール

登録サイト最新情報はこちらをチェック!


試運転中…

カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
現在の閲覧者数: